〜Rock oNがこのマシンの異次元ぶりを徹底REPORT!〜
AIRA Rock oN Lab.所長 ACID渋谷が情熱レビューをお届け!
本日突如Rock oNに降臨したRoland AIRA3機種(TR-8、TB-3、VT-3)。ブラックとグリーンで統一されたボデイから漂う雰囲気は、噂の名機復刻ではなく、完全なる新コンセプトのマシン!
TR-8の右上そしてVT-3の中央に鎮座するScatterノブ、TB-3の赤く怪しく輝くパッド型インターフェース。興奮に打ち震える指で徹底レビュー!
1:ヒップホップ、エレクトロ、レイブ、全ては808・909・303から始まった。
Rolandが歴史の中に刻んできたTR-808オリジナルサウンドはなぜ生まれ、今なお支持され続けるのか。まずはそのサウンドが生み出した文化を紐解きながら、AIRA誕生の秘密に迫ります!
1978年、マイコンを搭載したリズムマシンRoland CR-78の登場以来、リズムマシンがただの練習用のバッキングだけでなくアーティストのレコーディングに使われるようになった。
その2年後に世界初の本格プログラマブルリズムマシンとしてTR-808が登場。楽器の演奏が出来なくても一曲丸ごと打ち込めるTR-808はスタジオアーティストだけでなくブロンクスのキッズやギャングにも音楽に接する機会を与えた。
1982年にはアーサーベイカーとAfrika BambaataaがKRAFTWERKのフレーズをTR-808で再現してラップを載せた ”Planet Rock”などの歴史的名曲を産み、ヒップホップやエレクトロといったストリート発進の爆発的ムーブメントを生み出した。また同時期に発売されたベースマシンTB-303は一般的な音楽ユーザーには受けなかったものの、投げ売りされた結果シカゴの黒人アーティストがその魅力を再発見。
元はベーシストのチョッパーを表現するための機能だった「ENV MOD」が生み出す副産物的な効果に依ってシカゴ、アシッドハウスを生み出した。私も始めてアシッドハウスを聞いたときの、パンク的なエネルギーとDIYな雰囲気に衝撃を受けた。
アシッドムーブメントはその後90年台にUKに飛び火。大規模なレイブカルチャーとして世界中に広がった。またアナログ音源に6bit PCMの金物を搭載したTR-909はその攻撃的なアタックを持つキックやハイハットによってテクノの代名詞的マシンとなった。
2:世界中からの熱い期待と技術革新の30年
90年代を過ぎ、2000年代そして2010年代になった今もTR/TBの人気は衰えを知らず、むしろその希少性も相まってカリスマ化が進行。これ程までにフォロワー製品を生んだマシンは世界でも類を見ないだろう。
Novation “Drum Station”やJOMOX “XBASE09″、近年ではアルペジエイターやエフェクトの搭載でオリジナル以上の幅広い音作りを実現したソフトウェアPHOSCYON ”BASS LINE”や、オリジナル回路を模倣したハードウェアMode Machines “x0xb0x”等、かつて無いほどの精度を持ったクローンがハード/ソフト問わず登場。
当然世界中のファンから本家Rolandによる復刻望む声が早い段階で寄せられてたが、それは実現されないまま30年の月日が過ぎて行った。
Rolandはなぜ過去を振り返らないのか。私はそこに同社の技術革新に懸ける熱いパッション感じる。恐らくRolandはオリジナルTR/TBに満足していなかったのではないだろうか。Rolandが本当に出したい音を鳴らす技術が完成するまでTR/TBを封印していたのだろう。
その間もRolandは最新技術サンプリング技術であるVari-Phraseを搭載したサンプラーVP-9000や、COSMを搭載したV-Synth、そして2012年にはSuperNatural音源による歴代Rolandサウンドの集大成的シンセIntegra-7等、アナログから離れて新しいテクノロジーを生み出し続けていた。
3:アナログ・デジタル論争に終止符を打つ脅威のACBテクノロジー
そんな中 突如登場したAIRAのリーク動画。「TR/TBシリーズの復刻」として騒がれていたAIRA、見た瞬間に私が真っ先に考えたのは「アナログ、デジタル、どっちだ?」という事だった。
Rolandが出した答えはACB(Analog Circuit Behavior)という新しいテクノロジーだった。ACBは部品自体をモデリングする事でそのサウンドを再現する技術である。
* SuperNATURAL:振る舞いをモデリング
* ACB:部品をモデリング
生粋のデジタル新技術であるACB開発の背景にはアナログの存在がある。TR−808本来のサウンドは既に30年という経年劣化によって変化大きく変化しており、個体毎に大きく音が異なっている。
