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30
Apr.2015
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瀬川英史の「LA Graffiti」第三回 : 「東京、LA、ブエノスアイレス」



第三回: 「東京、LA、ブエノスアイレス」

ポイントは「みたいな〜」

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前回の原稿から3ヶ月くらい間が空いてしまいましたね(汗)。その間映画2本とドラマとアニメとCM等々でスケジュールがパツパツで全く原稿書けませんでした。LAの話を書くためのコラムなんですが、今年に入ってからほとんど日本の仕事でスケジュール埋まってしまったので、今月来月は日本の仕事の話を書きますね。とりあえず既にオンエアされているドラマの話から。フジテレビ水曜日夜10時から放送中の「心がポキッとね」。一昨年担当した「最高の離婚」の宮本理江子監督のお仕事です。宮本監督はそりゃあもう音楽詳しくて打ち合わせも楽しいんですよ!でも別の言い方すると音楽に対してのイメージがハッキリとあるという事なので実際に仕事するのは簡単ではない、、、って事でもあります。

最初に監督と直接会ってアイディア出しをしたのは昨年の事なんでもうあまりハッキリ覚えてないんですけど、日本やアメリカとはペースの違う南米系の音楽があった方がいいかも(ショーロとか)、それにサントラの中にボーカルトラックがあってもいいかもね〜と。アルゼンチンにフローレンシア・ルイスっていうアーティストがいるんだけど、彼女みたいな声が入ってるトラックがあってもいいかもね〜と。僕らのような仕事で、この「みたいな〜」というワードが結構曲者で相手によっては「みたいな〜」と言ってる割にかなり明確だったり、人によっては単純にその楽器の音色が好きだよ〜程度だったり。ここ、意外とこのお仕事では大事なポイントです。宮本監督の場合はどちらかというとそのイメージが明確な監督だと思います。前回のフジテレビドラマ「最高の離婚」の時にマヌーシュ・ジャズのミュージシャンをパリで手配してレコーディングしたのも、宮本監督がパリに住んで居た事があってフランスの音楽にも詳しい方なので、日本でスタジオミュージシャンを集めてレコーディングしても納得してもらえる音源にはならないと判断したからです。というわけで今回も「フローレンシア・ルイスのような声」というリクエストには「フローレンシア・ルイスの声」で応えるのが筋と判断しました。じゃあフローレンシアを探そうと。

フローレンシア・ルイスとのコライト

さて、、、フローレンシアのウエブサイトはすぐに見つかりましたが、スパニッシュで書いてあるのでさっぱり読めません、、、メールアドレスもGifで埋めてあったりしてちょいとオールドスクールな感じ。とりあえずメールしてみたけど、ほんとに届くのかな〜と。数日待って返信がこないので、別ルートでコンタクトする事に。LAのいいところは世界各国から腕利のミュージシャンが集まっている街だという事。友達の友達を辿ってすぐにアルゼンチン出身のミュージシャンと友達になれて、彼がブエノスアイレスに連絡を取ってくれました。彼の友達のキーボーディストが以前フローレンシアと仕事をしていた事があるという事で、フローレンシアのメアドをゲット。無事に連絡がとれました。ドラマの概要と、なぜフローレンシアにサントラを頼みたいかをメールで説明。納得してもらったら次は契約の話。本人同士が同意できても出版契約や、各国の著作権管理団体と日本のJASRACとのリレーションシップの状況によってはコラボレーションの実現が難しい場合がありますからね。契約関係の話は読む方も知識が必要だし、コラムで書けるほど簡単じゃないので割愛しますがとりあえず一緒にコラボする障害はなくなりました。

フローレンシアはセルフ・プロデュースするタイプのシンガーソングライターなんですが、今回は脚本を理解した上で歌詞を書く必要があったので、台本の決定稿が上がってから僕とコライトしようという話で始めました。若干というか割と(?)決定稿が上がってくるまでに時間がかかり、プロットを送った後でフローレンシアから「脚本まだなの??」と催促されてるうちに、「もうイメージ湧いたから2曲書いちゃった!」というメールが(笑)。これが結局ドラマの中でオンエアされてる曲なんですが、もうバッチリでね。コライトしようとは言ったけど、曲の上がりがよくて、ドラマに劇伴として効果があればそれで良いのでね。ま、しかし、とりあえず脚本の決定稿読んでみないとオッケーかどうか分からないから、もうちょっと待ってねと。結果的には日本の宮本監督と選曲の小西善行さんにもフローのmp3を送って良い手応えのフィードバックをもらい、すごく順調に事は進みました。

フローレンシアと待ち合わせ場所に選んだカフェ・トルトーニ

フローレンシアと待ち合わせ場所に選んだカフェ・トルトーニ

ブエノスアイレスへGO!!

