今回から始まったRED先生のAvid講座。まず第一弾はHDXカードとHD Nativeカードの違いについて、掘り下げていこうと思います。
まずは共通点から。これらのカードの共通点は、Pro Tools HDを起動可能な他、HD I/OやHD OMNIなどHDシリーズのインターフェイスを使用することできます。もちろん、SYNC HDも使用可能です。この他にも自動遅延補正が16,383サンプルまで対応している、などPro Tools HDシステムならではの機能が使用可能です。
では、何が違うのでしょうか?
HD Nativeカード
今まではPro Toolsの導入の際に、LEかHDかで金額面にかなりの差がありました。そこへ登場したのがこちらのHD Nativeカード。2010年10月に発表されたこのカードはPro Tools HDシステムを身近にした完全ホスト対応の製品です。2012年9月にはHD Native Thunderboltも発売された事で、より多くの方がPro Tools HDシステムを導入したのではないでしょうか?
今回はHDXとの比較するためにPCIカードタイプを比較致しました。御覧のようにカードの長さが短いハーフレングスサイズとなっています。画面中央に搭載されているヒートシンクの下のチップはFPGIチップという、Pro Toolsのバス管理やI/O管理、ボイスの管理などをしているチップです。これが、Pro Tools HDとして動作する重要な部分となります。
HD Nativeは、カード1枚で256ボイスがサポートされます。(Pro Tools HD 10 以上)I/Oは64chまで拡張可能です。もちろん、SYNC HDも接続可能です。
なお、カードの増設は出来ません。
HDXカード
従来の製品の5倍と言われるHDXですが、 今までのHD CoreやHD Accelの後継機にあたるのがこのカードです。また、今まではHD CoreとHD Accelとの区別がありましたが、HDXカードでは統一されて同じカードを増設するシステムになりました。
製品として出荷されているカードは写真のように金属製の黒いカバーが装着されています。カバーの中心にはファンが装着されていますね。この写真は様々なWebサイトでも見ることができます。
今回は特別にそのカバーを外してみたいと思います!
カバーを外すと、2個目のFPGIチップと共に18組のDSPチップが姿を表します。これらのDSPチップはすべてにRAMチップを装備しています。(小さい方がRAMチップです)
これらのチップがAAX DSPのプラグインを処理します。HD Accel等に搭載されていたDSPチップとは仕組みが異なっていて、18個すべてにRAMチップが搭載されているので、一部プラグイン(特定のDelayやReverbなど)がどのチップでもプロセスできる構造になりました。
お気づきの方もいると思いますが、実はHD Accel等に搭載されていたDSPチップは3種類ありまして、ボイスの管理が出来てRAMが内蔵されているチップが3つ、ボイスの管理は出来ないけど、RAMが内蔵されているチップが3つ、RAM機能のないチップが2つの、計9個のDSPチップから成り立っていました。
ここで問題になるのが、セッションのボイスを増やした時です。従来、セッションのボイス数を増やすとその分DSPチップが埋まり、TDMプラグインの使える数が減っていましたが、HDXではFPGIチップがボイスの管理もしてくれる様になりました。これで18組のDSPチップがフル活用出来るという訳です。
こちらもカード1枚で256ボイスに対応しています。またカードの増設で768ボイスまで対応します。
というわけで、HD NativeとHDXのスペックの差を下記にまとめてみました。
HD Native | HDX | |
DSP | 0 | 18 |
FPGA | 1 | 2 |
AAX DSP | 非対応 | OK |
AAX Native | OK | OK |
最大I/O ch | 64 | 192 |
RAM Cashe | 対応 | 対応 |
SYNC HD | 対応 | 対応 |
サラウンド | 対応 | 対応 |
スループットレイテンシ-(@96KHz) | 1.7ms | 0.7ms |
最大ボイス数 | 256 | 768 |
インストゥルメントトラック | 128 | 128 |
MIDIトラック | 512 | 512 |
AUXトラック | 512 | 512 |
バス | 256 | 256 |
自動遅延補正機能 | 16383 | 16383 |
加工デプス | 32bit Float | 32bit Float |
ミキサーデプス | 64bit | 64bit |
お気づきでしょうか。実はHD NativeとHDXではスループットレイテンシーが異なります。本来ミキサー機能をFPGAチップで処理しているのですが、一部の処理はDSPチップを使用して処理をする部分もあります。
この様に、ミキサー機能を補っているのが確認出来ますね。20トラック程度のセッションですが、このようにDSPも処理をしています。
HDXはDSPチップを搭載しているので、カード内で処理が可能ですが、HD NativeはDSPチップがありません。そのかわり、その処理をコンピューターが行います。その処理の分が遅延となって数字に現れているわけですね。(MBOXなどは、FPGIチップもなく、すべての処理をコンピューターが行うので、その差は歴然ですね。)この辺りは、レコーディング作業をする際に大きく関わってくるポイントとなります。
このように、HDNativeとHDXはプラグインだけではない、大きな差があるのがご理解いただけましたでしょうか。ぜひご購入時の参考にしてくださいね。
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記事内に掲載されている価格は 2014年1月8日 時点での価格となります。
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