製品レビュー、試聴からサポート情報、キャンペーンまで製品別にフォーカス。活用のヒントがここに集結。
普段シンセ系のレビューを多く担当している私ですが、実は一番好きなのはリズムマシンなんです。
TR系から洋モノまで、値段やブランド関係なく新しいのが出ればサンプルを聴き漁る毎日です。
オールドスクールなHOUSEやHIP HOPが好きな私としては、リズムマシンやサンプラーはシンセよりも「トッポイ」イメージがあります。やっぱりあの大きな長方形の箱を誇らしげに抱える当時のアーティスト写真のかっこよさから受けた衝撃は心の中で色褪せないモノです。MANTRONIXのタイトな909使い、Egyptian Loverの808、そしてWild BunchのLinn Drumとクラシック揃い!
さらに昨今はハードウェア再評価の流れによって一昔前は考えられなかったようなリズムマシンが続々と登場。世界初のリアルアナログVSTiとして使える「OVERBRIDGE」を擁するELEKTRONのAnalog RYTMや、Prophet-VSの波形の搭載やカーティス製チップを使ったVCFなどDEEPな側面を持つDave Smith Instruments TEMPESTなど、非常に多機能ハイエンドなハイブリッド機種も人気を集めています。
Resident Advisor – MACHINE LOVEのスタジオ写真でも出るわ出るわの大人気。またRolandによる本家復刻を果たしたAIRAシリーズは大きな話題になりました。ACBモデリングはその後も発展を続け、BOUTIQUEシリーズという新しいラインも生まれました。そして記憶に新しい2016年9月9日、909の日に発表されたTR-09も遂に発売!
というわけで今回はそのTR-8とTR-09の違いについて掘り下げてみようと思います!
時代を築いたリズムマシンの金字塔ROLAND TR-X0Xのサウンド
TRサウンドほど世界中のダンスミュージックの中で用いられたサウンドは他に無いと言っても過言ではありません。それ故非常に多くのインスパイア系クローンマシンやソフトウェア、アーカイヴ・ライブラリが生み出され、30年以上の長きにわたりシーンの中で生き続けています。あるものはトラックの一部からガチガチのコンプやエフェクトごとサンプリングされ、違うトラック上で異なるピッチで鳴っていたり、様々なX0Xサウンドが混在しています。
そんな中、本家Rolandが今のTRサウンド定義するAIRA TR-8をリリース。AIRAシリーズはご存知の方も多いと思いますが、(ご存知なければこちらをどうぞ!)今回さらにAIRAと同じACBモデリング技術を使ったBOUTIQUE TR-09が登場!これはもう比べてみるしかない!
TR-8とTR-09のインストゥルメント・パラメーターの比較
もっとも気になるのはサウンドですが、早る気持ちを抑えてまずはスペックで比べてみましょう。
やはり一番の違いはTR-8が拡張音源によってTR-808/909/707/727/606のサウンドを持てるのに対して、TR-09はTR-909のサウンドのみというところですね。なので今回は909のサウンドに関わる部分にスポットライトを当てて比較してみましょう。
上の表の黄色く塗りつぶされた部分がTR-8とTR-09の音色パラメーターで異なる部分です。まず思うのがTR-8の搭載されたすべてのインストゥルメントが「TUNE」と「DECAY」のパラメーターを持っていること。AIRAシリーズはオリジナルの完全再現というよりは、以前記事にも書きましたがAIRAは「経年劣化した現存するオリジナル」に”合わせる”為に新しいパラメーターを搭載しています。カウベルのピッチが狂った808すら再現できるというのがTR-8なのです。
それに比べてTR-09はオリジナルを踏襲。トラックメイクでハイハットの微妙なピッチ調整に迷うことはなく、あのガッシガシなハットの一本勝負になります。潔い!
