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Rock oN AWARD選考委員
恒吉:恒
マエストロ佐々木:佐
スティービー竹本:竹
ACID渋谷:渋
谷:谷
IH富田:富田
Rock oN AWARD 2017 選考会を振り返って
富:1月13日に発表されたRock oN AWARD 2017!今回はページをリニューアルしてワンクリック投票を採用したことで、これまでにない多くの方の投票をいただきました。ミュージシャンやエンジニアの意見が従来以上に盛り込まれた結果となったと思います。まずはみなさんそれぞれで、2016年にリリースされた制作機材や業界の印象などを教えてもらえますか。
竹:マイクやアウトボードのノミネート製品が少なかったのが心残りでした。製品のバリエーションは多かったのですが市場全体のヒットモデルというと一部の製品だけ目立っていた印象です。
洋:竹本さんと同じ印象です。なにか一つの製品だけに票が集まったわけではなく、最後まで選考に残った製品は甲乙付けがたい投票数でした。逆に、ぶっちぎり優勝になる製品が出なかったな、という印象です。
渋:「この製品に賞をあげたい」と思えるものが多くて、今後もっと賞を増やしていきたいと思える豊作の2016年でした。特にプラグインはもっとたくさん良い製品がありましたよね。
佐:Rock oNでの売れ方という視点で見ると、NeutronとKeyscapeはビッグヒット製品でしたが、それ以外はもっとじっくり腰を据えた売れ方をしています。
谷:僕はSymphony I/O MK II推しだったのでBronze受賞は嬉しかったのですが、他のみなさんが言っているようにダントツの注目製品は少ない印象でした。Universal Audio Apolloシリーズが出てきたような衝撃がなかったというか。あと個人的にKIKUTANI KS-203が気になったりしていました。
富:KIKUTANIはキーボードが置けるスタンド?
谷:そうです。ライブやスタジオでちょっとしたものを置くのに便利なんです。これまでありそうでなかった。
富:受賞製品のNeutronやFLUX IRCAM Spat 2、360pan/Indoorのような「AI」「VR」というテクノロジーの進化の大きな潮流に期待が高まっているということなのでしょうかね。
シンセサイザーのアナログ路線
富:みなさん、大きな話題がなかったというような印象を語ってくれましたが、それは製品が保守的になってきているっているような。例えばシンセサイザーは低価格のアナログものが多かったですよね。
渋:シンセがアナログ路線になっているのは間違いないです。もともとアナログシンセを使っていた人からは保守的と見えるかもしれませんが、ソフトシンセから始めた人にとっては逆に新しいものと映っているはずです。
佐:シンセって技術的に新しいものはあった?
渋:無くはないですが、レジェンドの復刻やその血を受け継ぐような製品が多かったです。あえてMIDIでなくてCV/GATEで同期させるものも増えましたね。
新しいサウンド表現方法の誕生
洋:プラグインだと、Waves NxやAudio Ease 360pan / Indoorなんかは、久々に新しい空間表現のものだったと思います。Spat 2も縦方向の表現というところにリーチしてきた製品。こういう新しい技術を使った製品のリリースが始まったことが2016年の印象です。
富:なるほど。得票を一人勝ちする製品が少なかったのは、「DAW」「シンセ」「オーディオI/F」といういわゆるメインどころ以外の製品に注目が集まったり、新しい技術へのこれからの期待があったからかもしれませんね。先ほど洋介さんが評価したプラグインや、ROLI Seaboard RISEのような新しい兆しが見えてきているのかもしれません。ここからの潮流をどう作っていくのか。次回のRock oN AWARD 2018が楽しみになってきますね。
AWARD製品を読む
富:堂々のGoldは2016年末に話題爆発のNeutron。得票も多かったのですが、それ以上にユーザーレビューの多さが際立ちました。「プラグインと会話しているよう」「ミックスの勉強になる」っていう評価もあって、面白い製品だな、と。
佐:人気も売り上げもダントツ。
竹:昨年にレビューをしてくれたSUIさんが、ミックスに煮詰まったユーザーには違う方向性を示してくれることがある、とおっしゃっていました。
あとはプロセスのかけ方や深さを調整できるので、任せっきりではなくてあくまで選択肢を広げてくれるという働きをしてくれるのが、こんなに売れている理由ではないでしょうか。初心者向けのお任せソフトではないですね。
佐:今後は特定ジャンルやもっと豊富なキャラクターにリーチするようなプリセットが追加されるといいね。
