製品レビュー、試聴からサポート情報、キャンペーンまで製品別にフォーカス。活用のヒントがここに集結。
Rock on スタッフがみなさんに様々な機材の深層世界をご紹介してきた「LOVELY LOVELY PRODUCTS!」もこれで最終章を迎えます。フィナーレは私、シンコーン清水による「マイクプリアンプの深層世界」を体感いただきます。
レコーディングのサウンドキャラクターを決めるのはマイクか、プリかという議論になるほど、収録サウンドを決める決定的要素である「マイクプリアンプ」。ここでは、原音重視 CLEAN派の「Sym・Proceed / SP-MP2」、ビンテージの風格漂う「Chandler Limited TG2」、現在進行系のNEVEサウンド「Rupert Neve Designs / R6+511」という3つの特徴的なマイクプリアンプを比較します。それぞれ実際のサウンドを聴きながら、深層世界に触れていただければと思います!
Sym・Proceed / SP-MP2
Sym・Proceed / SP-MP2の透明度、高いトランジェント、均一なch設計がマイクの特性と個性を素直に引き上げる様子を是非試聴ください。
・女性Vo素材 (後半Dry素材へ)
・アコースティックギター
※SoundCloudは圧縮音声ファイルです。本当のトランスパレントサウンドはぜひ店頭で体感ください!
◎素材収録環境
Mic | Neumann U87Ai |
Cable | mogami #2549 |
MicPreamp | Sym・Proceed SP-MP2 |
DAW | ProTools HDX、Pro Tools HD12 [ セッション設定192kHz 32bit Frout ]、HD I/O 8×8×8(internalClock) |
CPU | Apple Mac Pro Early2009 (2.66GHz Quad Intel Xeon、OSX 10.9.5) |
※アウトボードやエフェクトなどの処理は一切行っていません
◎捉えたサウンドをI/Oへ届ける、DAW時代のマイクプリアンプ
40KHzまで±0.03dBという極めてフラットな周波数特性、高速と表現するべきトランジェント特性は他のマイクソリューション収録では再現できない『失われた音』を呼び起こします。
超低域から倍音まで透明に再現しI/Oへと届ける、それはまさにDAW上での後処理の余地を最大限に残すことと同義です。
クリアなマイクロフォンであればその特徴は顕著に、そして真空管マイクが持つ濃密な中域、リボンマイクが捉える妖艶な空気感というように、『マイクプリでサウンドに色付けを行わない』このことは、マイクが持つサウンドキャラクターをより明瞭なものにするということを意味します。
それはパーツ選定と本体設計からも顕著に見て取れます。
透明感の再現のために
・一般的なバラ/アンバラのプリアンプ回路よりも1/3にまで抑え接点を最小化。
・24ポジションのロータリー・スイッチによって可変ではなく固定抵抗を切り替え。
・チップ抵抗に比べ割高な帰還抵抗を採用。
・-1dB&-2dBアッテネートによるFineチューニング
・SP-MP2は3dBのステップゲインとなっていますが、-1dB,-2dBのアッテネーターが搭載されており1dBずつのコントロールが可能です。SP-MP2ではchのごとの誤差が0.05dB以下、これはいかなるゲイン設定にしても保持されます。
ステレオ素材録音にもLR間の正確なゲインコントロールが可能なため、フィールド等ステレオマイクロフォンでの収録にも絶大なアドバンテージを持っているといえるでしょう。
高いトランジェントのために
・信号の伝達効率に優れている単線のメッキ・テフロン線を採用
そのほかにもSP-MP4では外部であった電源トランスもSP-MP2からは内臓。筐体特性を考慮し音質を追求、厳選したものとなっています。持ち運びが容易になったこともSP-MP2の魅力ですね。ピュアというだけでなく66dBもの高Gainにより真空管/リボンマイクなどに真摯に向き合える能力もしっかりとおさえています。
◎プリアンプの特性を活かすならこの組み合わせ
個人的には透明度、高いトランジェント、均一なch設計、全ての特徴を活かし切るならやはり極小ダイアフラムのトランジェントに優れたマイクロフォンを採用した、アタック成分の多いInstrumentsステレオ収録でしょう。信号の減衰に至るまで逃さず捉えるため収録空間の選択も重要なファクターとなるはずです。SANKEN CO-100KやEarthworks QTC50mpなどは特性を考慮すれば最適な選択肢となるでしょう。
◎素性の良さはユーザーの遊び心にもしっかり応える
透明感やトランジェントを活かす先ほどの選択肢とは異なり、マイクの特性を顕著に引き上げるという面では、遊びごころのある選択肢も可能です。
個人的にSP-MP2との組み合わせで使用したいマイクはLAUTEN AUDIOのLT-386 Eden。
LT-386 Edenは「Forward」「Neutral」 「Gentle」と3つの周波数特性パターンを切り替えることができるチューブマイク。暖かくヴィンテージな質感のサウンドからクリアでオープンなサウンドまで得られることができます。SP-MP2との組み合わせにより、そのモードの切り替えによるサウンドの違いを顕著に再現。ソースや楽曲が求めるキャラクターに1本で多彩に対応できるソリューションの出来上がりです。
CHANDLER LIMITED / TG2
『NEVEとAPIの融合的なサウンド』と称されるそのサウンドの魅力!
