1. はじめに
  2. ボリュームの調整
  3. パンニングの調整
  4. イコライザーの基本概念
  5. イコライザーについて 2 帯域の把握壱
  6. イコライザー 応用テクニック 1
  7. イコライザー 応用テクニック 2
  8. コンプレッサーについて 1 基礎編
  9. コンプレッサーについて 2 パラメーター編
  10. コンプレッサーについて 3
  11. コンプレッサーについて 4
  12. コンプレッサーについて 応用設定編
  13. ゲートでサウンドの余韻をコントロール
  14. 『歪み』によるサウンドのコントロール
  15. ディレイで奥行きをコントロール 基本編
  16. ディレイで奥行きをコントロール 応用セッティング編
  17. リバーブによる空間表現 基本編
  18. リバーブによる空間表現 設定編
  19. センドリターンの基本概要
  20. センドリターンの応用テクニック
  21. サウンドをまとめるテクニック 1
  22. サウンドをまとめるテクニック 2
  23. ボリュームのオートメーション
  24. SEトラックのミックス
  25. マスタリングの概要
  26. MS処理
  27. 音圧をあげるマキシマイザー
  28. MS処理におけるEQ/コンプの適用
  29. マスタートラックのエフェクト処理
【1】「はじめに」

はじめまして。
 これから毎週金曜日のメールマガジンにて当コーナーを担当させていただきます。 金谷 樹(カナヤ タツキ)と申します。 僕は現在、スリープフリークスというオンラインDTMスクールを運営しており、 その中でDTMの講師も担当させていただいております。  当コーナーのコンセプトはWaves製品を使用した「ミキシング」 ここにフォーカスを当てた内容で進めていきます。

(クリックで拡大)

普段の仕事では、ユーザー様のご意見を聞ける機会に恵まれているのですが、 その中で、解説要望と、ご質問の多いカテゴリーが「ミキシング」です。 その理由は、音楽理論やDTMソフトの解説に比べ、公開されている情報量が少ないこと。 「音程」「リズム」がメインとなる作曲と異なるスキルが必要になるためと思っています。 実はミキシングに対しても「音程」「リズム」がかなり関連してきます。(この辺りも連載の中で記載していきます) しかし、意識をしなくてはこれら関連性を感じられる機会が少ないのではないか?と思います

当コーナーでは、上記2つの理由を考慮した上で、 ミキシングに対する敷居を下げ、頭の中のサウンドを形にしやすくするということを目標にしていきます シンセサイザーが好きな方、楽器演奏が好きな方、広く言ってしまうと音が好きな方。 興味を持っている項目がミキシングに繋がっていく。その楽しさをお伝えできれば幸いです。 「解説製品に関して」 この講座の中で使用していく製品はWaves社「Sound Design Suite」が中心となります。


非常にバランスのとれたプラグインが多数収録されており、 高クオリティな作品を仕上げるには十分です。 僕がDTMを始めた当初、これらプラグインを揃えようとすると、20万円近くの投資が必要だったと記憶しています。 何と言いますか、羨ましい気持ちでいっぱいです(笑) 現在はDAWソフト抑えられており、コスト面の敷居も相当下がってきていると感じます。 これを期に是非ミキシングにチャレンジしていただければと思います。

今回の最後に それでは次週から本講座へ入っていきます 最初に解説を行う製品は「PZA Anakyzer」です トラックの周波数、音量、定位を一目で確認できるプラグインで、 ミキシングだけではなく、アレンジの際にも活躍する頼もしい存在です。 この「PZA Anakyzer」を把握できていることで、 それ以降の解説がより理解しやすくなります。 それでは次週よりご期待ください。 ご視聴いただき、ありがとうございました。


金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
2008年 : クリエイターの活動と並行し、個人でDTMスクール運営する。
2009年 : スクールを法人化し、株式会社スリープフリークスを設立。
「とにかくわかりやすく伝える」ことをモットーとし、現在まで500名を超えるDTMユーザーのレッスンを担当する。
2012年 : YoutubeにてDTMノウハウの公開を開始、16,000人を超えるチャンネル登録者数を獲得している。 チャンネル登録はこちらから>>

【2】ボリュームの調整

前回のご挨拶に続き、早速、ミキシングのお話に入っていきましょう。 当コーナーを進めるにあたって、簡単なサンプルトラックをご用意しています。

「素材のダウンロード」>> http://sleepfreaks-dtm.com/mixing-download/

sample1

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

まずは再生を行ってみてください。 そうです。メチャクチャですよね(笑 ミキシングでとても大切な「ボリューム」「パンニング(左右の場所)」が崩壊している状態です。 これでは何を主張したいのかもわかりません。最初に「ボリュームバランス」をとっていきましょう。

はじめに全トラックのボリュームを最低まで落とします。 当然、楽曲は無音になります。 次に基準となるトラックのボリュームを上げます。 この基準トラックに厳密な決まりはありませんが、 楽曲を支える「ドラムトラック」から行うとまとまりやすいです。 ここは「1_Kick」から行ってみましょう。

ここでコツがあります。 これから重ねていくトラックは、「1_Kick」を基準としボリューム調整されることとなります。 「1_Kick」のボリュームが大きすぎると、 トラックが重なってきた際に、マスタートラック(全体音量)で音が割れてしまいます。 音が割れてしまうと、正確な判断ができません。 そのため「1_Kick」はインジゲーターの中央(-15db~-17db辺り)に設定しておくと ちょうど良い感じになることが多いです。

その後に他のトラックを足していきます。

・「1_Kick」の後は、「他ドラムキット」もしくは「8_Bass」を調整するとまとまりやすくなります。

・ボーカルの設定を最後までとっておくと、楽曲へ馴染みにくくなることがあります。 その場合、音程楽器トラックが2つ3つ入った段階でボーカルトラック「20_Vo_Main」を調整してみてください。

・トラックが重なってきた際に「1_Kick」「8_Bsss」「2_Snare」がしっかり聞こえてくるか?を気にしてみてください。

sample2

どうでしょうか? 赤で囲んだマスタートラックもクリップがつきません。 このボリューム調整を行うだけでも、 曲として成り立ち、何を聴かせたいのかが見えてくるはずです。 ここでの注意点をあげるとすれば、完璧主義にならないことです。 これで完璧になるのでしたら、このコーナーはこれで終わってしまいます(笑)


次に左右の定位「パンニング」を調整していきましょう。 ここでようやく「PAZ Analyzer」の登場です。ご期待ください。

今回もご精読ありがとうございました。

金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
2008年 : クリエイターの活動と並行し、個人でDTMスクール運営する。
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2012年 : YoutubeにてDTMノウハウの公開を開始、16,000人を超えるチャンネル登録者数を獲得している。 チャンネル登録はこちらから>>

【3】パンニングの調整 

前回の「ボリューム調整」に続き、 各トラックの居場所を整理する「パンニングの解説」へ入っていきます。 ここで「PAZ Analyzer」の登場です。

サンプルトラックのダウンロードは こちら >> からお願いします。

まず「PAZ Analyzer」をマスタートラックのインサートへ適用し、再生を行ってみてください。 トラックを分析することができるプラグインです。 最終的には耳と感覚で判断すべき項目も多いのですが、 これらはご自身のモニター環境により左右されます。 こうして目で特性や傾向を確認することで、 より客観的にサウンドを把握することができます。 そして、「PAZ Analyzer」で注意したい点が左図のような適用場所です。

DAWのインサートは「上から下に音が流れる」ということが基本です。 この場合「PAZ Analyzer」に表示されるのは、「Q8」を通った後のサウンドとなり、 その下「RCompressor」を通ったサウンドは表示されないこととなります。 それではパンニングを行ってみましょう。 サンプル楽曲は一部トラックを除き、全て中央に配置されています。 そのため 「PAZ Analyzer」の定位部分でも中央にサウンドが集中していることが確認できます。 この部分の表示が左右に広がるほど、それに比例しサウンドもステレオの広がりが出てくるということです。 このパンニングに関しても決まりはありませんが、 今回はいくつかのコツを参考に調整を行っていただければと思います。

更に似た周波数特性を持つ楽器を左右に離して配置してみましょう。 音域が整理され、遥かに聴きやすくなるはずです。 例えば「20_Vo_Main」を上記で中央に指定していました。 「PAZ Analyzer」で「20_Vo_Main」周波数を確認してみましょう。

この際は「20_Vo_Main」を「ソロ」にして確認を行います。 次に同じ中央に配置されている、「12_Rif Synth」を確認してみましょう。 傾向が似ていますよね? そして「15_Guitar」も似ています。 ということは「12_Rif Synth」を左右どちらかに振ることで住み分けが行いやすくなります。 似ている楽器は離すということを考えると、「15_Guitar」は「12_Rif Synth」と逆に振るのが良さそうです。 整理してみましょう。

このようなパンニング関係になり、 メインで聴かせたい「20_Vo_Main」がより明確となります。 「4_Hat C」「5_Ht O」と「6_Cymbal」も同様のことが言えます。 この要領で振り分けたものが左図です。

sample1

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

アナライザーを確認してみると、 最初の段階に比べ、左右の広がりが確認できるはずです。 前項の「ボリューム」と、この「パンニング」調整をお楽しみいただき、 エフェクト適用前のサウンドをまとめていただければと思います。


次回は周波数をコントロールする 「イコライザー」へ入っていきましょう。 ここでも、この 「PAZ Analyzer」は大活躍しますのでお楽しみにしていてください。 今回もご精読ありがとうございました。

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【4】イコライザーの基本概念

こんにちは。スリープフリークス  金谷です。 前項に続き、「エフェクト」の「イコライザー」へ入っていきましょう。 この「イコライザー」は「EQ」と呼ばれることも多いですが、 「EQ」を一言で説明すると、 トラックの周波数を調整し、音色を変化させる という機能を持っています ミックスが苦手という方の多くは、 この「EQ」もしくは「コンプレッサー(音量調整)」で苦戦されているのではないかと思います この2つを把握することで、他エフェクトへの理解が深まり、 操作に対する敷居が圧倒的に下がり、ミキシングが楽しくなることは間違いありません。 是非、頑張っていただきたく思います それでは一緒に見ていきましょう

「使用イコライザー」 「EQ」には数種類のタイプがありますが、 ここでは「Waves」の「Q10」を使用していきます。 視覚的にもわかりやすく、抜群の操作性を誇るため、 初心者の方も安心して、ご使用いただけると思 一覧には、数種類の「Q」シリーズがありますが、 これは、調整することができるポイント数の違いとなります ここではポイントが最も多い「Q10」を選択してみましょう。 画面も大きく視覚的にも優れています。 また「Stereo」「Mono」は適用するトラックに必ず合わせるようにしてください。 ここでは、その効果がわかりやすいよう楽曲の「マスタートラック(Stereo)」へ適用しています

「イコライザー概念の把握」
複雑そうに見えてしまう「EQ」ですが、その概念は非常にシンプルです。 横軸(赤) : 周波数(Frequency) 縦軸(黄) : 音量(Gain) この組み合わせのみです。 まずは横軸の「周波数(Frequency)」をご確認下さい。 左から「31__62__125__250….」と数字が振られています。 この単位は絶対に覚えてください。 「Hz_ヘルツ」となります。 Hzとは、これも簡単です。1秒間に何回空気が振動するか? 「31回__62回__125回__250回….」ということです。 これには大切な法則があります。 回数が少なければ低音域。多ければ高音域。となります。 周波数の途中で「500」から「1k」と単位が変わっていますが、 これは「kHz」という単位となります。 この考え方は体重と同様です。 重さ「1000g = 1kg」 周波数「1000Hz = 1kHz」 こう考えると決して難しくありません。 縦軸は前項でも行った「ボリューム」です。 多くのエフェクトで、このボリュームのことを「Gain_ゲイン」と呼びます。 そして、この単位は「db_デシベル」となります。 中央の「0db」は変更なし。 上げると、その部分の周波数ボリュームが上がり、 下げると周波数ボリュームが下がります。 これにより音色が変わるという仕組みです。 最後に整理してみましょう。

このようになります。 この画像では、125Hzの低音域を下げ、4kHz(4000Hz)の高音域を上げているということがわかります。 Youtube動画も作成しましたので、 文章と併せてご視聴いただけますと幸いです。 『イコライザーの基本概念』動画ページへ>> の部分だけ把握していただければ十分です。 という形で本日はここまでにしましょう。 次回も「EQ」に関しての詳細を進めていきますので、 本日の概念をしっかりと復習しておいていただければ幸いです。 ご精読ありがとうございました。

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【5】イコライザーについて 2 帯域の把握

前項はイコライザーをコントロールするための基本知識を解説させていただきました。 基本概要を把握していただいた後は、実際にトラックに対して適用していきましょう。

イコライザーをコントロールする上では、 「それぞれの帯域がどのような特性を持っているのか?」 について把握する事が重要です。 この帯域に関しては、明確な定義はありませんので、 ざっくりと把握していただくだけでも良いと思います。 ここでは「Q10」の数字に合わせて区分けしています。


