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第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!

02
Nov.2018
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スウェーデン現地取材 teenage engineering 代表 Jesper Kouthoofd 氏インタビュー

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音楽制作者にとどまらず、多くの人々の心を魅入らせるteenage engineering 製品。手にした瞬間から自然と笑みがこぼれてしまうのは、製品が持つ「音楽、デザイン、遊び」のミックス感覚に、自然と心が反応するからでしょう。こんな製品を生み出すteenage engineering とは? その答えを探るべく、弊社スタッフ ACID 渋谷がスウェーデンに飛びteenage engineering 本社へ。代表 Jesper 氏との会話で知ったさまざまなストーリーには、elektron、Ikea、バイドゥといった会社との関係性も。謎に包まれたteenage engineering のルーツ、そして未来を解き明かすインタビューをお届けします!

デザインファースト。建築家の父の仕事場で培われたアティチュード。

Rock oN(以下略 R :)はじめにJesper さんのバックグラウンドについてお伺いしたいと思いますが、デザインと同時に、エンジニアリング等のテクノロジーにも精通されていますね。どういった経緯で関心を持ったんですか?

Jesper Kouthoofd 氏(以下略 J :)私のベースになっているのはデザインです。17 歳の頃からグラフィックデザインの勉強をしており、レコードのアートワークを作ったりしていました。スウェーデンのヨーテボリを拠点にするバンドのアートワークをたくさん手がけました。母は、私には「デザインの仕事が向いている」と言ってたんですが、自分としては、ずっとエンジニアリングの仕事に憧れていたんです(笑)。それで、ヨーテボリにあるBerghs School of Communicationに入り、エンジニアリングを学びました。

R : どんな音楽が好きなんですか?

J : 若い頃はロックが好きで、ギターとベースをやっていました。一度だけメタルバンドで歌ったこともありますよ。同時にKraftwerk のようなエレクトロ・ミュージックも好きでした。それらの音楽が自分の中でミックスされている感じですね。今一番好きなのはBon Iver というアーティストです。彼らの作品は聞いたことがなかったのですが、OP-1 を使ってくれている関係で知り合いになりました、それをきっかけにアルバムを聴き大好きになったんです。

R : Jesperさんのご自宅のサウンドシステムはどんな感じですか?

J : 私はCarlson のスピーカーの大ファンで、以前はOA-52 というスピーカーを使っていました。ご存知の通り、teenage engineering はCarlson との関係を構築し、Carlson が1974 年から1978 年の間に販売していたOD-11 をリイシューしました。リイシューするにあたり、私はスピーカーのサイズを大きくした方がもっといい音になると思い、若干改良を施して販売しました。もちろん今は自社のOD-11 を使用しています。いつも聴いてるのはSpotify なんですが( 笑)。Spotify はとても便利ですが、やはり音質と便利さはトレードオフですね( 笑)。将来、私たちがそういった状況も変えていければいいなと思いますが。

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R : OD-11 には外観の美しさがありますよね。まるで家具のようです。Jesper さんは好きな家具はありますか?

J : 私の父は建築家で、子供の頃、父の仕事場でよく遊んでいました。父が見せてくれた仕事が私に大きな影響を与えています。ここ10 年は60 ~ 70 年代のイタリアのデザインが好きです。スカンジナビアのデザインは退屈に思えて好きではありません( 笑)。特に、Superstudio やArchigram という建築家グループが好きで、彼らは建築家集団というよりも、アート志向の強いグループで、インスタレーションを多用したファンタジックな作品をたくさん制作しました。ベースには建築や工業デザインがあるのですが、彼らは本当に風変わりな作品を残してるんです。私はもともとグラフィック・デザイナーだったこともあり、プロダクトデザインをする時はスケッチを描くのが好きで、そこから微調整をしながらプロトを組み立てて行きます。3D でデザインを考えることはなく、2 次元的でとても従来型の仕事のやり方ですね。

teenage engineering が醸し出す「音楽、デザイン、遊び」のミックス感覚。これはJesper さんの生い立ちと深く関連してることがよくわかる話で、ある程度、予想を裏付ける展開ではないでしょうか。アートに近い環境で生まれ育ったJesper さんが身につけてきたセンスが、teenage engineering のカラーの源泉になっていることは想像に難くないことです。ただ、少し意外だったのはスカンジナビアのデザインが退屈だというコメント。日本に住む私たちには少し想像しにくい面ですが、Jesper さんのカウンター志向的な側面なのでしょうか? 引き続き、会社設立の話を伺いましょう。teenage engineering 誕生のいきさつにelektron 社との関係があるとのことです。

ドリームプロジェクトAbsolut Choir とは? elektron と培ったアイディアが推し進めた次へのステップ!

