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May.2022
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ヴィム・ヴェンダース ニューマスター Blu-ray BOX I Relase Party レポート 2022年4月26日 at 晴れたら空に豆まいて

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熱狂的なファンを持つ世界的映画監督 ヴィム・ヴェンダース。彼の作品の中ではたくさんのロックの名曲が流れ、また時には、キューバ音楽の伝説的ミュージシャンの姿がリアルに描かれ、、、……といった具合に、彼の作品の根底には常に音楽が深く関わっています。そんな音楽愛溢れる作品を生み出すヴィム・ヴェンダースの名前を特別視し、愛情を注ぐミュージシャンが世界中にいるのも納得できる事実です。

今回、TCエンタテインメント社から、「ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX I ~BOX II~BOX III」が発売。ヴェンダース監督自身の監修による、最新の4K & 2Kレストア版マスターが使用され、多くの作品が国内初Blue-ray化 & 一部が仕様をアップグレードしての再Blue-ray化という、ファンにとっては待望のパッケージが登場します。

今回発売されるボックスに含まれる12作品の音声マスタリングを担当したのがサイデラ・マスタリングのオノ セイゲン氏。2022年4月27日に発売されたBOX Iの発売を記念し、発売前日の4月26日に代官山の<晴れたら空に豆まいて>にて、「ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX I Release Party!!」が開催されました。当日、ステージには映画評論家の樋口泰人氏も登壇。樋口氏が今回のBOXⅠ~IIIのために執筆した封入ブックレットには、ヴェンダース作品で使用された楽曲の詳細な解説が行われ、ヴェンダース・ファンなら目を通すべき貴重な内容になっています。また、音楽&映画好きの人なら「爆音映画祭」を仕掛ける人物として多くの人がご存知かもしれません。

今回、Rock oNならではの「音」と「音楽」に注目した切り口で、イベント当日の模様をお伝えします。

音楽と映画のマスタリングの違い

オノ セイゲン氏

オノ セイゲン 氏 : 今日のイベントでは、BOX I に収録の4作品(「ゴールキーパーの不安」、「都会のアリス」、「まわり道」、「さすらい」)からピックアップして、皆さんに観てもらいます。これから流す映像の音声はBlue-rayフォーマットですので、サンプリンレート96KHz、ビットレート24bitというCDなんかよりずっと高音質になります。今回の音声マスタリングの仕事には膨大な時間がかかりまして、本当にクリスマスから正月の休みはなかったんです(笑)。 TCエンタテインメントさんから依頼を頂いたのが12月頭でしたが、最初は「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」「パリ、テキサス」「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース」「ベルリン・天使の詩」「夢の涯てまでも」の4作品だけのオファーを頂いたんです。個人的にも大好きな監督なので断る理由がない仕事なんですが音楽的に重要な4作品。よくよく話を聞いてみると全部で12作品あると。作品名を聞いたら「まわり道」や「都会のアリス」といった個人的にもっとも好きな作品が含まれている。「12本全部やります」ということになりました。

僕が通常やっている音楽のマスタリングだと、たとえば3分の長さの曲がある場合、曲の頭から終わりまで実時間をかけて聞きながらやることはなく、例えば、イントロ~歌の部分~エンディングといった具合に、まず要所で質感を確認するんです。音楽を聞いちゃうモードの前に一瞬で質感を判断する。ただ、今回の映画の場合、4時間の映画なら4時間かけて確認しながら、加えて、何度も何度もやり直したので膨大な時間がかかりました。音楽と同じように、ノイズ処理に関して、今は便利なプラグインもあるのでそういったツールを使ったりしながら、オンラインだけでやろうと思えばできるんです。でも、今回はまず「全12作品の全体を貫く音のトーナリティ」をどう構築するか。音楽を重視するヴェンダースの作品ですので、ここはこだわりたかったんです。

樋口 泰人氏

樋口 泰人氏 :ヴェンダース周辺の重要人物として、撮影監督のロビー・ミューラーがいます。彼が撮影する映像は世界中の映画ファンを魅了したわけですが、彼の元に「どんなレンズやフィルターを使って撮影したのか?」という質問がたくさん来たそうです。でも彼の答えは「普通のレンズを使ってるし、フィルターも使ってない。」。要するに照明と光の操作だけであの映像を作ってるらしいんです。今は、デジタル技術でいろんな映像やサウンドの操作ができるんですが、そんな技術がなかった当時でも、アナログで作られたサウンドには、現在のデジタル技術では作れない素晴らしさがあるんですよね。