超低域 低音における人間の可聴限界は20Hz程度と言われています。 そのため、ほぼ聞こえない帯域となりますが、この部分の処理も重要になります。(以下で解説致します)
低域 主にキック、ベースが担当する帯域です。 他楽器にも含まれていますが、この2つの楽器をしっかりと聴かせるため適度にカットすることが多々あります。
中低域 サウンドの太さ、音程感を調整する事ができます。 サウンドがモコモコしている場合、少し下げてスッキリと聴かせることも可能です。
中域 倍音が多く含まれる領域で、サウンドのキャラクターを調整する事が出来ます。  ブーストする事で、ボーカル、リードシンセ、ギターソロなど花形トラックを目立たせることも可能です。 多くのトラックが集中する帯域のため、混雑が予想されます。 主張したくないトラックはこの部分を下げることで、他トラックに場所を譲るというテクニックもあります。
高域 音の輪郭、抜けに貢献します。 トラックが他に埋もれてしまう場合や、サウンドを明るく派手にしたい場合に向いていますが、 上げ過ぎることで、耳が痛いサウンドとなってしまうため注意です。
超高域 この領域をブーストすると、サウンドの余韻等を鮮やかに表現できる場合があります。 高域における人間の可聴限界は20kHz程度と言われています。空気感として表現される場合もあります。

「重要な低音処理」: 上記で超低域(20Hz以下)は聞こえないと記載していますが、 実は人間には聞こえないだけで、サウンド同士は影響してしまうのです。 シンセサイザーのLFOをご存知でしたら、その影響力を分かっていただけると思います。 これにより、他帯域がクリアに聞こえなかったり、コントロールし辛くなります。 そのため全トラックに対し「20Hz」以下をカットするということも、1つの手だと思います。 それでは「1_キック」を例に調整を行ってみましょう。

プロジェクトをまだダウンロードされていない方はコチラよりダウンロードを行ってください。

1_超低域をカットしています。
2_低音域をブーストし、サウンドに迫力を与えています。
3_ベースの音程が鮮明に聞こえるよう、少しカットを入れています。
4_混雑する中域を考慮し、広くカットしています。
5_アタック感、音抜けを出すために高音域をブーストしています。

処理前:sample1

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

処理後:sample2

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

今回の補足に加え、EQタイプ、文章では伝えることが難しい、 帯域ポイントの探し方の動画を作成致しました。 次回はこれらの基本概要を踏まえ、 応用EQテクニックを解説していきます。 今回もご精読ありがとうございました。 Youtube https://youtu.be/XE48yDynjjU


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【6】イコライザー 応用テクニック 1

こんにちは。スリープフリークス 金谷です。  今回は前回までのイコライザー基本編を踏まえ、一歩進んだ応用テクニックの解説へ入っていきます。 解説サンプルは下記リンクに用意しています。 これまでの解説で、まだ素材をお持ちでない方はダウンロードをお願いします。

サンプルダウンロードはこちらから!

「トラック調整時の注意点」: 各トラックを調整していく上で非常に大切な点があります。 それは複数のトラックを同時に聴きながら調整することです。 これはイコライザーに限らず、ミックス作業全てに当てはまります。 例えば、基準となる「キック」の調整が終わった後、 「スネア」の調整に移る場合、「キック」を聴きながらスネアを調整しています。 その後に調整するトラックは「キック」「スネア」を聴きながら調整していきます。 それはなぜか? 単体で良いサウンドができたとしても、全体で聴くと良いとは限らないためです。 サウンドが浮いてしまったり、音域がぶつかり合って分離しなくなったり等、 予期せぬ問題が起こってしまいます。 実際に組み合わせるトラックを聴きながら調整を行うことで、 そういった問題の多くを未然に防ぐことができます。 トラックによっては大胆なカット処理を行うものもあり、 単体だと貧弱に聴こえても、ミックス全体で聴くと全く問題がない上、 他のトラックの聴こえ方がよくなるというケースが多々あります。 (この後にご紹介するハイハットのローカットはその良い例です。) このように、複数のトラックを同時に聴きながら調整していくことは、 ミックス全体を的確に仕上げるためのアプローチと言えます。

「ローカット」: 前回も少し触れた、サウンドの不要な低域をカットする処理です。 どこまでを不要とするかはトラックによって違ってきますが、 中には、低域の重要性が低いものも存在します。 例えば「4_Hat C」「5_Hat O」をアナライザーで確認してみます。 低域がほとんどありません。この場合、バッサリとカットしてしまって良いでしょう。 無いものを削っているようにも思えますが、実はわずかにその帯域が含まれています。 各トラックに対してこの処理を行っておくことで最終的な仕上げに差が生まれます。

「低域は聴き取りにくい」 またまた低域の話になってしまい恐縮ですが、 人間の耳の構造上、最も聴きとることが苦手なのが、実は「低音」なのです。 そのことを端的に表したものとして「ラウドネス曲線」というグラフが有名です。 人間が「帯域ごとに同じ音量と感じるために必要な音量」を表したものです。 青線で囲んだ低域部分をご覧いただくと、他の帯域に比べて明らかに音量が必要であることがわかります。 音楽を始めた当初、ボーカルやギターの音は聴き取れても、 ベースの存在がよくわからなかった、という方も多いのではないでしょうか? それは、そもそも人間が低域に対して鈍感なので、仕方のないことだったのです。 一方で、ミックスにおいてドラムとベースが特に重要と言われるのは、 全体の音量に占める割合が多いからです。 また上記の理由から、 他のトラックはなるべく「キック」と「ベース」に帯域を譲るという理由もわかっていただけると思います。

「トラック同士を分離させる」 それでは、同じ低域同士の「キック」と「ベース」の住み分けはどのようにすれば良いのでしょうか?

青く囲んだポイント「2」「3」をご確認下さい。 ポイント2_「Kick」で上げている帯域を「Bass」で下げています。 ポイント3_「Bass」で上げている帯域を「Kick」で下げています。 このように低域の中でも譲り合いを行っています。

調整前:sample1

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

調整後:sample2

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

もちろん、素材や聴かせ方によって、 これらの帯域が逆になったりすることもあります。 しかし、この考え方と処理方法はサウンドの分離感を出す際の基本となります。 次回はこの分離に関して、 帯域の探し方と調整テクニックをお届けしていきます。 今回もご精読ありがとうございました。

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【7】イコライザー 応用テクニック 2

こんにちは。スリープフリークス 金谷です。

前回はラウドネス表を含め、少し難しいお話になってしまいましたが、 低域の処理が非常に大切だということをご理解いただけたと思います。 今回も引き続き、クオリティを高めるために欠かせない、イコライザーテクニックをご紹介していきます。

帯域の”被り”を探して対処する: 前項の「キック」「ベース」のように一方の重要な帯域をもう一方も強く持っていることで、 両者のサウンドが不鮮明になってしまうことを”被り”と言いますが、 これをイコライザーで緩和することができます。 この考え方は「ギター」と「ボーカル」、「シンセ」と「ベース」など様々なトラックに該当します それでは、”被り”のある帯域はどのように探していくのでしょうか? まず被りが発生しやすいのは、 演奏している音程が似ているトラックです。 サンプル楽曲の「10_PAD」「12_Rif Synth」を例にしてみましょう。 この2トラックは被りが発生している可能性が高いです。 そこで、「12_Rif Synth」へイコライザーを適用します。

両トラックが鮮明になっていることが確認できると思います。

処理前:sample1

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

処理後:sample2

※ 初回再生時の音量にご注意ください。


ピークを探してカットする: 「ピーク」とはサウンドの中で突出して強い帯域を指します。 この部分を抑えることで、他トラックとの被りを防ぎ、馴染みを良くすることができる他、 全体の音圧にも関わってきます。 例として「11_PAD 2」を聴いてみましょう。 まずはトラックのサウンドです。

少し耳に痛いサウンドになっていることを感じていただけたかと思います。 このような場合、耳馴染みが良いように高音域のピークを落としていきます。 結果は、以下の通りです。 マイルドになり、聴きやすくなりました。

処理前:sample3

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

処理後:sample4

※ 初回再生時の音量にご注意ください。


ビンテージEQを使用する ここまでの解説は、非常に扱いやすく、グラフィカルに表示される「Q10」を使用してきました。 この扱いに慣れてきたという方へお試しいただきたいのが、ビンテージEQを再現している「V-EQ」です。 当製品は「Sound Design Suite」にも収録されています。

帯域を上げ下げするだけなのに、なぜ違うEQが必要なの? そう思われる方もいらっしゃるかと思います。 実は、イコライザーにはその数だけ様々な特性があります。 主に「Q幅」の設定が異なると言われていますが、中には独特の倍音付加効果を持つものもあります。 そのため、例え帯域設定を同じにしたとしても、出力が異なってきます。

「Q10」はかなり素直なイコライザーであるのに対し、 「V-EQ」は若干癖がある特徴的なサウンドを持っています。 また、「Q10」のような帯域のヴィジュアル表示に慣れていると、 少しとっつきにくく感じられることでしょう。 しかし、調整の考え方は同様で、 これまでの内容を把握していらっしゃる方にとっては、難しいものではありません。 サウンドの選択肢を増やすためにも、是非チャレンジしていただきたいと思います。 「V-EQ」の操作方法と「Q10」を比較した動画を作成しました。 是非、ご参照ください。

動画を視聴する>>

次回はいよいよ「コンプレッサー」へ入っていきたいと思います。 音量のダイナミクスや音質を整えるコンプレッサーは、 EQとともに必須のエフェクトと言えます。お楽しみに!
今回もご精読ありがとうございました。


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【8】コンプレッサーについて1 基礎編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前項までの「イコライザー」の次は、「コンプレッサー」の解説に入っていきます。 コンプレッサーは音圧を上げるだけではなく、音質にも様々な変化を与えるため、 ミキシングには必要不可欠なエフェクトと言えます。 イコライザーに比べると効果が実感しにくいと言われていますが、 各トラックに適用した場合、圧倒的な差が生まれます。

「コンプレッサーとは?」:
英語で”compress”とは、「圧縮する」という意味です。 その名の由来の通り、 音量が大きな部分を低減し、音量が小さな部分との音量差を縮めるのが コンプレッサーの役割です。 画像はわかりやすいように単純化してありますが、 このような変化が起きると覚えておいてください。

「なぜ音圧が上がるのか?」 前述のように、「コンプレッサー」は音量が大きい部分を低減します。 もちろん、それだけだと全体の音量は小さくなります。

では、なぜ音圧が上がるのか?

DTMで表現できる音量の限界は「0db」です。 これを超えてしまうと「クリップ(音が割れてしまう)」が起きます。 これはプロもアマチュアも、どのような機材を使用したとしても、同様の条件です。 このことから、いかに「0db」の中で音量密度を高めるか? が「音圧」を決める要素ということになります。 右上記の図をご覧ください。

コンプレッサーを適用することで、最大音量が低減されるため、 「0db」に到達するまでの余裕が生まれます。 その分、全体の音量を持ち上げることができます。 ここで注目していただきたいのは、音量が大きな部分よりも小さな部分です。 全体を底上げした分、音量が小さい部分が持ち上がり音量の密度が高くなっています。 これが音圧が上がる原理です。

「なぜ音質が変わるのか?」

ところで、なぜコンプレッサーを適用することで音質まで変化するのでしょうか? ポイントは「音量が圧縮される」ということです。 音量が大きな部分を取り除くのではなく、設定した音量まで詰め込むというイメージです。 例えるなら、 全世界の人口70億人を日本に移すと考えてください。 この際、面積に合わせて適正な人口まで減らすのではなく、70億人を日本に詰め込みます。 良いこと、悪いことを含め、様々なことが起こりそうですね。 これが音質変化です(笑) また、この音質変化は、使用するコンプレッサーにより変わってきます。 たとえ設定が同じだとしても、です。 これは製品によって、倍音成分に独特の変化が生じるためです。 「Sound Design Suite」に収録されている「RComp」と「VComp」で比較してみましょう。 微妙に周波数特性が異なっています。 これが音質の違いに繋がってきます。 サウンドの違いも確認してみましょう。

RCompのサウンド

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

VCompのサウンド

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

ここまでが「コンプレッサー」を操作する上で、把握しておいていただきたい部分となります。 次回は実際のパラメーターに関して解説を進めていきます。

今回もご精読ありがとうございました。


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【9】コンプレッサーについて 2 パラメーター編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。 前項では「コンプレッサーの仕組み」に関して解説させていただきました。

今回はコンプレッサーをコントロールしていく中で、 必須となる各パラメーターについて解説を行っていきます。 名前だけ見ると、難しそうに感じてしまうかもしれませんが、 1つずつ紐解き、意味を確認していくことで、必ず把握できるはずです。 なお、これらコンプレッサーのパラメーターはシンセサイザーやエフェクト全般にも高い頻度で出現します。 そのため、ここでしっかりと把握していただきたく思います。 それでは、解説へ入っていきましょう。 製品は「SoundDesignSuite」にも収録されている「R-Comp」を使用していきます。

「スレッショルド」

前回解説した通り、音量が大きい部分を低減し、音量差を圧縮するのがコンプレッサーです。 この際、音量が「大きい/小さい」という境界線を決めるのが「スレッショルド」となります。

