第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!
お疲れ様です、in the blue shirtこと有村です!”再構築で作られたフレーズに「歌心」をいかに乗せるか”をテーマにしたボーカルエディット連載の続きいきます!
前回の内容は、
1.素材は長ければ長いほうがいい
2.等間隔でのスライスをしない
という素材の準備の観点での話でした。今回はそれを再構築する際のコツについてです。
3.リリース素材は貴重
カットアップの醍醐味の一つに、スパッと切ることでの”ぶつ切り感”があります。素材をスライスすることで、シンセサイザーのADSRで言う所の、AやRの値が0の状態を意図的に作り出し、それにより印象的なフレーズを構築するわけです。
“ぶつ切り感による印象的なフレーズ”で真っ先に思い浮かぶはakufen。これぞカットアップ!
一方で、”ぶつ切り感が印象的である”ということは、裏を返すと”普通ではない、不自然なサウンドである”とも言えます。
不自然であるからこそ効果的な技法として用いられるわけですが、再構築で作ったボーカルフレーズで「歌心」を感じさせる上ではマイナスに作用することが多々あります。この不自然さの取り扱いには非常に気をつけなければなりません。
具体的に説明して行きます。例としてパプリックドメインの童謡「赤トンボ」を使って説明して行きます。一番の歌詞は「夕焼小焼の / 赤とんぼ / 負われて見たのは / いつの日か」です。これのボーカル素材が手元にあると仮定して説明していきます。
これをスライスして再構築する上で、最も重要な点はリリース素材の確保です。”夕焼け小焼け「の」”、赤とん「ぼ」、”いつの日「か」”、など、語尾のリリース部分は最重要、替えが効かない貴重な素材です。
声が自然な形で減衰し、無音になる部分は、再構築したフレーズでも最後に配置することで、エディット後も自然なリリースが得られます。必ずしも子音からで切り出す必要はなく、母音部分だけでも、元素材の語尾を再構築後も末尾に配置することで、ナチュラルな印象を与えることができます。
これだけではフレーズ末尾に使える素材が少なすぎるので、次点でマシなものを活用して行きます。「赤と〜ん〜ぼ〜〜」部分など、ロングトーンは狙い目です、「と」や「ん」もお尻の部分にフェードを書いたりしてうまくリリースとして用いることができそうです。
あとは経験で、これはフレーズ末尾に持ってきても自然に聞こえそうだなと感じた部分を使って行きます。とにかく、ボーカルエディット時に「リリースは最重要」です。この心がけだけでもみなさんに伝えられたらと思います。
一方で、アタックの部分はリリースに比べると比較的どの部分を使ってもうまくいくことが多いです。1音だけ切り出すもよし、2音以上で切り出して元素材のフロウを活用するもよし、自由にエディットしてかっこいいフレーズを作れるよう試行錯誤して行きましょう。
3.ブレスも忘れずに
アタック、歌い出しにあたる部分にも「歌心」注入テクがあります。それはブレス、息継ぎのサンプルを配置することです。これは非常に効果的で、無機質になりがちなボーカルエディットがブレス一つで急に生き生きとしてくることもあります。
ベースやドラムの打ち込みでゴーストノートを入れた途端グルーヴが出たりするのと似ていますね。
幸いなことにブレスには音程感や、歌声ほどの音色の差がでにくいので、汎用性のある息継ぎ素材を見つけたら、切り出してストックしておくことで、他の素材と組み合わせて使うことも可能です。
音量は気持ち大きめで、わざとらしいほどの息継ぎをさせてやるくらいがちょうどいいというスタンスで私はやっております。
ボーカルエディットについての話はひとまずこれで一区切り、読んでくれた人に、少しでもお役立て頂ければ幸いです。なにか質問などあればtwitter(@Arimuri)などで気軽に聞いてくれたらと思います。
カットアップ、ボーカルエディットはDTMならではの手法です。DTM独自の表現手法は、まだまだ未開拓な領域だと思います。自宅の一室から、工夫一つでオリジナリティのあるサウンドが生み出される可能性があるなんて夢のある話ですね。知らんけど。
せっかくパソコンで音楽を作るのだから、生演奏、生録音の下位互換ではない、素敵なサウンドが作れると良いです。私も精進して行きます。みなさんも頑張って行きましょう!
TREKKIE TRAX プロフィール
TREKKIE TRAXは、2012年5月に設立した あらゆるジャンルのクラブミュージックを、世界へ発信することを目的にしたクリエイター集団です。
▼HP >> http://www.trekkie-trax.com/
▼TREKKIE TRAX RADIO >> https://block.fm/radios/536
記事内に掲載されている価格は 2018年7月17日 時点での価格となります。
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