2007年にそのユニークなデザインから、多くのMacintoshユーザーを魅了したApogee Duet。その後2011年にはDuet2が発売。2017年にはWindowsへの接続にも対応し、さらに多くのユーザーへ向けてその洗練されたプロダクトを提供してきました。
そして今回その三代目となるApogee Duet 3が遂に販売となりました。これまでのプロダクトデザインを継承しつつ、さらなる進化を遂げたその製品に触れていきます。
本体の箱を開けると、まず顔を出すのはApogeeのロゴが真ん中に印字された質感の良いキャリーケース。この中にApogee Duet 3本体とBreak Outケーブルが収納されています。
サイズ感としては、11インチのiPadと同じくらいでしょうか。
ケースの保護部分がしっかりしているため少し厚みがありますが、13インチ以上のPCが入るバックパックであれば、大方持ち運ぶことができそうです。
これまでのDuetシリーズもコンパクトでしたが、Duet3では更に本体が薄くなっており、持ち出しやすさが向上しました。
前面のコントロール部は、初代からのユニークなデザインを継承した大きなエンコーダーノブのみを搭載。メーター部分は、初代Duetと同様のシンプルな2ch LEDメーターとなっています。
そして本体表面は強化ガラス(ゴリラガラス)で覆われており、堅牢性を持ちながら高級感のある外観を実現。これは入手したら思わず見せびらかしたくなりますね。
付属のUSBケーブルは、先端にUSB-C to A 変換が付いているため、どちらの端子でもすぐに接続できる点は、ユーザー目線の気遣いを感じられます。
なぜここまで薄く出来るのか。その理由は、ブレイクアウトケーブルにあります。
マイクプリを内蔵するインターフェースとなると、XLR端子の搭載はほぼ必須です。このXLR端子がオスの場合直径20ミリほどあり、端子を搭載するとなると最低でもそれ以上の幅は確保しないといけません。
そこでApogee Duetシリーズではブレイクアウトケーブルでの接続を採用しており、そこから各入出力へ接続できる設計となっています。
これなら本体周りにケーブルが集結しないため、配線の見た目もすっきりしますね。
また恐らく同様の理由で、ヘッドホンポートについてもステレオミニ(3.5mm)ジャックが採用されています。CD-900STなど標準(6.3mm)ジャックを採用しているヘッドホンについては、変換プラグが必要となるので注意が必要です。
ブレイクアウトケーブルの長さは1.5mほどあるので、簡易的なセットアップであればブレイクアウトケーブルにそのままマイクを接続して収録といったこともできそうですね。
本体下にある大きなジョグホイール。実はこれ..光るんです。
見てみるとホイール下に紫のLEDが搭載されており、ホイール周りを優しく照らしています。
最近のPC周辺機器は、ゲーミング云々と言われるほどやたらと発光する製品が増えてきていますが、I/Fにもその風潮が来たのかと。ただそこまで主張の強い光り方ではなく、洗練されたデザインにあった落ち着きのある発光具合になっています。
ちなみにこのリングは、押し込むことで以下4つのコントロールを行うことが可能です。
・スピーカー音量
・ヘッドホン音量
・INPUT1ゲイン
・INPUT2ゲイン
なお、こんなに目立ってほしくないという方は、付属PCソフトウェアのApogee Control 2より明るさの設定が可能ですのでご安心ください。
まず私の普段の試聴環境についてですが、普段はRMEのデスクトップ型インターフェース「Babyface Pro」(FSの前機種)を使用しており、また自宅環境の都合もあって、あまりスピーカーは鳴らさずに基本はヘッドホンとイヤホンでリスニングを行っています。なので今回は普段使用しているヘッドホン、イヤホンにて試聴を行いました。
そんな私がDuet 3を聞いた印象ですが、その他のインターフェスと比べてみると傾向としてはソリッド寄りなのですが、艶感のある上品なサウンドだと感じました。オーケストラ楽曲を聞いた際に驚いたのですが、ダイナミクスの広く歪みがすくないのか、クレッシェンドしていってた時の音の滑らかさは特に良く感じます。
SNも良く、定位感も分かりやすいため、バスパワー駆動のインターフェースとしては十分なスペックを持ち合わせているのではないでしょうか。持ち出しのしやすさからも外出先のMIXやリスニングで重宝しそうですね。
試しにEarthworksのSR314を接続して自分の声を聞いたみましたが、ゲインの持ち上がり方は非常にナチュラルで変にブーストはされずに上げてくれる印象です。
そして「Duet 3」には、あの伝説的エンジニア、ボブ・クリアマウンテンがチューニングを施したDSPエフェクト「Symphony ECS Channel Strip」を内蔵しているので、チェインに沿ってEQ、コンプを調整し、最後にサチュレーターでドライブしてあげると、音の厚みがありながら抜け感のある好みのサウンドにすることができました。
DSPエフェクトがないインターフェースの場合、アウトボードのEQなどがなければ、録音時そのマイクプリのキャラクターに頼るしかなくなってしまいますが、 DSPエフェクトがある「Duet 3」なら、そのボーカルに合わせて音色を作ることができるので、このメリットはかなり高いと思います。
今度は最近ポットキャスト収録などで定番となりつつある、ダイナミックマイクShure「SM7B」を接続してみました。
このマイクはダイナミックマイクの中でも感度が低めのため、高いゲインに対応したプリアンプでなければ、ラインレベルまで持ち上げることはできないのですが、スタジオクラスのマイクプリアンプを搭載しているDuet 3であれば、十分にゲインを稼ぐことができました。
このセットであれば、出張してのレコーディングも簡単に行えそうですね。
昨今、配信需要が増したことにより必要とされることが多くなってきたループバック機能。もちろんDuet 3も搭載しています。
Apogee Control 2上の「Assign to SW Inputs」よりループバック先を選択することで、Mixer Masterの音がPC側のインプット1-2chに返されるようになります。
ミキサーがかなりシンプルなため複雑なルーティングは難しいですが、PCから流したBGMと声を合わせて配信に流すといったことであれば問題なく可能です。
インターフェースを使用していて”あるある”な話が、OS標準のボリュームコントロールが使用できなくなること。使用できたとしても任意のチャンネルのボリュームをコントロールできなかったりと、思ったように動作しないことがほとんどです。
しかしDuet 3であれば、そんな悩みからも解放されます。Apogee Control 2上にある「OS Volume Control」からOS側でコントロールしたいボリュームを選択してあげれば、スピーカーもしくはヘッドホン出力のボリュームをOS側でも制御できるようになります。作業中にキーボードショートカットでささっと音量を調節したいときに便利ですね。
いかかでしょうか。厚みのないスタイリッシュなデザイン、場所を選ばないバスパワー対応、Apogeeらしいソリッドなサウンド出力、DSPエフェクトにより音源に合った表現が可能なマイク入力。最近では多くのメーカーからモバイル向けのインターフェースが発売されていますが、ここまで見た目も中身も拘った製品はあまり見かけません。
機動力のあるスタジオクラスのオーディオインターフェースを必要とされていれば、今回のDuet3は良い選択肢になりそうです。
記事内に掲載されている価格は 2021年9月24日 時点での価格となります。
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