3月の中旬にフローレンシア曲以外の劇伴の録音を東京で済ませ、一旦LAに戻ってからブエノスアイレスへ!最近ではインターネットを使ったリモートセッションが可能だし、リモートセッションをカッコイイと思ってる人も見受けますが、僕はレコーディングは直接ミュージシャンに会ってやり取りするオールドスクールなやり方を好みますので(特に初対面の場合)、当然ブエノスアイレスへGO。ここからドラマのタイトルのように「心がポキッとね」的な事が僕にも起こるわけです。まず、LAからブエノスアイレスへ直行の飛行機があると勝手に思い込んでいたんですが、調べてみたら直行便ないんですよ(汗)。トランジットしてブエノスアイレスまで行く方法はいくつかあったんですが、時間かかるのはいやなので最短のデルタ航空のアトランタ経由でブエノスアイレスに行くことにしました。合計16時間30分かかる(汗)。アトランタでトランジットするのは初めてだったんですが、さすがアメリカの最大のハブ空港、ターミナル間の移動は電車(トラムってイメージじゃなくてもう電車だね)。トランジットの時間が20分に設定されてるからまさかあんなに大きい空港だとは思ってなかった。デルターデルタの乗り継ぎなんでLAでチェックインしてるからおいてきぼりになる事はまずないんだけど、コーヒーを飲む時間もなかった。さてとやっとブエノスアイレス到着。


過去一番遠い場所(日本からね)&初南米レコーディングだ〜なんて思ってた割にタクシーで市内に入ると景色がパリのようなウィーンのような感じで、遠い国に来た感じがあまりしない。フローレンシアと待ち合わせ場所に選んだ、カフェ・トルトーニもウイーンの伝統あるカフェみたいな佇まい。宿泊はフローレンシアの自宅に泊めてもらったんですが、旦那のエルナンの手料理が本当に美味しくてね。アルゼンチンと言えば、やっぱり肉!ですけどエルナンと肉屋に行って街の人達があ〜だこ〜だ言いながら肉を買っていくのは興味深いですね。スペイン語話してるんでも勿論何を言ってるかは分かりませんが、こんな料理に使うから肩肉のどこどこをどれくらいの厚さでくれ〜みたいなやり取りを一人ひとりするわけです。アメリカもそうなですが、同じ肩肉でもチャック・ロースト、チャック・アイ、チャック・テンド、ショルダー・ローストとか名前があれこれあるんで多分そういうやり取りをしてるんでしょう。LAでも食材の名前は未だにスーパー行ってもiPhoneで調べながら買い物します。

素晴らしいレコーディング

スタジオはエルピエというスタジオでした。ファコンドとフローレンシア

スタジオはエルピエ (HP>>)というスタジオでした。ファコンドとフローレンシア

さてレコーディングはエンジニアのファコンド(フローレンシアの紹介)がとても優秀でこれと言ったトラブルもなく、素晴らしいレコーディングができました。だいたいどこの国でも街でもそうですけど、いいミュージシャンといいエンジニアがいれば物事はフツーに進み、素晴らしいレコーディングができます。今回もまさにそうでしたね。フローレンシアが途中で試したい事もファコンドが全部テキパキとセッティングを変えて試しミックスまでして終了。フローレンシアは演奏も歌もめちゃ上手いのでセッティングさえ決まってしまえばどちらも2テイクか3テイクで収めてきます。本当に実力のある素晴らしいアーティストです。ただスタジオに入ってから凄くアイディアが湧くタイプなので、僕の方からディレクションする必要がありましたね。あそこをもっとこうするのはどう?テンポをここからフリーにするのはどうかな?とかね。日本サイドにオッケーもらったデモトラックとあまりに違うテイクになってもそれはそれで困るし、ドラマに合うかどうかが今回の一番大事な部分なので。

