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世界中を旅して臨場感あふれる自然音を収録し、多くの人に伝える活動をしてきたジョー奥田氏が、かねてから興味があったというのが現代のVR録音技術。
そこには自分の作品こそまさに音のVRの世界だという信念と、今のありのままの自然音を七世代先の子孫にまで伝えていきたいという熱い想いがありました。
今回の企画ではAmbisonics方式の録音に対応したSENNHEISER AMBEO VR MICを使ってフィールドレコーディングで収録した音と、自然音の収録にこれ以上適したマイクはないと長年愛用し続けてきたバイノーラルレコーディング用マイクNEUMANN KU-100で収録した音、それらを聞き比べてその違いを比較するという、ある意味大胆な企画を試みることに!
長年自然音を収録し続けてきた観点から、どのような評価が出るのか。それぞれの特性や音の印象を語って頂きました。
前編:収録の模様はこちら
http://www.miroc.co.jp/antenna/antenna-culture/ambeo-vr-mic-report/
バイノーラルマイクとDSDレコーダーで、世界各地の自然音を録音。
その素材を元に音楽製作で培った編集で、ストーリー性豊かな世界をクリエイトする。
1998年から自然音楽家として活動開始。現在活動拠点を東京からハワイ州ハワイ島に移し、ボルケーノヴィレッジに移住。自宅には水道が来ていない代わりに、雨水を再利用したシステムを作っている。
失われてゆく自然環境の実態に警鐘を鳴らし、そのことに無関心になっている人の心にさらなる危機感を持つ。時代の「目撃者」として、残された美しい自然を音の記録として、七代先の世代へと伝えてゆくことをライフワークとする。
Joe Okuda
http://www.joeokuda.com/
最新作「Kilauea Forest 24Hours」
http://www.m-i-m.com/sound/mimj0010
AMBEO VR MIC 奮闘記 reported by ジョー奥田
AMBEO VR MIC 試聴の準備
今回収録したAMBEO VR MICの音源を試聴する訳だが、そこにたどり着くまでにはいくつかの手順があった。
聞き慣れない言葉が沢山出てくるので面倒なのだが、実際にやってみると簡単なので初めての方の参考のために、僕の体験を順を追って解説させていただこうと思う。
1)音声データを取り込むためのDAWを用意
・DAW:Reaper
今回このDAWを使用したのは、後述するバイノーラル・ステレオ(2ch)変換時に使用するプラグイン「ATK for Reaper」と「Ambi Head」、それぞれのプラグインを使用した音の比較をしたかったので、両方に対応しているということで、Reaperを選んだ。
2)4chで収録したA-Formatの音声データを、B-Format(4ch)に変換するため、プラグインをダウンロードしてインストール
・B-Format(4ch)変換用プラグイン:AMBEO A-B Format Converter(SENNHEISER)
3)B-Format(4ch)をバイノーラル・ステレオ(2ch)に変換して、ファイルを書き出し
・バイノーラル・ステレオ(2ch)変換用プラグイン:Ambi Head(Noise Makers) ATK for Reaper(フリーソフト)
ATK for Reaperは、用意されているプラグイン「Decode Binaural」をインサートし、4chを2chのバイノーラル・ステレオに変換してファイルを書き出すことができた。
一方のAmbi Headも同様に変換してみたが、モニターは出来るのだがファイルを上手く書き出すことが出来なかったため、今回の比較にはATK for Reaperで処理したファイルを試聴に採用した。
比較するもう一つのマイクであるSENNHEISER KU-100で収録した音は、何も処理しないままの音声ファイルを使用、DAWに読み込み、ABテスト方式で比較試聴してみた。
音の第一印象
最初に聞いた印象は、AMBEOの方が全体的にKU-100に比べ明るい音というか、中高域に特徴がある感じがした。環境音はどの音もはっきりと収録されているという印象。
