第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!
Rock oN渋谷がある東京渋谷。渋谷を歩くと、本当にびっくりするほど、外国からの観光客の方で溢れています。定番のスクランブル交差点やハチ公像で記念撮影をしてすぐ移動する人たちに加え、最近の渋谷の観光客はだいぶ「多層的」になってきているみたいです。
ショッピングやカルチャーに深く入り込む観光客
渋谷パルコ、SHIBUYA SKY、MIYASHITA PARKなど新しい商業施設を楽しむ層。特に若い世代が多く、SNSにアップする目的が強い印象。
ナイトカルチャー/音楽やクラブを体験したい層
週末のクラブやライブハウスには、観光客らしい外国人が増えていて、ローカルとの交流も多い。
「日本的なもの」を探す観光客
居酒屋横丁(のんべい横丁、思い出横丁など)やレトロな喫茶店を訪ねる外国人も増加。再開発で新しくなった一方、古い渋谷を求める層も目立ちます。
そんな観光客にまだ発見されてないのが「喫茶ライオン」。レトロで荘厳な内装。喫茶店というより「音楽堂」に近い印象で、渋谷の喧騒の中にありながら、別世界のような静けさがあります。
1936年(昭和11年)に開業。戦火で焼けた後も復活し、現在まで続いている老舗の喫茶店で、大きなホールのような店内に、舞台のように設置された巨大スピーカー。座席はステージを正面に向くよう整然と並べられています。ここは、ただのカフェではなく「音楽鑑賞をする場所」。クラシック音楽を中心に、高音質で流れる音を静かに楽しむ空間です。
実は、弊社メールマガジン「ROCK’in MAILMAN」2008.7.4号〜2008.12.19号まで連載された、作曲家 高山博さんによるコラム「東京音楽散歩」の中で、この「喫茶ライオン」を紹介しています。改めてここに再掲しますので、興味を持たれたら、Rock on渋谷でお買い物の後は、静寂とクラシック音楽に包まれる空間で癒されませんか?
※弊社メールマガジン「ROCK’in MAILMAN」2008.7.4号〜2008.12.19号まで連載された、高山博さんによるコラム「東京音楽散歩」を再掲載しています。
音楽喫茶ライオン探訪(掲載日時:2008年7月18日)
さて、いよいよ「音楽喫茶ライオン」店内へ。外観同様、室内も洋館風。シャンデリアが吊るされ、2階のバルコニー席へは螺旋階段が連なる。どこも古びてすすけているのが、いい味になっている。正面には巨大な暖炉のようなスペースが設けられ、オーディオセットが鎮座する、さらに両端には、高さ3mはあろうかという、巨大なスピーカーシステムがそびえ立つ。
一階の客席はこのスピーカーに向かって、劇場のように配置されている。入る前に、この手の店は初めてのリュウジくんに、店内は私語禁止だからねと言ってビックリされたのだが、そういうこと。ここは音楽を聴きに来るための店、一種の音楽ホールなのだ。たとえばこの店が再建された翌年の昭和26年に、日本発のLPレコードが発売されるのだが、その値段が2,600円。今のCDと同じだと思うかもしれないが物価がまるで違う。公務員の上級職ですら初任給が6,500円、もちろんレンタルもFM放送もない。そういう時代に、贅沢なオーディオセットを揃えてレコードを聴かせたのが「名曲喫茶」なのだ。
店に入るとバッハの管弦楽組曲が流れている。レコード特有のスクラッチノイズが懐かしい。曲が終わって次の曲をかける前に、おねえさんがマイクで演奏者と曲名をアナウンスするのがいい。こうして、いろいろな人がクラシック通になっていったのだろう。
暗い室内に目が慣れてきたので、オーディオ機器周辺を観察。古いラックにカスタムメイドらしい年代モノのアンプが並んでいるのだが火が入っていない。ごく普通のSONYのコンボアンプなどを使用していた。スピーカーには。スーパー・ツイーターも追加されているが、そちらの音は出ていないかもしれない。それでもメインの木製ホーンだけで8発のスピーカーが見える。このシステム、よく見ると左右非対称になっている。右の方のスピーカーが大きく、またツイーターホーンは左にだけある。おそらくこれで、モノラル録音のオーケストラを聴くと、右に低音楽器が来る生オケに近い定位になるのだろう。
現代のハイファイ・オーディオとは全く異なるサウンドは、なんだか妙にまったりする。レトロな店内も渋谷の一角とはとても思えない。まどろむように、ゆっくりと時間が過ぎていく。
喫茶ライオン
東京都渋谷区道玄坂2-19-13
https://lion.main.jp/
記事内に掲載されている価格は 2025年8月22日 時点での価格となります。
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