スレッショルドは0db_音が割れる境界線からスタートします。 そして、スレッショルドを下げていくと、いつかは波形のピークにぶつかります。 このスレッショルド値を超えた部分を音量低減(ゲインリダクション)の対象とします。 そのためスレッショルドの値は必ず「マイナスの数字」db となります。 実際にスレッショルドを超え、低減された音量は、 中央に配置されている「ゲインリダクションメーター」で表示されます。 コンプレッサーによっては「GR」と表記されている場合もあります。 視覚的に効き具合を確認することができるため、非常にありがたい存在です。

稀にスレッショルドが「0db」になっている場合でも、 リダクションメーターが触れる場合があります。 これは、「元々の波形が既に割れている」「ソフトシンセの出音が既に割れている」場合に起こります。 どちらも最大値「0db」を超えてクリップしているためです。 この場合、サウンドが劣化しているため、良い結果とはなりません。 コンプレッサーに入る前の元音を確認するようにしてください。

「レシオ」

上記の「スレッショルド」が把握できたら、次は「レシオ」に移りましょう。 このレシオの意味は「スレッショルドを超えた音量を何分の1に低減するか?」ということです。 レシオの値が分母となりますので、レシオ値「1」では1/1となり、 ピークがスレッショルドを超えても全く低減されません。 1を超えた数値となって初めて、ゲインリダクションが発生し、コンプレッサーの効果が得られます。

この「レシオ」を「8」「12」「24」と上げていくことで、低減される音量が増えることとなります。 究極的に、レシオが「無限」という状態になった場合、 音量はスレッショルド値を絶対に超えない、ということになります。 これが、最終的な楽曲の音圧上げ使用する「マキシマイザー」というエフェクトです。 このレシオによる音質変化に関しては、 残りの「アタック」「リリース」の解説を終えた後に、実際の音作りでご確認いただく予定です。 ひとまず「コンプレッサー」によるサウンド圧縮は 「スレッショルド」と「レシオ」のコラボで生み出される、という点を把握いただければと思います。 次回は残りのパラメーター「アタック」「リリース」の解説へ進んでいきます。 よくコンプレッサーで「サウンドの距離感を調整する」と言われます。 そのキーポイントとなるのが、上記2つのパラメーターです。 どうぞ楽しみにしていてください。 今回もご精読ありがとうございました。


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金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
2008年 : クリエイターの活動と並行し、個人でDTMスクール運営する。
2009年 : スクールを法人化し、株式会社スリープフリークスを設立。
「とにかくわかりやすく伝える」ことをモットーとし、現在まで500名を超えるDTMユーザーのレッスンを担当する。
2012年 : YoutubeにてDTMノウハウの公開を開始、16,000人を超えるチャンネル登録者数を獲得している。 チャンネル登録はこちらから>>

【10】コンプレッサーについて 3

こんにちは。スリープフリークス 金谷です。

前項ではコンプレッサー内の「スレッショルド」「レシオ」に関して解説させていただきました。 この2つのパラメーターが関連しあい、音量コントロールが行われていることをご確認いただけたと思います。 これでコンプレッサーが完結できれば、どんなに楽なことでしょうか(笑)今回はコンプレッサーの主要パラメーター「アタック」の解説へ入っていきましょう。 このパラメーターがコンプレッサーを奥深くしています。 音量ダイナミクスのニュアンスをコントロールすることで、 サウンドの音質や距離感も変化させることができます。

「ms_ミリセカンド」
多くの場合、アタックとリリースは「ミリセカンド」という単位で調整を行います。 これは時間を表しており「1ms = 1000分の1秒」となります。 また、この単位は、コンプレッサーに限らず、 シンセサイザー、空間エフェクト、モジュレーション系エフェクトなど、 あらゆる場面で、登場します。 各パラメーターを正確にコントロールするためにも、必ず覚えておきたい単位です。

「アタックについて」
アタックタイムとは、スレッショルドを超えた音量が、レシオ値の比率まで低減される時間です。 値(ミリセカンド)が小さければ小さいほど、レシオ値の比率まで素早く低減され、 逆に大きいほど、時間をかけて低減されます。 これを「コンプが発動するまでの時間」と覚えている方がいらっしゃいますが、実は間違いです。 アタックをどんな値にしたとしても、コンプはスレッショルドを超えた段階で発動します。 上記の画像では「レシオ値が4」「アタック値が6ms」となっています。 この場合、スレッショルドを超えた音量を「1000分の6秒」かけて「4分の1」に低減します。 「1000分の6秒」待ってからコンプレッサーが発動する訳ではありません。ここにご注意ください。 よって、アタックの値を小さくすれば、低減される量が大きくなることがわかります。

「アタックの値」
アタックの値はどの位が適正なのでしょうか? このことについて考えてみましょう。 まず重要な事実があります。 多くの楽器はアタック部分に楽器特性が含まれています。 コンプのアタックタイムを極端に早く設定し、アタック部分を意図的に低減すると、 サウンドが後ろへ引っ込んだように聴こえるはずです。 ドラムのような瞬間的なサウンドでは、アタック部分を適度に抑えてサスティンを持ち上げることで、本来の鳴りを引き出せる場合もあります。

この画像は拡大表示した「1_Kick」の波形です。 重要なアタック部分は「約10ms以下」に存在することが確認できます。 もしサウンドのアタック感に変化を与えたいなら、アタック値を最低でも「10ms以下」にする必要があります。 逆にアタック値を遅くしすぎるとレシオ値の比率にたどり着く前に、サウンドが鳴り終えている状態(圧縮未遂)となります。 このように、「各トラックをどのように聴かせたいのか?」を考慮し、設定を行う必要があります。

「アタックの探し方」

上記の「1_Kick」はしっかりと前に出しながら太さも聴かせてたいと考えています。 ということは、アタック感に変化を与えつつも少し残した方が良さそうです。 そのような場合にお勧めしたいアタックの探し方をご紹介します。 スレッショルドを敢えて深く設定し、アタックを最小値から上げていくという方法です。 下記のように、サウンドのアタック感に相当の差が出ます。 ニュアンスにも違いが出ていますね。 今回目指すサウンドとしては「7ms」が好結果だったため、これを採用してみます。 最後に深く設定したスレッショルドを適正値に調整し、作業は完了です。

「アタックが0.50ms」

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「アタックが7ms」

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「アタックが20ms」

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

以上、コンプレッサーの中でも難しいと言われる「アタック」の解説を行いましたが、いかがでしたでしょうか? ご理解を深めていただけたならば幸いです。 次回は最後の主要ツマミ「リリース」についてしっかりと解説していきます。 今回もご精読ありがとうございました。


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金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
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【11】コンプレッサーについて 3

こんにちは。スリープフリークス 金谷です。

前項の「アタック編」はいかがでしたでしょうか? 少し難しいパラメーターでも、ひとつひとつ紐解くことで 理解を深めていただければ幸いです。 今回はこのアタックと並んで、 複雑に思えてしまう「リリース」へと解説を進めていきます。

「リリースの役割」
リリースはコンプの解除タイミングをコントロールするためのパラメーターです。 その設定により、サウンドのノリと質感が変わってきます。 コンプレッサーは、スレショルドレベルを超えた音量を、設定されたレシオ値・アタックタイムに従って低減(ゲインリダクション)しますが、 通常、音量は時間とともに小さくなり、いずれはスレッショルド以下の値となります。 ただ、スレッショルドを下回ったからと言って、 即座に動作を解除してしまうと、急激な音量変化が起こり、サウンドが不自然になってしまう可能性があります。 そうならないように、 設定した時間をかけて、コンプの効果をフェードアウトさせるのが、リリースの役目となります。

「リリースの設定」
このリリースの単位は前項のアタックと同様に 「ms_ミリセカンド」が使用されその値を「リリースタイム」と呼びます。 たとえば、リリースタイムを「100ms」とした場合、 音量がスレショルドを下回った後も、0.1 秒間はゲインリダクションが持続します。 しかし、ここで注意していただきたいのは、 その効果がフェードアウトするという点です。 レシオ値が4の場合、スレショルドレベルを超えている間は4分の1に低減しますが、 スレショルドを下回った後は、リリースタイムの時間をかけて、低減比率が減っていく(最終的には1分の1になる)ということになります。

そのため、スレッショルドを下回ったばかりのサウンドと、 下回ってから時間が経過したサウンドではゲインリダクションの量が異なります。 また、リリースタイムをある程度長くすると、 動作が終わる前に次のアタックがくる「コンプがかかりっぱなし」という状態となります。 音量にバラツキのあるサウンドをまとめたい場合には便利ですが、演奏のダイナミクスを活かしたい場合には向いていません。 特に打楽器系の場合は、音量の上下の動きが速いため、なるべく効果が一音ごとに完結する短めの設定したほうが良いでしょう。 その際、ゲインリダクションメーターの動きも参考にしてください。 メーターが下がりきった後、リリースタイムが短かれば素早くメーターが戻りますし、 長ければゆっくりと戻るはずです。 0dbに戻り切る前に再びメーターが振り切れる場合は、「コンプがかかりっぱなし」という状態と言えます。

しっかりとリダクションが戻る「60ms」 ダイナミクスが豊かです。

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

コンプがかかりっぱなしになる「600ms」 少し平坦な印象となっています。

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「リリースで音圧をコントロールする」
コンプは音圧を上げることができるエフェクトと言われていますが、 そのためには、リリースタイムを適切に設定する必要があります。 それはなぜでしょうか? スレッショルドを下回った音量に対しても、低減し続けるということは、 サウンドの大きな部分と共に小さな部分も抑えられることを意味します。 これでは音量ダイナミクスの変化が少なく、 音量を持ち上げたとしても、音圧向上効果は得られにくいと言えます。 もしサウンドに音圧を求めるならば、 アタック部分をある程度、抑えるとともに、リリースも短めに設定することで 音量差を少なくする必要があります。 その後、音量を上げることで全体の密度が高まり、 結果として音圧を稼ぐことができるという仕組みです。 以上でコンプの主要パラメーターの解説は終了です。 まずは各項目の特性、意味をしっかりと掴んでいただき、 次項からのコンプ設定例に進んでいただければと思います。 今回もご精読ありがとうございました。

以上、コンプレッサーの中でも難しいと言われる「アタック」の解説を行いましたが、いかがでしたでしょうか? ご理解を深めていただけたならば幸いです。 次回は最後の主要ツマミ「リリース」についてしっかりと解説していきます。 今回もご精読ありがとうございました。


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【12】コンプレッサーについて 応用設定編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前項までコンプの主要パラメーターを確認してきましたが、 そろそろ、各パラメーターの意味や働きを掴めてきたのではないでしょうか? 今回はまとめとして、実際にサンプルのトラックへ適用し、 その効果を確かめていきましょう。

素材のダウンロードはこちらから>>

「キックとスネア」:
両者ともにアタック感が重要で、歯切れよく聴かせたいトラックです。 第10回目で解説した「アタックの探し方」を使用して、 十分にアタック感が出るポイントを探しました。 圧縮比率のレシオはコンプでも一般的とされている「4」に設定し、 スレッショルドでゲインリダクションが「-3db」を超える辺りに調整しています。 そしてリリースは、次のアタックにかからないように、また、音圧感が適度に出るように調整し、 比較的早めの設定としています。

適用前 

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「ベース」

シンセサイザーで作られた、もともと音量のダイナミックが少ないベースです。 音量が非常にまとまっています。 少し整える位を目安にコンプを適用してみます。 アタックタイムは、音の立ち上がりを少しだけ残した、3msへ設定しています。 レシオを2にし、ゲインリダクション-1db~-1.5dbを目安にスレッショルドを調整しました。 また、打楽器のようには減衰しないため、リリースは長めの225msに設定しています。 結果として、音がまとまって若干重心が下がったような、非常にナチュラルなかかり具合となりました。

適用前 

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「Pad」

このトラックでは積極的にサウンドを変化させてみましょう。 冒頭にあるアタック感を敢えて潰して、のっぺりさせたいです。 その狙いから、以下のようなやや極端な設定としています。
・レシオは8
・ゲインリダクション -6~-7dbとなるスレッショルド
・アタックは最速
・リリースも長めにとり、意識的にコンプがかかりっぱなしの状態とする

適用前

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「Rif Synth」

メインのリフとなります。 フレーズの粒をしっかりと聴かせるため、アタックを残しています。 音量差を無くし、音量が小さなノートまで安定して聴こえるようにリリースを短めに設定しています。 スレッショルドはゲインリダクションが-3db程度発生する数値です。 サウンド自体をあまり変えず、演奏の安定感を出したい場合に、このようなコンプ処理を行います。


適用前

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

上記を合わせた全体ミックスは以下の通りです。

適用前

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

個々のトラックで確認していった際は、少しの差かもしれませんが、 これらがまとまると、大きな違いが生まれてきます。 このように、素材や目指すサウンドに合わせ、理由を持ってコンプ処理を行うことで、 より磨きがかかったミックスを行うことができます。 これらの設定には正解はありません。 各操作で何が起きているのかをきちんと理解することで、 ご自身の目指すサウンドを追求してみてください。 次回は新しいプラグインの解説に入っていきますが、 ここまでの知識があれば、様々なエフェクトを理解できるようになっているはずです。 過去の回も読み込んで備えていただければ幸いです。