オノ セイゲン 氏 :そう、光と似てます!質感の話ですね。音に関しては、まず、素材のスキャンニングが大事です。最新の派手なギスギスした音じゃなく、アナログ質感の良さを出す。マスタリング時でデフォルメしたらダメなんです。完成時に「こういう質感の音で出ていたはず」その質感をパッケージに落とし込む。僕が音作りでこだわった部分です。

樋口 泰人氏 :今回のマスタリングで、セイゲンさんは「都会のアリス」を基準にしたとのことですが、それはどういう部分ですか?

オノ セイゲン 氏 :「都会のアリス」はモノラルです。全作品を俯瞰して見た時に、自分の耳の記憶に質感が一番馴染んだのが「都会のアリス」だったので、このサウンドを「基準」としました。その後の時代の作品、例えば90年代の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のアプローチは、「都会のアリス」の基準からの進化を見越して、音が入る余地を残しておくんです。今回の12作品はステレオとモノラルが混在してるんです。サラウンドの素材に対しては、スピーカーから出て空気に混ざった時の質感を、あくまでも注意したのは、僕の個性を出すんじゃなくてオーディオ的にも「上映当時のバラスンスを、これ以上いい音では出ないはず」というレベルまで磨き上げました。

樋口 泰人氏 :モノラルの音って、全部が1つのトラックに入った状態でくるわけですよね。それをさらにマスタリングして質感を出す際に、どういう操作が入るんですか?

オノ セイゲン 氏 :僕の手元には、デジタルの48KHz 24bit WAVで素材データがくるんですが、普通にテレビのような音ですね。まず、それをコンバートし解像度をぐっとあげるんです。デジタル映像に例えるなら、グレーの絵があったとして、デジタル階調が16段階や32段階だと、修正できる部分は、その段階の区切りの範囲に限定される訳です。カスタムチューニングの真空管のアナログデバイスを通し、一度DSDで記録しています。そこから96KHz 32bitです。アナログの場合、階調は離散的じゃなく連続的なので、いわば無限大です。音も同じで、解像度をぐっとあげると、ちょっとした音質の差まで調整できるんです。

樋口 泰人氏 :なるほど、その間を埋めてくって感じですか?

オノ セイゲン 氏 :その間のちょうどいい塩梅で止める、という感覚ですね。料理の塩加減と似ていて、大さじ1つ2つじゃなく、「そこからあと2粒足す」みたいな(笑)音のドライブレベルもですが。だから、今回の「都会のアリス」がモノラルでリアルにセンターで再生されるスピーカーであれば、他の作品も全て、同じレベルで綺麗に再生されます。

樋口 泰人氏 :当時の映画の音は、高い周波数と低い周波数の音が削られたりするじゃないですか。元々のマスターに入っていない成分は引き延ばしたりするんですか?

オノ セイゲン 氏 :引き延ばすんですけど、高音域にないからといってデフォルメはしないことが原則です。ただ、中域に関しては無限大の可能性があるので、その部分の密度を細かく調整することで、ダイアローグの感情とか、上下の帯域の領域まで引き延ばすことができるんです。音に詳しくない人でも、実際に聞いてもらうとその違いが誰でもわかると思います。そこは大事なことですね。

樋口 泰人氏 :僕がやっている爆音映画祭で作品を流すと、マスタリングをちゃんとやってる作品かどうかが一発でわかり、頭を抱える時もあります(笑)。4Kリマスターと言いながら、確かに映像は綺麗になってるんですけど、音は全然だめ、みたいな、、、……。

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初期作品における楽曲著作権について

オノ セイゲン 氏 :BOX Iに収録されている「ゴールキーパーの不安」、「都会のアリス」、「まわり道」、「さすらい」の使用楽曲ですが、実は権利処理がされてない。というより、ヴェンダース自身、当時はそんなことまで考えてなかったっていうことですよね?