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R : では、teenage engineering 設立のきっかけについて教えてください。

J : teenage engineering 設立前に、私はファッションブランドを主体とするACNE の創立メンバーとして広告の仕事をしていました。さっき言ったように、elektron の創立者たちと知り合った縁で、MACHINEDRUM やMONOMACHINE といったelektron 社初期の製品にデザイナーのヘッドとして携わりました。2007 年になり、私はこれ以上広告の仕事を続けたくないと思うようになり、プログラマーのJens Rudberg、David Eriksson と共同でスペースを借り、それまでの仕事で得た資金で3D プリンターやレーザーカッターを購入し、製品のプロトタイプを作り始めました。当時、3D プリンターはまだメジャーな存在でなく、まるで冷蔵庫みたいな大きさで( 笑) とても高価でした。

Jens とDavid はプログラマーとしてテクノロジーに対する興味を持ってますから、徐々にエレクトロニクスにも興味を持つようになりました。私たちの最初の仕事は、スウェーデンのウォッカメーカーであるAbsolut のため「Absolute Choir」を作ることでした。

R : 楽器を作りたいというアイデアは、もともと持っていたのでしょうか?

J : いいえ、確かに音楽のプロジェクトでしたが、Absolut Choir のプロジェクトを実現するためにはたくさんのプログラミングや見た目のデザインをすることが必要でした。プロダクト作成に加え、はるかに多くの仕事を求められたんです。私たちは、「歌うラジオクロック」というコンセプト等、たくさんのアイデアを出し合い、3D プリンターを使ってモックアップを作りました。elektron と仕事をしていた1999 年に、シンセサイザーでポルタメントを表現する手法を知っていたので、人形にピッチを持った歌声を実装しました。それら技術が結集した「Absolut Choir」は私にとってのドリーム・プロジェクトと呼べるものでした。しかし、残念なことにelektron 社のオーナーが変わると、私たちのプロジェクトは、ある事情で進められなくなりました。「アイデアやプロトタイプはたくさんあるのに、実現出来ないなら…」ということで私はelektron を離れたんです。それで、2007 年にteenage engineering に舵を取り出すことにしました。

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「Absolut Choir」とは?

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いろんな形状とサイズを持った計22 個の歌うキャラクターからなるマルチチャンネルのロボット合唱団が組み込まれたインスタレーションで、Linux 上で動作する先進的なプログラムで作った音声合成とAI のソフトウェアで実現しています。このAbsolut Choir はストックホルムとニューユークで展示中で、見ることができます。

OP-1 誕生の背景にある黄金期のJapan プロダクト

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ご存知の通り、teenage engineering ブレークスルーのきっかけになった製品「OP-1」。その誕生を支えたのが、楽器と戯れた少年時代の経験。
実に、teenage engineering 自体の在り方を示すストーリーです。そしてJesper は視点を未来に向けます。大きなコラボレーションとなったIKEA との仕事で、Jesper さんは何を思い、何を得たんでしょうか?

R : 遂にteenage engineering 誕生なんですね! その源泉がAbsolut Choir にあったというのは興味深いです。では、teenage engineering 最初の製品になるOP-1 の発想の源についてお聞きかせください。

J : 私が12 ~ 13 歳の頃に、兄が楽器屋で働いていたんですが、その楽器屋は週末は営業しないので、私は毎週金曜になるとそこへ行きBOSS のペダルエフェクターやRoland SH-101などを借りては遊んでいたんです。OP-1 はこの時の経験の産物で、この時代に私が夢中になっていた楽器を1 つに詰め込んだものを実現させたものなんです。これがOP-1 誕生のストーリーです。

R : お~、Jesper さんの楽器体験のルーツにBoss のペダルエフェクターやSH-101 があったんですね。言われてみると、teenage engineering 製品とオーバーラップする部分がありますよね。