今回もご精読ありがとうございました。


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【13】ゲートでサウンドの余韻をコントロール

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回までミキシングの基本となるイコライザー、コンプレッサーについて解説してきました。 ここまでの知識を押さえておくことで、他の様々なプラグインをスムーズに理解し、コントロールすることができます。 今回は、コンプレッサーの知識を応用できる「ゲート」を扱います。 ゲートは一定の音量以下のサウンドをカットするという働きをし、 特にドラム素材の余韻カットに役立ちます。 また、生ドラムの録音では、各オンマイクに他キットピースのサウンドが入る「被り」が発生しますので、 それカットするという目的でも使用されます。 今回はWaves「C1 Gate」を使用して、 スネアのサウンドを調整してみましょう。

「ゲートの仕組み」:
その前にまず、ゲートの仕組みについて触れておきます。 ゲートを日本語に訳すと「門」です。 門が開閉することで、必要な音を通し、 不要な音をカットする、そのようなイメージで捉えると良いでしょう。 ここで覚えていただきたいのは、低い音量が来た際に、門を閉めるのではなく、 初めは門が閉まっていて、基準値より大きな音量が来た際に門を開け、小さくなったら閉めるという概念です。 逆に覚えてしまわないよう、ご注意ください。 門の開閉を行う音量の基準は、コンプレッサーと同じスレッショルドです。 ゲートの種類によってはオープンとクローズを別々の値として設定できるものもあり、 Waves C1 Gateもその仕様となっています。では、実際にスネアにゲートを適用し、余韻をカットした結果を聴いてみてください。

スネア_ゲート適用前 

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

スネア_ゲート適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「ゲートの設定」

ゲートのパラメーターの多くは、コンプレッサーと共通していますので、これまでの知識を存分に活かすことができます。

「Attack」
前述の、最初は門が閉まっているという概念さえ分かってしまえば楽勝です。 Gate Openで設定した基準値以上の音量が来た場合に、どの位のスピードで門を開けるのか? ということです。コンプレッサーと同じ「ms_ミリセカンド」という時間単位で指定します。 このスピードが遅ければ、サウンドがフェイドインしてくるような感じになり、 特にドラムなど音の立ち上がりが鋭い楽器はアタック感が命です。 基本的にすぐに門を開ける必要があるため、最速に設定すると良いでしょう。

「Release」
こちらもコンプレッサーのリリースによく似ています。 Gate Open以上の音量が来て、門が開いた後、 多くのサウンドは時間経過と共に小さくなり「Gate Close」以下の音量となります。 その際にが門が閉まるわけですが、リリースはどの位の時間をかけて門を閉めていくのか?を決定します。 単位はおなじみの「ms_ミリセカンド」です。 リリースが短すぎると急激にサウンドがカットされ、ノイズが発生します。 逆に長すぎると、門が閉まり切る前に次のサウンドが来てしまい、再び門が開くため、 ゲートの意味が無くなってしまいます。 これは前回のコンプかかりっぱなしと同じような状態です。 実際にサウンドを再生しながら、徐々にリリースを長くして、 自然な値を探すというのが、一般的な方法となります。 以上がゲートの主要パラメーターとなります。 今回ご紹介したようなリズム系のサウンドには特に効力を発揮しますので、 ぜひ余韻の長さにもこだわったサウンドメイキングを楽しんでみてください。

「Gate Open / Gate Close」
カットする音量の基準値を「Gate Open / Gate Close」で決定します。 通常の使い方では、2つを同じ値とし、スレッショルドのように扱っていただいてOKです。 デフォルトでは「-inf」に設定されており、全音量を通します。 言い換えると、基準が甘い状態ということになります。 これを上げていくことで、徐々に通過基準が厳しくなっていき、より大きい音量のみ通すことになります。 ノイズゲートの使い方では、立ち上がりは厳密に大きな音を拾うように設定しつつ、 余韻をしっかり残したい場合もあるので、その際はCloseの値をOpenより小さく設定します。

今回もご精読ありがとうございました。


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【14】『歪み』によるサウンドのコントロール

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回のゲートはお試しいただけましたでしょうか? ドラム素材の余韻をコントロールするだけでも、印象がかなり変わってきますね。 この調子で、更にサウンドをブラッシュアップしていきましょう。 今回のテーマは「歪み」です。 歪みと聞くと、ロックに代表されるエレキギターを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、 今回はそこまで極端に音質が変化しない「サチュレーション」を中心に取り上げます。 適度な歪み具合は様々なサウンドに適用可能で、ミックスの際重宝すること間違いなしです。

「サチュレーターの適用」:
歪み系のプラグインは、多くのメーカーから様々な種類のものがリリースされており、サウンドも千差万別です。 DAW純正のプラグインの中にも用意されています。 それら全体に共通する特性として、以下のようなものが挙げられます。 「アタックが抑えられ、サウンドが太くなる」 「倍音が発生して音質が変化する」 効果を確かめるために、同じドラム素材に適用してみましょう。

元素材

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

ディストーション適用

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

元素材:図

※ クリックで拡大

ディストーション適用:図

※ クリックで拡大

Cubase純正のディストーションを適用しています。 激しい歪みが特徴で、エレキギター等では積極的に使用されます。 サンプル音源の通り、音色も激しく変化しています。 ここで注目していただきたいのは、サウンドのアタック部分です。 歪みによってアタック部分が潰され、全体的に平らな波形となっています。 続いてサチュレーションです。

サチュレーション:図

※ クリックで拡大

サチュレーション適用

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

プラグインは簡単にテープサチュレーションを得ることができるWaves「J37」を使用しました。
http://www.minet.jp/brand/waves/j37-tape/



「SAT」のツマミを上げて歪みを得ています。 サンプル音源の通り、ディストーションほど音質を変えずに、 アタックが適度に抑えられ、小さな部分が持ち上がっています。 サウンドが太くなり、安定感も感じられますね。 波形を「0db」ギリギリまで持ち上げるノーマライズを使用すると、 見た目にもわかりやすくなります。


「サチュレーションの効果」
ここまでの効果だけであれば、コンプレッサーと大差ないと思われるかもしれません。 サチュレーションがコンプと違うのは、抑えられた部分が矩形波に近い波形となり、 元のサウンドにはない倍音が付加される、という点です。 これはアナログ回路における飽和状態(クリッピング)とも言えますが、 デジタルクリップのように不快なノイズが発生することはありません。 その機材独特の味(倍音)が出てくるのです。 そういった効果をシミュレートしているのが、テープや真空管等のプラグインです。 以下の画像は、倍音のないサイン波をシンセで鳴らし、サチュレーションをやや強めにかけた場合の変化です。 あきらかに原音にはない倍音が発生しています。

※ クリックで拡大

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<サチュレーション適用後のサイン波>

※ クリックで拡大

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上記の作用が複雑に絡み合い、アタックが丸くなって曲に馴染みながらも、 サウンドに存在感やハリが出てくる、というわけです。 こういった効果はサチュレーションならでは、と言えるでしょう。 以上のように、適度な「歪み」(アナログ的なサチュレーション)は、 ミックスに音楽的なまとまりと立体感を与え、聴きやすいサウンドにしてくれます。 過去の数多くのヒット曲は、アナログ機材やテープを使用することで、自然にサチュレーションを取り入れてきました。 DAW全盛の現代でも、プラグインでその効果を得られるのはありがたいですね。 今回取り上げたドラムに限らず、ぜひボーカルやピアノ、シンセサイザー等様々なもので試してみてください。

今回もご精読ありがとうございました。


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【15】ディレイで奥行きをコントロール 基本編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

これまでは周波数や、音量に関わる基本的な処理について解説してきました。 初期段階に比べ、随分とミックスが整ってきたことかと思います。 今回は空間系エフェクトと呼ばれる「ディレイ」へ話を移していきましょう。 サウンドに広がりや立体感を加えることができ、一歩進んだミックスを行うことができます。 使用するプラグインはWaves「H-Delay」です。 味のあるサウンドとコントロールしやすさで、非常に人気のプラグインです。

「ディレイの基本パラメーター」:
ディレイを一言で説明すると、原音を繰り返すことで「やまびこ効果」を作り出すプラグインと言えます。 しっかりと使いこなすためにも、その概要をしっかりと把握しておきましょう。 「アタックが抑えられ、サウンドが太くなる」 「倍音が発生して音質が変化する」 効果を確かめるために、同じドラム素材に適用してみましょう。

このように原音のサウンドに対し、同じサウンドが遅れて追いかけてくるイメージです。 まず大切なのが追いかけてくる間隔です。 原音とディレイとの間隔 最初のディレイから次のディレイまでの間隔。以下繰り返しです。 これを一般的に「ディレイタイム(DelayTime)」と呼びます。

H-Delayでは左の大きな「DELAY」ダイアルでディレイタイムを設定します。 初期設定では楽曲のテンポと同期されており、ヤマビコのリズムがリズミカルに聴こえるようになっています。 この同期を解除することもできますが、今回は「1/8(原音のテンポで8分音符)」を指定しました。 そして「DRY/WET」という用語ですが、 今までの解説で出てこなかったのが不思議なくらい様々なプラグインで使用されます。 これも非常に簡単です。 「DRY=原音  WET=ディレイ音」の音量バランスです。 今後、その他のプラグインを使用している時に、このパラメーターが出てきた場合は、 「DRY=原音  WET=そのエフェクトサウンド」の音量バランス という風に判断してください。 パラメーターをDRYに振り切ると、原音のみとなり、Delayの効果が無くなります。 WETに振り切ると、ヤマビコのみを聞くことができます。 このWET全開はエフェクトのサウンドを追い込む際に非常に役立ちます。 まずは画像のサウンドを確認してみましょう。 「12_Rif Synth」へ適用してみましした。

Delay適用前

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

Delay適用後

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

空間の広がりや、立体感が感じられますね。 上記を設定した後は、これも大切なパラメーター「FEEDBACK」です。 ヤマビコの繰り返し回数(減衰比率)を設定することができます。

厳密に言うと、ヤマビコの音量がどの位の比率で小さくなっていくか?を決定します。 そのため、単位はパーセントが使われます。 冒頭のディレイイメージ画像をもう一度確認してください。 最初のディレイ音に比べて、次のディレイ音がちょうど半分の音量になっています。 そして次のディレイ音はその半分。ということはFEEDBACK値は50パーセントということです。 音が小さくなるのが早ければ、その分、音量がゼロになるも早くなりますので、 ヤマビコの回数に直結してくるという考え方です。 通常は「10パーセント~20パーセント」位を目安に適用すると、ナチュラルな感じになります。 FEEDBACK値を「0」にすると一回だけ返ってきます。 反対に、値を「100」にすると音量は減衰せずに1年後も鳴っているということになります。

FEEDBACK値_20パーセント

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

FEEDBACK値_100パーセント

※ 初回再生時の音量にご注意ください。


「FEEDBACK値_20パーセント」はナチュラルに、「FEEDBACK値_100パーセント」は重なりすぎてよく分からない感じです。 そしてもう一つ「FILTERS」パラメーターも調整しておきましょう。

例えば、山に向かって「ヤッホー」と叫んだ時、 返ってきたヤマビコ音が劣化していないと怖いですよね(笑) 自然界では必ず、ヤマビコ音は劣化します。 それを再現し、サウンドを楽曲に馴染ませるためのパラメーターです。 使用する際は、EQで学んだことを思い出してください。 単位もそのまま「Hz」です。

左「HiPASS」= ローカットとなり低音域を削ります 右「LoPASS」= ハイカットとなり高音域を削ります 今回はここまでとしましょう。 ディレイの仕組みを理解すると、今後の音作りも一層、楽しくなるはずです。 次回は引き続き、ディレイの応用セッティングを解説していきます。

今回もご精読ありがとうございました。


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【16】ディレイで奥行きをコントロール 応用セッティング編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回まで空間系エフェクトの「Reverb」「Delay」について解説してきました。 今回はそれらを「センドリターン」という方式で適用する方法についてご紹介します。

「センドリターンとは?」
通常、プラグインエフェクトは目的のトラックに直接インサートして適用します。 一方でセンドリターンはエフェクト専門のトラックを別途用意し、 それに対して、『エフェクトをかけたいサウンドを一定音量送ることで効果を得る』 というものです。 ルーティングの概念図で確認していただくとわかりやすいでしょう。 まずは各トラックにエフェクトをインサートして適用した例です。 続いてセンドリターンです。 各トラックのサウンドはそのままマスタートラックへ送られると同時に、 エフェクト専門トラックにも送られています。 最終的にエフェクト専門トラックの出力がマスタートラックで合流するため、 結果として各トラックにリバーブが適用されたように聴こえる、という仕組みです。

インサート

※クリックで詳細

センドリターン

※クリックで詳細

センドリターンには、以下のようなメリットがあります。

  • エフェクトが1つで済むためCPUの節約になる。
  • 同じエフェクト(リバーブ)を共有することで、同じ空間で演奏されているような統一感が出る。
  • エフェクトサウンドのみに対する編集が行える。

特に「3」の効用によってサウンドエディットの可能性が大きく広がります。

「センドリターンの適用方法」
DAW別のセンドリターン適用方法に関しては、 以下のページで解説しています。ぜひ、ご参照ください。

センドリターンの適用方法を見にいく!

