小型多機能のpicoシリーズやとアナログ/DSPの技術をふんだんに盛り込んだBlackシリーズなど、魅力的なラインナップを誇るラトビアのモジュラーシンセブランドErica Synthから新商品Digital Drum SYnth LXR-02が発売されました。これはSONIC POTIONSとのコラボ製品で、SONIC POTIONSが昔から販売していた組み立てキットXLRにErica Synthsが筐体を作り機能強化した製品です。
サウンドを決定づける6シンセボイスなど基本的な性能は踏襲しつつもモジュレーション性能など各所でブラッシュアップがなされており、またトラックごとにボリュームフェーダーが付き操作性が格段に向上しています。
ちなみに元祖LXRユーザー向けにもSONIC POTIONSではファームウェアアップデートを出していますが、LXR-02はCPUとメモリが異なるため元祖XLRに全ての機能を追加することは出来ないようです。
メーカーのホームページにはTRインスパイアという言葉が出てきますが、いわゆるドラムマシンを連想して触ってみるとかなり面食らうと思います。6つのボイスは完全なるシンセボイスで、KickやSnare、Hihatを作成するために最適なパラメーターが割り振られてはいるものの、エディットできる範囲はRolandやJOMOXのそれとは違いかなり広く、その為ある程度シンセサイズに慣れていないと目的の音をフルスクラッチで作るのはなかなか難しいと思います。LXRが当時、ELEKTRON MACHINDRUM等と比較されていたのも頷けます。
しかしその分ぶっ飛んだ音が作り出せる為、既存のドラムマシン系とは違うユニークさを求めている人はとってものめり込めると思います。KICKを作るオシレーターの波形が選べる時点ですでにユニークです。倍音の無い/少ないサイン派や三角波でキックを作るのが一般的ですが、ノコギリ派や矩形波も入っているので「ヴァア〜」みたいなレイビーな音になったりします。KICKと書かずあえてDRUM1と表記されているのはそういう事なんですね。
それでは各ボイスを見てみましょう!
6つのシンセボイスはそれぞれ微妙に異なる音源構成になっています。
またOSC/AEG/MOD/FM/CLICK/FILTER/LFO/MIXという8つのパラメーター項目がありエディットしていきます。
一通り触ってみて「お、いいね」と思うのがLFOとCLICK。LFOはBPMシンクが出来るのはもちろんとして、リトリガーするときにトリガーソースを別のボイスの発音タイミングに設定出来るというところ。さらにオフセットも調整出来るのでこれだけで規則的だけど有機的にうねるフレーズが作れました。この辺りはモジュラーシンセっぽいですね。
そして見慣れないCLICKというのはトランジェントジェネレーターなんて呼ばれてますが、簡単にいうと波形を足してアタックを強調するパラメーターです。面白いのがその波形自体が13種類あり(下記表)リムやクラップの音が出ます。メインオシレーターとはボリュームとフリケンシー(音のピッチ)が独立しているので、好みの重ね方を出来ます。欲を言えば、このCLICK自体にAEGが付いてたら最高でした。ま、でもトランジェント用なのでアタックメインで使ってねということですね。
これはピッチモジュレーションできるオシレーターが核になっています。
KICKやタム、カウベルだけでなく、シンセベースやサイレン風のサウンドも作れます。音圧はかなりありますので、高めのノートを入れた時は耳注意です!
また上記のCLICKではなくシンセで作るキックのアタック感の一番の要のピッチジュレーションはMODページで行います。MODのパラメーターで一番最初に出てくるのがディケイなのでこの値をあげると「トゥン」という音になるのであとはお好みに合わせて度合いやスロープを調整します。しかし太い音ですね。
これはオシレーターとノイズで構成されており、それぞれのMIX量を調整出来ます。またノイズだけにフィルターをかけることができるのでAEGのディケイだけよりも、もっと細かいスナッピーのニュアンスを調整できるのがナイス。このボイスのみFMが使えないようになっています。シンセボイス4と5にはAEGセクションでリトリガーのパラメーターがあり、フラムだけでなく効果音としても使えます。
これが一番変なボイスです!と言うと失礼なのですが何と3オペのFMです。OSCモードでコース(ピッチ)を変えたときにあれ?と思ってFMページに行くとF1/F2/G1/G2と表示されます。Oh..これは2つのモジュレーターのピッチとゲインなんですね。初めシャンシャン鳴っていたシンバル風サウンドも一気に空間がねじ曲がるようなアヴァンギャルドでメタリックでノイジーなサウンドに。初めすました表情なのに話し掛けていると色々露呈してくる感じで好みのタイプです!FMパラメーターをいじってもあまり音が変わらない!と困ったあなた。シンバル系でwaveフォームがノイズになっていたり、コースが高かったり、またはフィルターが過度に掛かっていないかをチェックです。
これは前述の変態ボイス5と基本的には同じで、ディケイが独立して2つあります。これはオープン/クローズハイハットを鳴らし分けるためです。ボイス的には1つなのですが、これをトリガーするシーケンサートラックは2本あるためチョークしながら別々に鳴らすように鳴っています。ボイスが6でトラックが7なのはこのためですね。ちなみにフェーダーの一番右はオープンハイハットではなく全体のボリュームなので注意です!
いかがでしたでしょうか?今回は音源部分に付いてみてきました。これ以外にも本機の特徴であるMIDI制御はMIDI CCが膨大にアサインされているので別のシーケンサーやコントローラー、またはDAWなどで連続的なCCを入れてあげれば、本体のみで設定するよりも、より自由でダイナミックな演出が可能です。
また、今回触れなかったシーケンサーもパラメーターをスッテプごとに設定できたり、プロバビリティ(発音可能性)を設定できたり現代的なシーケンサーのスタンダードな機能は落とさず搭載しています。
インパクトのあるサウンドを求めている人にはぜひおすすめです!
記事内に掲載されている価格は 2021年9月3日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ
Cookie は、お客様のサインイン情報の記憶、サイト機能の最適化、お客様の関心事に合わせたコンテンツの配信に使用されています。当社は、当社のプライバシー・ポリシーに基づき、Cookie などの個人情報を収集・利用しています。
「同意して次へ」をクリックして Cookie を受け入れ、当社のサイトにアクセスするか、プライバシー・ポリシーにアクセスした Cookie についての詳細をご確認ください。