J : そうですね。他にもRoland JX-3P の大ファンだし、今でもYAMAHA DX-7 やCX5M を持ってます。CX5M を使うとFM のプログラムを書き換えられるんですが、これが結構難しい( 笑)。最近のシンセサイザーは機能が多過ぎる気がします。特にシーケンスについてはその傾向が顕著です。色々なことが出来る反面、初期の機材のようなシンプルさを失っています。私はシンプルなものが好きなのでJX-3P が大好きなんです。OP-1 でも、そうしたシンプルさを追求しているんです。

R : teenage engineering のルーツに、日本のシンセ黄金時代を垣間見れるのは、なんか嬉しいですね! teenage engineeringのミッションステートメントの核となる、「機能とデザインを両立する」ということは難しいことだと思うのですが、御社は見事に実現していますね。何か秘訣があるのでしょうか?

J : 機能とデザインを統合するためにチャレンジすることをいつも心がけていますが、プロダクトデザインをする時に私が重要にしていることは、「製品を一度見たらその絵が描けるか?」ということです。例えばOP-1 なら(紙に絵を描き始める)、ボディがあって、ここには色が付いたドットがあります。では、OD-11 なら、ほら、シンプルなのでシェイプを覚えてるでしょう? ポケットオペレーターはどうでしょう? 長方形ですがここにハンガーがありますよね。このハンガーはとても重要! 色が付いたドットもありますね。。。こんな感じに、teenage engineering のプロダクトはすごくシンプルで覚えやすいんです。人間の記憶なんて貧弱なもので、私なんて4 桁以上の数字は覚えられませんよ( 笑) だからノブの数は4 つにしてるんです( 笑)。いずれにしろ、考えることに長い時間を掛けることはしないようにしています。それよりも、自分が好きなものが何なのかをちゃんと把握することに努めてます。

R : 製品開発のアプローチとして、完全にデザインからスタートさせた製品もあるんですか?

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J : ほとんどの製品がデザインからスタートしてるんですよ。最初は具体的でなく、大まかな形状から始まります。そしてモックアップを作り、その上に直接アイデアを描いて行くんです。そうすることで、エンジニアは回路のパーツや電源の位置といった設計アイデアについて、実際に近いイメージを持って仕事に取りかかれますからね。アイデアはいつもこのノートにメモしていて、今は3 冊持ち歩いています。

R : Jesper さんにとってデザインとは何でしょうか?

J : コミュニケーションです。それが全てです。誰が読んでも意味が通じることばを選ぶのと同じように、誰が見ても分かるようにデザインする、ということです。それが「コミュニケーション」です。私にとってデザインは、私のフィーリングからダイレクトに出てくるものでことばと同じです。「美しいものを作ろう」という意識ではないのです。しかし、完璧なコミュニケーションとして成立するデザインであれば、自ずから美しさを持つと信じています。

R : なるほど! コミュニケーションが生み出す美しさ、それがデザインという事ですね。teenage engineering の製品は、デザイン、価格、機能のバランスが絶妙だと思います!

J : OP-1 を作った当時、私たちはビジネスについて何も知らなかったので、価格のことなんか考えずに始めたんです。もちろん現在は、すべてのプロセスを並行して進めています。プロダクト開発で大事なことは、全体的な視点を持つこと。価格はもちろんのこと、デザインや機能、ウェブサイト、などなど多岐に渡りますが、そのプロダクトを取り巻く世界の全てに注意を払います。

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楽器の理想像へ。それは「バッチリ!」を形にすること。

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J : 現在取り掛かっているプロダクトは、医者や歯科医など医療に従事する人々に需要があるのではと思っている製品なんです。まだ詳細は明かせませんが。もちろん、これまで通りのteenage engineering の製品ですよ。

R : なかなか想像がつきませんね、、、??

