第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!
もし自由に使えるバジェットがあったら、あのクリエイターなら何を手に入れるのか?
普段なかなか知ることができない、一線で活躍するクリエイターが本気で考えたベストプランを大公開!どんなプロダクトであのサウンドを生み出すのか、なぜそのプロダクトでないとダメなのか。プランから見えてくる、クリエイターが目指す未来のサウンドを感じ取ろう!
Profile
Enrico Sesselego氏
Eddie Kramer、Jeff Peters、Ken Allardyceなどの伝説的なエンジニア達の間近で彼らのアシスタントとして経験を積み、そのエンジニアリングはスティーヴ・ヴァイにも認められ、彼のMothership Studioにてパーソナルアシスタント兼エンジニアとしても活動していた。またライブPAとしても定評がありポール・ギルバートのヨーロッパツアーなども担当している。こうしたエンジニアワークと平行してギタリストとしても活躍の場を広げている。これまでにアメリカやヨーロッパのロックやポッスを中心に携わっており、特にギターの音作り(アコースティック、エレキ)には定評がある。ギタリストの微細なニュアンスや生ドラム、ストリングや歌などの感情表現豊かな演奏を演出する技術を持つ。近年ではフランスやブラジルでのホーンやラテンなどの楽器にも精通し、シンセとエレクトリックアレンジなどにも携わっている。
もしも、予算制限なく、モニターシステムを構築するとしたら、最新の音楽に求められる最高の音質と、あらゆるジャンルに幅広く対応できることに重点を置いてシステムを考えます。音楽ジャンルというだけでなく、アルバム制作から映画音楽など含め、幅広い規模の音楽制作に対応できることも考えます。そういう観点から、僕の場合は3セットのスピーカーを使ったモニタリングシステムを構築したいです。MonoとReverseオプションを搭載するハイエンドなマスターセレクターをハブにして、3つのスピーカーを接続します。全てのコネクションには、金メッキのNeutrikコネクタを使います。
理想は、パッシブ、アクティブ、アクティブの3セットです。ニアフィールドには、それほど高価でないけど今となってはなかなか手に入りにくいYAMAHA NS-10がいいです。アンプは非常に自然で色付けがないことからBryston 4BかCrown XLCシリーズを用意し、カスタムメイドのスイッチでA/B切り替えして使い分けたいです。
2つ目のスピーカーは、ミッドフィールド的な感じで、名機GENELEC 1032の流れを受け継ぐ8050Aがいいです。専用スタンドを使って高さ、横幅ともにベストなスイートスポットに設置します。3つ目のスピーカーはモニターのNEUMANN KH420です。これはウーファー、ミッド、ツイ-ターの3wayで、再生周波数帯域は26Hzから22,000Hzです。これに、歪みのないタイトな低音を再生してくれるサブウーファー NEUMANN HK 810を追加します。
96Khz以上のサンプリングレートで作業する状況では、よりディテールをモニターできる環境が必要になりますし、高域の正しい解像度の再生が必要になります。そういう点からも、このGENELECとNEUMANNのスピーカーはしっかり要望に応えてくれます。
限られた予算の中では、もちろん良いADコンバーターや部屋鳴りの補強などにも予算を回していかないといけないと思いますが、モニタリングシステムとしてはアルバム制作から大きなプロジェクトまでも対応出来る幅広い用途に使用できるシステムを考えます。MonoとReverseオプションのあるセレクターをハブにして、2つのスピーカーを導入します。すべての接続には金メッキのNeutrikのコネクタを使用します。
2台のスピーカーですが、それぞれパッシブとアクティブのものを採用します。ニアフィールドとしてパッシブのピーカーとして、Choice Aと同様、YAMAHA NS-10を選びます。アンプは相性が良いYAMAHAのPシリーズ(P1000など)です。もう1セットのアクティブスピーカーは、ミッドフィールド的な役割で、これもChoice Aと同様ですがGENELEC 8050Aを選びます。もちろん専用スタンドを使って高さ、横幅ともにベストなスイートスポットに設置します。