・アコースティックギター
1 : 限定Back to Basicモデル “ファット・サウンド・モード” ON Gain設定+30dB
2 : 限定Back to Basicモデル “ファット・サウンド・モード” ON Gain設定+45dB
アコースティックギターの録音では異なるInputGain設定とBack to Basic “ファット・サウンド・モード”ONでのサウンドも録音しています。GAIN設定は+30dB、+45dBのものとなります。Vocal素材ではGAIN+30dBとなります。女性ボーカルのオープンなサウンドを確認できると思います。
※SoundCloudは圧縮音声ファイルです。
◎素材収録環境
Mic | Neumann U87Ai |
Cable | mogami #2549 |
MicPreamp | Chandler Limited TG2 |
DAW | ProTools HDX、Pro Tools HD12 [ セッション設定192kHz 32bit Frout ]、HD I/O 8×8×8(internalClock) |
CPU | Apple Mac Pro Early2009 (2.66GHz Quad Intel Xeon、OSX 10.9.5) |
※アウトボードやエフェクトなどの処理は一切行っていません
◎INPUT と OUTPUT の調整で作り出す多彩なヴィンテージサウンド!
Chandler Limited / TG2は『NEVEとAPIの融合的なサウンド』と称されるオープンかつ、パンチのあるサウンドキャラクターとなっています。TG2では2つのノブが搭載されており、その二つのノブの設定で多彩なサウンドを作り出すことができます。赤色のノブが『Input』青色のノブが『Output』となっています。InputGainを高めに設定した場合、ヴィンテージサウンドと言われるような中低域にパンチ感があり倍音成分が多く含まれたサウンドを得ることができます。
さらにInputGainの高めの設定では、100Hzあたりから緩やかに低域がロールオフするという特徴を持っています。このことにより、より中低域の密度が増したように感じ、パンチ感が強調されるのでしょう。そのサウンドのパワーからギターのアンプ録音の際に使われることの多いTG2ですが、是非ボーカル録音でも使用していただきたいです!Input,OutputGAINの設定によりクリアなサウンドのボーカルやオケに埋もれないガッツのあるボーカルなど幅広く対応が可能です。
◎2chを混ぜて出力する、Summing Switch
TG2の特徴的な機能ひとつにサミングスイッチがあります。このスイッチをONにする両チャンネルの音がMixされます。ギターアンプへマイクを複数立てろシーンがあると思います。例えばSM57,MD421の2本を使用したとします。この2本のマイクのMixし音を1トラックに録音できるというわけです。エンジニアの方の中では、このMixをコンソールで行う方もいると思いますが、TG2のサミングスイッチを使用することによって少ない接点でDAWを音を送ることができるため、音の劣化を考慮するとサウンド的に有利といえるでしょう。
◎台数限定のモディファイヴァージョン”BACK TO BASICS”
Chandler Limitedの代理店であるアンブレラカンパニーでは「ハードウェアー機材の素晴らしさ」を伝えるプログラムとして、CHANDLER LIMITED TG2 マイクプリアンプ/DIをモディファイした “TG2(BACK TO BASICS)“を発表しています。
BACK TO BASICSとは、代理店であるアンブレラカンパニーが企画するハードウェアー機材の素晴らしさを伝えるプログラムとなっており “TG2(BACK TO BASICS)“ではマイクロフォニックノイズを対策したメカニカルなチューニングにより、オリジナルTG2のサウンドの魅力を100%引きだすだけでなく、メーカー直伝のファット・サウンド・モードを追加搭載しています。上記でもお伝えしましたが、TG2はハイゲインの設定で使用した場合、低域が緩やかにロールオフする特性を持っていますがこのモードで使用すると、よりフラットな特性を得ることができます。
下の図はアンブレラカンパニーのページに掲載されている通常のTG2と”BACK TO BASICS”の比較の図です。一番上のライン(+75dBの場合)で説明すると2本のラインが重なって途中で枝分かれしているのが確認できると思います。黄色は“ノーマル仕様のTG2”の周波数レスポンス、水色が“TG2(Back to Basics)となっています。”BACK TO BASICS”がフラットな特性であることがわかります。
Rupert Neve Designs / R6+511
レジェンド、ルパート・ニーヴ氏による現在進行系のNEVEサウンドがここに!
