第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!
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作家/トラックメイカー/エンジニアとして作曲からアレンジ、ミキシング、マスタリングまで手掛ける。ヒップホップ、R&B、EDMの制作手法に精通し、アーティストへの楽曲提供や共同制作、近年では劇伴やCM音楽へも進出。機材誌での連載執筆、各種セミナーやブログを通じてDAW、音楽制作に関する情報を幅広く提供している。
infomation
・12月17日、18日にレッドブルスタジオ東京にて開催される「Steinberg Day 2016」にゲスト出演します。
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ANALYSE
NeutronはEQ、ダイナミックEQ,マルチバンドコンプレッサー、エキサイター、トランジェントシェイパー、リミッターがモジュール式で内蔵されたプラグインです。同社Ozoneで高い評価を得ている処理モジュールシステムを基盤としており、これの操作素子をさらに進化させたような作りになっています。
実際に使ってみて楽曲制作時の積極的な音作りというより、楽曲を仕上げるミックスダウンの際に必要な事をサポートしてくれるという印象が強かったです。2大機能として音色同士の周波数帯域的なかぶりを検知して、EQで効率的に解決するマスキング検知機能。数秒間さのプレイバックで実音をアナライズし、楽曲のアンサンブルの中で最も効果的に響くよう処理そのものを導いてくれるトラック・アシスタントを備えています。
これらが単に音響的な処理サポート機能としてだけでなく、ユーザーのスキルに応じて段階的に使用、また深度を選択できるよう設計されている点は、これまでに無かったタイプの実用的なプラグインだと言い切ることができます。
FUSION
基本的にはミックスダウンの工程で使用しています。基本的な音作りを済ませた音色の最終段にNeutronをインサートし、マスキング機能をつかってチャンネル同士の周波数帯域の被りを解析します。ギターとボーカル、ストリングスとピアノなど帯域的にかぶりやすい音色同士を比較し最終的な鳴りの微調整を行います。
組み合わせは自由に変更できるので、最初にギターとボーカルを処理し、その処理を反映しつつ今度はボーカルとベースといった具合に、あるソースに対して段階的に最適な処理を積み上げていくことも可能です。私の場合ミキシングスキルをある程度習得しているので、トラックアシスタントはあまり必要に感じていませんでしたが、それでも音色によってはどうまとめてよいか分からなくなることもあります。
要するに煮詰まった状態なのですが、そういう時にトラックアシスタントにいったん音作りをしてもらい、そこから処理を強めたり、弱めたり、自分好みの処理を加えたりしています。ミックスにおいて、最初に行う抜本的な音作りの処理から、作業の最終段での音色同士の微調整まで用途に応じて自由に使えるので大変重宝しています。
SUGGESTION
特にトラックアシスタント機能は初心者から使える優れたサポート機能だと思います。実際に使ってみると数秒で「あ、そうそうこの音はそういう風にしたかった」というところまで作りこんでくれるので、アンサンブルの中でも音作りの難しい音色の処理の仕方を勉強したりも出来ると思います。
今回はボーカル、ドラムのタム類、シンセベースなどに使ってみましたがどれも仕上がりのクオリティは非常に高く、正直ビックリでした。海外の著名エンジニアはアシスタントに基本的な音作りを任せて自分は仕上げの微調整という方もいますが、Neutronはその中でもとても優秀なアシスタントになってくれると思います。
プロジェクト上のすべてのチャンネルに対して、プレイバックを繰り返しながら数個のプラングインを立ち上げて音決めしていた工程を、ひとつのプラグインでほんの数秒で行ってくれるので、締め切りに追われているクリエイター、時間的余裕があまりないプロジェクトを抱えるエンジニアには特におススメだと思います。
こういった自動調節機能を持った製品は、特にそれ相応のスキルを既に持っているプロ寄りの方の間ではなかなか受け入れられにくいものだと思います。しかし今回の製品はそれを承知の上で真摯に開発に取り組んだメーカーの気概を感じさせるものです。扱いやすく結果も良い。
そして様々な状況に応じて多種多様な使い方ができるとても優れた製品です。そうなると全てのチャンネルに挿して…と考えたくもなりますが、動作が多少重く、現時点でそれは難しい事のようにも感じます。また自動ですぐに良い結果を出せても、それは”あるひとつの正解”に過ぎないため、仕上がる楽曲の音像が似通ってくることも考えられます。したがってユーザーごとに適宜、使用頻度と深度を自分で調整する必要があると思いました。
iZotope
Neutron
¥ 21,384 (本体価格:¥ 19,800)
トラックを解析し、最適なEQ/compを提案する、ミックスツール!
PLUS1 ACCESSORY
Universal Audio
UAD2プラグインシリーズ
アルゴリズムによる適正な音づくりが漫然とした没個性をまねくのであれば、それを打破するのは確たる個性を持ち合わせたビンテージ・ハードウェア機器です。それらを高い精度でモデリングしたUAD2プラグインがあればきっとバランスの取れた良いミックスを構築できると思います。またNeutronは空間づくりはできないので、シリーズの中のリバーブ類、ディレイ類も重宝すると思います。
記事内に掲載されている価格は 2016年10月26日 時点での価格となります。
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