あなたの楽曲制作にヒントをもたらす数々のノウハウ記事に加え、膨大な動画コンテンツは制作トレンド&Tipsの集大成!
~ VECLOS MSA-380S インプレッション by 三船雅也 (ROTH BART BARON ) ~
今回、2週間ほど、アクティブニアフィールドモニターのVECLOS MSA-380Sをお借りしました。使用感や感想などをここで皆さんにご紹介できたらと思います。私は現在、新作アルバムのレコーディングをスタートしていて、プロフェッショナルな外部スタジオと自分のプライベートスタジオを往復する日々を送っていますが、そこにMSA-380Sを持ち込み、作曲、レコーディング、ミックスに使ってみました。
VECLOS MSA-380S 特徴
明確な定位と立体感のある音場、クリアなサウンド
高い剛性によりクリアなサウンドを実現する「真空エンクロージャー®」
MSA-380Sの「真空エンクロージャー」は、ステンレス二重構造のシリンダー形状(円筒)になっており、内筒と外筒との間は1,000万分の1気圧以下の高真空状態になっています。真空層は大気より圧力が低い状態のため、大気との圧力差により内筒と外筒の表面に張力が発生します。これによりエンクロージャーの剛性が高くなると共に、優れたダンピング特性を発揮し効果的に振動を減衰させます。また、音は空気の振動で伝わりますが、真空層には音の振動を伝える空気がほとんどないため、内筒から発生するレゾナンスに対して優れた遮音性を発揮し、ノイズ感の無いクリアなサウンドを実現します。
真空の効果は真空層の厚さに関係がなく、1mmの真空層でも効果を発揮します。サーモスが長年に渡り培ってきた高度な金属プレス加工により、最も薄い部分では1mm以下の間隔を保つ容器を可能としました。従来の木製キャビネット(MDF)よりも側面の厚みを約1/8と薄くしながら高い剛性を実現。同じ容積でも、真空エンクロージャーであれば必然的に外寸のサイズをコンパクトにすることができます。また、エンクロージャーの厚みを限りなく薄くしたことで内部の容積を最大限に確保し、豊かな低域再生を可能としています。
明確な定位と立体感のある音場を再現するステンレス製メタルシリンダー
「真空エンクロージャー」に使われているステンレスは、高い剛性が不要な共振を抑制し明瞭感と定位感を向上させます。しかし、音響的に優れている反面、アルミニウムなどの他の金属に比べて硬く、加工が難しい金属とされていますが、サーモス独自の高度な金属プレス加工と溶接のノウハウを駆使し、新たにシリンダー形状のエンクロージャーを開発しました。コンパクトなフロントバッフルとラウンドのあるシリンダー形状が不要な音の回折を低減し、明確な定位と立体感のある音場を再現します。スピーカーユニットの取り付けには魔法びんの止水技術を応用し、エンクロージャーに直接ねじこむ方式を採用。ねじこみパーツとの接点にシリコンを配置することで、不要な振動の抑制と高い気密性を確保し、より忠実な再生に寄与します。
ニアフィールドの理想をコンパクトに凝縮
理想的な点音源を再現する専用開発の52mmフルレンジスピーカー
ニアフィールドでの使用を想定し理想的な点音源化を実現するため、パイオニア製フルレンジスピーカーユニットを採用。軽量で高剛性のピュア・アルミ振動板と広帯域再生技術「HSDOM」※を組み合わせ、再生帯域を広げるとともに金属振動板固有の音を抑えることで、伸びのあるクリアな音を再生します。
※ 「Harmonized Synthetic Diaphragm Optimum Method」の略。振動板の素材、形状、エッジなどを、コンピューターによる有限要素法を用いて解析することにより、ピストンモーションと分割振動をバランスよく組み合わせ、高域再生を可能にします。
高速な低域レスポンスを実現するバタフライダンパー&バスレフポート
シリンダースプリング状のバタフライダンパーを採用し、小口径ながら余裕のあるストロークを実現。レアアースマグネットを使用した磁気回路と大口径ボイスコイルにより、豊かでスピード感のある低域再生を可能としました。また、コンパクトなキャビネットで効率よく低域を再生するためバスレフ方式を採用。ポート開口部をラウンド形状とすることで空気抵抗を低減し、濁りの無い低域を実現しています。更に、パイオニアとの技術提携によるチューニングにより音質の最適化を行っています。
最適化されたフルバランス構成のアンプ