「心がポキッとね(涙)」。。。

さて、レコーディングの次の日唯一のオフ日だったので市内見学。もともと体力がないのに、折角ブエノスアイレスまで来たんだからと張り切って歩いてすっかりヘトヘトになった夕方、一番「心がポキッとね」な事が起きました。夕方になってさてそろそろ帰ろうかなと思ってたら背負ってたリュックに何かかかったような感じがして、「鳥のフンか〜?」と思ったら、近くにいたおばさんに「ハトの糞だ、ハトの糞」と言われて、リュックを下ろしてみたらリュックにベットリ、鶯色の液体が(汗)。髪やジーパンにもかかっていて、そのおばさんが親切に「これで拭きなさい」と渡してくれたティッシュを受け取った次の習慣足元のリュックを見たらもう無いんです(涙)。というわけでパスポートとアメリカで使っていたiPhoneと旅行用のイヤフォン等、スられたんです、、、本当に一瞬でした。ブエノスアイレスが治安が悪い事は事前に多少知ってましたけど、ヤラレましたね。その足で警察に行って保険とか新しいパスポートのためにレポートを書いてもらった時に聞きましたけど、よくある手口で、さらに日本人の男性が狙われやすいそうです。何故かと言うとスリの集団は盗んだものを転売するのが目的なんですが、日本人の男性は必ずと言っていいほど複数のデジタルガジェットを持っているので、標的にするのにちょうどいいと。ケガがなかったのが何より(モノを盗られまいとして抵抗して刺されたフランス人もいたそうなので)でした。財布と日本の携帯はジーパンの前ポケットに入れてあったので無事だったのはラッキー(?)

パスポート再発行は大変!!ブエノスアイレス遠し。。

ただ面倒だったのはその後。海外でパスポートを盗まれたのは初めてだったんですが、海外の日本大使館で新しいパスポートを発行してもらうには日本の戸籍謄本が必要なんです(コピーとかPDFでも可)。さっそく日本の事務所ミラクルバスに連絡して、戸籍謄本取得のお願い。ところが、戸籍謄本を代理人が取得するには本人の委任状の”実物(コピー不可)”が必要なんですね。知らなかった(汗)。それで東京から委任状のコピーを送ってもらってサインして東京に送り返して、区役所に提出してもらって、そのPDFを送り返してもらう〜というプロセスを経てやっと新しいパスポートをゲット。パスポートの発行自体は必要書類が揃ったら半日くらいですかね。当初の予定ではフローレンシアとのレコーディングが終わった後、データを東京に送りLAに戻り次の仕事をLAで続ける予定でした。僕のパスポートにはアメリカのワーキングビザのスタンプが押されているんですが、そのスタンプがないパスポートではアメリカに再入国できないんですね。一般の旅行者の場合は自分のパスポートの番号で新たにESTAを取得すればアメリカに入国できますよ。

ブエノスアイレスの観光案内で定番の元オペラ座を改装したアテネ書店

ブエノスアイレスの観光案内で定番の元オペラ座を改装したアテネ書店

他に選択肢がないので、ブエノスアイレスから地球の反対側の東京に帰ることに。急で空席の有無の関係もあり、選択肢としてはドバイ経由、パリ経由、リオデジャネイロ経由、トルコ経由といくつかあるんですが、時間的に最短で帰る事ができるフランクフルト経由をチョイス。それでも25時間(汗)。せっかくだからパリで遊んで帰ろうかなとも思ったんですが、パリ経由だと46時間(単純に接続が悪い)で、さらにパリで数日遊んで帰ったら東京のスタッフに張り倒されるかもしれないので断念。いや〜ブエノスアイレス遠し。4月1日に搭乗して、羽田に降りたら4月3日でした。ちなみに僕の誕生日は4月2日なので機上で誕生日を過ごしてしまいました(笑)。というわけで皆さんも海外旅行の際は戸籍謄本を持ち歩くってのはありかもしれませんよ。発行されてから半年間は有効だそうです。


【瀬川英史の「LA Graffiti」:Back Number】

瀬川 英史(せがわえいし)
CM音楽は過去に2500本以上手がける。海外からもオファーを受け2013年「Rolex And Icons」のCM楽曲を書き下ろした。映画「偉大なる、しゅららぼん」「HK/変態仮面」「女子ーズ」、ドラマ「最高の離婚」「アオイホノオ」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「神の数式」「超常現象」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。



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