センドリターンの注意点
センドリターンを使用する際に、漏れなく行っておく設定があります。 プラグイン内の「DRY/WET」を「Wet 100」にするということです。 ルーティングの概念図でもご確認いただいたように、 センドリターンは「マスターに直行する、元トラックのサウンド(=Dry)」と 「エフェクト専用トラックに送るサウンド」を一旦分岐させます。 その状態で、エフェクト専用トラックからもDryを出力してしまうと、元トラックの音量が大きくなってしまうのです。 そのため、プラグイン内の設定はエフェクト処理されたサウンド(=Wet)のみが出力されるようにすることが基本となります。

エフェクト量の調整
センドリターンの仕組みを理解していただいたところで、 エフェクト量の調整方法について触れておきましょう。「元トラックから、どの位の音量をエフェクト専門トラックへ送るのか?」 その量を決めるパラメーターを「センド」と呼びますが、それによってエフェクトのかかり具合を調整します。 当然、センド量が多ければ多いほど、 エフェクトサウンドが大きくなり、その効果が強くなっていきます。 画像は「0.00」となっていますが、 これは全く送らないという設定ではなく、現在のトラックボリューム値をそのまま送るという設定です。 数字がマイナスになると、現在のトラックボリューム値よりも少ない音量を送ります。 通常は、このマイナスの範囲内でセンド量を調整することが一般的です。 以上が、センドリターンの基本概要です。 次回以降、この概要を踏まえた解説をしていきます。 実際にやってみれば、さほど難しいものではありません。ぜひ、どんどん実践してみて下さい。

ご精読ありがとうございました。


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金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
2008年 : クリエイターの活動と並行し、個人でDTMスクール運営する。
2009年 : スクールを法人化し、株式会社スリープフリークスを設立。
「とにかくわかりやすく伝える」ことをモットーとし、現在まで500名を超えるDTMユーザーのレッスンを担当する。
2012年 : YoutubeにてDTMノウハウの公開を開始、16,000人を超えるチャンネル登録者数を獲得している。 チャンネル登録はこちらから>>

【17】リバーブによる空間表現 基本編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回のディレイに続き、今回はもう一つの空間系プラグイン「リバーブ」の解説に入っていきます。 サウンドに広がりや奥行きを与えることができるため、 ミキシングには無くてはならないプラグインです。 空間を表現するという意味では、前回までのディレイも同様ですが、 一定間隔でサウンドが返ってくるディレイに対して、リバーブは部屋やホール等、空間そのものを再現します。 少し極端になってしまいますが、右図のようなイメージです。

数多くの反響音が連続して鳴ることにより、残響効果を作り出しています。 よく「リバーブはCPU使用率が高い」と言われますが、それはこのような仕組みのためです。 そして、リバーブには様々な使用テクニックがあります。 これらを理解するためにも、まずは基本的な部分から確認していきましょう。

「リバーブの種類」
リバーブには大きく分けて2種類のタイプが存在します。

1つはアルゴリズミック・リバーブと呼ばれるもので、 空間の大きさや壁の材質等を、様々なパラメーターでシミュレーションし、 リバーブを作りだすというものです。 空間を自由にデザインできるという特徴があります。 Waves製品の場合、「RVerb」「TrueVerb」が該当します。

もう1つはコンボリューション・リバーブと呼ばれるもので、 実際に存在するホールや建物内の残響を録音したデータ「IR(インパルスレスポンス)」を使用し、 その効果を任意のトラックに適用できるというものです。 リアルで高品質な空間表現が特徴です。 この製品に関しては、弊社ウェブサイトでも記事を出していますので、是非ご参照ください。

詳しくはこちら>>

また、どちらのリバーブにも「ホール」「プレート」「ルーム」など、 定番の空間プリセットが備わっています。 これらの使い分けについては、次回以降触れていきます。 今回は「RVerb」を使用して解説を進めていきます。 なお、これから解説を行うパラメーターの多くは、他のリバーブでも共通しています。 この機会に確認しておけば、様々な場面できっと役に立つことでしょう。

「主要パラメーター」
右枠の「Wet/Dry」はディレイでも出てきましたね。 「エフェクト音/原音」の比率を決めるパラメーターです。 エフェクトを作り込みたい時は、Wet100%に設定すると効果がハッキリとわかります。 その後に原音と混ぜていくという流れです。 なお、AUXやFXチャンネルとして使用する場合は、Wet100%としておいて、 各トラックからのセンド量で効き具合を調整します。

「Early ref. 」はアーリーリフレクション(初期反射音)と呼ばれるもので、原音が壁に反射する音のことです。 アーリーリフレクションが大きければ、壁が近くて硬い空間の印象となります。 Rverbの場合、「Reverb Type」を変更することで、アーリーリフレクションの配置や特徴が変わります。

「Reverb」は残響成分の音量パラーメーターですが、 一般的にはアーリーリフレクションと対比して「Tail(テール)」と呼ばれることもあります。 相対的にアーリーリフレクションを強調したい場合、この値を下げてWetを持ち上げると効果的です。

左枠の「Predelay」は、原音が鳴ってからどの位間をおいてリバーブが聴こえてくるか?を指定します。 単位はおなじみの「ミリセカンド」で、値が大きくなるほど空間が広く、重たいリバーブに感じられます。 また、原音の輪郭を残したい場合、10ms~30ms程度に設定すると効果的な場合があります。

「Time」は残響の長さを設定します。リバーブのキャラクターを決める重要なパラメーターです。 単位は「秒」で、値が大きければ大きいほど残響が残り続けることとなります。 EDMでSE的に使用される、リバーブ感の深いキックやクラップはここを高めに設定します。

「Size」はその名の通り、空間の大きさをシミュレートするパラメーターで、 値を大きくすると、アーリーリフレクションの間隔が長くなり、リバーブの立ち上がりが遅くなります。 以上がリバーブの主要パラメーターです。 今回は音源への適用は行いませんでしたが、まずは各々の役割をしっかり覚えておいて下さい。

次回、サンプルトラックにおける実践コントロールへ入っていきます。

今回もご精読ありがとうございました。


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2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
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【18】リバーブによる空間表現 設定編

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回の内容で、リバーブの各パラメーターは把握できたでしょうか? 今回は、それらを踏まえた上で設定方法を解説していきます。 楽曲の世界観に合わせて自在にリバーブを操れるよう、更に理解を深めていきましょう。

「リバーブの種類」
ほとんどのリバーブにはプリセットが多数用意されており、 基本的な設定をベースに音作りをしていくことが出来ます。 ここでは、頻繁に使用される3つタイプを確認してみましょう。

「Hall系」
その名前の通りホール会場がシミュレートされたプリセットです。 リバーブの代名詞とも言えるナチュラルな残響で、多くの楽器にマッチします。 サウンドを馴染ませる際にも重宝するでしょう。 ピアノやオーケストラ楽器との相性もバッチリです。

「Plate系」
鉄板を使用して残響を発生させる装置を由来とするプリセットです。 残響は明るく派手なものが多いため、ボーカルやリード楽器など、 他のトラックよりも目立たせたいパートにマッチします。

「Room系」
Hallよりも狭い空間やスタジオ等の、いわゆる「部屋鳴り」を想定したプリセットです。 多くは控えめの残響とそれらしいアーリーリフレクションで構成されています。 演奏に臨場感を与えたり、かける量で距離感をコントロールする等 隠し味的な役割ですが、積み重ねることで大きな違いが生まれます。

Hall系

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

Plate系

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

Room系

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

以上の代表的な3つを把握しておくことで、 プリセット選択の際きっと役立つはずです。 なお、それぞれ「Small」「Medium」「Large」といった広さ別のプリセットもありますので、 楽曲の雰囲気に合わせて、大まかに決めておくとよいでしょう。

また、前回ご紹介した「IR Reverb」では、 実在する空間残響をサンプリングしたプリセットが多数用意されています。 ダウンロード/インストールする方法を弊社記事にて解説していますので、ぜひご覧ください。

【本物の残響を録音、シミュレートしたリバーブ!WAVES「IR」】記事はこちら>>

「リバーブの調整」:
前項のパラメーターを使用し、プリセットをカスタマイズしてみましょう。 プラグインは「Rverb」とし、適用トラックは「016_Vocoder」を使用します。

※クリックで詳細

 

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

プリセットから「Medium Dark Plate」を選択しました。 リバーブの残響がわかりやすいように「Wet/Dry」を40という高めの数字に設定してあります。

※クリックで詳細

Wet/Dry : 40

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「Predelay」を20msへ上げることで、実音の立ち上がりとリバーブ成分の分離を狙いました。 残響が少し長いと感じたため、「Time」を0.90秒まで下げ、「Size」も37まで落としています。 「Early ref」を少し足すことで、よりプレートリバーブらしい響きを加えています。 最後に「Wet/Dry」を下げていき、丁度良い感じになったものが以下です。ここでは15としています。

predelay : 20ms

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

Wet/Dry : 15

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「周波数の調整」:
リバーブを綺麗に聴かせる要素は、残響の時間だけではありません。 残響の周波数もとても大切な要素となります。 特にロックやエレクトロ等のジャンルでは、低音域とリバーブは相性が悪い場合が多く、 楽曲全体がモワモワとした、印象になってしまうことがあります。 その際は、これまで学んだEQの知識を活かして、リバーブの低域を適度にカットしましょう。 もちろん、大きなホールの荘厳な響きを狙いたい、といった場合はしっかり低域を出していきます。 また、今回高域を控えめとした理由は、プレートの中でも目立ちすぎない自然な効果を狙ったためです。 この辺りは、以前に解説を行った「Delay」と共通の考え方となりますが、 逆に「あえて高域を強調してザラついた響きを狙う」といった使い方もあります。

高域を強調

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

以上のように、プリセットの意味を理解し、楽曲に合わせてカスタマイズできるようになると、 よりサウンドエディットが楽しく、的確なものになります。 是非、様々なタイプのリバーブでお試しください。 次回はここまでのディレイ、リバーブを組み合わせるためのテクニック 「センドリターン」について解説していきたいと思います。 複数のトラックが一つのリバーブを共有することで、 同じ空間で演奏しているような、統一感を出すことができる、 といった多くのメリットがありますので、お楽しみにしていてください。

ご精読ありがとうございました。


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【19】センドリターンの基本概要

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回まで空間系エフェクトの「Reverb」「Delay」について解説してきました。 今回はそれらを「センドリターン」という方式で適用する方法についてご紹介します。

「センドリターンとは?」
通常、プラグインエフェクトは目的のトラックに直接インサートして適用します。 一方でセンドリターンはエフェクト専門のトラックを別途用意し、 それに対して、『エフェクトをかけたいサウンドを一定音量送ることで効果を得る』 というものです。 ルーティングの概念図で確認していただくとわかりやすいでしょう。 まずは各トラックにエフェクトをインサートして適用した例です。 続いてセンドリターンです。 各トラックのサウンドはそのままマスタートラックへ送られると同時に、 エフェクト専門トラックにも送られています。 最終的にエフェクト専門トラックの出力がマスタートラックで合流するため、 結果として各トラックにリバーブが適用されたように聴こえる、という仕組みです。

インサート

※クリックで詳細

センドリターン

※クリックで詳細

センドリターンには、以下のようなメリットがあります。

  • エフェクトが1つで済むためCPUの節約になる。
  • 同じエフェクト(リバーブ)を共有することで、同じ空間で演奏されているような統一感が出る。
  • エフェクトサウンドのみに対する編集が行える。

特に「3」の効用によってサウンドエディットの可能性が大きく広がります。

「センドリターンの適用方法」
DAW別のセンドリターン適用方法に関しては、 以下のページで解説しています。ぜひ、ご参照ください。

センドリターンの適用方法を見にいく!

