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profile

井内啓二

桐朋学園大学にてピアノを学ぶ傍ら、在学中よりヴァイオリニスト中西俊博氏の元で劇伴のいろはを学ぶ。その後は映画、アニメ、ゲーム、CMといった数々の映像作品に携わり楽曲を提供中。

■ 近年の代表作
アニメ
「BTOOOM!」
「史上最強の弟子ケンイチ」
「アウトブレイク・カンパニー」
「ワンピース新世界篇」
「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」
「ヘヴィーオブジェクト」

映画
園子温監督作品「地獄でなぜ悪い」

ゲーム
「PS VITA OS&内蔵アプリ音楽」
「グランツーリスモ5&6」他

information

現在、来年~再来年に公開となるアニメとゲームの音楽を作曲中です。
詳細をお伝えできるのは暫く先のこととなりそうですが、いずれもオーケストラを中心としたスケールの大きな作品となりそうですのでどうぞお楽しみに!


ANALYSEホームユースに非常に適していると思います

img_03数年前、モニタースピーカーの新調を検討しているとエンジニアの井野健太郎君に相談を持ちかけたところ、私の音楽の方向性を考慮してくれた上で幾つかの候補をリストアップして頂き、折角なので視聴も付き合うよ、と某代理店にお邪魔した際、担当者の方が「そういえば今度、こんなのが出るんですよ」と紹介されたのが『KSdigital C-8 coax』でした。実は当時主流であった某メーカーの別モニタースピーカーを購入するつもりで訪れていたのですが、「折角だし視聴させて頂こうか」と聴かせて頂いたところ、非常に良い音に驚かされ、半日近く井野君と様々なスピーカーを視聴した結果、何故か付き添ってくれた井野君までも購入してしまったという思い出があります。

img_04特徴としては、やはりツィーターとウーファーが同軸にあるので、設置場所やリスニングポイントによるスイートスポットがそれほどシビアではなく、ホームユースに非常に適していると思います。加えてこのサイズにしては非常に大きなウーファーが搭載されていることが一目でわかる通り、豊かで自然な低音が再現されます。以前は低音の確認にはヘッドホンを併用していたのですが、現在はその必要性が無くなりました。それでいて、低音に嫌なこもりも無く更に繊細な高音と共存できているのでオーケストラを用いた作品を書くことが多い僕にとって非常に良いモニタースピーカーだと思っています。

FUSION自宅に居ながらじっくりと考えられる環境を与えてくれた

img_02KSdigital C-8 coaxを導入してから、明らかにスコアの書き方が変わった点が1つあるのですが、それは5弦のコントラバスを多用するようになった事です。シンセ音源と違って生楽器を用いて表現する音楽は、どうしても最低音と最高音の制約が付きまとうのですが、基本的に最低音も最高音も、あらゆる楽器において殆どは「不快で汚い音」が鳴るんです。低域を担当する楽器が、その楽器の最低音付近を演奏するとピッチに然程影響はない反面、あまり大きな音が出せません。そこへ更に低域のモニタリングが明確に行えない環境となってしまうと、5弦コントラバスの拡張音域であるC0~D#1の判別が非常にしづらい為、4弦コントラバスと別の楽器を用いた工夫をして対処していました。(それはそれで音楽的な解決策としてはとても正しいのだけど)

私がオーケストラを用いた音楽を書く時、如何に「実音と倍音を混ぜ合わせてイメージに近い音像を作るか」という点に最も注意を払います。高域の倍音はとても判別しやすいので、ピッコロを加えるか否か、といった選択肢が生じた場合はあまり悩まず決定できるのですが、低域となると余程の経験値がないと「どんな低音が頭の中で描いている理想の音像か」という悩みに行き当たります。それを自宅に居ながらじっくりと考えられる環境を与えてくれたので、表現できる音の微妙な色彩をより細かく書き分けるようになったように思います。

SUGGESTION現行モデルで既に完成している印象が強い

現行モデルで既に完成している印象が強いので、改善点が見当たらないというのが正直な感想ではあるのですが…。KSdigital C-8 coaxを視聴した際、一回りサイズの小さいKSdigital C-5 coaxも視聴したのですが、その時の印象は低域のボトムがやや薄い印象でした。C-8と比べてウーファーの大きさがかなり小さくなっているので当然かもしれません。となると、C-8よりも一回り大きなサイズのモデルを視聴してみたいですが、うーん…、大きくすれば良い音になるかどうかは別問題ですから、やはり現行モデルで満足としておきます。


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KSdigital
C8-Coax
¥ 453,600

小音量/小スペースで威力を発揮する、日本の住宅環境にマッチするリファレンスモニタースピーカー
製品仕様
  • パワー:80 W + 180 W(最大SPL: 106dB)
  • イコライゼーション:ベース/ハイトーン・チューニング(±6dB)
  • サイズ:高240mm x 幅240mm x 奥300mm
  • 重量:8.0kg
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PLUS1 ACCESSORY

img_05・NotePerformer
Sibeliusの拡張音源として発売されたサードパーティ製の音源です。常々オーケストラを用いた作曲をしていると「このテンポと強さだとマルカートとデタシェどっちを加筆しようか」といった細かな悩みが連続します。DAW上で高品質なサウンドライブラリーを用いて検討しようとするも、これらの音源は基本的にプレイバックサンプル形式を取っているので、テンポや強弱といった音楽性とは関係無しに発音されてしまう、といった致命的とも言える弱点があります。これを何とかDAW上で整合性を取っていくと、今度は現場で通用しない譜面になってしまい音楽性が薄れてしまう場合があります。

そこで「スコアリングソフトの音源を音楽的に拡張しよう」と半ばコロンブスの卵的な発想で発売されたのがこの「NotePerformer」です。確かに近年のハイレートでサンプリングされた各種オーケストラ音源と、純粋な音質比較をすると足元にも及ばない音源ではあるのですが、特筆すべきは、スコア上に書き込まれた様々な表現記号を音楽的に再現してくれること、に尽きます。

例えばメゾピアノと書き込んだパートに、dolceと加えると、音色も追従してプレイバック時に変化するといった具合です。魔法のような再現性を伴いながら、2万円を切る低価格というのも非常に魅力です。音色の品質を高めるのは演奏家の役目で、その生み手となる作曲家のイマジネーションは作曲家の脳内で作り出すべき、とも取れるメーカーの哲学に(勝手な独自解釈ですけども)とても共感すると共に、その匙加減が絶妙と思わされる製品だと思います。NotePerformerを導入してから、生楽器のみで完成させる楽曲に関しては、スコアをSibeliusで書いてサウンドチェックをNotePerformerのみで確認し、問題が無ければそのまま写譜に回してしまうことが増えました。DAW上でモックアップを精巧に作り上げる事も昨今の現場では重要な要素の一つではありますが、現場で作曲家に代わって演奏して下さる偉大な演奏家の方々から、より豊かな音楽性を引き出す為のスコア記載も決して軽視してはいけない要素です。Sibeliusユーザの方は導入検討してみては如何でしょうか。