先日各賞決定が発表されたRock oN AWARD 2018。今年はゲストノミネーターに協力いただき、全70ノミネートの中からBest Product of the Year含む8賞がついに決定しました!
選考会の後に結果を振り返る「Rocko N AWARD 座談会」を例年通り実施。その模様を抜粋してお届けします。2017年を象徴する製品 Rock oN AWARD 2018 から2018年からの制作シーンは見えてくるのか。どうぞお楽しみに。
Rock oN AWARD 2018 座談会
IH富田(富):Rock oN AWARD 2018、ようやく決まりましたね。Best Product of the Year はSennheiser AMBEO VR MIC。これまでにない結果でしたね。やはり2017年はVRが注目された?
パパ洋介(洋):2017年は、VRを始めとする(Auro-3D、Dolby Atmosに代表される)イマーシブサウンド、新しいフォーマットへのアプローチが加速した年だったと思います。
スティービー竹本(竹):昨年のAES2017もFacebook360を始めVRが盛り上がってましたね。
洋:その新しいフォーマットのコンテンツの制作環境が整い始めて来たのが2017年。アウトプットのフォーマットもいろいろなものが登場してきて具体的になったよね。Youtube VRやFacebook360などがその代表。
恒吉(恒):その中で僕らRock oNはどう時代を捉えていく必要があると思う?
洋:これから僕らはゲーム業界のDynamic Mixingに近い発想を始めないといけないかもしれません。
洋:今後VRコンテンツはユーザーの視点によってオブジェクトとの相対関係で音を鳴らし分けるといった技術が広がっていくのではないかと僕は予想しています。
恒:そういった技術はStreamingメディアでも利用が可能なのかな?
洋:Streamingという分野では、Fraunhofer MPEG-H Audioというオブジェクト志向のサウンドソースがあります、これにヒントがあります。TV向けのものが代表的ですが、視聴者が好きに音声を選択でき(各国言語)、会場音やいくつもの解説などそれぞれの音声の音量をユーザーが自由に選べるというものです。例えばライブ音源なら歓声は一切いらない、という選択がユーザー自身でできる。マルチトラックで配信してユーザーが体験を決める、といった未来がやってくる可能性が高いです。これも一種のDymanic Mixing。ユーザーがどの様なバランスで試聴をしたとしても、破綻のない素材をステムで届けなければ行けないという半面もあるということです。
恒:素朴な疑問。Bフォーマットのマイクは作れないのかな?
洋:物理的にはできませんが、プロセッサーが入ったハードウェアを挟む事で変換は可能です。
RED先生(RED):AフォーマットからBフォーマットへの変換ボックスでもいいですね。収録で荷物を少なくしたい時はambisonicマイクとレコーダーを持って、しっかりと収録するとき、つまりBフォーマットで出た方がいいときはコンバーターでBフォーマットにして収録できれば。
洋:Zoom F8はAフォーマットで入れて、A ch4ch B4ch、バイノーラルの2chを3種類を同時に合計10ch録れる。バイノーラルの2chが録れることでモニターできる。
富:新しいモジュラーシンセの形を提案してきたEndorphin.es Shuttle Systemが受賞。この製品を猛プッシュしていた渋谷くん、今の気持ちは?
ACID渋谷(渋):嬉しいに決まってますよ。Shuttle SystemはRock oNでも当初の予想をはるかに超える台数が売れていて自信がありました。モジュラーブランドは様々ありますが「組み換えできない(モジュラーシンセの)フラッグシップ」というのはこれが初めてだと思います。Endorphin.esは自分たちの世界観に自信があったんでしょう。そういう意気込みを感じていたんです。
富:渋:Shuttle Systemはシグナルフローやシステムの発想がBUCHLAに似ています。BUCHLAシンセは単体モジュール1つだけ買うって人が少なくて。買う人はBUCHLAの世界観が欲しくて超高額なシステムを買ったりします。MakeNoiseのシンセも『世界観』を手に入れるために一式買いされることが多い。Shuttle SystemはそういったEndorphin.esの『世界観』が凝縮されているんです。
富田:なるほど。ブランドと製品が持つ世界観。
渋:そのほかにもShuttle Systemは、今年MPEに対応しました。こういうところに表現力を高める意欲が感じられます。
渋:MPEに対応しているコントローラは今(*)Roli Seaboard Rise、Haken Audio continue fingerboard、そしてRoger Linn Design LinnStrumentなどがあり、音源の方ではEquator、DECKARD’S DREAM、そしてこのShuttle System(Shuttle Control)が挙げられます。アナログシンセ勢がこのMPEに対応しているのが面白い現象ですね。DECKARD’S DREAMはYAMAHA CS-80のポリフォニックアフタータッチを実現するためにMPEを選んだようですが。これから先、先端のテクノロジーとアナログの融合というのは増えてくるような気がします。(*2018年1月現在)
恒:シンセの表現力が高まると何が起こる?