これにポストプロダクション作業用として、レスが良いサブウーファー(Boseのコンシューマー向けのものでもOK)を組み合わせるかもしれません。
そしてこのアクティブ、パッシブの両方のモニターでしっかりリファレンスしてミックスをしていきます。96Khz以上のサンプリングレートで作業するような状況のときは特によりディテールをしっかりモニターできる環境が必要になりますし、高域の正しい解像度の再生は必要になります。そういう点からも、このGENELECのスピーカーはしっかり要望に応えてくれます。そしてパッシブモニターとA/Bしてモニタリングすることによってローミッドやハイミッドの音像も確実に把握しながら作業をすることが可能になります。
僕の場合、「録音〜作品の完成」まで全てを行いますので、様々な楽器を正確に録音することが絶対必要になります。特にアコースティック楽器においてはそれが重要です。GENELECを選んだ最も重要な点としては、コンデンサーマイクを使ってマイキングする時に、音源である楽器のハイを正確に捉えられているかを確認でき、ドラムやパーカッション、ストリングス、ホーンセクションなどのアコースティック楽器における繊細なフェーズチェックが行え、結果としてより正確にステレオイメージが作り出せるということがあります。
もちろんボーカルやクワイアなどの収録にも重要になります。全てのダイナミックレンジの振動と音量の変化をしっかりと聞き分けてキャプチャーすることが重要です。また、シンセや他のデジタルサウンド(MIDI音源)のようなアコースティックサウンド以外の音に関しても、透明感やディテールを聞く必要があります。YAMAHA NS10はパッシブでレスポンスがいいので、録りに使いやすいことと、要らない周波数帯域を探す場合に非常に役立ちます。
エンジニアにとって重要な点として、長時間に渡る作業時間です。1曲ミックスするにしても音に集中して長時間作業することで耳へ大きな負担がかかって来ますし、それが1つのアルバム制作になってくると数日間それが続き、そのプロジェクトが終ると、また次のプロジェクト、、、と何週間もそうした状態が続くことがあります。
モニター環境は正確であることが勿論のこと、長期的な作業でも耳に負担が掛かりにくいものであることも大切です。理想的なアクティブとパッシブ間のA/Bでは、それぞれのモニターでディティールを確認できるということもありますが、こうすることで長時間作業し易くなるという点もあります。また、ミキシング時の適正の音量(80-90dB)でモニターする一方で、それぞれの楽器の距離感と音量感を確認するために、小さな音量でモニターすることも大切です。大音量ではこうした判断がしずらくなります。ケーブルやコネクタ、そしてステレオバスセレクターは超ハイエンドである必要はないですが、信頼できるブランドを使うというのは大切だと思います。
最近ではほとんどの人がパワーアンプなどを使用している立派なサウンドシステムで音楽を楽しむというよりは、スマホなどでイヤフォンやヘッドフォンを使って手軽に音楽を聞く様になっていると思います。機材は使用していくとどんどん消耗していきます。それは高価な機材であろうが安い機材であろうが同じです。そういった意味でも、どんどん新しい技術が開発され、新製品がどんどんリリースされている現状として、手頃な価格帯の機材を導入していくことでそうした市場の動きあわせたアップデートのスピードを上げていけるのかもしれません。
上記で紹介された製品、後継機種
NEUMANN
KH420(1pair)
コンピューターによって最適化されたドライバー、Mathematically Modeled Dispersion™(MMD™) を特徴としたウェーブガイド、そして柔軟なアコースティカル コントロール、種々のインプットオプションと拡張性に富んだ取付けハードウェア レンジにより、KH 420がどのようなソース機器の多様な音響条件、そして様々な物理的な配置でも使用可能です
記事内に掲載されている価格は 2017年11月15日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