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2018年、12/22と12/23、さいたまスーパーアリーナにて、二日連続でLUNA SEAのライブ「LUNATIC X’MAS 2018 -Introduction to the 30th Anniversary-」が行われた。
SLAVE(=ファン)の間ではもはや毎年のおなじみになっているこの日程でのライブだが、今回は例年と異なる要素がある。2日連続で開催されるライブが1日ごとにキャリア初期のアルバムを再現するというコンセプトがあることだ。
メジャーデビューアルバム「IMAGE」、2ndアルバム「EDEN」を再現するライブはそれぞれ、「IMAGE or REAL」「SEARCH FOR MY EDEN」と当時のツアータイトルを銘打たれ、LUNA SEAのキャリアの中でも異色な輝きを放つ二日間となった。
2019年に活動開始30周年を迎えるLUNA SEAのキャリア初期を再現するということで、中には20余年以上封印されていた曲も多数あるはず。
キャリアの中で成熟した深いアンサンブルを獲得し、所謂「マスなV系」という枠やイメージから大きくはみ出してリアルなロックバンドとしてシーンで多大な存在感を放つ「今のLUNA SEA」が演奏する「昔のLUNA SEA」。
それがどのような感触のサウンドになるのか…長い間のSLAVEにとっては、単純な懐古だけではなくバンドの変化や成長を感じる機会のはず。
また、2010年のREBOOT後からのSLAVEにとっては、昔の楽曲を生で体験できるまたと無い機会となったはず。
いつも以上のSLAVEからの大きな期待に応えるために、現場ではどのような機材のチョイスや運用がなされていたか、ライブ当日、Rock oN スタッフ2名がFOHエンジニアを務める 小松”K.M.D”久明 氏を訪ね、当日の模様を取材させて頂いた。
FOHの調整に時間を使うよりも、モニターエンジニアが100点の仕事出来る事を優先
楽器テックとのサウンドチェックの最中、小松氏に機材の説明を受けながら印象的だったのが、基本的に各楽器がモニターのバランス組みのためにサウンドを鳴らしてチェックしている中で、小松氏からステージ側への音色のリクエストが殆ど無かったこと。これは取材に伺ったのが12/23、つまり2日目という事もあるだろうが、モニターエンジニアがミックスの為に音を出しているタイミングに合わせて、手早くレベルや音色を仕上げていく様子だった。
これに関して、「FOHの調整に時間を使うよりも、モニターエンジニアが100点の仕事を出来る事を優先し、FOHはその上で音作りをしていく感覚です。」と小松氏。アーティストが最大限のパフォーマンスを発揮する為にまずはモニターの調整が100%行えることを優先しているそう。
アーティストが違和感を感じることなく、存分に演奏に打ち込めることが観客の感動に伝わる第一歩だという哲学が垣間見えた。
FOHに届く外音を聴く中で、各楽器のサウンドおいて共通して感じたのはそれぞれがアンサンブルの中でアタックから余韻までハッキリと聞き取れる、余裕のあるサウンドでありながら、誇張した感じやギスギスした感じの一切無いサウンド…これだけでも驚くべき事だが、更に凄いのはメンバーが演奏するサウンドには上記の要素を失わずに「音色としてのかっこよさ」が音に乗っていた事。一聴した観客を演奏に没入させるようなメンバーの演奏や音色の風合いが少しも劣化する事なく客席いっぱいに伝わる様子は衝撃だった。
ベースとバスドラムの音が良いという事が音作りの中で一番大事
上記のように当日はかなりハイレベルな外音だったが、中でもRock oNとして注目したいのがキックのマイクアレンジ。Pearl製のアクリル素材のセットのバスドラムにセットされたマイクは計3本。
KICK INにShureのバウンダリマイクBeta91A,KICK OUTにはそれぞれホール近くにElectro Voice N/D868、更にNEUMANN U47FET(!)が立てられていた。
ライブでU47FET?と思う向きもあるかもしれないが、ライブ本編ではアップテンポで主張する場面、触っただけのような溶けるような音まで、音色の踏み分け、音量の大小等が全く演奏に埋もれないサウンドが鳴っていた。このニュアンスを拾う事にU47FETは特に力を発揮するという。
マイクのチョイスについて小松氏は「EV 868はあらかじめ本体でEQされているマイクなので、常に低音のもっちりした部分が拾える。U47は吹かれることもなく、ニュアンスを拾うことが出来る。アタックを拾うバウンダリー(91A)とはUAD Console内のLittle LabsのIBPで位相を調整している」と話していた。
他にも印象的だったのがSUGIZO氏のギターキャビネットに立てられた3本のマイク。
写真の通り3台並んだBogner製ギターキャビネットはそれぞれメインの音/芯を出すためのクランチの音/空間系のディレイ音と住み分けされている。こちらにもSENNHISERやJosephsonなど、一つのキャビネット3本ずつマイクが立てられているが、このうち白クジラとJosephsonがFOHへ、クジラがモニター用だ。モニターとFOHでは要求される音が異なる為、異なるマイク、マイキングが採用されるという。
以上のように、全てに目的があってHAなども含めたマイクアレンジは決定されている。
その中でも小松氏が大切にしている低音の組み立て方について、「ベースとバスドラムの音が良いという事が音作りの中で一番大事です。やはり一番基礎を支えるベースの音が良くないと、キックを埋もれさせてしまい、上に重なるボーカルなども邪魔してしまいます。」と話していた。
音が埋もれる事なく、バンドのアンサンブルがクリアに伝わるステージ本番
ライブ本番では、前述の通りLUNA SEAの特徴でもある複雑なアンサンブルが淀むことなくクリアに響いていた。
ウィスパーボイスから、シャウトまで、LUNA SEAでは一曲の中でボーカルが様々な表情を魅せる曲が多いが、ヴォーカルであるRYUICHIの表現する様々な声が埋もれる事も潰れる事もなく飛んできた。
「claustrophobia」「ANUBIS」等20年以上ぶりに披露される名曲の数々はイントロが演奏される度に会場は大きなどよめきが起こり、SLAVE達の喜びの反応で会場が埋まっていた。
今回の取材で、LUNA SEAの実力もさることがなら、小松”K.M.D”久明 氏をはじめとするスタッフとの信頼関係、強力なバックアップによって素晴らしいステージが構築されていることを改めて感じた。
本年もLUNA SEAのステージが既に発表されている。是非あなたの耳、いや体で体感していただきたい。
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記事内に掲載されている価格は 2019年2月8日 時点での価格となります。
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