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REPORT

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08
Jun.2016
インタビュー

YAMAHA MONTAGE 開発者インタビュー 〜キーワードは「多次元」と「リズム同期」〜(後編)

yamaha


YAMAHA MONTAGE 開発者インタビュー(前編)では、MONTAGE開発の原点思想である「多次元」と「リズム同期」という2つのキーワードを切り口に会話が進行。開発者お二方のフラグシップシンセリニューアルにかける想いが伝わってくる内容でした。後編でもさらにこの流れが進み、熱いインタビューになりました。まずは肝心となるMONTAGEの音源部分についてから、話を始めましょう!

製品概要

montage2.001

出席者

ヤマハ株式会社 楽器・音響開発本部
楽器開発統括部 電子楽器開発部 DE開発グループ 技師補
大田 慎一

ヤマハ株式会社 楽器・音響営業本部
楽器営業統括部 ProMusic営業部 シンセマーケティング課 課長代理
伊藤 章悟

開発者インタビュー

ヤマハのノウハウが一大結集したハイブリッド音源

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Rock oN (以下略 R):では、中心になる音源についてお伺いしたいと思います。「Motion Control Synthesis Engine」はAWM2音源とFM-X音源のハイブリッドですね。まず、AWM2音源ですが、確かMOTIFにもAWM2音源は搭載されていたと思いますが、MOTIFのAWM2音源とMONTAGEのAWM2音源はどのような違いがあるのですか?

大田 慎一氏 (以下略 大):構成に関しては変わりないですが、この MONTAGE から新世代の音源になってまして、AWM2 部分も様々な点で改良がされています。それにより、今まで以上に高音質な音源となっています。また、コンテンツ1つ1つの作り込みがより細かくなっています。ベロシティによって波形を切り替える数も、MOTIFの時と比べると、かなり増やし、分解能を上げています。

伊藤 章悟氏 (以下略 伊):MONTAGEのPCMプリセット波形5.5GBのうち、MOTIFから持ってきたのはMOTIF XFの740MBだけで、残りは全部、MONTAGE用に新規に用意した物です。その大半がMONTAGE用に新規で録り直しました。

R:では、だいぶ違う音が聴けるんですね!?

大:サンプリングやボイシング等の音色制作は、これまで何回も繰り返しながらノウハウを積み上げて来ていますので、クオリティについてはどんどん上がって来ています。例えば、ピアノの波形をベロシティごとに1つ1つクオリティ高く録ってそれを単純に鳴らしても、全体で聞くとイマイチなんです。鍵盤と実際に出てくる音のチューニングが凄く大切で、そこからさらに作り込んで行くんです。色んなプレイヤーの皆様からの評価を頂き、作り直して、また評価を行い、また作り直して、、、そういった過程を何度も繰り返し、最終的に作り込んで行きます。そういう所に弊社ならではの貴重なノウハウが存在するんです。

R:ある展示会場で、御社の方が「そこの真面目さは他のメーカーさんに負けない。」とおっしゃってたのを覚えています。

伊:そうですか(笑)。

_DSC5915

伊:看板になるピアノはCFXです。3年くらいかけて録り直していますよ。

R:ピアノはメーカー的にも絶対的に質の高い音が求められますよね。

伊:はい。また、ダウンロードでご提供する「Bosendorfer Model290 Imperial」もMONTAGE用に新たに作った物です。

R:現在、ソフトシンセのピアノ音源がたくさんありますが、そういった中でのアドバンテージはどこだと思いますか?

伊:ソフトシンセは大容量ならではの音の豊かさや味があると思いますが、YAMAHAの看板、特にプリセットの若い番号の音は、ライブのように色々な音が鳴っている中でもちゃんとピアノの音として主張してくれるバランスの良さが抜群に優れています。単純に波形の容量で比較すると、ソフトシンセの方が10倍くらい使っているかも知れませんが、そんなに容量の差があっても、プロの方々がずっとMOTIFのピアノで弾いてくれていることが証明するように、ピアノとしての存在感としては全然負けている気はしないですね。

ライブラリ素材の良さを活かすD/A回路の実力

R:DAWに取り込む際ですが、優れたサウンドクオリティを保つためにも、MONTAGEのUSBオーディオMIDIインターフェース機能を使い、PCへはデジタルでダイレクトに転送した方がいいんでしょうか?

_DSC5828伊:実は、一旦アナログで出して使って頂く方がお勧めということもあるんですよ。出力のD/A回路にもかなり手を入れています。MOTIFの時も電源回路を改良し、出音が良くなるように手を入れていたんですが、MONTAGEでは更に手を入れました。「ピュア・アナログサーキット」と呼んでいます。その結果、倍音成分がしっかり出て、かつ位相が狂わない様になっており、素材が本来持っている良さをしっかり伝えられるよう、かなり手間をかけて開発しています。USBを通ってしまうと、その効果が伝わりにくい所があるんです。是非、D/Aから出た音をプッシュしたいな、と思っています。

R:意外ですね、驚きです! MONTAGEがアナウンスされた時に、電源の部分が違うという事は書いてあったんですが、実際、回路的にどのように変えたんですか?

