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こんにちは。タムラです。
以前パラダイスにてSymphony Studioの記事を掲載しました。
★記事はこちら
Symphony Studio を改めてご紹介
そちらではAPOGEEというブランドについてさらっと紹介しました。が、ベテランのエンジニアさんからよく聞くAD-8000やensambleとはどんな機材なのか…?APOGEEブランドはどこから始まったのか…?まだまだ気になる事が多くありましたので今回はAPOGEEを掘り下げます。
私は気づいたころにはThunderboltケーブルを使っていた青二才なので、この辺は社内の人間や各種記事を漁りながらまとめていきたいと思います。
◎始まりはフィルターから
APOGEEの記念すべき最初の製品は『Apogee / 944』というフィルターです。
フィルターといいましてもEQ的なフィルターではありません。『anti-aliasing filters』と呼ばれアナログ信号をデジタルに変換する際に発生するアンチ・エイリアシング・ノイズを除去するパーツを指します。詳しくは『標本化 、折り返しノイズ』等でご検索くださいませ。
当時各レコーディングスタジオには『PCM3324』という24トラック・デジタル・マルチトラックレコーダーがあったそうな。各チャンネルのフィルターをこのAPOGEE製のフィルターに換装することでさらに高音質での録音が可能になったようです。
◎名機誕生
1991年にここまで改造パーツを販売していたAPOGEEが初めて単体の製品を発売します。その名も『AD-500 & DA-1000』。伝説の名器と言われるAES / EBU のAD/DAコンバータで、今も愛用しているエンジニアさんもいるそうです。お目にかかる事があれば是非音を聞いてみたいですね。
そしてその後の1997年に『AD-8000』が誕生します。
AESやADAT等も出力できるデジタル・オーディオ・コンバーターです。Protools 専用AMBUS(現在使われているDigilinkのひと世代前 の規格だそうです)の設定ではあったものの、現在のオーディオインターフェイスの形に近づいてきました。この機種に搭載されたディザリング(48KHzから44.1KHzに変換、24bitを16bitに変換する際のデジタル処理の一つ)のアルゴリズムである『UV22』は今もプラグイン等で再現されたりしてます。その後発売された録音機材には最初から『UV22』が搭載されるほど当時は画期的な機能でした。今でもCubase,Nuendo,Logicなどの標準プラグインや、マスタリング用途のプラグインでこの名前を見ることができます。メーカーロゴが古いものなので同じ会社だと気づかない方もいるかも知れませんね。
◎PCに繋げるインターフェイスが登場
AD-8000以降もなんやかんや色々な商品が登場しますが2006年に初代『Ensemble』が登場します。
Firewire接続でしたので現在のUSB I/Fと同じ使用感になりました。逆にこの形になったのが2007年と思ったより最近で驚きました。これがAPOGEE社初のオーディオ・インターフェース。これまで憧れのハイエンド製品しかリリースしていなかった中、DAW向けのAPOGEE製品の登場ということで、その当時大きな話題になったそうです。
ここから現在のSymphonyシリーズに繋がるんですね
◎Bob Clearmountain氏とAPOGEE
世界的レコーディングエンジニアBob氏とAPOGEEが密接に関係しているのは有名な話です。Bob氏とAPOGEE社長のBetty Bennet氏がご夫婦なのです。彼を始めとしたエンジニアが求めた音、機材を形にし続けたのがAPOGEEというメーカーの特色です。(最初の製品がカスタムパーツなのも納得ですね。)
今もそのマインドは強く残っておりAPOGEE本社の横には同社が所有するスタジオがありミュージシャン、エンジニアさんのフィードバックを大切にしています。NAMM SHOWやAES NYの際にエンジニアを集めたイベントを毎回企画しているのも有名ですね。
ご興味ある方は、APOGEE本社の訪問記。
記事はこちら2024年のAES NY似合わせて開催されたMaster Classのレポート。
レポートはこちらこれらも合わせてご覧いただければと思います。APOGEEのまた違った一面が見えてくると思います。
◎Bob Clearmountain氏を知ろう
知ろうというのは烏滸がましいですが…改めてBob氏のサウンドを聞いてみました。フワっとした角がない印象ですが、粒はしっかり分離して聞こえる不思議な感じです。形容し辛いですがこれがBob Clearmountainサウンドか..と感銘を受けました。社内のおじさんたちの絶大なる信頼を受けるBob氏の魅力の端っこを知れた気がします。さすが1980年代のサウンドを代表するエンジニア。今聞いても新しさを感じることのできるかと思います。
個人的にAPOGEEのIFはリバーブ感が聞こえやすい印象ですが、これがBob氏のmixの肝なのでしょうか…是非、聞いてみていただければと思います。グラミーを3回も取った実力は色褪せていません。
Bob Clearmountain氏のミックスに憧れますよね。いいものありますよ!
APOGEEはIFはもちろんですが実はBob氏監修のプラグインがラインナップされています。『これであなたもBob Clearmountain!』とはならないですが少しでも近づけるヒントにはなりそうです。
少し紹介します
・Apogee Clearmountain’s Domain
Bob氏のFXチェーンを再現できる強力すぎるマルチFXプラグインです。
収録されたプリセットに今まで手がけた作品の名前が!つまりプリセットを読み込むと名作のmixを紐解くヒントがこのプラグインに集約されています。
・Apogee Clearmountain’s Phases
Bob氏が所有するフランジャー&フェイザーのアナログ機器を忠実に再現したプラグインです。このような貴重なアウトボードもいつか壊れる日が来るかもしれません。このようにデジタルで再現しておく事によって半永久的にサウンドが次の世代へと継承されるのは素敵です。
◎Mixed by Bob Clearmountainを聞こう
・Mr.Big / To Be With You
正直世代ではない私でも聞いた事のあるこの曲はBob氏がミックスを手がけた作品です!曲のパート構成がシンプル故に聞き応えのあるサウンドに仕上がってます。
・甲斐バンド / ラヴ・マイナス・ゼロ
日本人アーティストにも少し携わっていたようで驚きました。(公式音源見つからず….)
また日本人アーティストのクレジットにMixed by Bob Clearmountainと書かれる日が楽しみです。
店頭でお会いした際にはBob Clearmountain氏必聴アルバムがあれば是非教えてください。
記事内に掲載されている価格は 2025年6月3日 時点での価格となります。
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