【1】長野県軽井沢町 大賀ホール 潜入レポート!

皆さんこんばんは。MailManでは初めまして!ですね。RED先生です。今回より3回(の予定)にわたり、コラムを掲載させていただく事になりました。皆様、短期間ではございますが、よろしくお願いします。

今回の連載は、2010年より、192kHz/24bitというハイレゾリューション音楽制作を行っているUNAMASの、サラウンドによるビバルディの「四季」の制作現場へ潜入取材致しましたので、レポートさせていただきます。そして、このレポートを通して、業界を代表するエンジニア 沢口 真生 氏と新進気鋭のトーンマイスター長江 和哉 氏とのコラボレーションによるハイレゾリューション収録と、リアルタイム伝送実験、次世代フォーマット4K映像がコラボレーションした、先進性に満ちた今回の企画を取材、見学させていただいた中から、今後のトレンドとなる収録システムのあり方、音楽パッケージのあり方、可能性などをご紹介出来たらと思います。

雪の模様 ホール全景
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ちなみに、私はクラシック音楽大好きなので、1週間前にふった大雪にも臆せず軽井沢へ嬉々としてLet's Go!

ニュースではなんとなく聞いていましたが、いざ軽井沢駅を降りると、一面の雪!歩道は確保されているものの、それ以外は降った雪がそのまま。高速道路も取材の日の二日前夕方にようやく開通という状態。

雪の模様 ホール入口
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年配の駅員さんも「こんなに雪が降ったのは記憶に無い。」とびっくりされていました。

そして、駅にほど近い大賀ホールもこの有様。右手に見えるのが大賀ホール。

手前は併設されている公園の池・・・なんですが、わかりますでしょうか??

ここで、今回の収録コンセプト等をご紹介致します。

192kHz/48bitというハイレゾコンテンツの特徴である空間の再現性や演奏の表現を捉えるため、今回はスタジオ録音ではなくアコースティック空間と一体化したホール録音という環境が選ばれました。そして、その会場として選ばれたのは軽井沢の大賀ホール。楽曲として選ばれたのはクラシックの定番であるヴィヴァルディの四季。定番でスタンダードだからこそ、この楽曲をハイレゾでサラウンド制作し、ハイレゾコンテンツの魅力がリスナーにも体感出来るのではないでしょうか?原曲の四季は弦楽カルテット+通奏低音という構成なのですが、今回は新たな四季の解釈ということで、弦楽カルテットをベースとし、春夏秋冬でそれぞれ4パートをフィーチャーしたソロパートをオーバーダビングでミックスされます。

そして、注目の収録システムをご紹介致します。

レコーディングシステム概要図
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今回収録機材として選定されたのが、現在の最新技術であるAudio over IP技術を使っていち早く製品化されたPyramix Ravennaシステムと、長距離伝送に有利なMADI伝送技術を導入して製品化されたRMEの製品達。ステージでセッティングされたマイク音声を、RME MicstasyとOctaMic XTCでMADI1系統、DMC842でMADI1系統をそれぞれMADI出力し、それぞれOptical Conケーブルで録音ブースまで引き回します。録音ブースではそれらOptical ConケーブルのMADI2系統MADIface XTで受けます。MADIface XT内部で受け取ったマイク回線をMADI1系統にまとめてPyramixへと送ります。Pyramixがメインレコーダーとなっており、CAT5ケーブルで専用マシンと接続されます。 こちらは192kHz/24bit PCMフォーマットで収録されていました。そして、MADIface XTはecternal PCIeで接続してThunderbolt変換ボックスを経由してMacBookProとThunderbolt接続され、Sequoia12のインターフェイスとして接続されておりました。こちらも192kHz/24bit PCMフォーマットでの収録です。

Thunderbolt-PCIe変換ボックス
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写真はexternal PCIeからThunderboltへの変換ボックスです。使用するMacBookProがUSB3.0対応ではなかったのですが、この変換ボックスを使用することでMADI3系統をフルで活用できます。 RMEのMADI製品に関しては、以前にレポートさせていただきましたが、実際ステージから録音ブースまでの引き回しにMADIを使用されている現場を見ると、いかにケーブル配線が簡潔になっているかがわかります。図ではピンとこないかもしれませんが、ホールから録音ブースまで伸びているケーブルはMADI Optical Con ケーブル2本とキューランプ用にひかれたケーブルの3本のみ。これをマルチケーブルでこなすとなると、ケーブルの引き回しだけで一苦労ですね。

録音ブースに伸びているケーブル
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ホールからケーブル口(ゴミ箱の後ろにありました)を通って、右手の録音ブースへとケーブルが伸びているのがおわかりいただけますでしょうか。扉を避けて配線するのも、こんなに簡単なんですから、セッティング時間の短縮にもなりますし、なにより体力温存できます。

また、レコーディングシステム図の左上にありますResonetz Ether-MADI 64へは、Pyramixのオーディオインターフェイスとして使用されておりますMerging TechnologiesのHorusのMADIアウトからの回線を受け、インターネット回線を介して京都へと伝送実験されております。

大賀ホール見取り図
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そしてマイクはアナログコンデンサーマイク・リボンマイク・デジタルマイクという3種類の異なったマイクで録音し、それぞれのマイクの持ち味をも楽しめるような構成です。サラウンド録音ということもあって音場を生かした3種類のマイクのセッティングにも注目です。演奏者が中央に向かい合った形で演奏するのは、あまりお目にかかる事はないのですが、このポジションだと演奏者同士がアイコンタクトを取りながら演奏できるので、演奏し易いのだそうです。収録ならではの工夫ですね。

収録用マイクに接続された
アコースティックリバイブ製ケーブル
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このように、メイン機材が高品質でそろえられておりますので、当然周辺機器の品質も重要になってきます。今回は電源部、マイクケーブルにアコースティックリバイブの製品を使用し、機材トータルでもハイレゾ仕様となりました。

マイクに接続されたケーブルをご覧ください。いかにもいい音しそうですね。

ということで、今回はここまで。次回はアナログマイク、デジタルマイク、リボンマイクについて、マイキングを絡めて掘り下げてみようと思います。


RED先生 (赤尾 真由美) プロフィール

ROCK ON PRO プロダクトスペシャリスト

JAPRS Pro Tools資格認定委員としても活躍するPro Toolsのスペシャリストでもある。クラシック系音楽大学出身というバックグラウンドを持ち、確かな聴感とDAW / デジタル・ドメインの豊富な知識を活かし、ミュージックマーケットからブロードキャストまで幅広い層へ提案を行っている。WAVESプロダクト担当としても、コラム執筆や店頭デモ及び販売を行っている。