センドリターンの注意点
センドリターンを使用する際に、漏れなく行っておく設定があります。 プラグイン内の「DRY/WET」を「Wet 100」にするということです。 ルーティングの概念図でもご確認いただいたように、 センドリターンは「マスターに直行する、元トラックのサウンド(=Dry)」と 「エフェクト専用トラックに送るサウンド」を一旦分岐させます。 その状態で、エフェクト専用トラックからもDryを出力してしまうと、元トラックの音量が大きくなってしまうのです。 そのため、プラグイン内の設定はエフェクト処理されたサウンド(=Wet)のみが出力されるようにすることが基本となります。

エフェクト量の調整
センドリターンの仕組みを理解していただいたところで、 エフェクト量の調整方法について触れておきましょう。「元トラックから、どの位の音量をエフェクト専門トラックへ送るのか?」 その量を決めるパラメーターを「センド」と呼びますが、それによってエフェクトのかかり具合を調整します。 当然、センド量が多ければ多いほど、 エフェクトサウンドが大きくなり、その効果が強くなっていきます。 画像は「0.00」となっていますが、 これは全く送らないという設定ではなく、現在のトラックボリューム値をそのまま送るという設定です。 数字がマイナスになると、現在のトラックボリューム値よりも少ない音量を送ります。 通常は、このマイナスの範囲内でセンド量を調整することが一般的です。 以上が、センドリターンの基本概要です。 次回以降、この概要を踏まえた解説をしていきます。 実際にやってみれば、さほど難しいものではありません。ぜひ、どんどん実践してみて下さい。

ご精読ありがとうございました。


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【20】センドリターンの応用テクニック

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回は「センドリターン」の基本概要に関して解説を行いました。 初めて触れた方にとっては、少し煩雑に感じられたかもしれませんが、 上手く活用すれば、サウンドエディットの可能性が大きく広がる非常に便利な機能です。 今回はそれを感じていただけるよう、センドリターンの特性を活かした応用テクニックをご紹介していきます。

複数のリバーブタイプを組み合わせる
まずは基本テクニックです。異なるタイプのリバーブを用意し、それをセンドリターンで組み合わせます。 単体のリバーブでは実現が難しい複雑な響きを作り出せたり、 リバーブの深さを微調整しやすくなるといったメリットがあります。 一例としては、広めのリバーブタイプで大まかな空間を調整した後、 狭めのリバーブで細かく調整していく、等です。

元素材

※ クリックで拡大

センドリターン適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。


「リバーブやディレイ成分にEQを適用する」
前回解説した通り、センドリターン方式では、トラックのサウンドに影響を与えることなくエフェクト音に限定して処理を行うことができます。 その場合、センド先のリバーブ等の後に、処理を行うプラグインをインサートします。 まず選択肢として挙げられるのはEQです。 定番のローカットを行ったり、より細かいエフェクトサウンドの作り込みを行ったりと、 様々な用途で用いられます。 以下はリバーブにEQ(ローカット)を適用したサンプルです。 よりすっきりした印象となり、深めにかけたり、複数トラックに適用した場合でも、 低域がもたつきにくくなります。

EQ適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

EQ適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「エフェクト成分の定位をコントロールする」
ボーカルトラック等にリバーブを適用する際に、 「リバーブを深くかけたいが、、そうするとボヤけてしまい、浅くするとリバーブがかかっている感じがしない」 このような経験はないでしょうか? そこで活躍するのが、エフェクト成分の定位を狭めるテクニックです。 センド先のリバーブの後にWaves「S1 Imager」をインサート、「Width」を下げてみましょう。 これによりエフェクト成分のみ定位が狭まり、元トラックも含めて定位が明確になっているはずです。

S1 Imager適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

S1 Imager適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「エフェクト成分に特殊エフェクトを使用する」
EDM等のジャンルでは、空間系エフェクトに対して特殊エフェクトをかけるテクニックが多用されます。 例えばディレイ成分だけにフランジャー効果を与えるといったやり方です。 その場合、センド先としてエフェクト専用のトラックを作り、ディレイ系プラグインをインサートした後、 フランジャー系のプラグインをインサートします。 元トラックにそのままインサートした場合は、ボーカル全体にフランジャーがかかりますが、 以下のサンプルではディレイ成分のみにフランジャー効果が適用されていることにご注目ください。

元トラックに適用


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

エフェクト用トラックに適用


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「ディレイからリバーブへセンドする」
ディレイ成分のみにリバーブを適用することで、よりナチュラルな空間表現が可能になります。 その場合、既に使用しているリバーブを使ったほうが好都合なので、 ディレイのトラックから、 更にリバーブへセンドするという合わせ技を使います。 特にボーカルトラックに有効な手法です。 まずはディレイ用のトラックにボーカルをセンドします。 ディレイトラックのセンド機能を使ってリバーブへ送ります。 適用前後を聴き比べてみましょう。 このようにディレイ成分に適度な広がりと余韻が生まれ、ミックスに馴染みやすくなります。


※ クリックで拡大


※ クリックで拡大


リバーブセンド適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

リバーブセンド適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

いかがでしたか? センドリターンを応用することで、サウンドメイキングの可能性が大きく広がったことを確認できたかと思います。 ここでご紹介したテクニック以外にも様々な活用法が考えられますので、 ぜひ思いついたアイディアを試してみてください。

今回もご精読ありがとうございました。


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【21】サウンドをまとめるテクニック 1

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回まで、EQ、コンプ、リバーブなど基本的なエフェクトをご紹介してきました。 これらをトラックに適用するだけでも、大幅なクオリティアップを図れたことと思います。 しかし、それと同時に「なかなかミックスがまとまらない。。」 そのような悩みを持った方も少なくないのではないでしょうか? 今回はさらなるクオリティアップに向けて、ミックスに一体感を与えるためのオススメテクニックをご紹介していきます。

複数トラックをまとめた後、EQやコンプを適用する
今までのエフェクト適用は、各トラックに対してエフェクトを適用する形をとっていましたが、 それにプラスして、関係の深い複数のトラックを1トラックへまとめてしまい、そのトラックに対してエフェクトを適用します。 各DAW別の設定方法は以下をご参照ください。

各DAW別グループ設定方法はこちら>>

イメージとしては以下の図のようになります。

通常のエフェクト適用

※ クリックで拡大

まとめエフェクト適用

※ クリックで拡大


まとめトラック
ドラム適用例

クリックで拡大

この例はドラムキットに対しての適用例です。 「まとめトラック」(DAWによって、AUX/グループ/ミックスバス等と様々な名称があります) にエフェクトを適用することで、各キットの音量、帯域が一斉にコントロールされ、一体感が非常に強くなります。 EQでは抜け部分、低域部分を少しブーストし、他トラックとぶつかりそうな、中域を下げています。 コンプは各キットのアタック感を損なわないようにアタックを残し、リリースは短めに設定しています。

「適用前」


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「適用後」


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用前と比べ、サウンドの一体感が高まっていることが感じられたかと思います。 これはドラムに限らず、「キックとベース」「コーラスパート」「複数のギター」など様々なトラックに対しても、応用が可能です。

サイドイェイン適用


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

サイドチェインを活用する
「サイドチェイン」とは、 特定のトラックのサウンドを基にして、別トラックのエフェクトに影響を与えるテクニックのことです。 言葉では伝わりにくいので、以下のサウンドを聴いてみてください。 キックに合わせて他トラックのサウンドが波打っています。 これはキックのサウンドを基にして、シンセやベースのコンプレッサーのかかりを強くしたものです。

※サイドチェインのDAW別設定方法は下記リンク先をご参照ください。
各DAW別サイドチェイン設定方法はこちら>>

上記サンプル積極的な効果を狙ったものですが、 サイドチェインを隠し味として使用し、ミックスの一体感を生み出すこともできます。 今回は特に効果が高い、キックとベースの例をご紹介しましょう。 ベースのトラックへサイドチェインコンプをインサートします。 キックの音量を基に、ベースに対してコンプが作動しますので、結果としてキックのタイミングでベースが抑えられることになります。 設定しています。 ※Rcompを使用する場合「ARC」を「Manual」へ変更することで、 リリースが設定値通り正確に動作します。 ここでのポイントは、あくまでも隠し味で、ナチュラルな適用です。 結果を確認してみましょう。

サイドチェイン適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

サイドチェイン適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

キックとベース双方が聴こえやすくなり、低域全体の一体感と迫力が増していますね。 このように、似た帯域特性を持つトラックにサイドチェインを適用することで、 効果的にミックスをまとめていくことができます。 いかがでしたでしょうか? 一つ一つの変化は微小に感じられるかもしれませんが、 こういった細かな処理の積み重ねが、最終的なミックスのまとまりに大きな影響を与えています。 次回も引き続き、サウンドをまとめるというテーマで解説を進めていきたいと思います。

今回もご精読ありがとうございました。


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【22】サウンドをまとめるテクニック 2

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

先週のサウンドをまとめるテクニックはお試しいただけましたでしょうか? 少しの差が積み重なり、大きなクオリティアップに繋がっていくことを実感していただけたのではないかと思います。 今回も引き続き、もう少し突っ込んだテクニックに触れていきたいと思います。

ステレオトラックの定位をコントロールする
ステレオトラックはサウンドが左右に広がっており、ワイドな印象を与えることができますが、 必ずしもワイドが良いとは限りません。 他のトラックとの関係によっては、広がり具合を調整した方が、ミックスを整理できる場合があります。 ここで役立つのが「S1 Imager」です。 例として「10_PAD」に適用してみます。

 

※ クリックで拡大

 

※ クリックで拡大


S1 Imagerを使って「Width」を下げたものが以下のサウンドです。

「適用前」


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「適用後」


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

左右に空きスペースができ、他のトラックを配置しやすくなっていることが確認できるかと思います。 もちろん、この状態でパンを振れば、より明確な定位の動きを得られます。

「リバーブ/ディレイ成分の定位をコントロールする」
センドリターンによるリバーブ/ディレイは、空間演出を行う場合には定番の手法ですが、そのリバーブ/ディレイ成分は通常センターから出力されます。

※「センドリターン」については、当シリーズのバックナンバーをご覧ください。 シリーズ一覧はこちら>>

例えば、左に振っているトラックからセンドしても、出力されるリバーブはセンターということです。 その際、トラックの残響成分を基準元トラックのパンに合わせると、より定位が明確になる場合があります。この操作のDAW別解説は、 弊社サイトのサイドバーに上級編「リバーブ成分のPANをコントロールする」よりご確認ください。

リバーブ成分のPANをコントロールする>>

ここでは例として「12_Rif Synth」へ適用しています。 効果がわかりやすいようにセンド量は多めとしました。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

リバーブも左に振られたことにより、トラックの定位が鮮明になっていることを確認できたかと思います。 定位を合わせるだけでなく、ミックスの狙いによって、「全体に馴染ませて安定感を出したい場合はセンターのまま」 「あえてエフェクトを反対に定位させてバランスを取る」といった具合に使い分けるとよいでしょう。

「リバーブ/ディレイ成分の定位をコントロールする」
位相とはオーディオ波形の波の形状ことを指します。波形を拡大していくことで、より鮮明に確認できます。 ほとんどのDAWにはこの波を反転させることができる機能が備わっています。 右の波形は、左の波形を反転させたものです。 波形の山と谷が真逆になっていることにご注目ください。 この反転による効果は、トラックを単体再生した際には全く効果がありません。 同じサウンドに聞こえます。

 

※ クリックで拡大

 

※ クリックで拡大

しかし、他のトラックと同時に再生した場合、 この波の形がお互いに影響しあってサウンドが変化します。 特に似た音域や特性をもったトラック同士であるほど、変化が生じる可能性が高くなります。 例として、Bassの波形を反転させてみます。

反転前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

反転後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用前に比べて、ベースサウンドが前に出てきたように感じらたかと思います。 このように、「どうしてもトラックが全体に埋もれてしまう」といった際に位相反転を行うと、 それだけで解決する場合もあります。 位相の詳細に関しては、マスタリングの解説時にも詳しく取り上げていく予定です。

いかがでしたでしょうか? 少し難しく感じられたかもしれませんが、 この辺りまで考慮してミックス出来るようになると更にミックスのクオリティが上がってくると思います。 是非、ご自身の楽曲でも試してみてください。

今回もご精読ありがとうございました。


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【23】ボリュームのオートメーション

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回までの「サウンドをまとめるテクニック」はいかがでしたか? トラック同士の関連性に着目しつつ処理を行っていくことで、 トータルのミックスに大きな差が生まれることが確認できたかと思います。 今回は少し基本に立ち返って、トラックのボリュームに関して触れていきたいと思います。 ミキシングにおいて、トラックボリュームの最適化はとても重要です。 ボリュームの重要性については、バックナンバーでも解説していますので、未読の方はぜひご覧ください。

http://www.miroc.co.jp/mailman/Column_KanayaTatuki-san/index.html(項目2)

画像1

※ クリックで拡大

画像2

※ クリックで拡大

「画像1」はトラックの帯域特性を最適化するイコライザーです。
「画像2」のように、一部分の帯域を少し上下させるだけで、音質がかなり変わりましたね。 ボリュームの場合、全ての帯域が一斉に上下することになります。 こう考えると、楽曲に対する影響力の大きさがわかってきます。

しかし、ボリュームを最適に整えたつもりでも、問題が発生します。 楽曲の始まりから終わりまでボリュームを固定したままでは、楽曲各部の展開や使用するトラックの変化によって ミックスのバランスが崩れてしまうということです。 また後述する通り、ボリュームはミックスだけでなく、アレンジにも深く関わってきます。

そこで登場するのが「ボリュームオートメーション」というテクニックです。 楽曲の途中で、他のトラックとの兼ね合いやアレンジ構成に合わせボリューム値を変更する手法です。

各DAW別のオートメーション操作に関しては、下記弊社サイトの記事をご覧ください。

http://sleepfreaks-dtm.com/dtm_word/automation/

それではオートメーションの例を確認していきましょう。

「ボーカルやリード楽器を最適化する」
ボリュームオートメーションの使用頻度が最も高いのは、 ボーカルやリード楽器のトラックです。 楽曲の主役となるトラックは確実にリスナーへ聴かせる必要があります。 特にボーカルは歌詞が乗っているため、その歌詞を聞き取りやすくすることは非常に重要です。 今回の課題曲はラップということで少しわかりづらいため、違う楽曲を用意してみました。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