谷:マスキング検知(異なるトラック同士の帯域かぶりを視覚的に教えてくれる機能)とかは、自宅スタジオなんかのあまり望ましくないモニター環境で作業をしている人にとっては助かる機能ですよ。キックとベースとかね。
富:今はまだ音声解析とその条件付けによる動きなんだと思うけど、将来的にユーザーの好みのジャンルや曲の傾向に合わせて、対話型でAIが提案してくれるようなものができるようになるでしょうね。
佐:エンジニアプリセットとか出てくるんじゃないかな。エンジニアの~氏の個性でミックスを提案、とか。あとは自分らしい音の傾向をおぼえてくれたり。
渋:そうなると、NeutronはまだEQとダイナミクス、サチュレーションだけだけど、空間系やモジュレーションも提案してくれるものが出てくる可能性も。DAWのフェーダーやPANまでやってくれたらすごいことになるなあ。
富:Neutronの未来志向なところは、これまでのプラグインとは全く違いますね。ともなれば「クリエイティブって何?」ていう問題が出てきますが、もう一度そこに立ち返る必要がありますね。音楽制作以外でもAIが出てきたことによって、人間らしさや心って何だろう、と問われ始めている。
谷:劇伴作家さんにも人気なんですよ。曖昧なピッチを表現できるんですよ。
竹:氏家さんがセミナーで実演されていましたが、中近東の楽器のようなピッチが曖昧な楽器をパッドとレイヤーして演奏するような奏法が相性が良い。「境界のない鍵盤」、されど鍵盤の形を残した事も広く受け入れられた要因だと思います。
渋:鍵盤ばかり取りざたされますが、音源のEquatorもめっちゃ良いんですよ。
竹:ROLIはソフトのEquatorをマスターすると活用範囲がグッと広がりますよね。
谷:プリセットのみだともったいない。勉強してほしい。
富:じゃあSeaboardは、これまでになかった革新的な楽器だと言っていい?
谷:コントローラーについては圧倒的に革新的でしょう。こんなの考えなかった!っていうアイディア。音の揺れも指の感覚で自在に表現できてMIDIに反映できる。
富:「鍵盤を超えた鍵盤」がやっと実現したかも?
谷:鍵盤と鍵盤の間を攻める、というか。
渋:とは言っても鍵盤っぽさを残しているのがいい。ほかにも似た表現ができるコントロールサーフェース(haken audio continuum fingerboard やLinnStrumentなど)はありますが、Seaboardは鍵盤らしさが絶妙に残っているが故にヒットしたんだと思います。
竹:2016年9月に発表された情報で、ROLIとFxpansionのコラボの詳細も近いうちに発表されるでしょう。また新しいイノベーションがはじまる気配です。
谷:Apogeeといえば高域がギラギラ、という印象を良い意味で裏切ってくれたサウンドでした。ローエンドの空気感の解像度の高さはびっくりした。
洋:サウンドの傾向は随分変わりましたね。
富:2016年末にPro Tools 12.6 HDX / HD NativeがオーディオI/Fの縛りを解放したことで、Symphony I/O MK IIはPro Toolsのポストスタンダードになってきている。それを実現できている理由は、ApogeeとAvidの関係の良さもあるし、ネットワークオーディオまで広がる拡張性やタッチパネルなどの操作性も評価されているんじゃないでしょうか。本来ならAvidが自身で作ってもいいような腰の坐った製品だという印象です。
佐:最近のApogee オーディオI/Fはアーティスト寄りの製品リリースが目立っていたからね。
竹:ユーザーレビューで「感度がiPhone並みに良い」って評価されているタッチパネルはよく使う?
谷:Maestroがまだ対応できない部分もあって、まだこれからというところですが、Apogee Controlが春にはSymphony I/O Mk IIに対応するということなのでそれが楽しみです。
富:Apogeeに対して、これから望むところはある?
谷:早くSoundGridカードが出てほしいです。
竹:DigiGridのDSPサーバーを使ってプラグインを処理できる。夢がありますね。
富:USB C > Thunderbolsカードがほしいかな。変換器を挟めばできるんだけど、ダイレクトに新しいMacbook Proに接続できるようになれば。
富:洋介さん、オーディオI/Fの未来はどうなっていくんでしょうね?
洋:ここ数年、ネットワーク=Audio over IPというキーワードが出てきています。ライブ/PAや設備業界ではものすごい勢いで広がっているんですが、クリエイターや一般ユーザーの間ではまだ広まってはいない。ネットワークの拡張性が彼らにとってはtoo muchなんでしょうか?
