音をクリエイトし、活躍している人をご紹介するコーナー「People of Sound」。このコーナーでは、制作者の人柄が、サウンドにどうつながっていくのかに注目。機材中心のレポートから少し離れ、楽しんでお読み下さい。当コーナー記念すべき第1回目に登場して頂いたmarimoRECORDS 江夏正晃さんの続編 新スタジオレポートです!
ロックオンカンパニー店舗にもよく来て頂いている江夏さんですが、「新しいスタジオを作ったので遊びに来て下さい!」とお招き頂きました。なんでもビル1つをmarimoRECORDSの制作拠点にしたとのこと。「これはすごいかも!」ということで都内、山手通り沿いに出来たスタジオにお邪魔してお話をお伺いました。
2008年9月4日取材
D.I.Yで完成したスタジオ
Rock oN:前回の取材から2年過ぎましたが、ここへ移られたのはいつですか?江夏正晃氏(以下 江夏):このスタジオは2007年の6月にスタートしました。リミックス、プロデュースなど、仕事の内容が大きくなってきたこともあり、ちゃんと防音されたスタジオで行う必要が出て来ました。半年かけて探しまわり、この物件を見つけたんですが、改造していいということでしたので、天井、ブレーカー等の電気の取り回しの部分やエアコン取り付けは業者にお願いしましたが、それ以外のスタジオ構築は防音も含め、全て自分達社員でやったんですよ!
壁の中にロックウールや音パッドを詰めたり、防音扉を取り付けたり、いろいろやりましたが本当に大変でした! もう2度とやりたくないです。(笑)でも、このビルは単体の建物なので、24時間どんな爆音を出してもOKの状態です。工事後、部屋の形状が縦長ということもあり、定在波の問題も出ましたが、自分達で吸音パネルを設置して対策しています。オープンから1年2ヶ月経ち、今では部屋のチューニングに関しては上手くいってるんじゃないかと思います。クライアントからの評判もいいですよ。サラウンドにも対応しています。
江夏:そうかもしれないですね。作業をやりながら、建材や電源など色んなことにも詳しくなりました。夜中でも大きな音が出せるようになったので、ミックスのやり方も、ここに移って大きく変わりました。前回の取材ではヘッドフォンをいっぱい並べた写真が映ってますが、今では必要なくなったので2個しかないですし。
Rock oN:機材の変化で大きなものはありますか?江夏:DAWは変わらず信用しているNuendo 4をWindowsマシンで使っています。卓がYAMAHA DM2000になりました。入力のヘッドアンプはほとんど使ってないんですが、ミックス・バッファーとしてと、Nuendo 4のコントローラーとして使っています。色付けのない音でとても気に入っています。
オーディオ・インターフェースはRME Fireface800で、ADAT出力2系統の16チャンネルをDM2000に繋げ、DM2000のマスターデジタルアウトをFireface800に戻し、Nuendo 4で2ミックスにしています。マスタークロックもDM2000内蔵のものを使っています。
Rock oN:前回の取材ではSteinberg Magnetoをよく使っていると伺いましたが、最近よく使うプラグインはありますか?江夏:Magnetoの代わりにUAD-1が主役になりました。UAD-1のPrecision Limiterはリミッターとして使っていないんですよ。あのソフトは「メーター」がイケてるんです。RMSが詳細に確認出来るからマスタリング時のレベル管理にとても役立っています。
他にはNEVE 1073 EQが無くてはならない存在のプラグインですね。SPL Transient Designerもキックの音作りによく使って気に入っています。今、UAD-1は全部で2枚使っています。
Rock oN:今、会社のスタッフは何名いらっしゃるんですか?江夏:音楽のスタッフが僕と宮川の2人、映像が僕の弟を含め3人、グラフィックが1人います。音楽だけに限定すると仕事が大きくならないということもあるし、今の時代は、間違いなく音楽と映像は切り離せないものですよね。MAもこのスタジオでやってます。
自分は作曲、プロデュースもやり、MAのエンジニアもやってるので「一体何屋なんだ?」という感じですが、今求められてるクリエーター像は、クライアントから見て「ワンストップで作品の最終形まで出来る人物」という方向に来てると思います。別のフロアにいる映像チームとはLANで繋がっているので、映像と音楽が共同しながら並行進行できますので効率がよく、仕事が早いのが僕らの強みでもあります。
江夏:今まではどちらかというと、リミックスやプロデュースなど、裏方として活動することが多かったのですが、今年末から来年頭にかけて、自分名義のアルバムを同時に2枚出すことになりました。今、その制作をこのスタジオで日夜がんばっているところです!
(左写真)ボーカルや楽器のレコーディングブースにもなるナレーションブース。山手通り沿いの立地ながらも完全に遮音されている。Neumann 87Aiを中心にマイクも豊富にスタンバイ。
(左写真)こちらは映像とグラフィックチームのフロア。同じビル内という強みを活かして、音楽チームとの連携によるワンストップでのコンテンツ作りが可能。
このコーナーでは、音を作り出す活動をされている方の出演を募集しています。ミュージシャン、サウンドエンジニア、作曲家、アレンジャー、はたまた音効さんや声優さんなどなど。音楽機材に興味を持っているかたなら、なおOKです。お気軽に、下アドレスまでご連絡下さい。また、ご感想、ご希望等もお待ちしております。連絡先アドレス : store-support@miroc.co.jp