大:詳しくは話せないのですが、アナログ回路や部品の選定等、色々な改良を施しています。従来は、高域になると位相がずれる傾向があったんですが、今回の改良により、高域まで位相がほぼフラットな状態になっています。これは元々素材が持っていた倍音が忠実に再現されるという事に繋がるんです。

伊:このような出音に関わるチューニングを、メインLRアウトとアサイナブルアウトの両方に施しています。単に高級パーツを組み合わせているだけではなく、楽器の良さをベストな状態で出力出来るような作り込みを工夫しています。

R:その話を聞いて思い出したんですが、FMシンセベースの音としてTX81ZというFM音源が有名で、一時期、もの凄く人気がありましたよね。

伊:はい、LatelyBassですね。(笑)

R:ユーザーの間で、あの音の太さは一体何でだろうということで、D/Aやオペアンプといった回路的な要素に原因があるんじゃないかと話題になっていたんです。「MONTAGEのD/A回路を使用した音を聴いて欲しい」という姿勢は、DAW全盛の昨今では新しいと思います!

伊:もちろんですがUSB経由についても、ノイズレスですし、一番「素」の音に近いといったことでメリットがありますよ。

Super Knob X Motion Sequencerで生まれる新次元のサウンド

_DSC5844R:では、操作しながらお願いしたいんですが、個人的こだわりの所をお伺いしていいですか?

大:(MONTAGEを演奏しながら)一番面白いのは、やっぱりSuper Knobで多次元な音変化が出来るっていう所ですが、それをオートメーションで動かせるんです。Motion SequencerでもSuper Knobを動かせることができます。今出しているこの音色はFM-X音源だけで作っていますが、FMが作る音変化が自分的に好きな音の1つです。(音色を変えて)こんな風に、CFXピアノからFMのエレピ、そしてDXエレピにモーフィング的にスムーズに音を変えていくことも出来るんです。

また、「シーン」機能を使えば、例えばエレピとストリングスをレイヤーしたサウンドで、最初はエレピとストリングスを鳴らしたい、あるシーンではストリングスだけのバランスを落としたい、あるシーンではストリングスだけにしたい、アタックを弱めたい、というのをそれぞれ作っておき、その状態を瞬時に呼び出せます。

R:アルぺジエーターでドラムを鳴らすと、同じパターンで単調になってしまうんですが、シーンを切り替えてパターンを変化させ、動きを作れて面白かったです。

大:アルペジオとMotion Sequencerのタイプを変更する事も出来ますよ。

R:本来、PCM音源はエディットの幅が少ないんですが、MONTAGEはPCM音源に加えてFM音源の両者が両立しているのが凄いですよね。PCMで録音した音素材はFMでは再現出来ませんが、音に鋭いアタックを持たせたり時間変化していくシンセサイズはFMの方が得意なので、PCMの良い所とFMの良い所が融合して使えるというインパクトがあります。FM-Xになってオペレーターとアルゴリズムが増え、8本のスライダーで変調量をコントロール出来るそうなので、色々試してみたいですね!

_DSC5836

新世代シンセを投影する曲面基調デザイン

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R:では、プロダクトデザインについてお伺いしたいのですが、テーマはありましたか?

大:新しい世代のシンセサイザーとしてイメージを一新したいという思いが起点にありました。今までの弊社シンセのデザインは直線を基調にすることが多かったんですが、MONTAGEでは曲面を強調したのと、ハードシンセならではの所有欲を満たす高級感を出したいと思いました。この思いをベースにしてデザイナーとやり取りを重ね、最終的にアルミニウム素材を選択し、この形に収まりました。

伊:この背面部分も(指指しながら)微妙に反っていて細かく作り込んでるんですよ。

R:そう、この箇所でオーディエンスのパッションとプレイヤーのパッションが交錯するんですよね?御社YouTubeで開発ストーリーを見たんですが。。。(笑)

大:はい、そうなんです!あと、ボタンの光に関しては、とにかく派手にしたかったんです(笑)。MONTAGEでは、音の変化をキーワードにしていますので、単純に音の変化だけじゃなく視覚的にも訴えるようにしたかったんです。ボタン1つ1つに指標を持たせたり、音の変化に合わせてSuper Knobが色を変えるようにすることで、演奏者と楽器が対話するような世界を作りたいと思いました。全てのスイッチを面発光するようにしていて、

・点灯=有効
・消灯=無効
・中間点灯=有効だけど押されていない

という状態を示すようにしています。アサイナブルスイッチに関しても、

・消灯=アサインなし
・中間点灯=アサイン済み

を示しています。スイッチがいっぱいあると、何を触っていいか分からなくなるので、そこを緩和するために発光の状態で区別できるようにしてるんです。

R:プリセットを変えた瞬間にボタンが半点灯している箇所は、「押せますよ!」と意思表示してくれていてとても分かりやすいですよね!