そしてTR-09とTR-8の両方に搭載されていて、オリジナルには無いパラメータが「COMP」です。どちらもキックとスネアに搭載されており、TR-8ではツマミで、TR-09はボタン選択&TEMPOツマミでコントロールします。
シーケンサー主要機能比較
TR-09のシーケンサー情報は96個の「パターン」とそれらを任意にチェーンできる「トラック」に記憶されます。いわゆるソング・モードのようなものです。トラックの良い点はテンポ・メモリーがある点です。ライブ中に単体リズムマシンでBPMを変更する場合、大体がツマミなどで徐々に変えていきますが、テンポメモリーならガラッと一瞬で変えることができる為、例えばBPM124あたりのシカゴハウスから、一気にBPM160のジュークまで行って盛り上げることもできます。なおソングモードのよくある落とし穴として、家で何度も仕込んだ渾身のチェーンでも思ったように盛り上がらなかったり、ブレイクが短すぎたりしてテンパることがあります。しかしこのトラック・プレイは良くできていて、チェーンを進めずに一つ前に戻したり(BACK)、逆に一つ飛ばしたり(FWD)をリアルタイムに行えるます。これはナイス!
さらにトラックプレイとパターンプレイをシーケンスを止めずに行き来できる為、臨機応変な対応ができます。
対するTR-8のパターンは超シンプル。いわゆるソングモードは存在せず、パターンをバシバシ切り替えていくスタイルです。
なお、TR-09がパターンライト時には「SHIFT」+「PATTERN WRITE」と一手間がありますが、TR-8ならシンプルに「TRACK WRITE」ボタン一発なので、リアルタイム性では秀でていると思います。ツマミが小さくやや操作に慣れが要るTR-09はプログラム性が高く、逆にTR-8はリアルタイム操作に適しているというちょっとした住み分けを個人的に感じました。
また、シャッフル、フラム(TR-8は7X7拡張で可能に)、アクセント、弱入力などはどちらもできるので打ち込んだシーケンス情報自体にはそれほど差は生まれないと思います。
パターンを聞き比べてみましょう
さて、サウンド聴き比べてみましょう。TR-8/TR-09ともに音量以外のパラメータはすべて12時にセットします。(TR-8のデフォルトの音量バランスは難ありの為、調整が要ります。)
サウンドは共にオーディオアウトから外部オーディオインターフェース経由で24bit/96kHzでAvid Pro Tools12に収録しました。
是非ヘッドフォンで聴いてみてください!
TR-8→TR-09の順番で同じ8小節のパターンを3種類計6つ交互に収録しています。単体のサウンドではあまり違いは感じられませんが、シーケンスとして鳴らすと全体的な質感に結構差が出ています。ハンドクラップの荒々しさ、タムの鳴りに違いが感じられます。
両者の違いが非常にはっきりと分かるのがスネアのハンドクラップが重なった時の余韻です。TR-909はスネアドラムとハンドクラップが同時になるとフランジングを起こします。もちろん回路ごとモデリングしたACBでも同様のフランジングが起こりますが、TR-8とTR-09でそのフランジングの雰囲気がかなり変わっています。TR-09のスネアドラムのスナッピー部分の方がよりジュワジュワとしたサウンドになります。面白いですね。この辺りもワンショットをサンプリングしたマシンでは再現できない非常にユニークなポイントです。
個人的に気に入ったTR-09のシーケンスの入力方法について
TR-09は「ENTER」を押しながらステップボタンを押すと「裏拍」が入力できます。「裏拍」とは1/32後ろにずらした拍になります。つまりスケールを変更せずに細かい拍をバンバン打ち込めるのです。スネアやハイハットの倍速回しなどが簡単にできるのでPlastikman的な打ち込みがかなり簡単にできます。もちろん弱入力も出来るのでダイナミックなパターンが作成可能です。
Rock oN渋谷店ではTR-8、TR-09の比較展示を行っています。ぜひご自身の耳でそのサウンドの違いを確かめにいらしてくださいね!
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記事内に掲載されている価格は 2016年9月24日 時点での価格となります。
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