富:DigiGridのようにパーソナルでネットワークできるものが注目されていくんでしょうか。
洋:ネットワークの未来は「ワイヤレス」だと思っています。レイテンシーが気になるのであればこれまでのように有線ですが、聴くことが中心でレイテンシーが許容できるのであればワイヤレス。MIDIはBluetooh MIDIとかワイヤレス化の流れがきていますよね。
富:なるほど。ワイヤレスでSoundGridみたいにI/OとDSPサーバーがつながれば面白いことになる。
洋:Wi-fiもBluetoothもオーディオを通信する帯域は足りているはずです。あとはレイテンシーの問題だけ。IT技術から言うと、PCを遠隔操作するなんていうことは当たり前ですからね。
竹:クラウド的に、プロセッシングをどこか別の場所に置いたサーバーで行えるようになる、とか。
富:とはいえまずは有線の安定と普及が先ですね。クリエイター間のネットワークオーディオの広がりに2017年も期待したいと思います。
富:最も得票を獲得した製品に送られるPopular AWARDです。
竹:RMEはドライバの安定性などの製品としての信頼性をRockonでもずっと一番に推してきたけど、今回のADI-2 PROはTotalmixを介さず、補整と言うよりサウンドカラー調整とも捉えられるEQも搭載されている。ヘッドフォンアンプのこだわりを見ても従来以上に「色気のある製品」だと思います。
佐:DSDへの対応っていうのは日本を意識したんだろうね。
竹:年末に発表されて、ものすごい勢いで売れました。20万円クラスのAD/DAがこんなに売れるとは思いもしませんでした。年末は供給が追いつかず品切れが起きてましたね。
富:最終選考まで残ったAntelope Orion StudioもFPGAプラグインの追加の話題もあって動きがありましたね。今はRME、Apogee、Antelopeが日本では大暴れしましたね。
佐:NAMM 2017でOrion32 HDも登場。Symphony I/O MK IIに続いて Pro ToolsのポストI/Fを狙ってきているね。
富:これはまだ発表だけで販売されていない。
洋:期待も含めての受賞ですね。spatは通常のサラウンドサークルの外に音像を定位できる。さらにそこに空間を作ることができる。リバーブ的なものですが、単純なものではなくてそこにどんな部屋/空間があるのかも再現できるのが特徴。パラメーターは複雑ですが、バーチャルな空間を作ってそれをどこから聞いているかというところまでできてしまう。spat自体も先進技術の塊でしたが、spat2はさらに一歩踏み込んで、縦方向のサラウンドを実現するツールになった。
渋:これもVRに向けた製品ですね。
富:ちなみに、Oceanwayが最後選考まで残った理由は?
洋:ホーン部分を3Dプリンターで作っているというところ。
佐:テストケースを何個も作れて、より理想に近づけることができる。設計や製造の技術革新ということで。
富:これはイレギュラーな2製品受賞。洋介さん、続けて解説をお願いします。
洋:SpeakerphoneやAltiverbっていう定番の空間系プラグインで有名だったAudio Easeから久々に出た製品。360panもspat2に続いて3Dサラウンドのためのプラグインだけど、VR360配信フォーマットのスタンダードになりつつあるAmbisonicsの出力がそのままできる。まさに制作現場に無くてはならないプラグイン。ビデオをプラグインウィンドウの中に出して、画のこのあたり、という指定をするとそこから音が出てくるっていう機能があります。
今Youtube VRとかっていうのはアンビソニックで音が埋め込まれているんです。4chの360度サラウンドで。要はサラウンドXYが角度を変えて4本で360度フォローするっていうフォーマットなんですけど、それの書き出しができるっていうので重宝されています。
佐:ほとんどプロモーションも何もしていないのに、発売してすぐお客さんからこれ欲しいっていう指名がバシバシ入ったんだよ。色々話を聞くと今世の中に出回っているVRの音を作るのに、これがないと作業ができないレベルのキーソフトになってる。
洋:Indoorはありそうで無かった室内空間を再現するためのリバーブ。隣の部屋や2階で鳴っている音を1階で聞いたりとかそういうものを再現できます。
竹:演出が細かいですよね。玄関の外のタクシーのラジオスピーカーを外から聴くとか。
洋:実際にそういう場所でIRを取って開発しているんですよ。アメリカの製品らしくトレーラーハウスのシミュレートもできる。
富:日本で使うなら畳の部屋がほしいですね。そうしたら日本のゲームで使える。龍が如くとか。
渋:ゲームのクリエイターさんに話しを聞くと、ファンタジーな場所やお城、洞窟なんかもほしいと言っていました。