樋口 泰人氏 :そうだと思います。BOX Iには収録されていませんが、「ゴールキーパーの不安」の前の作品の長編第一作「Summer in the City」(公開・放映題:「都市の夏」)の話をすると、タイトルの「Summer in the City」はラヴィン・スプーンフルの曲名であることから、ヴェンダースのロックへの愛が伺えられますし、劇中ではキンクスの曲がたくさん使われていて、作品のサブタイトルに「キンクスに捧ぐ」と書いてあるんですけど、これって要するに「著作権取ってないけど、キンクスに捧げるのでなんとかしてくれないか」というヴェンダースの意図がある、という話を聞いたことがあります。 本当か嘘かわからないんですけど……(笑)。

オノ セイゲン 氏 :「ゴールキーパーの不安」は1971年の作品ですが、今頃になって楽曲を差し替えることでパッケージとして発売できるようになったんですよね。後追いですべての曲の著作権を払うとなると、映画製作費と同じくらいお金がかかってしまうらしいので、一部の曲は差し替えたとのことで(笑)。

樋口 泰人氏 :そうなんです。昔からこの作品を観てた人が、新しいバージョンを見ると「あれっ?」ってなるかもしれないですね。

ここからBOX Iに収録されている4作品の要所を短く上映していく時間に入ります。その際に繰り広げられた両氏のコメントを再現していきましょう!

「ゴールキーパーの不安」【4Kレストア版】1971年

樋口 泰人氏 :今日、イベントスタート前に、劇中で使われてる曲をレコードでをかけていたんですが、その中の1曲、ヴァン・モリソンがいたゼムの「グロリア」ですが「ゴールキーパーの不安」で流れます。主人公を殺した女性がしばらくさまよい、田舎町にようやく落ち着いたかなと思ったら、バーで流れ出すのが「グロリア」なんですが、彼女の名前こそがグロリアなんです。

オノ セイゲン 氏 :ジュークボックスから流れるんですよね。

樋口 泰人氏 :はい、ジュークボックスから流れて「ドキッ」とするシーンですね。改めて思うと、BOX Iの4作品において、ジュークボックスの存在が大きいんですよ。登場人物の一つといってもいいくらいの存在感があります。「まわり道」では出てこないかな……と思って見てるとやっぱり出てくる(笑)。

オノ セイゲン 氏 :あと、トラックに積んだ7インチのポータブルレコードプレイヤーや、ポラロポライドカメラのSX-70が印象的ですよね。

樋口 泰人氏 :ヴェンダースはすごく機械好きなんじゃないかなと思うんですよね。初めて映画でハイビジョンが使われたのは、BOXⅢに収録予定で1992年に公開された「夢の涯てまでも」なんですが、まだハイビジョンの規格が統一されてない時期でした。ヴェンダースは早かったんですよね。当時使ったハイビジョン用カメラは、NHKが開発したものでしたが、その後、業界内の競争に破れ、今は存在しないんですよね。

オノ セイゲン氏

オノ セイゲン 氏 :多分、その頃なんですが、当時1度だけ監督本人に会ったことがあります。SONYのハイビジョンセンターの紹介で、赤坂のホテルで会いました。ヴェンダースが映画の手法としてハイビジョンを使いたいということでした。90~91年だったと思いますが、NHKとSONYがハイビジョンを推進している時ですね。今やiPhoneでもハイビジョンが録れますけどね(笑)。 91年のモントルー・ジャズ・フェスティバルに、日本から2台の中継車が送られたんですが、そのおかげで、亡くなる2カ月前のマイルス・デイヴィスの演奏がハイビジョンで残っているっているんです。

樋口 泰人氏 :それは面白い話ですね。ここでレコード、かけていいですか? 「夢の涯てまでも」でキンクスの「デイズ」が流れるんですが、違う2組が演奏するバージョンが時系列で流れるんです。まずは、エルヴィス・コステロのバージョン。主人公が元夫(恋人?)の小説家のところに行きドアを開ける瞬間にこの曲が流れ、2人の過去が何となく示唆されるんです。その次に、登場人物みんながオーストラリアにたどり着き、みんなが別れる前の晩に「デイズ」を歌うんです。最初と最後に使用される2つの「デイズ」が「夢の涯てまでも」という作品をサンドイッチしている。そんな音楽の使い方をしてるんですが、まるで時間を引き伸ばされたようなスローバージョンのコステロ版「デイズ」から、キンクスのオリジナルに近い「デイズ」。ひと組の男女のプライヴェートな時間から複数の人間たちが絡まり合って寄り添いそしてまたそれぞれの道を歩み出していく時間。それがヴェンダースが「夢の涯てまでも」でたどった4時間47分間の道のりであった、と僕は感じています。