・アコースティックギター
Silk OFF
Silk ON(Texture 50%)
Silk ON(Texture 100%)
※SoundCloudは圧縮音声ファイルです。
◎素材収録環境
Mic | Neumann U87Ai |
Cable | mogami #2549 |
MicPreamp | Rupert Neve Designs / R6+511 |
DAW | ProTools HDX、Pro Tools HD12 [ セッション設定192kHz 32bit Frout ]、HD I/O 8×8×8(internalClock) |
CPU | Apple Mac Pro Early2009 (2.66GHz Quad Intel Xeon、OSX 10.9.5) |
※アウトボードやエフェクトなどの処理は一切行っていません
◎Rupert Neve Designsではおなじみの”Silk”搭載!Textureノブで倍音を調整する!
511はRupert Neve DesignsによるVPR Alliance規格モジュールのマイクプリアンプとなっています。その他にもVPR Alliance規格モジュールとしては、DI/マイクプリ&コンプの517、テープエミュレータの542、コンプレッサーの543、EQの551とラインナップがリリースされています。マイクプリとしては、511と517の両機種となるのですが、511では倍音コントロールのできる”Silk”スイッチがON/OFFできるだけでなく、Texture ノブによってその付加具合を調整できるようになっています。このSilk/ Texture は、出力トランスのネガティブフィードバックを軽減し、NEVEのビンテージデザインに似た周波数レスポンスを再現する機能です。Rupert Neve DesignsのチャンネルストリップであるPortico II ChannelではSilk (Blue)、Silk+(Red)と二つのタイプから選択ができます。Silk (Blue)では、中高域がはっきりとし、Silk+(Red)では低域がリッチになる印象です。
511では後者であるSilk+(Red)が搭載されており、従来の機種における最大設定値の約10倍のTHDを加算できるようになっています。これによってサウンドキャラクターは無限に広がりを見せてくれます。クリーンな音質でオケに埋もれないようにしたいという場合はTextureは絞り気味の設定がいいでしょう。Textureが高めの設定では、1073等OLD NEVEマイクプリで得られる心地よいサチュレーションの付加されたまさにシルキーなサウンドを手にいれることができます。このTextureノブの設定は、サウンドを聴きながら徐々に上げていき調整するという使い方がナチュラルな音を得るポイントとなるでしょう。
◎可変式ハイパス・フィルターでソースを磨きあげる!
511で搭載されているハイパス・フィルター(HPF)は20Hz~250Hzの可変式となっています。特定のポイントでのフィルターのON/OFFが搭載されているマイクプリは多いですが、511では可変式となることにより、削りすぎずに不要なLow成分だけ除去するという使い方のほか、積極的な音作りでもこのフィルターを使うことができます。先ほど紹介したSilkモードとこのフィルター組み合わせによって、Rupert Neve Designs / 511はクリエイティブなマイクプリへと変貌するのです!
◎自社製モジュールの性能を最大限発揮するため、開発された電源ラック”R6”
VPR Alliance用のラックはAPIはもちろんのこと、あらゆるメーカーからリリースされています。ラックによってサウンドが変化するというのも事実としてありますが、モジュールの力を発揮するという意味ではやはり電源の供給量が重要となってきます。Rupert Neve Designs R6では6基のモジュールに対して、必要な規格電源容量の150%ものパワーを供給できる設計となっているためお持ちのモジュールを余裕のある状態でご使用いただけます。また、フロントのメーターにより電源供給の状況を常にチェックできるので安心感はさらに向上します。またR6ではリンク機能も搭載しているので、コンプレッサーのステレオ使用時などの時に大変便利です!R6はVPRモジュール使用時に抱える電源不足の不安を解消するだけでなく、利便性も兼ね揃えたラックとなっています。
個人的な意見になりますが、このR6電源ラックでは500シリーズに感じていた音の細くなってしまう印象がなくモジュールが持つ性能が最大限にと発揮されている印象を受けました。それはRupert Neve Designs製モジュールに限らず、他社モジュールでも感じることができます。
◎プリアンプの特性を活かすならこの組み合わせ
R6+511で導入された場合、残り5モジュール空きができます。 他のモジュールと組み合わせて自分だけのチャンネルストリップを構築してみてはいかがでしょうか?!511のSilkモードによりビンテージ感あふれるサウンドを手にいれることができます。そしてさらにチューブコンプレッサーとの組み合わせによりサウンドに温かみ、なめらかさを付加してみましょう!オススメはRetro Instruments / Doublewide Compressor!このサイズに4本ものNOS 6BJ6バリアブルミュー・チューブが搭載されており、サイズに劣ることのないサウンドを提供してくれます。511+Doublewide Compressorでの組み合わせでは、ヴォーカル録音で一番活躍するでしょう!倍音を可変でコントロールできるSilkモード+Doublewideの持つ温かみのあるチューブサウンドがヴォーカルソースの持つキャラクターや存在感を極限まで引き立てます!!
記事内に掲載されている価格は 2016年10月12日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