J : この製品を開発するにあたり、「どうしたら医療従事者をteenage engineering のファンに出来るか?」そういったディスカッションを繰り返しています。私がいつも考えていることは、「音楽の作り手と聞き手間のギャップをどうやって埋めるか」ということなんです。

音楽を聞くという行為はとても受動的です。これを能動的な行為にするにはどうすればいいか、ということを考えています。「音楽を別なものとつなげる」ということですね。例えば、シンセサイザーとスポーツやアウトドアをつなげる(笑)。ビジネスの世界でこんなことを話してもなかなか理解してくれません。でも私はどんなに不可能に思えることでも、やってみなければ分からないと思ってるんです。

1週間くらい前に、MIT(マサチューセッツ工科大学) からひとりの研究者が、私に会いに来ました。彼女は音楽とテクノロジーについて研究しているようで、特にスマートフォンデバイスとの関係について多くの調査を行なっているそうです。彼女は非常に批評的な姿勢を持つ人なんですが、そんな彼女が初めてOP-1を見た時、すっかり心を奪われたというんです。OP-1 は「バッチリ(Everything is right!!)」な存在だと言ってくれました。OP-1のハードが何故「バッチリ」な存在なのか、私に論理的に説明してくれ、とても面白い話を聞くことができました。

考えてみると、私たちはプロダクトを「バッチリ」にするために頑張っているような気がします。新しい製品をリリースしたならば、人々から驚きをもって迎えられたいですし。加えて、私たちは型にはまらないものを作りたいと思っています。保守的なもので評価を得ることはとても簡単です。OP-1 を発売した時、誰もがおもちゃだと思いました。しかしこれは今の時代の楽器の姿です。みんな楽器を持ち運びたいですし、親指で演奏したいでしょう?(笑)立派なシンセメーカーになりたい訳ではなく、ただ、私のこの欲求を「バッチリ満たしてくれるもの」を作っただけなんです。戦略みたいなことには興味ありません。

R : スマートフォンの時代にOP-1 が「バッチリ」くるこの感じ、例えば、任天堂Switch のヒットと呼応するようなフィット感を感じますね。時代とともに変化する「バッチリ」ってどんな歴史があったと思いますか?

J : Roland を始めとする日本のメーカーは「バッチリ」なプロダクトを作ったと思いますよ! 巨大なマシーンだったシンセを、ミュージシャンが演奏しやすいようにデザインしたんですから。プロダクトはその使い方を限定するべきではなく、オープンであるべきだと考えます。最近は人間工学に基づいた設計が流行っていますが、あれはよくないデザインだと思います。1 つの使い方しか出来なくなりますからね。楽器はそういうものでなく、スタジオであれこれいじりながら、各人がまったく違う使い方を見つけていくべきものだと思います。

R : あくまでコミュニケーションを主体にする。そのためにプロダクトは、色んな制約からオープンであるべき。デザイナーのエゴで限定しないことが楽器に求められるんですね。teenage engineering のビジョンに繋がるお話ですね。

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驚きのグローバル企業とのコラボ、IKEA とのコラボレーションは何を誕生させるのか?

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IKEA とのコラボレーションで生まれたこれら2 製品。大企業相手にteenage engineering の核となる「デザイン」と「遊び心」がしっかりと刻み込まれている。KNÄPPA は1 枚のボール紙で基盤を包む紙製デジタルカメラ。数あるトイカメラのなかでも、抜群に所有欲をそそります。FREKVENS はホームパーティーを盛り上げるIKEA の製品ラインナップ。

Teenage Engineeringはレコードプレイヤー、スピーカーを開発。「FREKVENS」の語意はずばりFREQUENCY。

R : teenage engineering はIKEA とのコラボレーションで段ボール製デジタルカメラのKNÄPPA を開発しましたが、どういった経緯だったのでしょうか? 開発はIKEA からのリクエストですか?

J : いいえ。IKEA がをどうやって製品をローンチすればいいかを私たちに相談しに来たんです。そこで、私たちの方からカメラの開発を提案したのです。私たちはコンシューマー向けのエレクトロニクスを開発したかったこともありましたからいいタイミングでした。結果的にIKEA は私たちの提案を気に入ってくれました。全体的な機能やデザインは私とDavid Eriksson で行い、IKEA の工場と直接やり取りをしました。細かな部品等のレイアウトについてはIKEA で設計しています。

R : 同じくIKEA とコラボレーションしたFREKVENS に関しては、どういう経緯で生まれたのですか?

