作曲とエンジニアリングを一人で行う「プロデューサー」を中心に絶大な人気とシェアを誇る Cubase の最新版がリリースされました!
Cubase9.5はサウンドエンジンの強化で音質を大幅に向上。ワークフローを簡略化し高い効率で作曲から納品までを支援する細やかな改善。ついにHALion Sonic SEに搭載されたウェーブテーブルシンセなど驚きと喜びが盛りだくさんです!
先日都内某所で開催されたCubase 9.5 内覧会の様子を交えながら新機能を紹介しましょう!
11月25日(土)に開催されるCubase Pro Sessionsでもプレゼンターを勤めるCUTT氏。まさしく「プロデューサー」として作曲からミックスエンジニアリングまで行うCUTT氏ならではの機能紹介でした。
Cubase9.5最大の進化。それはオーディオエンジンの刷新です。ミキシングエンジンが従来の倍精度を持つ64bit浮動小数点処理になりました。その効果はぜひ実際にサウンドを聴いて体感してほしいのですが、これが効いてくるのはソースのダイナミクスの表現やミキシングのボリューム処理。アコースティック楽器やリバーブのテイル感、また大量のトラックによるパワフルなミックス。これらが歪みなく精細に表現されます。
9.5から名称が「スタジオ設定」に変わった、設定メニューの中の「VSTオーディオシステム」で64bitの設定ができます。Cubase9.5のデフォルト設定は32bit浮動小数点なので、インストールしたらすぐここを64bitにしてください!
そして嬉しいことにCubase9.5のラインナップ「Pro」「Artist」「Elements」さらに!サードパーティ製品へのバンドルで知られる「AI」も含めた全てが64bit浮動小数点処理へと進化します!
いち早く感性を形にするためには、多くの機能をシンプルな操作と最小限の視線の動き/クリック数でこなせることは必須です。特に時間に追われるプロならば重要性は増します。
優れたレイアウトとゾーニング(Zoning)で高効率のワークフローを提供してくれるCubaseが新たにゾーニング2.0を搭載。
メインウィンドウ最右側に用意されたゾーンは、マスターボリュームの表示はもちろん、ファイルブラウザーやラウドネスメーターに切り替えが可能。特にファイルブラウザーはそこから直接ファイルのドラッグ&ドロップが可能になるため、ファイルを探しにCubaseを離れてデスクトップでフォルダを開く作業が無くなります。たったこれだけのことなのですが、実際に体感すると作業が大幅に快適になっていることに気づくはずです。
Control Roomセクションはキューとモニターのミックスに直接アクセスできるようにもなっています。
(※メーターセクションとControl RoomセクションはCubase Proのみ)
初代発売から30年以上の歴史を持つCubaseが、2017年にメトロノームを進化させました。新たにクリックパターンエディターが設けられ、最大4種類のアクセントレベルをカスタマイズできます。また曲中に拍子が変わる際にクリックが追従。クリック音はオーディオから読み込めたり、豊富なクリック用ライブラリが用意されています。
これが一番嬉しいのは録音時のドラマーさんでしょうね。DAWのクリックといえば1拍目は強拍で「● . . .」の繰り返しでしたが、「. ● . ●」のように曲のグルーブに合わせた丁寧なメトロノームが用意できます。
カスタマイズしたクリックのパターンは「拍子」トラックに並べて使います。他DAWでも使えるように、クリックパターンをオーディオデータで書き出すことも可能。こだわっています!
(※Cubase Proのみ)
イベントベースのオフライン処理が進化!これまで Nuendoだけに搭載されていたダイレクトオフラインプロセッシングがついにCubaseにやってきました。
元のオーディオファイルに影響を与えず、オーディオイベントやクリップにエフェクト処理を追加できるオフラインエフェクト。CPU負荷の削減やミキサーの作業効率のために使われていましたが、9.5から搭載されるダイレクトオフラインプロセッシングは、この処理に関する変更を記録しいつでも取り消しができるようになります。これまではアンドゥするしかなかったですよね。あれがいつでも変更できるようになったことで、より積極的にオフラインプロセッシングを使う機会が増えるでしょう。
CUTTさんは画像にあるような、ラップの波形を切り刻み、それぞれの部分に別のエフェクトをかけていました。これをミキサーでやると部分の数だけミキサーchを用意して、ステムでまとめる必要がありますよね。そんな面倒から解放され、スパスパと作業を進めましょう!
どうしてこれがいままでできなかったのでしょう。首を長くして待っていましたよ!オートメーションカーブがより自在な形で描けるようになりました。
こんな複雑なカーブも朝飯前です。SEの書き込みや擬似的なダッキングなど、表現力が一気に増しますね。
こちらもオートメーション関連。オートメーションデータを書いた後、それを増減させるためにはそのデータを選択し、続いてマウスで上下する必要がありました。しかし 9.5からはオートメーションデータ間にマウスを近づけるとツマミが現れ、これをドラッグするだけの作業になります。1クリックの作業が省けるだけでまた作業速度が上がります。オートメーションエディットの処理が複雑で数多ければこれは大きなアドバンテージとなります。
各トラックのVSTエフェクトスロットがこれまでの8から倍の16になりました。そしてこれまでプリ/ポストのエフェクトを挿せる数は決められていましたが、新しいスロットでは最大16の中でポリ/ポストの数を自由に決めることができます。
これももっと早く欲しかった。ありがとうSteinberg!これまでは小節や拍、クオンタイズから設定していたロケーターなどのスナップレベルを、プロジェクト画面のズームイン/ズームアウトに追従させることもできるようになりました。
ググっとズームインすると16分音符や32分音符、もっと小さなスナップレベルまで自動で追従してくれます。例えばベースの打ち込みで、白玉から32分音符のゴーストノートまでのスナップをいちいち選ばずともマウスのホイールでズームイン/ズームアウトさせるだけで済みます。
「フルックス」と読みます。HALion Sonic SEが搭載しました。 旬なサウンドを納めた100のプリセット、70以上の波形ライブラリを搭載。実際に聴いたサウンドはEDM直系のモダンなサウンド。簡単操作でウェーブテーブルシンセの美味しいところを全て味わうことができます。Cubase 9.5を買うと初めからこれが付いてくるなんて、贅沢だと思います。
(※メーターセクションとControl RoomセクションはCubase Pro&Artistのみ)
以上、駆け足でお送りしたCubase 9.5の新機能。64bit浮動小数点エンジンによるサウンドの向上は他DAWユーザーも悔しがる嬉しい強化ですが、その他は「この機能が欲しかった!」というCubaseユーザーの声をしっかりと受け止めた、実にユーザーに寄り添った機能強化だったと思います。文字だけを読むと小さな機能ですが、実際にはワークフローの効率化が大いに進められていて、作業が快適になる仕掛けがいたるところに仕込まれました。幅広いジャンルとクリエイターをユーザーに持つcubaseの快進はまだまだ続きそうです。
記事内に掲載されている価格は 2017年11月15日 時点での価格となります。
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