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SENNHEISERのステレオショットガンマイク「MKH 8018」の新製品発表会が、日本工学院専門学校蒲田校(イマーシブデモルーム)にて行われました。MKH 8018はハイエンドRFコンデンサーマイクとして信頼と実績を得ているMKH 8000シリーズに加わる新たなステレオショットガンマイクです。
この発表会ではMKH 8018の主要な用途の一つである「効果音録音」をテーマに、フォーリー/アンビエンス/効果音録音の最前線で活躍する3名のプロフェッショナル・エンジニアを迎え、録音現場や機材、音へのこだわりについて語っていただくスペシャルトークセッションもありました。
会場にはMKHシリーズのマイクを多数展示。そして映像制作や効果音録音に携わる方、過酷な環境下でも信頼できるマイクを探している方など、大勢の参加者が訪れました。その模様をお伝えします。
効果音録音の最前線で活躍する、3名のプロフェッショナルエンジニアが登壇!
●登壇者プロフィール
加藤 裕介 氏
株式会社ソノロジックデザイン サウンドデザイナー
モバイルタイトルなどのサウンドディレクター、サウンドデザイナーを経て、ソノロジックデザインへ入社。小さなハンディレコーダーからフィールドレコーディングをスタートし、今では本格的なレコーダーとマイクを持ち出している。
M/Sマイクなどの他には、Ambisonics録音やバイノーラルなどのリアルな質感を録音できるマイクが好み。
松浦 大樹 氏
音響効果
音響効果会社アルカブースを経て、2020年に独立。映画、ネットフリックスなどの配信ドラマ、CMの音響効果として活動。主な作品に「マイホームヒーロー」「ミッシング」「八犬伝」「さよならのつづき」などがある。自身が効果音を担当する作品のフォーリーや音ロケに使用するマイクに、MKH8000シリーズを愛用。それらを用いたDMSレコーディングが最近の個人的な流行となっている。
渡邊 雅文 氏
株式会社evance フォーリーアーティスト
四国の香川県を拠点にアニメ・ゲーム・CMなどの映像作品の音響効果を手がける。主に「フォーリー」という、足音・衣擦れ音・人が触れる物の音を、身体や物を使い、声優のアフレコのようにして音の芝居を吹き込んでいる。株式会社evance代表取締役・大阪芸術大学音楽学科客員教授
担当作品 アニメ「SAKAMOTO DAYS」「ブルーロック」ゲーム「ドラゴンズドグマ2」など
ハイエンドRFコンデンサーマイクMKH 8018
●MKHシリーズの新製品「MKH 8018」
冒頭、MKHシリーズの新製品「MKH 8018」の紹介がありました。MKHとはドイツ語での表記「Mikrofon Kondensator Hochfrequenz」の略で、M(Mikrofon:マイクロホン) K(Kondensator:コンデンサー) H(Hochfrequenz:高周波)の頭文字で、RF(高周波)コンデンサーマイクであることを意味します。
MKH 8018にも採用されているRFコンデンサーマイクとは、ダイアフラムの振動で高周波を変調し、直ちに復調することで音声を取り出す技術です。
RF(高周波)方式を採用することで、極めて低ノイズで広い周波数特性、そして高い耐環境性能を実現できます。
MKH 8018は優れた指向性と空間的なリアリズムを両立するステレオショットガンRFコンデンサーマイクです。MS、XY ナロー、XY ワイドという3つのステレオモードを切り替え可能というのも大きな特徴です。
MSモードでは、独立したミッド信号とサイド信号を収録でき、ポストプロダクションやフィールドミキサーでステレオ幅を自在に調整可能です。サイド信号によって方向性の情報が付与されるので、極めて正確な定位が実現できるというのがMSモードの特徴です。それだけでなくモノラルの互換性を得たり、センターを最高の状態で収音できる、などといったメリットがあります。
「効果音録音」をテーマに、スペシャルトークセッションが開催!