コンパクトでありながらフルバランス構成の増幅回路を採用。厳選されたオーディオ用部品を使用し、安定した出力と低ノイズ、低歪みを実現します。ディスクリート構成の電圧増幅段には、オーディオ用に開発されたハイスピードで低歪率、低ノイズ、広帯域なFET入力オペアンプを採用。出力段には大電流のパワーMOSFETに加えて、音質と電力効率に定評のあるテキサス・インスツルメンツ製Class-DアンプICを採用。低歪みとハイスピード化、そして信号に対して忠実にスピーカーユニットを駆動させます。電源回路には、オーディオ用アルミニウム電解コンデンサとトロイダルコイルを採用。更に、アンプICの電源ノイズがオペアンプブロックに入り込むのを防ぐために、PCBパターンを最適化し電源ライン前段にアイソレーションコイルを配置するなどクリーンな電源供給を実現しています。また、各回路に独立して電源を供給することで歪みのないクリアな高域を再現します。
アンプを内蔵するベース部分には、アルミニウムよりも剛性の高いマグネシウム合金を採用。振動に対する高い減衰特性を持ち、ノイズを抑えたクリアなサウンドを引き出します。また、マグネシウム合金はオーディオ的にも優れた金属であり、音質劣化の要因となる電磁波に対する高いシールド性能と放熱特性優れ、アンプを効率よく安定動作させます。
スピーカーの角度調整が可能なチルトスタンド
最大45°まで、5°刻みで角度調整が可能。ニアフィールド環境において、最適な設置ができます。
小さな個体なので、正直、「正確な音は出ないだろう」と斜に構えた予測をしていたのですが、予想を裏切りなかなかパワフルなサウンド。最初に自分とスピーカーの位置関係を理解し、このスピーカーと会話できる良い位置を見つける必要があります。音のチューニングが繊細な作りゆえに、気持ちよく鳴らせる角度を探すのに少し苦労しましたが、自分の耳をもって位置探しに慣れてしまうと、一見ユニークなルックスに反し、中身はとても真面目に作られていていることをすぐに理解しました。
音の正確性、切れ味の良い残響、エフェクトのかかり具合がわかりやすく判断できます。僕のスタジオでは、メインスピーカーとして、周波数に関し高い方から低い方までフラットに出るFocal solo6beを使っていますが、高解像度の反面、うわものトラック、ドラムマシンの音に対して少し反応が遅かったり、パンの位置がつかみにくいところがありますが、VECLOS MSA-380Sの場合、独特なステンレス材質と真空エンクロージャーの関係からか、独特の粘り気みたいなものがウォームなサウンドを作るのにひと役買っていて、音の反応が良く耳に返ってきます。中音域に特徴ある少し固めのしっかりさを持ちながらも、それを包む、全体として「しっとり」とした音が特徴です。
僕の作業は作曲とアレンジがメインなので、正確すぎる硬めのスピーカーやハイの音がきつめに出てくるスピーカーは聴き疲れしてしまうので苦手なのですが、VECLOS MSA-380Sには独特の暖かさと音の角の丸さがあり、正確性と耳疲れのしなさが共存。かつ、過度な低音のブーストや高音の痛さもなく僕の好みのサウンドです。自分の音楽を聴きながら気持ちよく演奏ができ、新しいアイデアが浮かんできそうで気に入りました。音質は非常にモダンで解像度が高く、シンプルな天井の高いコンクリ打ちっぱなしのような空間にVECLOS MSA-380Sを持ち込んで、ドイツ的な音響、エレクトロサウンドを作ったら、「硬質で低温度な、純度の高い音が作れるなぁ」と妄想が膨らみました。それも試してみたいものですね。
持ち運びも簡単ですね。アクティブタイプなので電源を入れて、オーディオインターフェースからケーブルをつながるだけで、すぐセットアップができます。プロユースとしても使えるし、DTM初心者用の最初のスピーカーとしても、日本の住宅事情を考えると戦力になる製品です。自宅環境で大きな音をで鳴らすことが不可能な方にもお勧めしたいスピーカーです。仮に、将来的に自分の機材がステップアップしていっても、このVECLOS MSA-380Sはモニタースピーカーとして、ラインナップに残ってゆく良品だと思います。
僕が制作ツールをチョイスする際の基準は、「制作没入感を提供してくれること」や「胸をドキドキさせてくれること」なんですが、VECLOS MSA-380Sを難しい事は考えずに音楽制作テーブルにポンと置き、音が気持ち良く鳴る場所をさっと探せば、すぐに制作モードに没入することができました。サウンドの個性は妙にしなやかでセクシー。独特なウォームなサウンドにいちどハマってしまうと癖になる感じです。部屋のアンビ感を意識して配置してあげると、ナチュラルなサウンドになって、さらに気持ちよく鳴らせると思います。VECLOS MSA-380Sは、感性的に胸がドキドキする音がするんです。テーブルに置いて圧迫感がないのも、クリエイティブにおいて非常に有利なデザインなので、クリエイティブのアーリープロセスを支える素晴らしいスピーカーだと思います。
VECLOS MSA-380S ★Rock oN限定50%オフ!キャンペーン中
記事内に掲載されている価格は 2019年7月19日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