渋:さらなるインスピレーションが沸きます。Roli Seaboardの5Dのような高い表現力があるおかげで気持ちが高揚して新しい曲が生まれるチャンスが生まれると思います。
マエストロ佐々木(佐):確かに。例えばその曲を作るためにモジュラーシンセを使う理由はない。でもトライ&エラーでパッチしながら音を作っていくというスタイルそのものが欲しいから使う。
富:その曲作りのスタイルと先ほどのシンセの世界観という言葉がリンクしそうですね。
渋:ハードウェアは作品を作るというプロセスを楽しむという意味も持っていると思うんです。
恒:シンセユーザーはこれまで「うまく演奏すること」を目指していたけど、今は「体験しながら新しい要素を楽しむ」という体験型のクリエイティブにシフトしているということかな。2017年に目新しいものが少なかった日本のシンセサイザーに求められているもの。ヒントがその中にあるかもね。
富:Instruments Hard AWARDはこのほかにも候補がありました。
渋:Elektron Digitaktも印象的でした。MACHINEDRUMが生産完了になって、アナログのイメージがぐっと強くなっていたところにコンパクトなデジタルドラムマシンが出てきた。Rock oNでも大ヒットになりましたね。パーツの視認性や耐久性も抜群に上がっていて、とても好印象です。
佐:2018年以降、シンセはどうなってほしい?
渋:あからさまなアナログリバイバルは一旦収束しました。今はもっとナチュラルに面白い音を目指し、結果としてアナログとデジタルのハイブリッド製品が目立ってきているように思います。ハイブリッドでエンベロープも充実したNovation Peakは海外でも評価が高い。そういうフラッグシップをもっと出して欲しいですね。それからCV-USB-Midiの統合にはまだまだ面白いアイディアが眠っていると思います。。面白いコントローラーも飛躍的に増えているので、それとユニークな音源がより密に結びついていくのではないでしょうか。
竹:このカテゴリにおいてシンセサイザー以外で印象的な製品は?
PD安田(安):PositiveGrid Bias Headです。Bias Amp(ソフトウェア)個人的に買ったんですがそれで作った音を持っていけるというのも強みです。デジタルギターアンプというとKEMPERも人気ですが、Bias Headはプリセットを使ってさっと狙った音が作れる。動作が軽くてiPadでの操作も使いやすい。ユーザー目線で作られた良い製品だと思います。肝心の音は今時のサウンドですね。使いやすくて、弾いてて気持ち良い音。
恒:競合製品と比べて何が優れていると思う?
富:液晶パネルが付いていないことだと思います。ぱっと見だとデジタルだと感じない。これはギタリスト にとって重要なポイントです。
安:KEMPERやLine6はボタンをポチポチ押して階層奥にアクセスして音作りをしないといけないですもんね。
竹:Line6といえばフラッグシップのHelixの動きも大きかったね。
安:実際に売れてますよ。人気があります。手頃な価格のHelix LTは衝撃的でしたがやはりフラッグシップ Helix Floorが人気です。Line6はずっと弾いていたくなる気持ち良いサウンドが特徴ですね。そういうプリセットも多いです。KEMPERはマイク録りした音の再現性がピカイチですね。
恒:ATV aDrumsの得票がすごく多かったんだけどこれは?ライバル機種と何が違ったのかな?
