360 WalkMix Creator™(以下:360WMC)の発売から1年以上が経過しました。この一年の間にも、360 Reality Audio Live(サンロクマル・リアリティオーディオ・ライブ)アプリによるライブ配信が行われ、ソニーがイマーシブ時代のリファレンスヘッドホンとしてMDR-MV1とサウンド制作用リファレンススタジオの音場環境をヘッドホンで高精度に再現する立体音響技術「360VME」の測定サービスを発表するなど、360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ、以下:360RA)を取り巻く環境は日々進化しています。
既にImmersive Audioの制作に着手している方も、これから始めたいという方も、360RA制作に着手していく上でのリアルな情報を欲している方は多いのではないでしょうか。360RAのMixと聞いて真っ先にイメージするオブジェクトパンニング以外にも、制作の上で重要なノウハウは多く存在します。
そこで今回は、360WMCをベータ版の頃から使用し、数々の360 Reality Audioミックスを手がけてきたサウンドプロデューサーURU氏のスタジオを訪問し、マネージャーの山内裕司氏と共に、制作中であったアヤノハラグチの楽曲『Moen』の360RA Mixの様子を取材させていただきました!
さっそく作業開始!
URU:では実際に作業をはじめますね。今回はもともと自分が2Mixをしているので、同じセッションを使いますが、他の方が2Mixしたものだとステムをもらうことが多いです。
僕の場合、作業時間のうち、4分の3くらいは最初のトラックやバス、ステムなどをオブジェクトに振り分ける準備時間に費やします。最大128オブジェクトという上限があるので、これ以上増やせないとなった時にどうまとめるか、といったことや、他の方の作成したステムデータから360ミックスをする場合はエフェクトがついた音源だったりもするので、エフェクトや音色を新たに足して、360RAの良さが目立つようなミックスをします。
まず最初に、360RAミックス用に用意しているテンプレートのセッションをインポートします。テンプレートにはAUXトラックが大量に用意してあって、全部のトラックに共通してEQ、コンプ、リミッターと最下段に360WMCをインサートしています。今回のテンプレートはWavesで組んでいます。トラックは全部グループを組んであって、どこかのプラグインを弄ると他のトラックに刺さってるものも連動するようになってます。自分の場合はトータルのコンプやL2でのレベル管理を、マスタリングの代わりのようなイメージでやってますね。
※【こちらがテンプレートで用意されているAUXトラック。今回はWavesプラグインメインで組んでおり、上からLinear Phase EQ Lowband、Rcompressor、C6-SideChain、Linear Phase EQ Broadband、L2 Ultramaximizerが、そして最下段にWMCがインサートされています。】
URU:360RAの場合ゲインが大事で、僕は全てのオブジェクトのゲインを基本-6dBにして作業を始めています。音像の遠い、近い距離感をゲインで調整したいのでヘッドルームに余裕をもたせたい。それと、2Mixと比べてマスタリングがないぶんコンプ感が薄いので、なるだけトラックの方でコンプしてレベルのバッファーを稼いでおいて、トータルコンプで持ち上げるために余裕をもたせています。オブジェクト以外にMixのオーディオトラックもだいたい-6dBにしてヘッドルームを稼いでいます。
Rock oN:随所でヘッドルームを確保して次に渡すということですね。
※【オブジェクトのGainでも-6dBを基本としてレベルのバッファーを作っています。】
URU:サイドチェーンコンプの効果がどれだけ出ているか分からないけど、レベルをついた時にいい感じになるんですよ。ほとんどフラットなままかもしれませんが。
Rock oN:保険ですよね。
URU:L2は別ですよ。最初に6dB下げた分を、後から上げるようにしています。最初からレベルを上げていると、オブジェクトはすぐにピークについちゃうんです。
山内:特にMPEG-HのLevel 1が危ないんですよね。あれはすぐにピークに達してしまう。
Rock oN:360WMC自体にもリミッターがつきました。
【※360WMC v1.3.0から追加されたルックアヘッドリミッター。ミキシング中にリアルタイムに音圧を調整し、クリッピングを防止する効果があります。】
第1回はここまで!次回は、モノ/ステレオの使い分けなど、オブジェクトの設計についてうかがいます。
ここで紹介したURUさんのテクニックは、実際の『Moen』PTセッションから解説する動画も後日公開予定なのでお楽しみに!
さらに、実際にURU氏、アヤノハラグチ氏、山内氏を迎えてアヤノハラグチ『Moen』における360 Reality Audio制作についてご紹介いただくリアルイベントの開催も決定!
12/7(木)、渋谷LUSH HUBにて行います。イベント後は参加者同士による360RA懇親会も開催予定!
イベント詳細、申し込みは下記フォームから
応募フォームはこちら記事内に掲載されている価格は 2023年11月14日 時点での価格となります。
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