Moogが箱に収まるオールインワン・アナログ・シンセシス・スタジオ Moog Sound Studio (開封レビューはこちら)に続いて、新たに登場したSound Studio Semi Modular Bundleは人気のセミ・モジュラー・シンセ3兄弟(Mother-32 / DFAM / Subharmonicon)に、ラックマウント・キットと4chミキサー、パッチケーブル・オーガナイザー等をパッケージングした最強のMoogバンドルです。
今年2/9に LUSH HUB で行われたウェビナー「大乱闘シンセブラザーズ 〜Moogセミモジュラー3兄弟 vs KORGデジタル3兄弟~」で大活躍していたこのMoogセミモジュラー3兄弟の魅力を紐解きつつ、キラキラなトラック作りにチャレンジしてみました!
MOOG Mother-32 と Subharmonicon オシレーター聞き比べ
各周波数帯に表示されるグラフィカルなバーの下部に、ノイズのざわつきが見られます。波形を見るとsquare波(矩形波)の横軸が水平でなく若干傾いていて、そのため本来は奇数倍音のみを持つsquare波が偶数倍音も発生している事が確認できます。同様にsaw(ノコギリ波)も緩やかなカーブを描いており、完全な波形が出力されていないという事が確認できますが、その不完全な形がMother-32の個性を生み出しています。
Mother-32 に比べてノイズが減っています。square波では垂直軸と水平軸の角度が直角に近づき、偶数倍音のレベルが小さくなっています。波形の端にギザギザのトゲが見られ、ここがSubharmoniconのきらびやかなサウンドを象徴しています。そして Mother-32 にはない pluse波が搭載されているのも特徴です。Subharmoniconのクリアーで澄みわたる音色は、波形の歪みとノイズを削ぎ落とした成果といえるでしょう。
オシレーター周波数を分割するサブハーモニック
Subharmoniconが生み出すサブハーモニクスは一般的に呼ばれている上音の整数倍音とは異なり、初期基本周波数の除算から生まれます。Subharmonicon本体の SUB FREQ ツマミを左に回して行くと、基音の周波数を分割したピッチが次々に現れます。880Hzを基音にし、2次整数倍音の1760Hzとの間が2つ、3つ、4つと、次々に分割されて行く様子が動画でわかります。
Mother-32のアナログフィルターをチェック
ワタクシは以前、Moog MINITAUR のフィルターにソフトシンセのオシレーター通していた事があったので、Mother-32 ではどうなのかと前々から気になっておりました。XFER RECORDS SERUM のノコギリ波をオーディオインターフェイス出力から MOOG Mother-32 の外部音声入力に接続して、アナログフィルターを通過した音と、Mother-32 本体のノコギリ波と比較する実験を行いました。ソフトシンセの音がアナログシンセ同等になってしまう事に衝撃を受ける方もいるのではないでしょうか。
シンセドラムの申し子 DFAM
DFAM(Drummer From Another Mother)を使えば、サンプリング音源とは一味違ったアナログシンセドラムを作り上げることができます。リズムがワンパターンになってしまうとお悩みの方は、同じパターンを作る事の方が難しいこのDFAMをお試しください。定番のシンセドラムからFM変調の金属的な音まで、予測不可能な展開を生み出すことが可能です。
ステレオサミングミキサーがDAW録音でも活躍!
Sound Studio Semi Modular Bundleに付属するサミングミキサーはシンセ3兄弟に電源を供給できるばかりでなく、3つのオーディオアウトプットをステレオにまとめ、ヘッドホンで集中して音楽制作できてしまう優れものです。今回は3兄弟を使ってデモトラックを作るにあたり、Mother-32 と DFAM をサミングミキサーLチャンネル、SubharmoniconをサミングミキサーRチャンネルで使用し、Universal Audio Apollo Twin にステレオ入力しました。Mother-32 / DFAM グループ と Subharmoniconを別々に入力することにより、ApolloのDSPエフェクトを2グループに分けて使用することができます。DFAMをドラムに、Mother-32をベースに、Subharmoniconを上物に使用する方が多いと思いますので、この方法を使えばリズム隊と上物のエフェクトを別々にエフェクトかけ録りができてしまうのです。
Sound Studio Semi Modular Bundleを使って、いざ制作!
Subharmoniconは線が細そうに見えながらトラック中では確かな存在感を発揮してくれ、上へと抜けて行くサウンドとリバーブセンドしたサウンドが絡み合って一つの世界感を作り出します。アナログシンセの濃密なサウンドはリバーブの乗りが良く相性ばっちり。DFAMスネア担当の音がビット落ちしたPCMドラムのようで、リズムに新しい色彩を運んでくれました。
Subharmoniconに搭載されたステップシーケンサーの醍醐味はなんと言ってもポリリズムです。一つのパターンからバリエーションが簡単に作れるので、このトラックでは左、右、センターの3回、パターンを少し変えて録音しました。ピンポンディレイとは違ったランダム感が自由気ままな音空間を演出しています。
ポリリズムといえばスティーブ・ライヒを意識せずにはいられません。Subharmoniconのシーケンサーが生み出すポリリズムをベースが8ビートで支えながら、ルートチェンジする事によって上物のコード感を次々と変えて行きます。この手法は昔からよくあるパターンではありますが、Subharmoniconのキラキラサウンドが新鮮に聴かせてくれました。
Subharmoniconの音には透明感がありながらも、高音にFM変調のようなバリを感じるのが非常に特徴的です。このトラックはMother-32はお休みで、DFAMがリズムとベースを兼ねています。低音でもピントがしっかり合っている音はアナログシンセならではの恩恵です。
記事内に掲載されている価格は 2022年3月11日 時点での価格となります。
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