安:もちろんセンサーや音源の秀逸さはあるんですが、大きな違いは見た目ですよ。これはドラマーにとって重要です。ドラマーが熱くなれるかどうか。大事です。
富:実際にaDrumsのルックスを賞賛するレビューもありました。あれは多分ドラマーさんだな。
富:ではハードウェアシンセに続いて、ソフト音源に行きましょう。Instrument Software AWARDはVENGEANCE SOUND AVENGER。
谷:AVENGERは6月に発売して一気に人気がうなぎ登りに。VENGEANCE SOUNDが今の時代に合うEDMに特化した音源を出して来た。そして久しぶりの国内流通というのが要因だと思います。日本では作家さんから人気が広がった印象です。Rock oNでセミナーを開催してくれた浅田祐介さんを始めとする多くの作曲家さんやアレンジャーさんが使用していますね。とにかく相変わらず音が太いです(笑)
恒:VENGEANCE SOUNDはもともとサンプリングCDブランドとして有名で、多くの作家さんが使っていることでも知られていたよね。
富:ダンスミュージック大国のドイツ製ならではの現場を知り尽くしたサウンドはクリエイター必携製品だと思います。プリセットも「これだ!」っていうのがカテゴリわけされて大量に入っているので便利。さっきのモジュラーシンセの話の後に恥ずかしい話ですが、音を作っている間に作曲のインスピレーションが薄くなることがあるので、個人的にはおおよその音にすぐたどり着ける整理された大量のプリセットは助かりますね。
谷:2017年はほかにSpitFire製品に代表される高サンプリング音源も盛り上がりました。こういった製品はPCにも非常に高いスペックを求められます。特にストレージはSSDが理想ですね。僕の予想ですが今、高負荷のソフトウェアを動かすためにPC環境を整えなおすという時期が来ていると思います。PC1台で完結させられなくて複数台のPCを制作に使う時代。そして劇伴の分野でも極力PCだけで完パケまで作る現場が増えていくのではないでしょうか?実際にモック段階でも高いクオリティが求められるようになってきているという話は良くお伺いします。
竹:5年前くらいはEastwestとViennnaの勢いがあったけど、市場が変わる中でSpitfireが大きく伸びた要因を改めて語ってもらってもいいかい?
谷:Spitfireはプロの作家が自分たちで作ったサンプルを売ろう、とビジネスを起こしたところから始まっているのが要因だと思いますね。海外では作家が自分たちでライブラリを作るという文化は昔からありますので。だから現場目線の即戦力のプリセットがとても充実しているという強みになっていると思います。あとマイクの種類もDeccaまであり、そのマイクポジションの多さとその応用能力は群を抜いてますね。マイクポジションの数はメモリの消費量に大きく影響するのでオーケストレーションとなると余裕を持ってDDR4で64GBは積んでおきたいです。
恒:劇伴やゲームの作家さんがいま元気だな、と感じてるよ。その人たちが使うSpitfireが伸びるのはよく分かる。
洋:さっきのモジュラーシンセといい、Spitfireといい、こんなにリアルな表現ができるソフトウェアがあるのにMIDIはいまだ128段階。それでいいのかな。MIDIを拡張したものが必要ですよ。
RED:もしMIDIに変わるなんらかの通信プロトコルが出てくるならば、独自規格ではなくてオープンソースにしてほしいです。そうすれば広がる可能性は十分ありますよ。
富:ほかにはToontrack Superior Drummer 3の得票も多かったですね。
谷:プロの作家さんの中でも好評という話は良く聞いていて、鍵盤楽器出身であまりドラムに詳しくない作家さんに人気が出て来ている印象ですね。流石George Massenberg! ということもあり、とにかく実践で使えるプリセットが多い。ドラム音源って実際にインストールして見ると使える音ってそんなに入ってないこと多いんですね。正直3〜5キットあれば良いとこで。
SD3が本当に良く出来ていると思うところは、楽曲のジャンルによってプリセットを読み出すことが可能で、数あるキットの中から組み合わせて出してくれるところです。ドラムに詳しくないクリエイターでもジャンルを選んですぐ使えるんです。あとはちょっと弄って楽曲に合わせるだけ。こちらも過去にセミナーもやっているので是非チェックしていただきたいですね。
竹:残念ながら賞を逃したNative Instruments MASCHINE MK3の話もしたいな。
渋:まず筐体が良くなりましたね。触るとすぐ分かります。パッドを叩きながらSmart Stripでエフェクトを掛けたり、また使用頻度の高いNOTE REPEATボタンなどが大型化されたりとプレイヤーにも嬉しいブラッシュアップが多いです。
竹:それから新OS 2.7でオーディオトラックができた。
