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2007年の発売から人気を博しているiZotope RX。日本でも既にたくさんのユーザーがおり、その評価は2013年にはエミー賞を受賞するなど世界的にも絶賛されているRXだが、新たな機能を追加したバージョンとなるRX4とRX4 AdvancedをAES2014で発表した。
MAには必須になっているプラグインであるが、アイデア次第では音楽制作においても活用できるフィールドは広いかもしれない。今回はその新機能を中心にレポートする。
RX4としての進化ポイント
オーディオリペアのプラグインとして既に実績を積み重ねているRXもver.4となった。スタンダード版と言えるRX4に数々の追加機能とiZotope社のメータリングスイートであるinsightを付属させたRX4 Advancedの2種類で展開される。
まず紹介したいのは、RX3から搭載されていた機能はそのままにスタンダード版とAdvanced版に共通した新機能として搭載されたRX ConnectとRX Monitorプラグインである。
今までは、Spectral Repairを使用する時にクリップの長さは45秒まで(44.1kHzで使用時)という制限があった。これ以上秒数が長いクリップを修復するためにはスタンドアローン・モードを使用するため、DAWを一旦終了しオーディオファイルを修復してから再度DAWに取り込むといった決して効率のよくないワークフローを取らざるを得なかった。当然だがユーザーにとってこのように都度待ち時間が発生するという事はその分クオリティにも影響が出る。
それを解決するのがこのRX ConnectとRX Monitor。RX ConnectでDAWからの音をスタンドアローン・モードへ送り、DAW上でRX Monitorをインサートしたインプットトラック(AUX)を作成してスタンドアローン・モードで修復された音をモニターするトラックを用意する、このようにDAWとRXスタンドアローン・モードを同時で使用できる非常に効率のよいワークフローが組める。
さらに、スタンドアローン・モードが同時に使用出来るため、AudioSuiteで起動させた際の機能制限などが一切取り払われることになる。つまりRX4が持つ機能をモードに関わらず最大限使用可能となったのは大きなメリットである。
RX4 Advancedが見せる優位性
RX4の進化はそれだけではない。RX4 AdvancedではAnbience MatchやEQ Matchなど多くの機能が追加された。iZotopeでは多くのユーザーから実際に現場でのリクエストを常にリサーチしている。そして、特にリクエストが多かったアンビエンスマッチモジュールや周波数特性マッチモジュールを中心に多くの機能が新たに搭載された。ここではその面々を改めて見ていきたい。
○Ambience Match
ダイアログなどの声を修復する場合、話していない部分や不要な雑音があればその部分をカットして処理する。
アナブースなどアイソレーションされた環境でアフレコされた音声とスタジオや外部収録等の音声を合わせる場合には”ノイズを引く”という作業を行うことになる。そんな場合に非常に有効になるのが、このAnbienceMatchだろう。
リファレンスとなるアンビエンスを学習させ、対象となる範囲(時間)へと簡単に反映する事が出来る。アンビエンスの音声をただ加えるだけではなく、クリップのない部分=無音部分へと埋めてくれるので簡単に整音ができる。
○EQ Match
ソースとなるクリップと反映させたいクリップのそれぞれの周波数特性を学習させ、差分からEQカーブを自動生成しクリップへと反映させる。
オンマイクとオフセットしたマイクとの音質の違いなどを周波数ベースではあるが簡単に揃える事が可能になる。
今までEQで音を探りながら編集していた作業が、わずか数ステップの操作だけで簡単に反映されるので作業効率が格段に上がる。
○Clip Gain
意図しないダイナミックレンジの変動を、クリップ単位で調整できるのがClip Gain。
多くのDAWで搭載されている機能だが、その機能がRXでも調整出来る様になった。クリップゲインはRX4ノーマル版でも搭載されているので、使用しているDAWがクリップゲインに対応していなくてもその効果を受ける事が出来る。
また、ワークフローとしてクリップゲインでレベルを整えてからノイズを除去したほうが、基音に対する影響も少ない。
○Leveler
いとも簡単にレベルを調整してくれるのがLeveler。
多くのDAWでクリップゲイン調節が可能ではあるが自動でレベル調整をしてくれる物は少ない。Levelerを使用することで、ターゲットRMSとして設定したdB値に自動調整されるので、レベル調整にかける時間が大幅に削減できる。
また、この機能をクリップゲインとしても反映させる事が可能で、さらなる微調整も可能になる。
○Loudness
一昔前のテレビ放送は番組内や番組とCMの音量差が大きく、CMになると急に音量が大きくなったり番組に戻ると音量が小さくなったりと、視聴者はその度にリモコンでボリュームを調整していた。それを解消するために制定されたのがラウドネス運用規定だ。
その運用規定に沿ってコンテンツのラウドネス値を修正するパラメーターがRX Advancedにも搭載された。もちろん、プリセットの中には日本の運用規格であるARIBTR-B32も用意されており、2ch MIXされた素材を補正することも簡単に出来る。
モジュラー構成がもたらすメリット
主に大きな機能拡張である4項目を挙げたが、他にも注目すべき機能は沢山搭載されている。このようにRX4 AdvancedではAmbience MatchやEQ Match、Levelerなど、多くのモジュラー機能が搭載された。これら全てが、一つの画面上で処理できる。
もちろん、モジュラーごとで設定が決められプリセットとして登録できるので、LevelerやEQ Matchなどはよく使う設定をプリセット登録することが可能だ。また、以前より搭載されているCompareモードで、何パターンかの設定を比較して試聴する事ができる。
プラグインの中でパラメーター違いの設定を比較する際、プリセットに登録をしてそれを切り替えて…と手数が増えてしまったり、プラグインを反映させた波形を書き出さなければならなかったりと気苦労は絶えないが、Compareを使用することでこの問題も解消されるだろう。
例えば屋外での収録時に蝉など周波数帯域が広めな騒音を取りたい場合、Denoiseを使って全体的にノイズを消すか、Spectral Repairで特定のノイズを消しゴムのように消すのか、それとも特定の周波数帯域をGainで調整するのか。
RX4 Advancedであれば、簡単にツールを変更する事ができ、簡単に比較できる。もし、作業を戻りたい時もUndoリストがあるので数段回前の処理まで戻る事も容易に出来るのも魅力だ。
一度に同じ画面で様々な調整が出来るという事は、ひらめいたアイディアを邪魔する事無くオペレート出来る、クリエイティブな環境を提供できるということではないだろうか。
RX2から3へとバージョンアップした際にも大いに話題となったRXだが、今回のアップグレードはその比ではない。日々の作業で問題となっていた部分が大幅に解消されたバージョンに進化した。以前のバージョンをお使いの方はもちろん、日々整音作業で悩んでいる方も、その驚異の新機能をぜひ体験していただき多いに活用していただきたい。
(★本記事はProceed Magazine 2014-2015号より転載いたしました)
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