一方KU-100の音は、現場で耳にした音に近い感じ。収録した現場は周りに反響するものが何もなく、声が吸い込まれるような状況なので、その空間再現は、KU-100の方が実際の音に近いように感じた。
AMBEO VR MICとKU-100の比較
音の印象
AMBEO:全体的に中高域が立っているような感じ
KU-100:ローエンドが伸びていてフラットな音のような感じ
抽象的なイメージだが、AMBEOが音をキャプチャーしにいっているのに対し、KU-100はじっと耳を傾けているという感じがする。
(能動的に取りに行くのと受動的に受け取る差、みたいな感じだろうか)
音像
AMBEO:柔らかく少し大きい感じ
KU-100:小さく全体に落ち着いていて、AMBEOに比べると少し冷んやりした感じに聞こえる。
距離感
AMBEO:人の声、鳥の声などの音源が近く聞こえ、明瞭感があるように感じる。それぞれのエレメントがはっきりと録れているので、逆に距離感が実際より近くに聞こえる。これはAMBEOの方が近接効果が出る傾向にあるからかもしれない。
KU-100:鳥の声との距離感も、実際の距離に近いように感じた。
声の質感
AMBEO:声の質感が柔らかく、中域の膨らみ具合が耳に心地良く感じる。
KU-100:少し痩せて聞こえて、輪郭もくっきりして聞こえる。
方向感と定位感
全体に音像サイズのせいか、KU-100の方が方向感がくっきりしている印象だが、
音源の角度によってそれぞれのマイクの得手不得手というか、再現性の良い角度と苦手な角度があるように感じた。
特に真横か真後ろまでの定位感にはそれぞれ特徴があって、これはリスナーによって感じ方の個人差は大きいような気がする。
奥田氏の解説入り AMBEO VR MICとNEUMANN KU-100で収録した音
感想
今回の比較はバイノーラル(ステレオ)再生での比較ということで、AMBEO VR MICにとっては本来の土俵ではないところでの比較ということになってしまったが、それでもこのVRマイクの実力は十分に計り知れたと思う。
元々性格の違うふたつのマイクを比較するのは少々無理があるように思うが、それぞれの特徴が再確認出来たという意味では、有意義なテストだったと思う。
これだけの音質を維持しつつ、同時に機動性も兼ね備えたこのAMBEO VR MICは、特にフィールドでの収録の強力な武器になるだろう。 いつか機会をみてヘッドフォンやステレオではなく、精度の高い4ch再生システムでも試聴してみたいものだ。
そうなるといよいよVRマイクの本領が発揮されそうな気がする。
まとめ
以上、ジョー奥田氏によるレポートでした。いかがでしたか?
今回はあくまで現時点での比較であり、定点での収録ではなく移動を伴った録音だとどう変化するか、変換するプラグインを変えると音は変わるか、といった収録条件の変化でも印象が変わってくることかと思います。
それでも明瞭感のあるクリアな音が収録でき、コンパクトで機動性にも優れたAMBEO VR MICの登場は、フィールドレコーディングの分野にもVRという新たな可能性をもたらしてくれる非常に画期的な製品ではないでしょうか。
「自分の作品は、まるでそこにいるかのような臨場感を大切にしている、まさに音のVRの世界」と語るだけあって、奥田氏にとっても今回の収録・試聴は、VR技術に大いに可能性を感じたように思います。
またKU-100も「現場で耳にした音はKU-100の音に近い」と評しているところから、改めてその性能の高さ、自然音収録の親和性の高さを伺い知ることができました。
これまで魅力的な自然音をレコーディングしてきた奥田氏が、今後も発展し続けるであろうVR技術を取り込むことで、より現実に近い臨場感のある音を収録し、多くの人がまだ体験したことのない音の世界を届けられることを切に願います。
SENNHEISER AMBEO VR MIC
http://www.sennheiser.co.jp/sen.user.Item/id/1116.html
記事内に掲載されている価格は 2017年12月27日 時点での価格となります。
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