渋谷:Audioというプラグインが新たに追加され、サンプラープラグインを介さずにオーディオループを扱えるようになりました。これによってループを回しながらBPMを変えても破綻しないリアルタイムのタイムストレッチができるようになりましたね。タイムストレッチ自体は全く珍しくありませんが、波形は壊さずに再生エンド箇所の調整ができるのであえてパターン数を短くしたりすると面白いグルーブが生まれたりするので積極的に弄って欲しいですね。
MASCHINEは大きな資金投入があったようですよ。個人的にはこのAudioプラグインが発展して、シーケンスにとらわれずに波形の直張りができるようになる布石なのでは、なんて想像して楽しんでいます。
竹:価格帯や高い機能性を考えるとオーディオインターフェース機能の追加需要がどれだけあったのかは少し疑問でした。MASCHINE MICROクラスでの搭載ならより歓迎されるとは思います。
富:Audio Hard Award はYAMAHA MMP1。
佐:製品が細分化されていて見方によってイノベーションの意味が変わるので。選ぶのが難しかったよ。
洋:MMPはハードウェア的には、Danteの制作環境に対してのラストピース。久々に純国産であるのも嬉しい。
恒:オーディオI/Fにならないのが残念だよ。
洋:MMP1はDANTEに対応しているので。Dante Virtual Soundcardがあればethernetと経由でオーディオI/Fとして使えますよ。Danteがスタジオ・システムとして広まるきっかけとなる一台だと思います。やはり、柔軟なシグナル・ルーティング、モニターコントロール、スピーカー補正、外部機器からのGPIOとの協調制御など、今までここが足りないと感じていた部分が、しっかり詰まっています。
恒:僕はFocusrite X2Pを推していたんだけど今一歩届かなかったのが残念だよ。
洋:DANTEのアクセラレーターが今、PCI-eしかない。期待として、Thunderboltなどの手軽なアクセラレーターが出ると、インターフェースとして見方が変わると思います。
恒:フラッグシップiMac。ユーザー投票も多かったね。でも実際の話、内部メモリ128MGB、18コア、Radeon Pro Vega 64グラフィックボードなどハイスペックな性能を使いきれないのでは?制作ソフトがそのスペックに追いついていない印象があるよ。
RED:そんなこともないですよ。最近のアプリケーション、例えばSPAT REVOLUTIONはグラフィックが凝っているのでグラフィックボードのスペックはおろそかにできません。もちろんメモリもCPUもソフトシンセでは必要です。例えば音楽制作の場合。CPU負荷が無いからといってUAD-2プラグインをたくさん挿して作ったトラックをバウンスする際、PCのメモリに余裕があるだけで作業効率が上がりますよね。
PCのスペックといえば、映像に関しては2017年はNuendo 8が出ましたよね。Pro Toolsをライバルとした機能追加をSteinbergらしく実現してて驚きました。しかし高機能になった分、ノートPCで快適な動作は厳しくなってきています4K動画編集ではメモリ96GBくらいのスペックが必須だと感じています。
私が思うiMacを制作に使うデメリットは、拡張性と大画面であるが故にスピーカーからの音を背面で弾いてしまうこと。制作デスクに穴を掘ってiMacを斜めにはめ込んでセッティングしている人が出てくるかもしれませんね。
清:僕はノミネーターとしてSoftube Console 1 Mk IIをノミネートしたんですよ。賞は逃しましたが得票数が多くて嬉しいです。評価が良かったのはMK IIになってUAD-2に対応したことが大きかったんでしょう。さらにコンソールもさわれるようになったことで注目されました。
Console 1 Mk IIにもつながるのですが、Townsend Labs Sphere Microphone Modeling System、Slate Digital VSM、Antelope Discreatの登場があって、スタジオ機材のバーチャル化が浸透していることを感じます。2017年はプラグインもコンソール卓やTubeのモデリングなどニッチなものがエンジニアにうけた印象です。
恒:マイクのモデリングはFunctionとしては素晴らしいと思うよ。便利だしね。しかしレコーディングの本質ではないような気もするんだ。これから先、どんな製品が出てきてほしい?
清:こっちはバーチャルではなくて、WES Audo mimas (プラグインコントロールの500モジュール)のような製品がもっと出てきて欲しいです。
竹:過去にはBettermakerなども同じコンセプトのUSB搭載500シリーズなどを出したけど、アウトボードの市場認知には時間がかかるね。
富:オートメーションやリコールもできるからすこぶる便利なはずなのになあ。
富:Audio Software AWARDは、選考委員の意見もユーザー得票も抜群だった Sonarworks Reference 4!