J : FREKVENS に関してはIKEA の方からアイデアの提示がありました。私たちは家庭用のオーディオ機器に興味がありましたので、いいコラボレーションになったんですが、最初のミーティングは上手くいかなかったんです。続く2 回目のミーティング会場になったのはラス・ベガスのパーティでした( 笑)。ミーティングと言っても、ディナーやお酒の席でお互いのアイデアをとりとめもなく語り合うような形がほとんどです。ちょっと品性に欠ける話題も話しますが( 笑)。IKEA とのミーティングではよくあることなんですが。。。ミーティングが終わり、3 週間後にいくつか実際の物を見せなきゃならなくなり、私たちは3 週間で50 のアイテムを用意しようと決め、一生懸命に取り組みました。現実的にはそう簡単には行きませんので大変ですが…。IKEA はテクノロジー方面に強くはありませんから、生産工場を見つけるのに苦労しているようでした。生産量も非常に多く価格も安くしたいので、なかなか新しいものを採用しづらいようです。自前の工場を持っているわけではないですから、スケジュールも非常にタイトで、とても大変なプロジェクトでした。当初は8 週間程度で終わる予想だったプロジェクトですが、もっと面白いことが出来そうなので、彼らとは1 年間続けてみることになりました。このコラボは「音を別の何かとコネクトしたい」という私のコンセプトを実現することになるので、エキサイティングな存在ですね。

R : 8 週間で終わるプロジェクトが1 年になったということは、teenage engineering がIKEA に魅力ある存在として認められたということですよね! 一方、teenage engineering 側では、コラボレーションの相手を選ぶ基準はありますか?

J : 人です。人同士の繋がりがディープな関係を生み出します。コラボレーションの相手とは、まるで昔からの友人であるかのように話し合います。外部とのコラボレーションは学ぶべき事柄がたくさんあり、エネルギーに満ちています。IKEA とのコラボレーションでは、コスト削減のノウハウを目の当たりにしましたし、大企業ならではのやり方を見ることが出来ました。それは私たちにとって大きな実験であり学びです。今後コラボレーションしてみたい相手は沢山いますよ。ところでIKEA といえば、私たちはオフィスを移転したんですが、IKEA との契約で、彼らの新製品を使って試験的にオフィスを構築してるんですよ。デザインは私がやっています。前のオフィスはとてもよい空間でしたがかなり乱雑で、スタッフが30人に達し、手狭になってしまったんです。今のオフィスは広くて、とても気に入ってるんですが、すでにあちこちにゴミが散らかってしまっていますね( 笑)

音を触る? 新たなコミュニケーション手段を生み出すテクノロジー、haptics feedback technology とは?

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「最も楽しいシンセ」とも言われたOP-1 の約半分ほどのボディで、サウンドのみならずビジュアルもコントロールすることができる唯一無二のシンセサイザーOP-Z。照明や舞台装置における世界基準のコントロールプロトコル『DMX』を操作できたり、写真データをシーケンスできる「フォトマティック」やCG をコントロールする「ユニティ3D」を搭載しています。音楽を包括したアートやインスタレーションのための全く新しいツールと言えるかもしれません。

R : いま一番興味あるテクノロジーは何ですか?

J : 「 haptics feedback technology( 触覚フィードバック:iPhone のホームボタンに搭載されている例が有名)」です。例えば、キックドラムのローエンドは耳で聞きにくい帯域も含んでますが、haptics feedback を楽器に搭載することで、音圧を「感じる」ことが出来るようになります。私たちの実験では、この付近の低域は「聞く」というより「感じる」ものです。上手くいけば、新しいユーザー体験を創出することが出来るでしょう。さらに取り組んでいるのが、OP-Z の開発に関連したワイヤレスシンクです。でも解決しなければならない問題が山積みです。部屋に入った瞬間に自動的に同期するようにしなければなりません。ミュージシャンが演奏する前に自分で設定しなければならないようではダメなのです。OP-Z はライティングのコントロールも出来るようになりますが、この部分はまだ完成していないので、さらに開発を進めなければなりません。私たちにとってテクノロジーとは、問題を解決するための手段なのです。ですから、私たちが採用するテクノロジー自体だとそれほど魅力的なものではないかも知れませんね。

R : Jesper さんがアイデアを思いついた時、どのようにチームを結成するのでしょうか?

J : スタッフとの関係は非常に強固で、お互いをよく知っていますし、それぞれの夢や実現したいことについてもたくさん話しています。だから、アイデアに対して情熱を持ったスタッフを適切に組み合わせるだけです。そして、フィーリングが大切です。やりたいことを自由にやれる、と感じられるようにしています。チームの構成は流動的で、プロジェクトによっても変わるし、工程によっても変化します。

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R : 素晴らしビジョンとデザイン能力を兼ね備えたteenage engineering ですが、個人であるJesper さん個人を幸せにしてくれるものって何ですか?