ざっくりと記録しましたが、明らかにボーカルが聴こえやすく、安定しているのが感じられると思います。 キャプチャー画像も合わせてご覧ください。歌い始めはオケに負けないように若干突いてあります。

また、音程が低い箇所や言葉が連続する箇所はしっかりと聴こえるように持ち上げました。 反対に極端に大きな箇所がある場合は、ボリュームを下げて対応します。 ボーカルは通常コンプレッサーでも音量を整えますが、それだけでは対応しきれない箇所も多く残ります。 ぜひ細かくこだわって調整してみてください。

「楽器アレンジとして使用する」
画像は「PAD」に対してボリュームオートメーションを適用したものです。 かなり好き勝手に書いています(笑)
ただ伸ばしているだけのフレーズと比較して、フレーズに表情が付いているのが確認できます。 これはストリングスやブラスなど、長い音の途中で抑揚をつけたい場合にも有効な手法です。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

ただ伸ばしているだけのフレーズと比較して、フレーズに表情が付いているのが確認できます。 これはストリングスやブラスなど、長い音の途中で抑揚をつけたい場合にも有効な手法です。

「サウンドの余韻をコントロールする」
ボリュームオートメーションの応用として、減衰するサウンドの余韻をコントロールしてみましょう。 「単音で聴くと伸びのある音に聞こえても、いざミックスするとあっさり消えてしまう」 そういった場合に有効です。 今回はシンバルを例にオートメーションを適用しています。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

オートメーションさせた方は、シンバルの後半がしっかりと聴こえているはずです。 ここでのポイントは音量の減衰に反比例させるように徐々に上げるということです。 同様のコントロールはコンプレッサー等のダイナミクス系エフェクトでも可能ですが、 ピンポイントに対して、手軽かつ思い通りにコントロールしたい場合は、 オートメーションが便利です。以上、ボリュームオートメーションの例をいくつかご紹介しました。

楽曲の流れに合わせてボリュームを変化させることにより、より聴きやすく、 表現力豊かに仕上がっていくことを感じていただけたかと思います。 メーターの数値や波形の大きさだけに捉われず、聴感上の大きさを意識するのがコツです。 ぜひご自身のトラックでも実践してみてください。 次回は楽曲を華やかに彩る、飛び道具系エフェクトを紹介していきます。

今回もご精読ありがとうございました。


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金谷 樹 プロフィール

2001年 : 頭の中のサウンドを形にすべくDTMを始める。
2005年 : DTMの経験を活かしサウンドクリエイターとして活動する。 MIDIプログラム、アミューズメント楽曲やSEの作成、その他楽曲提供を行う。
2008年 : クリエイターの活動と並行し、個人でDTMスクール運営する。
2009年 : スクールを法人化し、株式会社スリープフリークスを設立。
「とにかくわかりやすく伝える」ことをモットーとし、現在まで500名を超えるDTMユーザーのレッスンを担当する。
2012年 : YoutubeにてDTMノウハウの公開を開始、16,000人を超えるチャンネル登録者数を獲得している。 チャンネル登録はこちらから>>

【24】SEのトラックミックス

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回のボリュームオートメーションはいかがでしたか? 音量を細かく設定することにより、楽曲の流れに合わせて、よりミックスが最適化されたことと思います。 今回は、SEトラックのミックス  について触れていきます。 SEとは「サウンドエフェクト」の略で、飛び道具系と呼ばれたりもします。 その名前からもわかるように、楽曲にアクセントをつけることを目的として使用するトラックです。 サンプル楽曲では下記3つが該当します。このようなサウンドを、他のトラックの中でまとめるコツを見ていきましょう。

17_Noise


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

18_Scrach


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

19_SE Applause


※ 初回再生時の音量にご注意ください。


出し過ぎの例


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

「コンプレッサーで音量を整える」
先述の通り、SEトラックの役割はあくまで補助的なものと言えます。 ベーシックトラックがしっかりと出来上がっている場合、好みで追加していくという形で使用しますが、 ボリュームを大きくしすぎて、「出し過ぎの例」のようにメイントラックを潰すことがないように注意してください。 派手にしたいが故にSEを持ち上げ過ぎて浮いてしまっています。

しかし、音量を下げると聴こえずらくなる部分があり、SEの効果が得られない。 そのような場合は「コンプレッサー」で音量を安定させてみましょう。 少し極端な例かもしれませんが

「アタック : 最速」
「リリース : 1000ms」
「レシオ : 8 : 1」
「GR : 10db」

このように思いっきりコンプレッサーを適用し、音量を安定させた上で、ミックスします。 ボリュームを下げ目にしたとしても、 変化するサウンド全体がしっかりと聴こえてくるようになります。

コンプレッサー適用後

クリックで拡大

コンプレッサー適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。


400hz以下をカット

クリックで拡大

「EQで不要な帯域をカットする」
SEがベーシックトラックの邪魔をしないよう、EQで大胆なカットを行ってもよいでしょう。 まずは、低音を担当しているキックやベースとなるべく干渉しないように処理します。 「18_Scrach」に対し、低音カットを行いました。 400hz以下をバッサリとカットしています。


適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。


3000hz~5000hz

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このようにSEのサウンドそのものには大きく影響を与えることなく、 キックやベースの響きを明瞭にすることができます。 またサウンドが少し浮いていると感じた場合、3000hz~5000hz辺りを落としてみてください。(右図) 楽曲と馴染みやすい落ち着いた音色とすることができます。

「パンを最適化する」
主要なトラックの多くは、中央付近に定位しています。 SEトラックが邪魔ものにならないためには、やはりパンを左右に振っていくのが一般的です。
また、飛び道具トラックならではの手法として、パンをダイナミックに動かすという選択もアリです。 特にベーシックトラックが中央左右に隙間なく配置されている場合は、 SEのパンを動かすことで干渉を避けつつ、存在感を出していくことができます。 オートメーションで記録してしまっても良いのですが、 パンに自動で動きを与えるWavesのプラグイン「MondMod」が非常に便利です。


1_サウンドが左右に動く幅を設定します。
2_左右に動く際の基準となる中央の定位を設定します。
3_左右に動く速さを設定します。Autoとすることで、テンポに同期させることも出来ます。
4_動きのタイプを選択します。


MondModを使用して「17_Noise」に左右の動きを与えてみましょう。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。


このように、よりインパクトのあるミックスを行うことができます。 いかがでしたでしょうか? 比較的自由に思えるSEトラックですが、何も処理せずにミックスしてしまうと、なかなか狙った効果を得られないものです。 今回の項目を少し意識するだけで、バランスよく楽曲にアクセントを加えることができます。 是非、実践してみてください。 次回はいよいよ、マスタリングに関する項目に入っていきますので、どうぞお楽しみに。

今回もご精読ありがとうございました。


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【25】マスタリングの概要

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

よくある質問として、「ミックスとマスタリングの違いは?」というものがあります。 まずはここを整理しておきましょう。 「ミックス」 : 現在まで解説を行ってきた内容です。 各トラックにおける処理、およびトラック間のバランス調整がメインとなります。

楽曲を読み込む

クリックで拡大

「マスタリング」 : 楽曲単位での調整を行います。 ミックスした楽曲(2mix)を書き出した後、再度、DAWへ楽曲を読み込んで作業することが多いです。 具体的な内容としては、「音圧」「音質」「曲間」の調整や「楽曲情報の入力」等が挙げられます。

例えば、弊社Sleepfreaks で生徒様10人に声をかけてコンピレーションアルバムを作るとします。 この際、送られてくる楽曲の音質、音圧には相当な違いがあると予想できます。 それらの整合性をとり、1つのアルバムとして仕上げる工程がマスタリングです。

プラグインをオフ

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ミックスダウンを行う際の注意点
複数の楽曲を同時にマスタリングする場合は、ミックスが完了したプロジェクトを2MIXに書き出します。 この工程を、ミックスダウンあるいはトラックダウンと呼びます。 その際の注意点を見ていきましょう。


ボリュームを下げる

クリックで
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1_楽曲音量
この際、Stereo Out(マスタートラック)にインサートしているプラグインは、 全てオフもしくはバイパスとして下さい。 マスタリング用のプロジェクトで、改めて音質と音圧の調整を行います。 Stereo Out(マスタートラック)のボリュームは原則動かさないようにします。 基準が曖昧となり、混乱の元になるためです。 その上で、楽曲全体を通して絶対にクリップしないように調整します。   もし、クリップしてしまうようであれば、 全トラックのボリュームを均等に下げるか、 類似のトラックをグループトラック(AUX、BUS等)にまとめた上で、 各々を下げるようにしてください。


フォーマットを合わせる

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2_サンプリグレート/ビットテプス
サンプリグレートとビットデプスも全楽曲で統一するようにします。 1人で作業されている場合にはこの部分がバラバラになることはほとんどないと思いますが、 他の人がミックスした楽曲も含めて作業する場合等は、 事前に書き出し時のフォーマットを合わせておきましょう。


前後に余裕を持たせる

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3_前後に少し余裕を持たせる
最初の音の立ち上がりや、空間系エフェクトの残響も考慮し、 前後に余裕を持たせて書き出しておくことをお勧めします。 後に細かく詰めることも可能です。


書き出した楽曲をDAW並べる
書き出した楽曲をDAWへ配置していきます。 1曲1トラックという概念です。 実際のアルバムの流れをイメージして配置していきます。 不必要な部分をカットします。 必要に応じて、楽曲の最初と最後をフェードさせます。 楽曲同士のクロスフェードはタイムライン上で重ねて、同じ幅でフェードアウト・フェードインを行うとよいでしょう。

不要部分をカット

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※最初と最後をフェード

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フェード・イン・アウト

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今回はマスタリングの概要とさわりの部分となりましたが、いかがでしたでしょうか? 完成した楽曲達を並べる作業は、何とも言えない快感があり、個人的に大好きです(笑)

今回もご精読ありがとうございました。


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【26】MS処理

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回のマスタリング準備に続き、今回は楽曲の広がりや音圧をコントロールする 「MS処理」について解説していきます。 MS処理の「M」と「S」とは、それぞれ、

「M(ミドル)=中央に定位している音」
「S(サイド)=左右いずれかに振れている音」

を意味します。 それらを個別に処理することができるテクニックが、MS処理というわけです。 MS処理の最もシンプルなテクニックとして、サイドの音量のみ上げるという手法があります。 処理前後の音源をご用意しましたので、聴き比べてみてください。

サイドの音量を上げる前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

サイドの音量を上げた後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

MS処理を行う意義
まず、なぜマスタリングでMS処理を行うのか、その意義について触れておきたいと思います。 「画像1,2」は、マスタリング時に扱う楽曲の2MIXについて簡略化したイメージです。 今までのミキシングでも触れてきましたが、 大切なトラック(キック、スネア、ベース、ボーカル、リード)などは、 中央に定位させることが多いです。 そのため、サイドよりもミドルの音量が大きくなるのは当然です。 この際、MS処理によりサイドの音量を少し持ち上げることで、 ミックス時のパンだけでは表現できない広がりが生まれます。 この広がりには、楽曲の印象をより華やかにしたり、音圧を増す効果があります。 (ただし、サイドを上げすぎると相対的にミドルが引っ込んでしまったり、 位相のバランスがおかしくなったりするので、注意してください)

さらにMS処理では、ミドルとサイドに対して 個別に「EQ」「Comp」等を適用することができるというメリットもあります。

MS処理の方法
弊社Webサイトにて、数種類のMS処理方法を解説しています。 まず、下記の記事や動画をご覧下さい。

「DAWのみで行うMS処理」はこちらから>>

「Waves Centerを使用したMS処理」はこちらから>>

「Waves MS Matrixを使用したMS処理」はこちらから>>

ここでは、細かな処理を行うことができる「Waves MS Matrixを使用したMS処理」 を例に解説を行っていきます。 なお、マスタリングはミックスダウン後のイメージが強いですが、 MSのバランス変更により、もう一度ミックスへ戻っての作業が発生する場合もあります。 それを見越して、ミックス時のマスタートラックでMS処理を行う方法でもOKです。

1_MS Matrixをインサートすると、ミドルは左、サイドは右に分割されます。 2_再度MS Matrixをインサートすると、通常の2MIXに戻ります。 この1と2の間でMS個別の処理を行っていくことになりますが、 ここで使用するプラグインは、左右(LR)個別に処理することができることが条件となります。 たとえば、
「 Waves Q10」などが該当します。

右下の「L」と「R」の間にある「Link」ボタンを押して消灯させると、 左右を個別に処理できるモードになります。 MS処理ではこの状態で、ミドルに対しては「L」を、 サイドに対しては「R」を点灯させて操作します。 いかがでしたでしょうか? MS処理をご存知なかったという方も、その可能性を感じていただいたけかと思います。 次回は、引き続きMS処理の詳細設定と併せて、 マスタートラック(2MIX)における処理へ入っていきたいと思います。
どうぞお楽しみに。

今回もご精読ありがとうございました。


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【27】音圧をあげるマキシマイザー

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

音圧をあげてから調整する。

クリックで拡大

前回のMS処理はいかがでしたでしょうか? マスタートラックや2MIXならではの処理として、効果を実感していただけたかと思います。 そのまま今回はMS処理の実践へ入っていきたいところですが、 予定の順序を変更し、先に「音量/音圧」を上げるマキシマイザーについて解説しておきます。

