
2025年10月23日にRock oN渋谷で開催されたセミナー「「アンシミュ再発見!」 ~ギターレコーディングに役立つルーティング活用術~」では、Rock oN クーパー天野 が、アンプシミュレーターを用いたギターレコーディングの効率を高め、CPU負荷を抑えるための具体的なルーティングテクニックを紹介。複数のトラックを重ねる際にアンプシミュレーターが大きな負担となる可能性を考慮し、ドライ録音とアンプシミュレーターを通したウェット音を同時に録音し、ドライ音をミュートして使用するというアプローチが紹介されました。
講師:クーパー天野
1.CPU負荷の軽減と編集の柔軟性を両立させるレコーディング手法

クーパー天野が紹介したのは、DAWのCPU負荷を軽減しつつ、後の編集の柔軟性を確保するための同時録音テクニック。
プラグイン/スタンドアロン版 アンプシミュレーターの活用
1.ドライ音とウェット音の同時収録:
ギターの信号をライン録音(ドライ音)すると同時に、アンプシミュレーターを通した音(ウェット音)も収録します。
2.グループ化とミュート:
録音したドライ音のトラックとウェット音のトラックをグループ化し、ドライ音を常にミュートしておきます。DAW側はオーディオトラックの再生のみに集中できるため、プラグインの負荷が一切かからず、トラック数が増えても重くなることがありません。
アンプシミュレーターのスタンドアローン版を同時に使用することが、この手法のカギ
• スタンドアローン版はDAWから独立して動作するため、DAW内の他のプラグインの影響を受けず、レイテンシーやCPU負荷の心配が少なく、特にリアルタイムモニタリング時に有利です。
• オーディオインターフェースのループバック機能を利用し、ドライ音とアンプシミュレーターを通した音を別々のトラックで録音します。
•スタンドアローンのアンプシミュレーターのみバッファサイズを短く設定してもDAWほどの負荷にはなりにくいため、演奏体験を向上させるためにレイテンシーを極力短く保つことができます。
ドライ音を保持するメリット:編集の容易さ
ドライ音を一緒に録音しておくことで、編集の柔軟性が格段に向上します。ディストーションなどで歪んだ音(ウェット音)の波形は潰れてしまい、タイミングやノイズの修正が必要な場合、波形を見ただけではアタックの位置が分かりにくい状態になります。しかし、ドライ音の波形を参照することで、アタックの位置を正確に把握し、波形編集を行うことができます。編集はドライ音に対して行い、グループ化されているウェット音もそれに合わせて動くため、正確な作業が可能です。
2.ハードウェアのアンプシミュレーターを使用する場合のルーティング : DIボックスの利用
ハードウェアのアンプシミュレーターを使用する際も、ソフトウェア版と同様に、ドライ音とウェット音の同時録音する手法が推奨されました。
• 物理的に信号をパラレルに分岐させるために、ギターとハードウェアのアンプシミュレーターの間にDIボックスを使用します。
• DIのスルーアウトをハードウェアのアンプシミュレーターへ、DIからのドライアウトとハードウェアのアンプシミュレーターからのウェットアウトの両方をDAWに取り込みます。
• この場合も、ドライ音とウェット音のトラックを両方作成しグループ化し、ドライ音をミュートしておくことで、後の編集の柔軟性を確保し、後々のリアンプ等にも対応します。

今回使用したアクティブDI GRACE design m303

Neural DSP Quad Cortex
3.レイテンシーとモニタリングの重要性
クーパー天野は、レイテンシーは演奏の感触に直接影響を与えるため、できる限り短くすることが重要であると説明。
• 弾き心地の改善:
レイテンシーは短くなればなるほど、演奏の「弾き心地」が変わり、より良い演奏体験につながります。
• モニタリングの最低条件:
モニターの音とプレイバックの音が、できるだけ同じであることが、ギターレコーディングにおける重要な条件の1つ
今回のセミナーでは、アンプシミュレーターのスタンドアローン版の使用や、DIボックスを用いたハードウェアのパラレル録音など、レコーディング前のルーティングに一手間加えることで、後のミックスや編集作業の自由度が飛躍的に高まることが示されました。
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記事内に掲載されている価格は 2025年10月24日 時点での価格となります。
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