●加藤 裕介 氏
株式会社ソノロジックデザインのサウンドデザイナー・加藤 裕介 氏から、ゲームサウンド制作からみたMKH8018といった解説がありました。
ゲームで使用する様々な効果音を収録する機会が多い加藤氏より、「MKH 8018のここが凄い!」と題した発表がありました。
ゲームサウンド制作からみたMKH 8018ということでは「環境音・ポジショナルにマッチングするマイク」という所見を述べられていて、ゲームや環境音の収録はもちろん、目の前にある音をステレオで録っておきたい方にはおすすめのマイクで、広がりを必要とする環境音ではX-Y Wide収録が最適ということでした。
総じたMKH 8018についてのまとめでは、以下のような感想でした。
途中実際にMKH 8018を使って収録した雨音や波音などフォーリーサウンドも披露し、MKH 8018の利便性や使い勝手などをスライドを使って丁寧にわかりやすく解説されていました。
●松浦 大樹 氏
続いて音響効果として活動する松浦 大樹 氏が登壇。自身が効果音を担当する映像作品などの音ロケに使用するマイクにMKH 8000シリーズを愛用する松浦 氏だけに、多彩な現場での使用経験に基づいたMKH 8018の印象をご紹介。
松浦 氏「私はフリーランスなので個人で活動する機会も多いことから、マイクには可搬性・堅牢性・音質のバランスを重視しています。何より身軽で頑丈であるということが音質と同じくらい私にとっては重要で、それが8000シリーズを愛用している理由です。」
MKH 8018やMKHシリーズを使って、花火大会、雨音、時計の音など様々なシチュエーションで収録した音声を会場で視聴。
松浦 氏「収録に際しては条件を揃えてましてフィルターやEQなどを使っていません。レベルを揃えるとわかるのですが、MKH 8018の特徴としてはセルフノイズの低さというのがあると思います。小さい音を録音した時にその差が顕著になってくると思います。」
小田急線の通過音を、MKH 8018の3つのモード(MS、XY-ナロー、XY-ワイド)を切り替えて収録した音声もMKH 8000シリーズと比較。
松浦 氏「他のMKH 8000シリーズに比べて、MKH 8018の方がディティールの解像度が高い印象があります。XY-ナローで収録した音声は広がりや移動感などは他のMKH 8000シリーズの方があると思いますが、センターでしっかり音が収録されている分、MKH 8018の方が迫力が増している気がします。」
最後に盆踊りでの模様を収録した音声比較も披露。
松浦 氏「一つのマイクで完結しているMKH 8018の方がステレオイメージは自然に作れる気がします。合わせてMKH 8018の特徴である、異なる録音方式を一つのマイクで選択できるというのも大きな利点だと思いますし、選ぶステレオモードによってはデコードの手間も省けて、モノラル録音も可能です。
総じてMKH 8018は何より軽くてコンパクト、短くてワンポイントでステレオ録音が可能なのは大きなメリットです。世界中のフィールドレコーディスト、アーティストの新しい選択肢になるような、非常に可能性のあるマイクだと思います。」
●渡邊 雅文 氏
最後に登壇した渡邊 雅文 氏からは意外な告白が。
渡邊 氏「私は去年MKH 8030を購入してMKH 8060との組み合わせを気に入っててテンション高くして使っていたのに、MKH 8018が発売されてしまい・・大変嬉しい気持ちもありますが、正直もう少し早く出てくれていればという気持ちもあります。会場の皆さんには、ぜひそんな私の屍を超えていってもらえたらと思います(笑)」
そしてMKH 8018のMSモードを使った録音方法の提案がありました。
渡邊 氏「私はステレオマイクを応用したやり方として、MKH 8018のMSをモノラルMIXで使うことを提案したいと思います。というのはフォーリーはモノラルで録音することが多いですが、MidをONマイク、SideをOFFマイクに見立てて使うことで、ONマイクだけだと音がきつすぎる、もう少しぼやかしたいという時に使うと効果的です。」
具体的にMKH 8018を使って録音した、足音を波形で解説。
渡邊 氏「Sideでぼやけた足音を、Midで芯のある音を録るということです。これによって近くなるとSideの音量を下げることで逃避感を出すことが、一本のマイクだけで収録することができます。マイク2本で収録すると位相とかの問題も出てきますが、MKH 8018の場合だと当然ですがモノラルミックスでもきちんと位相が合っているのが特徴です。」