恒:プロでも使える実用性と使用シーンの幅の広さ、今後への期待で受賞するならこれだ!っていう感がある。
谷:今までのこう言った製品との大きな違いは、DAWを介さない状況でも補正が聞く「Systemwide」の機能ですね。やはり制作中にiTuneで参考曲聞いたりすること多いですから。これがあるのと無いので大違い。PC負荷のレベルも調整出来、作曲中は軽くすればレイテンシもそこまで大きくなりません。TD作業の時は「Linear」にすることでより正確なリファレンス環境でMIXやマスタリングが可能です。ヘッドホンまで対応していて、対象となるヘッドホンもMDR-CD900STが対応するなど今後更にラインナップが増えることに期待です。個人的には次はJVCのヘッドホンとかも対応して欲しいですね。
富:iTunesやYoutubeとか。普通に使えるものね。マイクで測定するタイプのスピーカーキャリブレートソフトは他社でもあったけど、ヘッドホンをリファレンスにキャリブレートできるReference 4はありがたい製品ですよ。
RED:これ以外だと私にとってはSPAT SPAT REVOLUTIONが出たことが2017年の衝撃でした。それからiZotope RX6は圧倒的な存在。MA系のお客様からの反響もとても大きいんです。 服の布擦れ音を一発で消せる”De-rustle”は大絶賛されているんです。
竹:昨年のGold Awardに続きRX6やO8N2までiZotopeの勢いは最高潮だね。得票もレビューも多かった。
RED:O8N2はTec AWARDを受賞してますからね。これに関しては熱いユーザーレビューを拝見しましたが「素人でもこれでなんとかなります」みたいな内容があって、それにはO8N2の深みをもっと知って欲しいと思いました。「とりあえず使おう」みたいな発想にはならないでほしいです。そこで終わるソフトじゃない。
竹:Tac Systemさんと共催で森崎 雅人さん(サイデラ・マスタリング)、江夏 正晃さん(marimoRECORDS)のお二人を講師に迎えたセミナー(2017.11開催)でも、手軽に使いたい人と深く使いたい人のどちらにも対応できる懐の深さが光ってました。
恒:O8N2はポスプロ現場ではどう捉えられているの?
RED:O8N2はあくまで音楽制作に特化しているのでポスプロ分野が求めているものとはちょっと違います。
洋:O8N2はポストプロダクション向けにチューニングされたバージョンがあれば面白いかも。
RED:例えば声ひとつにしてもボーカルとナレーションでは求められるものが違いますからね。そう考えるとMA現場ではRX6が重要なんです。
清:レビューの「もはやポスプロにおいてはRXがあることが前提で撮影からMAまで行われていることは間違いありません。」が印象的でした。音楽制作に例えるとオートチューンのような存在?
RED:収録側のエンジニアとしては救急車のサイレンやセミの声が止むを待たなくていいというのが制作時間の短縮にもなりますね。
恒:マイク/スピーカーを含めたIn/Out Sound Equipment AWARD。受賞のSHAPEがこんなに売れれている理由って何なんだろう?
佐:もちろん音、それから外観の良さ、コストパフォーマンスのバランスの良さじゃないかな。
清:上位価格帯の製品と並べて聴いても負け気がしないです。それから家で使うにはちょうど良いサイズですね。
佐:SHAPEはフランス人らしいデザインだし、数少ない自社製のスピーカーを専用工場で作っている。Focalはアナログ技術に長けたメーカーっていうのはみんな知っているよね。その技術をフルに使ってできていると思います。
佐:スピーカーではAmphion Two18も得票数が多かった。
恒:Amphionの人気の秘密は?
佐:ズバリ、音が良いという評価だった。繊細で臨場感のある音が人気でしたよ。
恒:アクティブスピーカーの音に慣れた人がパッシブスピーカーの魅力に気づいたのかもしれないね。リスニングオーディオのスピーカーが持っている質感、表現力、色気をモニタースピーカーに持ち込んだ製品なのかもしれない。
恒:SHAPEもTWO18も、2017年はどうしてこんなにパッシブラジエーターが流行ったのかな?
洋:きっかけはbearfootだったと思います。あの後にFocalが追いかけた。さらに昔はPMCがありましたが。
恒:パッシブラジエーターって低域が逆相だったりディレイがあるよね?