J : 製品サンプルの最初のロットが工場から届いた瞬間ですね。たくさんのスタッフが周りに集まり、それに触れてみて、驚いて…。本当にワンダフルな瞬間です。そこに辿り着くまでに大変な苦労があるから尚更ですね。トレードショウに参加するのも好きです。デモ機を持参して初めて触れるユーザーが機能を理解してくれると嬉しいですね。ユーザーから直接フィードバックをもらえますし、デモの時に聞いた希望から生まれた機能もあります。例えばOP-1 のFM ラジオがそうです。エンジニアは大変ですが、それでも喜んでくれます。トレードショウの中でもやはりNAMM は特別です。デモに持っていくのは最初のテスト機で、正式なリリースはそれから数ヶ月後になることが多いです。NAMM の前日なんかは。安いモーテルに泊まり、ドアなんて開けっ放しで翌日のリハーサルをしてますよ。

R : ユーザーや市場がteenage engineering に期待してはいけないことはあるでしょうか?

J : teenage engineering の方針は、何か新しいことを付け加えるということです。例えば、OP-1 はシンセサイザーにポータビリティという概念を付加しました。だから、みなさんが私たちに期待してならないことのひとつは、流行りの傾向に従っただけのプロダクトや既存のプロダクトのコピーということになりますね。プラスαのないプロダクトはやりたくないです。

R : teenage engineering が目指す未来はどのようなものでしょう?

J : まず何よりも、楽しみ続けることです。会社が大きくなるほど、今のような自由はなくなっていきますからね。カスタマー主導になり、サポートにも大きなリソースを割かなければならなくなります。大切なことは、私たちは75 歳になっても80 歳になってもこの会社を続けたいと思っているということです。その年になっても、ありのままの自分であり続けなければなりません。自分自身と、周りの人々を驚かせ続けなければなりません。

201804_TE_Sample_26_3_sR : 日本のユーザーにメッセージをお願いします。

J : 私たちのプロダクトが日本で受け入れられるなら、私たち全員にとってそれに勝る幸せはありません。私は長いこと日本からインスピレーションを与えられてきました。年に1 度ほど日本を訪れていますが、初めて訪れたのはインターネットもなかった1985 年でした。今ではウェブで色々なものが見られますが、当時は初めて見るものばかりで衝撃的でしたよ。日本のメンタリティ、カルチャー、デザインからたくさんのインスピレーションをもらいました。そして今、憧れの日本と少しは繋がりが持てたかな、と感じています。日本のものづくりのクオリティは非常に高いので、日本の皆さんが私たちのプロダクトを受け入れてくれるなら、それは本当に喜ばしいことです。

R : 最後に少し変わった質問をさせてください。あなたにとって愛とはなんでしょう?

J : とても難しい質問ですね(笑)それは私にとってたくさんの意味を持ったことばですが、何か、あるいは誰かととても近い距離にあること…正直であること…自分自身でいられるということ…そうですね、結局、私にとって愛とは、正直であることです。自分自身でいられる、ということはとても大切なことです。

R : その哲学は仕事にも反映されていますか?

J : その通りです。仕事でも同様でありたいと願っています。

プロダクトを生み出す際に優先されるデザイン主軸という考え方。ただ、大事なのはデザイナーのエゴを先導させないこと。このことが、teenage engineering の製品にオープンなコミュニケーション性を与えている秘密のようです。teenage engineering が発展してきたポイントは、このフィロソフィーをスタッフと共に共有していることでしょう。Absolut Choir をスタート地点に動き出したJesper Kouthoofd氏の実験はまだまだ続きそうな感じですね。私たち取材スタッフは遠く離れた日本に住んでるので、「スカンジナビアデザインの洗練さたプロダクトが格好いい」といったteenage engineering 製品への先入観を持っていましたが、実際は間違っていたようです。カリスマ的存在であるJesper さんの遺伝子をteenage engineering のメンバーが共有し、そのフィーリングが込められた製品が市場に伝える。この心地よい体験を、これからも楽しみ続けたいと心から思ったインタビューでした。

tack så mycket for Jesper!

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    記事内に掲載されている価格は 2018年11月2日 時点での価格となります。

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