_DSC4603

R:MONTAGEを使ってほしいユーザーはどんな風に描いてますか?

伊:まず第一に、ハードシンセをずっと欲しいは思っていたんだけど、決定打となる理由がなく買うには至らなかった。そんな感じで10〜15年も過ぎてしまったような方が結構いらっしゃるようで、そういう方々に、この新しい音表現を目指しているMONTAGEを使って頂きたいと思います。買い替え需要になるので、年齢層としては平均40代以上かもしれませんね。第二としては、これまでシンセに見向きもしなかったけど新しい音表現を探している、そんな人にアピールして行きたいです。20代の意欲的な若手クリエイター、プレイヤーの方に是非使ってもらいたいです。

R:若いクリエイターが使いたくなるポイントとして、流行している音楽や音色があると思うんですが、そういった音楽やサウンドのトレンドも研究されるんですか?

大:もちろん、ワールドワイドで聴いてます!

伊:プリセットを作っているスタッフは海外の方が多いんですよ。マドンナのマニピュレーターをやっている人やレディー・ガガを手掛けている人なども含まれています。先端から定番分野までバランス良く、コンペを経て残った選りすぐりの音色がプリセットに入っています。

ネーミングに込められたMONTAGEの音世界

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R:MONTAGEという名前ですが、よく商標を取れましたね! MONTAGEの名前に込められた意味はありますか?

伊:はい、世界で使えるように、このネーミングを押さえるのは結構大変でした。

大:関連ない映像を切り貼りして独特な映像のリズム感を作るMONTAGE技法というのがありますが、その映像世界と、MONTAGEのMotion Control、Motion Sequencer、Super Knobで生み出されるサウンドの世界観がすごく近いんです。音と映像の違いはあれど、独自のリズム感を作り出したり、断片がどんどん切り替わって行く世界。そこに大きな類似性があり、そこからMONTAGEという名前にしました。

伊:音楽の世界で「MONTAGEと言えば、このシンセから出てくる音」という風に、広くお客様に認知して貰えれば我々としては嬉しいです。

R:なかなかフラッグシップをリニューアルするのに消極的な空気がある中、MONTAGEがその空気を変える製品になればいいですね!

伊:そうですね! MOTIFは15年続き、累計15万台以上売って来ています。それだけの物を築いて来たのに、それを止め、新しい物にするっていうのは簡単な覚悟では出来ないので、大きな意気込みをMONTAGEに込めています。これから長き渡り、沢山のお客様に使って頂きたいです。

大:ソフトシンセはこれからもどんどん進化して行くと思いますが、一方、ハードシンセサイザーというのは奏者とシンセ内部のシステムをいかに繋ぐか、という所が凄く重要だと思っていて、そこをもっと進化させるべきと思っています。エンジン部分もそうなんですが、それ以上にハードならではの奏者と音源システムとのやり取り、インターフェースが進化して行かなきゃいけないと思っています。

伊:弊社に限った話ではないですが、リーマンショックの頃から、シンセの市場が全体的に右肩下がりになって来たと思うんですが、ここ2~3年、世界的に見ても復調傾向であると思います。また、昨年くらいからMoogやDave Smithを始めとして、アナログが再び盛り上がっていますが、今回、弊社はアナログじゃなく、対極のフルデジタルで臨んでる訳ですけど、我々はこのMONTAGEでなければ出せない音の世界があるので、シンセサイザー全体の底上げの一端を担っていければと思っています。ヤマハしか出来ない事を、このMONTAGEで頑張って行きたいです。

R:最後にMOTIFの現行ユーザーや、これからシンセサイザーを買おうと思ってる皆さんにメッセージを頂ければと思います。

大:MONTAGEはプレイヤーが込めた想いに対してちゃんと応えてくれる楽器というのを目指して開発しましたので、是非弾き倒して、皆さんが思い描いている音世界、独自の音楽を広げて頂けたら幸せだと思います!

伊:ヤマハはシンセを作り始めて42年目になりますが、MOTIFやDXが築いてきた伝統をしっかり押さえつつ、それらを今の技術や新しい発想で組み合わせ、これから5年、10年と使って貰えるような楽器として自信を持って作りました。MONTAGEで生まれた音楽がシーンに登場し、10年後、15年後に、あの時MONTAGEがこういう音楽を作ったよねと言われるような足跡を残せたらなと思います!



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    前編はこちらから
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      記事内に掲載されている価格は 2016年6月8日 時点での価格となります。

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