試しに複数のTR-808を集めたところ、本来ピッチ可変ではなカウベルの音程にさえ差が出ていたという。そこでTR-8にはTR-808の本来の音の完璧な再現だけでなく、それぞれの人が持つ「自分にとっての808の音」も作れるように、カウベルやハンドクラップにもパラメーターが追加された。
また、ACBは部品のモデリングのためプログラミングによっては「改造状態」も再現が出来る。マイアミベースで聴かれるようなロングディケイのベースドラムは、元々はあるコンデンサーの常数を調整する事で得られていた。
もちろんTR-8も地鳴りの様なロングディケイのベースドラムを再現するが、それはただ単にパラメーターの可変幅を増やしたのではなく、従来の改造と同じようにACBのプログラム上でコンデンサーの常数を変える事で得られている。
さらに言えば、実機に使用されていたマイコンがオーバークロックで使用されていたなど設計図に載っていない仕様も当時の技術者へのヒアリングによって完全再現されている。
この技術を使えば、「デジタルサーキットベンディング」の様な事は理論上可能と思われる。更にACB技術がオープンアーキテクチャになれば世界中のユーザーが自分だけのTR-808をサウンドを作れるようになるかもしれない。
また将来的にACBがプラグイン化し、他のマシンのモデリングプログラムがユーザーに提供されれば非常に面白いだろう。
4:ライブと制作の垣根を壊せ!新世代に向けられたAIRA
AIRAはコンセプトに「Create Today, Play Tonight」を掲げている。
AIRAシリーズの4機種は全てがオーディオインターフェースを搭載し、USBによってMac/PCと接続が可能。内部96kHz/32bitで生成されたサウンドを直接PCに取り込めるのは嬉しい仕様だ。
※2014年3月4日加筆修正。内部演算は96kHz/32bit、オーディオインターフェースは96kHz/24bitです。
ACBではTR-808/TR-909のインディビデュアル・アウトのサウンドを再現しているが、TR-8のアウトの部品は恐らく当時のものではないと思うので、DAを介さずにデジタルで取り込めることはオリジナル808/909サウンドをとことん追求する上で大きなアドバンテージとなる。
またTR-8の場合はキットのサウンドをパラで出力できる。更にそうしてパラでDAWに取り込み、エディットしたサウンドを2mixの状態でTR-8のメインミックス・アウトから出力する事もできる。
正に制作とライブをシームレスに繋ぐ環境と言えよう。PCを使用するライブに別個でインターフェースを持って行かなくても良いのは非常に楽だし、プレイに集中する事ができる。もちろんDAWのMIDIクロックに自動で同期するのでTR-8側での操作は不要。ableton LiveやNative Instruments Traktorではすでに同期の確認が取られている。
また、ライブに特化した新機能として全機種に搭載されたScatter機能がある。コレはミックス・アウトの信号をリアルタイムで24bit/96kHzで内部サンプリングし、大胆なグリッチ・サウンドを生み出す事ができる。
TR-8の場合は10種類のScatter機能を選び、その過激さを10段階で設定するという明快な操作でEDM御用達サウンドが簡単にできる。個人的に驚いたのはサンプルのピッチを落とすタイプのScatterの時の音質劣化の少なさ。当然ノイズもなく、私がTR-8を触っていて一番デジタルの恩恵を感じたポイントである。
さらにScatterはエクスターナル入力の信号に対しても同時に掛けられるので、ライブだけでなくDJミキサーのエフェクトセンドを繋いだりしても面白いだろう。
もうひとつ、SYSTEM-1だけが搭載した制作をライブを繋ぐ新機能として「Plug Out」がある。
SYSTEM-1はACBモデリングによる自身のサウンドの他に、コンピューター上で使用する『Plug Out対応ソフトウェア』のサウンドとセッティングを1つだけ持ち出す事ができる。
ソフトウェアの第一弾はSH-101が予定されており、SYSTEM-1と同時に発売予定だ。いつもあのプラスティック製で不安定なSH-101をライブで持ち運んでいる私にとって非常に嬉しい。もちろんMIDI演奏がもたる事もない。
Rock oNとしてはこのACBとPlug Outを使って例えばminimoogやprophet-5のサウンドも扱えるようになる事に期待を寄せたい!
AIRAシリーズのお問い合わせは、AIRA Rock oN Lab.にお任せ!
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