ルックスはTR-8に比べて華やかさが増したものの、外周を縁取る緑色が無くなった事で印象が大きく変わりNative Instruments社のMaschine や Komplete Kontrolに似た雰囲気で、シンプルモダンなデザインになりました。
レベル・フェーダーがとってもカラフルに!フェーダー毎に自分の好きな色に変更出来るので、キックは赤、スネアはオレンジ、シンバルはイエローなどと自分の法則を決めてアサインすれば、色を見ただけでパターンを構成するインストの全体像が把握出来ます。
パッドはTR-8同様、16ステップ・シーケンサーを兼ねた美しいデザイン。このボタンはRoland Jupiter-80から搭載され始めたと思いますが、ガラスの様な輝きとツルツルした感触が高級感あって好きです。
TR-8Sの特徴的な機能
■ACBテクノロジーによるリズム音源のみでなく、PCM音源を搭載しておりベースやシンセパートも作成可能。更にSDカードから波形を読み込んで(ステレオサンプルもOK!) 再生や演奏が出来ます。
■インスト毎にフィルターやエフェクターを搭載し、音作りの幅が広がりました。
■モーション機能によりツマミの動きを記録する事が可能。ステップ毎に細かく値を修正する事も可能です。
■本体右下にある白いパッド「インスト・パッド」は選択中のインストをベロシティ付きで演奏可能。リアルタイム録音やライブ演奏にお勧め。
■1パターンあたりに8つのバリエーション(A~H)を持ち、バリエーションをAからHまでチェーン再生すると最大8小節のパターンを作成可能。
■パターンを16個まで連続再生出来るので、1パターン(最大8小節)を16パターンを繋げて128小節の楽曲として完成させる事が可能。
■Auto Fill In機能により、飽きの来ないトラック制作が可能に。
冒頭で「楽曲作成まで行えるグルーヴ・マシン」と表現した理由がお分かり頂けましたでしょうか。TR-8Sを触ってまず思い出したのがKORGのElectribeシリーズで、リズムパートと楽器パートが混在したシーケンスで様々なジャンルを作成する事が可能です。TR-8S内蔵ドラムACB音源以外はPCM音源となり、モーション機能でシーケンス各ステップのTune設定をするとベースやメロディパートの作成が行えます。
ではここから、上記機能を掘り下げて紹介して行きます。
ACBとサンプル・サウンドの融合
下記音色リストを見ただけでどんな音色か想像できる方も多いでしょう。Typeの列でACB音源とSample音源を確認できます。カテゴリーの列ではBD,SD,TOM,RS,HC,CL_OH, などの他、FXやBASS、Synth、Voice、Scaled、Chordがあり音程楽器も豊富に収録、更に外部波形を取り込む事も可能なので、これだけ音色があれば困る事はないでしょう!
拡張されたサウンドメイキング
本体中心部に配置されたインスト・エディット・セクションでは、11個のインストTune,Decayを操作するほか、CTRLノブにアサインされたパラメーターをリアルタイムエディットしたりパターンシーケンサーに動きを記録する事が出来ます。また、このツマミ群はMIDIコントロールデータとして送受信可能ですので、DAWのコントローラーにしたり、DAWからTR-8Sをエディットする事も可能です。
エディット・セクションで縦に並んだ3つのノブだけ見るとエディット出来る内容がとても少なそうですが、そんな事はありません!本体右上のディスプレイとValueノブを駆使して様々なパラメーターをエディット出来るのです。
主なパラメーター
・Tune
・Decay
・Level
・Gain
・Pan
・Reverb Send
・Delay Send
・Spread
・Bit Reduce
・Attack
・Filter Type
・Filter Cutoff
・Filter Resonance
・Filter Attack
・Filter Decay
・Filter Env
・Filter Velocity
・Inst FX Type(コンプ、ドライブ、アイソレーター、トランジェントなど12種類のエフェクトから選択)
アンプエンベロープと、更にフィルター用のエンベロープが独立しているのは重要なポイントでレゾナンスも強烈にかかります。パンスプレッドは音をステレオイメージ外側に配置する事が簡単に行えて便利。インスト毎にエフェクトを持っているので、ビット落としや歪み系を個別に作成するという作り込みの楽しさがあります。ただ、ディスプレイを見ながらパラメーターを探し出し、ENTERボタンを押してVALUEノブを回すという流れが煩雑で時々迷子になる事がありますが、1つの機材に意識が集中できるという没入型機材であります!