オノ セイゲン 氏 :「ゴールキーパーの不安」の中で、テーマといえる曲が劇中で何度も使われます。映画の中で流れる音楽は、当然、劇中で発せられる他の音、例えばセリフや町の音など、それらが全部、バランスを取られてミックスされて、最終的な映画のサウンドになっています。加えてヴェンダース作品の場合、ドイツ語、フランス語、英語と、多くの言語が登場するんですが、それも、映画のサウンド面といった観点から言うと重要な部分です。僕の手元に送られるマスタリング前の素材は、こういったものが全部入った状態のものですが、ある特定の音の要素だけを強調したり綺麗するのではなく、あくまでも全体のトーンをいい質感に仕上げることが重要になります。

樋口 泰人氏 :この曲、メロディだけ聞いてると同じ曲なんだけど、アレンジによって表情を変えますよね。最初の方はギターの音なのでしょうか? 、弦楽器の音が際立っているバージョン。2回目の方は管楽器の音でしょうか? 同じ曲なんだけど質感が全然違って、最初の方は「これからなにかが始まる!」という印象を観客に喚起する作用があります。こういう風に、改めて音に対して細かく注目すると面白いですね。

「都会のアリス」【2Kレストア版】1974年

樋口 泰人氏

樋口 泰人氏 :「都会のアリス」の音楽はイルミン・シュミットというギタリストがやってますね。

オノ セイゲン 氏 :CANのギタリストですね。

樋口 泰人氏 :そうなんですよ。ところで、初期ヴェンダース作品の音楽は、ほとんどがユルゲン・クニーパーがやってるんですが、80年代くらいまでのヴェンダース作品において、撮影、編集、音楽は1つのチームというか、まるでバンドみたいな形でやっていて、映画作りというよりもバンドツアーを何年もかけてやってたんじゃないか、と思うんです。そういう意味で1992年の「夢の涯てまでも」で、バンドがようやく長い時間をかけて「ここにたどり着いた」という感慨さえします。バンドメンバーみんなの疲労感も含めての「上映時間 4時間47分」じゃないかなと思うんです。

オノ セイゲン 氏 :BOX Iの中で、個人的なメインタイトルは「都会のアリス」です。高校生の時だったのか?わけもわからず。

樋口 泰人氏 :日本で初めて公開されたのが、多分、76年ですかね。僕は当時、全然情報がなかったこともあって、「都会のアリス」の前まではヴェンダースって人を知らなかたんです。でも、CANの人が音楽をやっているというので「なんだその映画は?」と思い見に行ったら、CANみたいな音楽じゃなかったっていう……(笑)。実は、ヴェンダースは最初からイルミン・シュミットに音楽をやってもらおうと思ってたんじゃないらしく、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュのインストゥルメンタル・チューン「カラーズ・フォー・スーザン Colors for Susan」を使おうと思っていた。でも権利が取れず、時間がなくてどうしようと思っていたら、プルシゴッタが、友達だったイルミン・シュミットを紹介してくれたということなんです。それでイルミン・シュミットは「カラーズ・フォー・スーザン」の曲調に触発されて作ったのがこの音楽になったと、そんなことをboidのウェブマガジン(boidマガジン)で、明石政紀さんが書いています。

僕は「CANじゃないんだ……」と思いながらも、映画を見たら面白かったので、すぐ後に「ことの次第」が日本で上映されたので見に行ったんですよ。「ことの次第」ではロサンゼルスのバンド X の曲がガンガン流れるんですが、80年代の新しい音を取り入れた感じがかっこよくて、さらにヴェンダースが好きになりました。古さと新しさが思いもよらない形で絡まっていくというか。

「まわり道」【4Kレストア版】1975年

樋口 泰人氏 :この曲はザ・トロッグスですね。ファースト・アルバムのジャケットには、メンバー全員がプレスリーという苗字でクレジットされてたという記憶があるんですが。1964年にデビューしたイギリスのバンドなんですが、1966年にカバーした「恋はワイルド・シング」が一番有名な曲ですね。ジミヘンや「ことの次第」でも演奏していたXもカヴァーしてます。ヴェンダースは「Summer in the City」でもザ・トロッグスの曲を使ってます。当時のガレージバンドですが、今もまだ活動しているみたいで、もう全然違うバンドになっちゃってるんだろうと思います。