清:そうですね。慣れは必要かもしれません。でも出音が素直で僕は好きですよ。
洋:僕としてはアンプの性能がそのまま音に影響するな、という感想です。ダンピングが効いているアンプでないと低域がボヨンボヨンになる。AmphionはBRYSTONやLab.gruppenやCREST PERFORMANCEのようなダンピングの高いアンプで鳴らすとすごく良い結果になるんじゃないかな。
清:実際に「Amphionで鳴らして最高だった」とBRYSTONを買ったお客様がいます。
富:機能/性能よりも聴いて良かったから、という理由で製品を選んでいるのかな。
恒:スピーカーなら VECLOS MSA380Sがの登場は興味深かったよ。これまで音響製品を作っていなかったThermos社がまさかスタジオモニタースピーカーをリリース。そして先日の発売イベントを取材していろんな経験をした。今の時代、情報が一番最初に伝わるのはインターネット。だからこそ「良い音」という情報を伝えるというのが難しい。メーカーはインスタ映えという言葉もある中で良い音を伝える方法を模索し始めているよ。WEBやメディア上のFirst impressionでそれを伝えることが大事になってきているね。
佐:実際の音によるFirst impressionを伝えるのが店頭の役目だね。スピーカー選びは絶対に店頭に来ていただきたい。
富:マイクは…どうですか?Ambeo VR MicrophoneはBest Product of the Yearのところで語ったのでそれ以外。竹本さんはLEWITT LCT240PROを推してましたね。
竹:あれは価格破壊と声を大にして言えるパフォーマンスです。トランジェント特性の良さからくるオケ立ちの良さを飛澤さんとの収録でも高く評価いただきました。
富:残念ながらAWARDが発表されるまでに話題のSONY C100の発表がありませんでしたね。これが出て来ていたらSHAPEと競り合っていたはず。
恒:最後にAccessory AWARD。
富:HAYAKUMO FORMA STEREO VU METERに決定!
佐:見た目がいいね。コンパクトでかわいい。けっして万能とは言えないんだけど、クリエイターが常々感じていた穴を埋める製品なんだと思う。その証拠に発売から数ヶ月で国内外に一気に広まったから。
谷:VUメーターはどうしても高価ということで手を出すことが難しいという人が多かったと思いますが、この製品が出たことで勧めやすくなりましたね。VUメーターの重要性は歳を重ねるとわかって来ますが、若い頃から使って欲しい(笑)プラグインだとディスプレイが複数無いとDAWに隠れて見えなくなったりしちゃいますからね。
渋:たしかに、確実に仕事をこなしてくれそうなルックスやサイズ感が所有欲を満たしてくれそう。僕はDJミキサー用にも欲しいと思っちゃいました。
富:キャリブレーションの調整など必要な機能はサポートしてるので、おもちゃじゃないですよ。Made In Japanで手作りなんだそうです。3万円代の価格でこの仕様はよくやってくれました。
洋:アクセサリーはiLok Cloudが得票数があったんですが、AWARD発表のタイミングで製品化されなかったですね。
恒:業務用としてiLok Cloudは重宝されそう?
洋:んー、業務現場ではオンラインでないマシンが多いので両手を上げて喜ぶようなものではないかもしれません。でも個人ユーザーにとっては便利でしょうね。ユーザーの立場や業態によって温度差があるかもしれません。いずれにせよ話題性はありますね。
RED:私はGig Gear Original Gig Gloves v2を一押ししてました。あの手袋は良い。PAなど現場前線の人に使ってほしい。
富:僕あれを引っ越しに使ったんですが、しっかりホールドしてくれるので握力を無駄に使わずに重いものが運べました。手を守るだけじゃないですよ。ラクです。
2日間に渡り語り尽くされたRock oN AWARD 2018座談会。ここにその全てを掲載することはできませんでしたが、受賞製品が生まれてから多くの人に受け入れられるまでのストーリーや、制作の未来を予感させるシーンの動向をお伝えできたかと思います。
この度の審査にあたり、投票やレビューで参加してくださったユーザーの皆さまと、ゲストノミネーターのクリエイターの皆さま。そのほか関係者の皆さまへ感謝の言葉を述べ、Rock oN AWARD 2018 座談会を終了いたします。ありがとうございました。
記事内に掲載されている価格は 2018年1月19日 時点での価格となります。
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