富:単なるリバーブではないですね。
渋:機能はもちろんなんですが、この価格でRを描く金属板1枚でつくられた天板とか、凝った作りも人気の一つだと思います。
佐:後ろが木製っていうのもこだわりが感じられるね。
渋:モーションステップシーケンサーも良くてですね、パラメーターを記録し続けていくと1コマ4つで限界がくるんです。リアルタイムでパラメーターをいじっていくうちにやりすぎてしまうんですが、これは4つの限界を超えると更新されていくのでそれが面白いところです。あと最終選考に残ったCircuitは、Digital Natieve世代と呼ばれる人に対してハードウェアの楽しさを教えるっていうコンセプト。スピーカー付きで電池駆動ということでヒットしました。
佐:時代が一周りしたのかな。昔でいうとRolandのグルーブマシン的な存在だよね。
渋:若い世代の人にはそれが逆に新しいと感じられています。PCを使わなくてもできるじゃん、っていうところを狙ったんでしょうね。
富:NAMM 2017で出てくる新MPCもスタンドアローンですしね。
渋:大手メーカーのフラッグシップワークステーションも出た年でしたが、3年前から続いている世界的なアナログ路線は今後も続きそうです。でもその風潮がいつ変わるかは気にし続けています。
富:Software Instrument AWARDは、発売以来売れに売れている、Keyscapeが受賞!
谷:2015年はPopuler AWARDにKOMPLETE 10が選ばれたけど、今回KOMPLETE 11がノミネートされてはいますが、今年は受賞なし。残念。ま、もうみんな持ってて当たり前に使っているってことなんだろうね。
佐:Falconで最終選考まで残ったUVIは、2016年にとてもよく頑張ったメーカーだと思うよ。
竹:さすが10年もの制作時間をかけて作っただけあって、1サンプルごとのクオリティが秀逸。オマケ扱いされがちなToy Pianoも高域、低域まで丁寧にサンプリングされていますね。
谷:「あー、この音!」っていうキーボード音色が豊富で、昔からやっているキーボーディストにはたまらない音源でしょうね。でも僕がKeyscapeを気に入ったポイントはもう一つあります。僕はKORG Tritonを使っていた世代ということもあって、あの頃は違う音色をレイヤーさせて音造りをするのが当たり前だったんですけど、Keyscapeはそれと同じことが一つのソフトの中で完結できるのが良かったですね。
谷:将来的には様々なモニター空間を擬似的に作り出せるようになると思う。ヘッドホンユーザーが多い日本では注目されるべきですね。
富:僕はNxユーザーなので一言言っておきたいのですが、ついHeadTracking機能やヘッドホンでサラウンドミックスが行えることが取りざたされますが、Nxは2ミックスのいわゆる一般的な音楽制作にも抜群の効果を発揮します。
谷:使うと驚きますよね。
富:例えばシンセやギターを左右に振り切って定位させると、通常ヘッドホンだと左耳、右耳から音が鳴るじゃないですか。当たり前ですけど。それがNxを使うと、左前、右前から音が届いているように聴こえるんです。これまでいわゆるルームシミュレーターと言われるいくつかのプラグインはスピーカーっぽいEQ処理と擬似的なリバーブによる部屋感が加わるだけのものもありましたが、Nxはそうではなくて、様々なパラメーターが複合的に処理されて、音が前から来る感じをシミュレートできます。ミックスはスピーカーで、っていうのは当然ですが、夜中の作曲の時なんか、シンセのやリバーブの音作りに本格的に使えます。自宅スタジオでやっているユーザーはぜひ試してほしいです。
竹:MTRXはDADのOEMということで。ここまでハイエンドなオーディオI/Fというのは久しぶりの登場ですね。
富:AD/DAの品質は脈々と続くクオリティの高さがキープされている。もうカリスマっていう感じですね。
渋:価格的に個人だとすぐ導入、というのは難しいかもしれませんが、プロジェクトスタジオやポスプロスタジオにとっては鍵となる製品になるでしょうね。このハイレベルさでAvid公認のオーディオI/Fというのがすごい。
洋:これの特徴はやはりコストダウンでしょう。
竹:コンシューマーにも手の届く価格になってきたと同時に、サイズも魅力で実用性が増し安定して使える製品になった、ということでしょうかね。
富:タッチパネルを使った製品というのは無尽蔵にあるけど、ここまで大型の製品の開発を続けられているのはSlate Digitalくらいじゃないでしょうか。開発を諦めてしまうメーカーもある中、ここはやる気を感じますね。
