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音楽制作において、もし、あなたがヘッドフォンを頻繁に使うなら、、、モニタースピーカーをチョイスする時にかけると同じく情熱で、ヘッドフォンアンプにも目を向けるべきなんです。今回はそんなお話です。
パソコン、DAW、オーディオインターフェース、マイク、モニタースピーカー、、、今、このRock oNサイトをご覧いただいているあなたなら、これら音楽制作ツーツにこだわりと情熱を持って製品のことを調べ、購入に至ったことだと思います。(ですよね?). そんな中、一つ「妥協」をしてたものがありませんか?
「それはヘッドフォン出力」
みなさんは、オーディオインターフェースのヘッドフォンジャックに愛用のモニターヘッドフォンを挿して作業を行っていると思います。高品質なインターフェースを使っているのだから、そこから出る音も十分信頼に足るものだと信じている。しかし、、、
オーディオインターフェースはあくまで「音声の入出力」を管理する司令塔であり、内蔵されているヘッドフォンアンプ部は、コストやスペースの制約を受けていることもあります。対して、今回紹介するZEN CAN 3は、純粋に「ヘッドフォンを駆動する」ことだけに特化したアナログアンプ。この「専業」の強みが、これほどまでに制作のクオリティに直結すると驚くかもしれません。
圧倒的な駆動力とヘッドルームがもたらす「正解」の音

ZEN CAN 3をシステムに組み込もうとした時、まずその「サイズ感」に安堵するはずです。シンセサイザーやコントローラーで溢れかえる制作デスクの上でも、ハードカバーの本を一冊置く程度のスペースがあれば、すっとその居場所を見つけられます。ZEN CAN 3をシステムに組み込み、いつものプロジェクトファイルを開いて再生ボタンを押した瞬間、まず感じたのは「音の立ち上がりの速さ」と「静寂」。 本機は定格出力2,000mWという、一般的なオーディオインターフェースの内蔵アンプとは桁違いのパワーを持っていて、これは単に「爆音が出せる」という意味ではありません。十分なヘッドルームがあることで、キックのアタックやスネアのトランジェントといったダイナミック・ピークを余裕を持って処理できるということなんです。
制作中のミックスにおいて、これまでは少しコンプで潰れたように聴こえていた帯域が、ZEN CAN 3を通すと驚くほど立体的で、各楽器の分離が明確になり、特に、正確な駆動にパワーを要する平面磁界駆動型ヘッドフォンやハイ・インピーダンスのモニターヘッドフォンを使用している場合、インターフェース直挿しでは発揮しきれていなかったポテンシャルが完全に引き出される感覚を覚えると思います。モニターヘッドフォンが本来持っている解像度を、このアンプがボトルネックにならずに送り届けてくれている印象を受けると思います。
A級ディスクリート回路による、純度の高いモニタリング

ZEN CAN 3の特筆すべき点は、フラッグシップモデルから引き継がれた「A級ディスクリート・バランス回路」を搭載していること。ディスクリート回路とは、集積回路(IC)に頼らず、厳選された個別のトランジスタを組み合わせた回路のことです。さらに、A級動作によりトランジスタが常に動作領域にあるため、歪みが極めて低く、リニアリティの高くなります。制作において「歪みのなさ」は正義。(もちろん例外もいっぱいあります。)リバーブの消え際や、ボーカルの微細なブレス、シンセサイザーのレイヤーの重なり具合など、これまでノイズフロアに埋もれていたディテールが手に取るようにわかるようになりました。
本製品には、パナソニック、TDK、テキサス・インスツルメンツといったオーディオグレードの高級コンポーネントが惜しみなく投入されているそうで、特にTDK製のC0Gコンデンサによる歪みの低減は、長時間モニタリングしても聴き疲れしないクリアな音質に貢献しているとのこと。デジタル処理を介さない純粋なアナログ回路であるため、レイテンシーやデジタル特有の位相ズレを気にする必要がないのも、シビアな音楽制作では大きなアドバンテージだと言えます。


※ 今回のチェックには、オーディオインターフェースにUniversal Audio Apollo Twin X DUOを、ヘッドフォンはオーディオテクニカ ATH-R70xとSONY MDR-M1STの2種を用いました。
制作の武器となる「XBass+」と将来を見据えた「xMEMS」モード

通常、モニター環境にはフラットさが求められますが、ZEN CAN 3に搭載されているアナログEQ機能「XBass+」は、制作の最終チェックにおいて非常に有用です。 DSP(デジタル処理)ではなくアナログ回路で低域を補正する機能で、中域の明瞭さを損なうことなく低音の量感を付加できます。例えば、低域の再現性が低いオープンバック型のヘッドフォンで作業している際や、クラブシステムでの鳴りを想定してサブベースの量感を確認したい際に、このスイッチ一つで擬似的なチェックが可能になります。デジタル処理ではないため、音質の劣化や遅延がない点も信頼できる点です。
さらに本機は、次世代のマイクロスピーカー技術である「xMEMS」社製ドライバーを搭載したIEM(インイヤーモニター)に対応する専用モードを備えています。超高速なメカニカル・レスポンスと正確な位相特性を持つxMEMS社のMEMSドライバーの技術は、今後のモニタリング環境のスタンダードになり得る技術で、これに対応している点は将来への投資としても安心感がありますね。
製品情報

iFi audio ZEN CAN 3
ZEN CAN 3は、xMEMS社製MEMSドライバー搭載のIEMからハイエンドのプラナーまで、ヘッドホンを難なく駆動する能力を持ちます。印象的な2,000mWの出力パワーとA級ディスクリート回路により、かつてない明瞭度とヘッドルームを提供します。
数万円の予算があれば、新しいソフトシンセやマスタリングプラグインを買いたくなるのが制作者の性ですよね? しかし、私はあえて言いたい! その前にモニタリング環境の「出口」を見直すべきだと!
ZEN CAN 3は4万円台前半という価格帯でありながら、数十万円クラスのインターフェースに匹敵、あるいは凌駕するヘッドフォン駆動能力を提供してくれます。制作した音がリスナーにどう届くのか、その解像度を担保するのは最終的にはモニター環境。 自分のヘッドフォンの真の実力を知り、ミックスの精度を一段階引き上げたいと願う全てのクリエイターに、この「小さな巨人」の導入を強くお勧めします!
渋谷店・ヘッドホン視聴コーナーにて ZEN CAN 3 を展示中!

複数のオーディオインターフェースを接続した環境をご用意しており、オーディオインターフェース内蔵のヘッドホンアウトと、ZEN CAN 3を使用した場合の音質の違いをその場で比較・体験していただけます。お使いのヘッドホンアンプ選びの参考に、ぜひ店頭でお試しください。
店舗情報はこちら
https://www.miroc.co.jp/rock-on/store-info2023/

記事内に掲載されている価格は 2025年12月26日 時点での価格となります。
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