そして「まわり道」では、やっぱりナスターシャ・キンスキーですよね。その後の「パリ、テキサス」それから「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」へと繋がっていくヴェンダース映画の「遠くて近い」ファムファタールと言ったらいいか。ヴェンダースの映画のカメラと世界の関係、人と人との関係、動きと言葉の関係など、いろんな関係性を象徴している存在ではないかと思います。「まわり道」では一度も喋らないんですよね。

「さすらい」【4Kレストア版】1976年

樋口 泰人氏オノ セイゲン 氏 :「さすらい」からは一番多く、5箇所をピックアップしました。一番古い1976年の作品ですね。このギターとサックスが印象的なテーマ曲、いいですね! これ、誰の曲ですか?

樋口 泰人氏 :クレジットには「インプルーブド・サウンド・リミテッド」と記載されているんですが、よくわからないです。60年代から70年代によくあった、スタジオ・ミュージシャンのバンドみたいな感じで、「こんな感じでやって欲しい」というヴェンダースの注文に沿って作った音楽だと思うんです。でも実際のところよくわからない。作品のストーリーは、映写技師が地方巡回し、そのついでに映画館の映写機の修理を行っていくんですが、変な男が彼に関わり始める、という……。

オノ セイゲン 氏 :話としてはなんてことない、まさにロードムービーですよね。

樋口 泰人氏 :冒頭、車が川に突っ込むシーンがあるんですけど、僕が始めて見た時は本当にびっくりしました。どうしてこんなことが起こるのか? と思うんですが、その答えはダグラス・サーク監督の「心のともしび」を見てもらえばわかります!

ベルリンの壁崩壊、ゴルバチョフ、そしてウクライナ、、、

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オノ セイゲン 氏 :これからBOX II、IIIと発売されます。みなさんが一番知ってる作品は「ベルリン・天使の詩」かもしれないですね。これは、2022年06月29日(要チェック)発売予定のBOX IIに収録されますが、「ベルリン・天使の詩」が公開された後に、ゴルバチョフがペレストロイカを進め、ソ連が崩壊するんです。「ベルリン・天使の詩」の続編である「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」に、ゴルバチョフが本人役で登場するんです。すごいことですよね。ウクライナに平和を!!

樋口 泰人氏 :シナリオにはまったく書かれていなかったとのことです。撮影中、ちょうどコンサートが行われる予定を知ったので、その場で撮影を申し込んだらしい。ヴェンダースってそういう、その場その場の何かを取り入れることをやるんですよね。あらかじめ自分がこうだと決めたことに固執するんじゃなく、何かが起こったらすぐそれを入れるっていう、すごい柔軟な撮り方をしている人ですよね。

オノ セイゲン 氏 :そして、1989年にベルリンの壁が崩壊しますが、壁が壊れた後、ルー・リードがホテルの部屋の中で「壁がなくなった世界はこんなにすばらしい」といった歌を歌います。東西冷戦が終わりを見せ、本当に象徴的なシーンですが、そんな 「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」この映画が今、すごい意味を持ってきて、僕は、まさに今起こっているこのウクライナの状況と重ねてしまうんです。もし、ヴェンダースがまさに今の状況を作品に落とし込むなら、どうするんだろう? と思ってしまうわけです。トイレ掃除の映画より、もう一度ゴルバチョフさん呼んできてロシア市民にも自由をとやってほしいものです。

ここでイベントは、観客からの質疑応答を経てエンディングへ向かいます。

樋口 泰人氏 :最後にヴァン・モリソンのレコードをかけようと思うんですが、なぜ、僕がこれを選んだかと言うと……ヴェンダースがヴァン・モリソンについて、すごくいい文章を書いてるんですが、読み上げて見ますね。ヴァン・モリソンの「TB Sheets」という曲に関して書いているんですが、「これらの労作に対して私が辛うじて言えるのは、これほど明晰で感覚に訴えくる音楽、耳に響き、眼に見え、手で捕まえられるような、これほどみずみずしい音楽は他に知らないということだ。」と書いていて、「これこそ音楽」みたいなことを書いています。今日はこの曲と文章を最後に、イベントを終了しようと思います。

オノ セイゲン 氏 :ありがとうございました!

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    記事内に掲載されている価格は 2022年5月24日 時点での価格となります。

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