なぜ、各調整の前に音圧を上げておくのか? これにはもちろん理由があります。 一旦完成系に近い音圧にした後、各マスタリングエフェクト処理を行った方が効率的なためです。

ミキシング/マスタリングを経験された方はお分かりになるかもしれませんが、 各調整を全て済ませた上で、いよいよ最後にマキシマイザーを適用した場合、 予想と大きく違うサウンドになってしまう、といったことがしばしばあります。 こうなるとまた、その前の処理に戻ることになるので、 先にある程度音圧を上げた状態で、各プラグインを調整していくというわけです。 前回の流れを汲むと、 MS処理があり、その後にマキシマイザー(今回はL2 Ultramaximaizer)をインサートすることとなります。 それでは、マキシマイザーの解説に入っていきます。

マキシマイザーとは?
「マキシマイザー」の原型は「リミッター」と呼ばれるエフェクターで、 音量が一定の値を超えないように抑えるという働きがあります。 これを、デジタルミックスの限界である0dbを上回らないよう設定した場合 以下のようなイメージとなります。 マキシマイザーは0dbでリミットをかけると同時に、音量を突っ込んで全体の音圧を上げていく機能に特化しています。 「いかに自然に音圧を上げられるか」がマキシマイザーの性能評価を左右するというわけです。 コンプレッサーも指定した値(スレッショルド)を超える音量を低減させますが、 あくまで低減であり、通常のレシオ設定ではその値を超えてしまいます。 指定した音量で完全に抑えるという目的ではありません(逆にそれによって自然な圧縮効果を狙っています)。 ここに、リミッター/マキシマイザーとの大きな違いがあると言えます。

マキシマイザーの設定

WavesのLシリーズでは「Threshold」を下げていくと同時に入力の音量が持ち上がり、 0db付近で音量が推移するようになります。 これがいわゆる「音圧が上がった」という状態です。 右の図でイメージをご確認下さい。

0dbで抑えつつ全体の音量を底上げしたので、青い部分だけ全体音量が稼げている、 ということになります。 また、空白が減った分音圧が向上した、と見ることも出来ます。 Thresholdを下げていくと、そのうちに「ATTEN」のメーターが上から下に向かって伸びてきます。 これは「本当ならこの位、0dbを超えてるからね」ということです。 これが余りに大きく出すぎていると、明らかに音が潰れたように聴こえたり、 歪んだように聴こえたり、あるべきダイナミクスまで失われたり、といった弊害が起きます。 これからの調整もありますので、今は最大でも「3」程度になるように調整しておいてください。 この時点での違いを確認しておきましょう。

マキシマイザー適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

マキシマイザー適用後
音量要注意です。必ず音声を低めにしてから再生してください。


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

マキシマイザーによって音圧が上がった一方、若干音質が変わっていることも感じていただけたかと思います。 これを踏まえた上で、事前の調整を行っていったほうが効率的というわけです。 次回こそMS処理の詳細調整へ入っていきますので、ご期待ください。

今回もご精読ありがとうございました。


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【28】MS処理におけるEQ/コンプの適用

こんにちは。スリープリークス 金谷です。

前回マキシマイザーの適用を一旦挟みましたが、今回はいよいよMS処理におけるプラグイン適用へ入っていきます。 前々回の「26_MS処理」からの流れとなりますので、未読の方はぜひ確認して下さい。

【第26回】「MS処理」はこちらから>>

「26_MS処理」で書き出したトラックは、以下の画像のような形となります。 「Ms_Matrix」を適用し、左右を個別に書き出した(マルチモノ)オーディオを、新プロジェクトで並べています。 ※リミッター/マキシマイザーで音圧を上げずに書き出しています。 「画像1」の貼り付けをお願い致します。 上の波形がM(センター)下の波形がS(サイド)です。 サウンドを戻すため、マスターへ「Ms_Matrix」を適用し、 前回解説したマキシマイザーで音圧を適度に上げています。 この際、Mトラックは左へSトラックは右へ振り切っておくことがポイントです。

MSのエフェクト処理
まずは楽曲の中で、プレビューする箇所を決めます。 これはマスタリング全般に言えますが、 特に楽曲の中で音数の多い、音量が大きい部分を先にプレビューし処理していくと良いでしょう。 コンプレッサーなどのダイナミクス系エフェクトをかけ過ぎるというリスクも回避

できます。 その後、音量が小さい部分で不自然になっていないかも、必ず確認して下さい。

まずは両トラックにEQを適用します。 今回はWaves「Linear Phase EQ Broadband」を使ってみました。 「リニアフェイズEQ」は位相の一貫性を崩さずに処理することができるため、 ある帯域の調整を行った際に、他の帯域への影響を極力抑えたイコライジングが可能です。 通常のEQと比較してCPU使用率が高いため、ミキシング時の全トラックに適用することが難しいのですが、 バストラック等の重要なポイントには、この「リニアフェイズEQ」を使用してみるのも手です。 (リニアフェイズはサウンドによって向き・不向きもありますので、通常のEQと比較の上確認して下さい)

ここで1つ注意点です。 MとS個別に書きだした各トラックはモノラルです。適用するプラグインもモノラルを選択してください。 ミドルのトラックに対しては、ローカットで27Hz以下をカットしています。 これにより音質自体が変化することはありません。 ほぼ可聴範囲外の低域をカットすることにより、不要な音量を後のマキシマイザーに入れない =可聴範囲内の音量に余裕が生まれる、という狙いです。

一方サイドのトラックでは、ミックスの配置上、低音はミドルに集まっていますので、 200Hz~300Hz以下までをカットして、スッキリさせてみるのも良いでしょう。 これも不要な部分をカットする目的ですので、ミックス全体の印象に影響を与えない程度として下さい。 変化を感じるのはむしろミドルのサウンドで、低域の中央定位が明瞭になり締まりが生まれてくれば成功です。 逆に高音域は左右に定位させていることが多いため、8Kz辺りから上を軽く持ち上げると、 高域中心に広がりが生まれ、全体の印象が明るくなる傾向があります。

また今回は、サイドのみに薄めにコンプを適用することで、広がりと迫力を狙ってみます。 アタックは適度に残るように設定し、リリースは不自然にならない程度で、早めに設定しています。 Ratio値は4付近に設定し、ゲインリダクションが「2db」を目安になるように、スレッショルドを調整します。 最後に「Gain」を上げていくことで、サイドの音圧を上げていきます。 あまりに上げすぎると不自然になってしまいますので、「コンプで抑えたピーク分を持ち上げる程度」として下さい。 上記の全エフェクト適用前/後の音源が以下です。

適用前


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

ナチュラルにワイド感が増していることを、ご確認いただけたかと思います。 マスタリングの際に扱うのは全トラックの集合体です。 そのため、1つ1つのプラグインで少しずつ変化をつけていく、 というイメージで行うと良い結果が得られると思います。 次回は更に、マスタートラックで行う処理をご紹介していきます。 お楽しみに!

今回もご精読ありがとうございました。


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【29】マスタートラックのエフェクト処理

こんにちは。スリープリークス 金谷です。半年に渡りお届けしてきた当コーナーも今回が最終回となります。前回のMS処理に続いて、マスタートラックにおけるエフェクト処理へ入っていきましょう。

現在のマスタートラックは、前回のMS処理後の状態です。 そこへ幾つかのインサートエフェクトを適用していきます。 前回と同様に、1つのプラグインで大きく変化させるというより、 1つ1つを少しずつかけるイメージで適用していきます。 微細な変化を聴き逃さないよう、バイパスと比較しながら慎重に進めて下さい。 また、今回はマスタートラックでよく使われるものを広くご紹介しています。 常に全て適用する必要はありませんので、色々と試して好みの仕上がりとなるものを 組み合わせて下さい。

現状のサウンド


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

「テープシミュレーター」
サウンドにアナログの質感と温かみを加えることを目的として使用します。 適度なコンプレッションも加わるため、後の処理がまとまりやすいという利点もあります。 ここでは「Kramer Master Tape」を適用しています。 様々なパラメーターがありますが、まずは「Record Level」を上げることで効果の量を調整をしてみましょう。 この値が高すぎると歪んでしまいますので、少し変化がついたかな?と 思ったところで止めるのがコツです。 詳細のパラメーターは弊社記事でも解説していますので、ご参照ください。

Sleep freaks「Waves Kramer Master Tape デジタル臭さを解消!!テープシミュレーター」はこちら>>

Waves/Kramer Master Tape

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適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

「コンプレッサー」
コンプレッサーを薄めにかけることで、全体のまとまり感を出していきます。 以前に、ドラム全体に対してまとめてコンプレッサーを適用したのと同様の目的です。 また、ここである程度ダイナミクスを整えておくと、後のマキシマイザーの効率もよくなります。 トータルに適用するものですので、あくまでナチュラルな効果を狙います。 アタックは残すよう比較的遅めに設定し、リリースは早めとします。 レシオは1.5~2くらいで良いでしょう。 そして、スレッショルドでGRを1~1.5くらいになるよう調整し、その分をGainで持ち上げます。

Waves/renaissance comp

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適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  

「マルチバンドコンプレッサー」
マルチバンドコンプレッサーは通常のコンプレッサーと異なり、 帯域別に個別にコンプレッションを適用することができます。
・低音域のみコンプレッションを行い、全体の印象を引き締めたい。
・高音域にバラツキがあり耳障りなので、まとまりを与えたい。

などといった場合に、より細かな調整が可能です。 その分「これで正解」と言える万能な設定はないので、 楽曲に合わせてしっかりと設定する必要があります。 ここではWaves C4を使用していきます。

C4はその名の通り、4つの帯域別にコンプレッションを行うことができます。 画面上部では、3つのクロスオーバーで仕切られた4つの帯域が表示されています。 各クロスオーバーを左右に動かすことにより、それぞれの担当する帯域を調整することが出来ます。 もちろん、画面下部の4つ並んだコンプレッサーは上記の帯域に対応します。 それぞれの特徴に応じて設定していきましょう。

全体の傾向として、低域から高域へ向かうにつれ、アタック・リリースともに早めに設定します。 これは、各トラックのアタック成分の帯域は中域から高域にかけて存在するためです。 各帯域をソロにして聴くとよくわかるのですが、低域にはあまり明確なアタック成分がありません。 そのため、低域では各設定も遅めとし、高域にいくにつれ、鋭い立ち上がりの音が多くなりますので、 コンプが機敏に反応するように設定していきます。ただしこれはあくまで傾向ですので、楽曲や目的によって柔軟に変えていきます。 一例として、今回の楽曲についての設定の狙いを示しておきます。

まず、各帯域の区分けは以下の通りです。

0~60Hz キックの低音感
60~250Hz ベースの音程感
250Hz~2kHz 人間の耳に一番聞こえやすい中音域
2kHz~20kHz 空気感や抜けの高品質感

高域部分はもう1段ほしい感じがしましたが、このように設定しました。 そして、各スレッショルド値を下げていき、 0~60Hz キックが入った瞬間に-2dbのGR値   60~250Hz ベースを聴きつつ-1.5dbのGR値   250Hz~2kHz 常に-3dbのGR値 特に楽器が密集する帯域ですので、少し強めに落としています。 2kHz~20kHz を1dbのGR値へ設定しました。

適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

その後、画像赤囲みのGainをご確認ください。 抑えたことにより不足したと感じた帯域をゲインで少し持ち上げる方法をとりました。 一度圧縮した後、音量を持ち上げるのと、ただ音量を持ち上げるのは聴こえ方がかなり変わります。 ぜひ、ここを意識してトライしていただきたく思います。 この処理により全体の音量が少し落ち着いたので、L2でスレッショルド値を適度に調整しました。

リニアフェイズEQ

クリックで拡大

「リニアフェイズイコライザー」
最後に微妙な音質補正を行うため、リニアフェイズEQを適用しました。 低域をほんの少し補強し、かさばってしまう500Hz付近の中域を少しだけカットしました。 4kHz付近は耳触りな箇所があったため、Qを狭くした後、カットしています。 ボーカル等に使用するディエッサーを使って、この箇所を抑える手法も良いと思います。 音抜けを狙い、若干だけ8kHz付近をブーストしています。 このイコライジングの際に、こだわって欲しい点は「Q幅」です。 ポイントを指定した後、広く~狭くを聴き比べ、いい感じの部分を探します。 ここまで行った上で、最終的にマキシマイザーの設定を確定します。 単純に音圧を上げただけの状態よりも数段聴きやすくなり、また迫力がも増していることと思います。

記事冒頭のサウンド


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

上記工程を全て適用後


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

  
以上、マスタートラックでの処理をもって、本メルマガも終了となります。 あっと言う間の半年間でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか? ミキシングは楽器と同じで反復練習がとても大切です。 バックナンバーも残っていますので、迷った際はもう一度記事を読みなおしていただけると、新たな発見があるかもしれません。 よりよいミックスを目指して、楽しみながらがんばって下さい。

半年間に渡るお付き合い、誠にありがとうございました。


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