渋:タッチパネルの新技術として、タッチした時に物理的な振動が指に帰ってくるものがありますけど、RAVEN MTi2にもそういう「触った感触が伝わる」ような技術が加わったら、フェーダーの操作とかももっと感覚的になるから、いつか物理サーフェースがなくなる時代も予測できます。Slateにはぜひこの路線を追求してほしいです。
佐:2016年にミドルクラス以上のスピーカーでこれほど売れたシリーズはないですね。コンシューマーからプロスタジオまで使っている層も広い。
洋:純粋に「モノとして良い」という印象ですね。
富:made in Franceであらゆるものを自社製造できるの技術力の高さと、各部位の総合的な開発ができることが高品質である一因でしょうね。
佐:Trio6 Beは2Way/ 3Wayをモード切り替えできるっていうのがプロにウケた。現場のニーズを理解しているし、実際に使える機能だった。画期的だよね。Focalはスピーカー製造にフォーカスしているピュアなメーカー。真面目な姿勢はリスペクトできるよ。
渋:次の製品展開も進んでいるという情報もあるので、期待したいですね。今回受賞したSM6シリーズとニアフィールドCMSシリーズの間を埋める製品があれば。
洋:Pro Tools 12.6はこれは外せませんね。「.6」という細かいバージョンアップのように見えますが、事実上メジャーバージョンアップと言っていい機能が盛り込まれています。12.6は特に日本から届けられた要望を実現した機能の塊なんですよ。クリップエフェクトもレイヤーエディットも日本からの声なんですよ。某放送局から出た要望をROCK ON PROが力添えしてAvidへ伝えたりもしたんです。それが実現されたものが12.6。
竹:Pro Toolsが再びイノベーションを起こした、ということでSpecial Recognition AWARD(審査員特別賞)の受賞ですね。
富:この座談会を開いている今、もう12.7がリリースされていますが、業界標準のソフトウェアなので、これからも安定した成長をしていってほしいですね。
総評
富:では最後に、総評を皆さんから聞いていきましょうか。恒吉さんから。いかがですか?
恒:ここ数年来のRock oN AWARDはガジェット系の製品もあったので、それと比べて真面目な製品が揃ったなあ、という思いです。若いバンドマンがつい買っちゃうようなものも欲しかったかも。
佐:とは言っても、minilogueやSeaboard Riseとか、「本気の遊び心」っていうのが感じられて、イノベーションのトリガーを引いている製品だと思ったよ。ソフトウェアはNeutronのように僕らが予見できないものも出てきているから、変化の兆しはあると思う。
洋:音響空間の「縦方向」がこれからのキーワードになるでしょうね。それから、今回はマイクの受賞が無かったので、来年は期待に応えてくれる製品が出てきてほしい。マイクはTech AWARDのような技術力の目新しさもいいんだけど、今回のFocalの受賞理由のように製品としての「実力」で受賞してほしい。
竹:それなら私は「直感的な操作感」です。RAVEN MTi2が実用化されてきて、Seaboard RISEの境界のない鍵盤がウケている。これを踏まえると、さらに次の新しいサーフェースが生まれてきそうな予感がします。ATV aFrameもとても楽しみです。
谷:そうですね。僕もApogee ElementのコントローラーApogee Controlや、Seaboard RISEとか、直感的にアイディアを形にしていくものが増えて行くような気がします。
渋:僕は「DAWに期待」したいです。DAWってこれからどういう存在になっていくのかなって。iOSやAndroidとの親和性も要になってきているし。どのブランドもマルチプラットフォームの潮流は避けて通れないでしょう。
佐:今年の新製品は「ワイヤレス」のものが多かったですね。この流れで面白いものが出てくることを期待したい。
富: NxとNeutronがこれだけ大きな反響があって受賞したということで、本格的に制作をしたいけどまだ十分な設備が揃えられない人(初心者とは違う)が、もっと高いクオリティで作品を仕上げられるような、そういう製品が出てくると、個人的にも嬉しいです。
恒:Neutronのように、コンシューマーが体験を通して学んでいけるようなソフトウェアが大きな存在になっていくでしょうね。職人さんが過去に培ってきた技術が作品の中だけでなくてユーザーの中に残っていくような、ノウハウが伝わっていくような製品というのは素晴らしいと思います。「知っている人しか使えない」から「知らなくても使える」という、今の時代を象徴しているのではないでしょうか。
記事内に掲載されている価格は 2017年1月24日 時点での価格となります。
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