音色変化を記録するモーション機能
パターンを再生しながらインストのツマミ操作を記録したり、シーケンスのステップ毎に細かくエディットする事が出来るので、ダイナミックな音変化から細かなピッチ変化、メロディを作成するなど有機的なサウンドを表現する事が可能!各インストと、マスターFXのツマミも記録出来るのでトラック全体のフィルタープレイやディレイ飛ばしも可能です。これはもうハマりますよ!インストをステップ毎にエディットして、値を指に任せて設定すると普通は思いつかないようなフレーズや音響効果がバンバン飛び出して来ます。制作に行き詰まったらコレです!
ベロシティ対応のインスト・パッド
本体右下にある白いパッド「インスト・パッド」は選択中のインストをベロシティ付きで演奏可能。演奏したいインストを選択したら、あとはこの白いパッドを感情の赴くままに叩いて下さい!打楽器はやはり「打」入力が良いという方は、リアルタイム録音にしてこれを叩けばベロシティを反映したデータが記録されますので、音の抑揚とグルーヴ、そして何よりパッションが得られます!
リズムスケッチから1曲まで構築可能
先ずはTR-8Sのパターンとバンク構成についてです。パターン16個で1バンクを構成し、バンクは8個あるので合計128パターン保存可能です。PTN SELECTボタンを押しながら本体下部16個のパッドのうち1つを押してバンク決定。そこからもう一度パッドを押してパターン選択となります。
1パターンあたりにAからHまでの8つのバリエーション(それぞれ16ステップ1小節)を持ちます。白紙のパターンからリズム作成を行う際はバリエーションAから始まり、それをバリエーションBにコピーして発展させて行く方法が現実的です。8バリエーションを連続再生すると最大8小節のパターンが出来上がります。
1パターン内に用意されている8バリエーションの他にFill In バリエーションを2つ作成する事が可能で、Auto Fill In機能をONにすると指定した小説ごとにFill Inバリエーションに差し代わります。フィルインを予め作成する以外にも、スキャッター機能が搭載されており、リバース再生やスタッターを複雑に組み合わせたカッコ良いバリエーションが自動的に生成されます。これは大変便利で是非使いたい機能です!
パターンを16個まで連続再生出来るので、1パターン(最大8小節)を16パターンを繋げて128小節の楽曲として完成させる事が可能!パッド1と16を同時押しで再生すれば自動的にチェインしてくれます。16パターンでは足りない場合は最後のパターンを再生中にバンクを切り替える必要ありなので、バンクを超越して32パターンのチェインなどが出来ると嬉しいです。
このパターンチェイン機能により楽曲の構成が大分見えるので、スケッチを整理して1曲に構築する際など重宝すると思います!
ハードウェアを極めるのに最適な1台
パソコン無しで楽曲制作をしたいという声を最近よく耳にするので、ソフト時代への反動なのか、それとも音楽制作の一番理想的な本来の形なのか。今回TR-8Sから提案されたワークフローはワークステーションの方向に1歩進んだと思います。
もしTR-8Sのシンセ音源部にTB-03の音源やBoutiqueシリーズのシンセ音源群が搭載されたら、、、もうこれはRolandシンセ愛好家にとってのドリームワークステーションの完成でしょう!
パソコンスペックやOSバージョン、DAWの知識、オーディオインターフェース、ドライバーのインストールやアップデート、バグや機材の相性問題、そういった事に振り回されず音楽の事だけに時間を使いたい方や、これからトラック制作を始めたいという方にはTR-8Sをおすすめしたいと思います!
公開中!これで買うべき製品が見える!
記事内に掲載されている価格は 2018年3月28日 時点での価格となります。
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