渡邊 氏「いい音で収録ができて、取り回しがしやすくて簡単に収録できるマイクというのが私の理想なので、それを一本でここまで実現できるMKH 8018は、会社の経理とも相談して(笑)ぜひ購入したいなと思っています。」
スペシャルトークセッションではフォーリー/アンビエンス/効果音録音の最前線で活躍するプロフェッショナル・エンジニア3名の、音へのこだわりを強く感じました。それと同時に新製品であるMKH 8018は、これまでSennheiserのMKH 8000 シリーズを愛用し、そんなプロフェッショナルも太鼓判を押すほど優れた特性を持つショットガンマイクであるということも感じました。
音質・機動力・汎用性に優れたマイクを探している方、ステレオマイクによる柔軟な収音や編集時のコントロール性を求める方、過酷な環境下でも信頼できるマイクを探している方などは、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
製品情報
●MKH 8018
音質・機動力・汎用性に優れた、万能なMSステレオショットガンマイク
MKH 8018は優れた指向性と空間的なリアリズムを両立するステレオショットガンRFコンデンサーマイクです。MS、XY- ナロー、XY- ワイドという3つのステレオモードを切り替え可能。さらに低テンションのダイアフラムとプッシュプルトランスデューサーと組み合わせにより、高感度かつ広帯域な特性を実現。音を限りなく自然かつ忠実に収音することが可能です。
必要なすべての指向特性を揃えた完全なマイクシリーズ「MKH 8000 シリーズ」の一員として、他のMKH 8000シリーズと同一のサウンド設計で、シリーズ内での音響互換性を確保した製品です。
またXY-ナロー/XY-ワイドモードの内部マトリクス処理も選択可能で外部ミキサーを使用せずに「左右(L/R)」信号を直接出力できます。音響環境に応じて、環境音を広く拾う「ワイド(XY-W)」と、環境音の抑制と定位の明確さを重視する「ナロー(XY-N)」から選べます。
●主な特長
• ステレオショットガンカプセル構成により、指向性と臨場感のある音場を同時に収録可能
• 映像制作において、会話シーンのステレオ収録、スポーツ中継、環境音・自然音などの収録に最適
• 切り替え可能な3 つのステレオモード:MS、XY-ナロー、XY-ワイド
• スイッチ式ローカットフィルター(70Hz で-3dB)により風やハンドリングノイズを軽減
• 高品質な-10dB パッドにより過大入力にも対応
• コンパクト設計によりカメラマウントにも最適
• フローティング・バランス出力により、接続機器を選ばず低歪みを実現
• プッシュプル式トランスデューサーと低テンションダイアフラムによる自然な音の流れと最小限の歪み
• 拡張された低域応答により、全帯域で自然な収音が可能。マイキングの自由度も向上
• 最適化された指向特性により、軸外音の色付けを抑え、特に大型音源において自然で一貫した音像を提供
●MKH 8000シリーズについて
Sennheiser MKH 8000シリーズは、あらゆる録音環境に対応するハイエンドRFコンデンサーマイクロホンシリーズです。
従来のAFコンデンサーマイクとは異なり、RF(高周波)方式を採用することで、極めて低ノイズで広い周波数特性、そして高い耐環境性能を実現。高温多湿や極寒といった過酷な環境でも安定した動作を誇り、ピュアで繊細な音の再現を可能にします。
MKH8000シリーズはスティックタイプのスモールダイヤフラムであるためコンパクトであり、設置自由度を飛躍的に高めます。
そのラインナップには、無指向性からロングショットガン、そして最新のステレオショットガンモデルまで幅広く、ピアノやコンサートの収録や環境音の録音など、低ノイズかつワイドな周波数特性を求める録音に新たなソリューションを提供します。
軸外のカラーレーションを抑えた自然な音像と、対称的なプッシュプルトランスデューサー設計により、MKH 8000シリーズは、映像制作、フィールド録音、音楽収録、放送など、さまざまな分野で信頼されています。
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