Sonora Cinematic
作曲家、ソングライター、音楽プロデューサーのために、慎重にキュレートされたサンプルライブラリーを展開するイギリスのデベロッパー。キーボードに触れた瞬間に音楽を紡ぐインスピレーションを与える、クリエイティブなツールを提供することを使命としています。
今回レビューする4製品
HARMONIC BLOOM:驚異の倍音ドローン生成音源
HARMONIC BLOOMは、30種類内蔵されたノイズ・サンプルのほか、手持ちのオーディオファイルをインポートして、その波形からハーモニクス(倍音)を抽出します。
ノイズやサンプルをフィルターで加工できるだけでなく、1次から7次までの音楽的なハーモニクスを生成することが可能です。元のノイズとレゾナンスで生まれたハーモニクスを、GUI上部のスライダーでモーフィングできるのも秀逸です。
さらにLFOを使って、各ハーモニクスのパンニング、ボリューム、フィルタを個別に調整できるので、LFOノブを回すだけでテクスチャが動的に変化する、倍音ドローンを簡単に作ることができてしまいます。
ノイズ・レイヤーと、50種類の楽器サンプルを鳴らすメイン・レイヤーが用意され、2つのレイヤーをブレンドして音作りします。メイン・レイヤーを活用すれば、音階を持つ一般的な音楽づくりにも活用できます。
音作りの実践
内蔵のノイズを選んで倍音のコントロール、エフェクト、LFOを試してみました。
ラジオノイズのような音から様々なハーモニクスが生まれ、加算合成シンセサイザーのような足し算の音作りができました。LFOの効果がわかりやすいように、はじめに5次ハーモニクスだけを変調したあと、全ハーモニクスを変調しています。LFOのシェイプは5種類用意され、それらを組み合わせた非常に複雑なLFO波形を作ることができます。
LFOではパンニング、ボリューム、フィルタのほか、ノイズとハーモニクスの割合もコントロールできるので、テクスチャサウンドを描くのに最適です。
LFOを活用したリズム生成
矩形波のLFO波形を使えば、ハーモニクスだけでリズムが作れてしまいます。各ハーモニクスごとにLFOのスピード設定があり、SYNCボタンを押すとDAWテンポに追従した規則的なリズムが刻めます。
癒し系、アンビエント・ミュージックにも最適
プリセットを試したメーカー動画です。
VERTICALE:
ピアノ弦が織りなす複雑なテクスチャが生み出す、ノスタルジーな調べ
VERTICALEはイタリア語で「アップライトピアノ」の意を冠した、アップライトピアノを細部まで表現した音源です。そのサウンドは濃厚で優しく、ノスタルジックで涙を誘う音色です。華美なコンサートグランドピアノとは対照的な、牧歌的でゆったりとした世界を描いてくれます。
まずはそのサウンドをお聞きください
●ナチュラル と フェルト・ピアノ 2種類のインストゥルメントを収録
上の動画ではナチュラルを使用しています。ナチュラルはピュアで温かく、フェルト・ピアノは4層に重ねたフェルトが使用されており、リッチでメロウな響きを奏でます。また、テープを通したサウンドを収録し、ローファイさを加えることができます。
●3つのマイクポジション
VERTICALEのピアノサウンドは3つのマイクポジションで収録されており、マイク毎の音量調整で音色のキャラクターをコントロールすることができます。
カセットレコーダーのサウンド
古い4トラックMTRで作成されたユニークな「カセット」サウンドが収録されています。ピッチがずれたり、ゆがんだりしたサウンドが得られ、音楽にローファイな雰囲気を加えるのに最適です。
Crunchコントロールでテープサチュレーションを、Lo-Fiコントロールでビットレートとサンプルレートの低下をコントロールします。
ステレオからモノラルに切り替えて、よりビンテージ感を求めることもできます。Deckコントロールではプレイヤーの動作ノイズまで再現されるなど、このセクションではノスタルジックでエモーショナルなテクスチャを得ることができます。
マイクの聞き比べ、その他機能の試聴
ナチュラル、フェルト、2種類のインストゥルメントのマイクや、カセットの音、内蔵エフェクト、ピアノ全体の明るさを決めるCOLOR、離鍵時のメカニカルノイズを再現したRELEASE SAMPLESを試してみました。
イチオシ! フェルト・ピアノの試聴
人気急上昇のフェルト・ピアノ。丸いアタックが優しく、特にスローテンポで音数が少ない曲であれば、ピアノ線が織りなす複雑なテクスチャサウンドをゆっくり楽しめます。試聴曲ではリバーブをOFFにして、素材本来の生々しさを聞くことができます。
POIESIS CELLO:
長いサステインのアーティキュレーションがもたらす独創的なテクスチャ
POIESIS CELLO ライブラリのサンプルは、ヨーヨー・マが所有する1995年製Moes & Moesチェロを、シャーロット交響楽団の首席チェロ奏者であるアラン・ブラックが演奏し、レコーディングされました。
マイクの試聴
ドライなスタジオで、クローズ寄りに配置された3本のハイエンド・マイクそれぞれのサウンドと、シングルマイクをLCRポジションにして追加処理を行ったプリレンダリング・ステレオミックス(MIX)も収録されています。
LDCはクリアー、RBNはマイルド、SDCはブライト、といった印象です。MIXではチェロ4声の各パートが立体的に聞こえ、空間処理も施された即戦力なサウンドです。
独創的なテクスチャを生み出す43種のアーティキュレーション
長いサステインのアーティキュレーション43種類が、9種のカテゴリに分類されています。
オーケストラから室内楽、中世から現代、冷静と情熱、ハーモニクスやノイズに至るまで、あらゆるアーティキュレーションが「独創的な弦のテクスチャ」を生み出します。MotionsカテゴリではDAWテンポに追従して、二分音符から12分音符までの譜割りで自動演奏してくれるのも便利です。
アーティキュレーションをクロスフェード可能
アーティキュレーション2種をレイヤーして、自由にクロスフェードさせながら演奏可能です。mod-wheel(midi CC#1)でもコントロールできます。
3つのショートアーティキュレーション
キースイッチで切り替え可能な3つのショートアーティキュレーション(Spiccato / Staccato / Pizzicato)を収録。各アーティキュレーションは、5つのラウンドロビンと3つのダイナミックレイヤーを備えています。
上の試聴動画では3つのアーティキュレーションに収録された、4つのマイクポジションを試聴しました。弓が弦をこする「鳴り始め」まで感じられる、生々しいサウンドです。
ATLAS FLUTES:
短いアーティキュレーションとサウンドスケープを生み出す木管楽器コレクション
ATLAS FLUTESは、パーカッシブで質感のある短いアーティキュレーションに焦点を当てた、魅力的な世界の木管楽器コレクションです。ドイツの映画作曲家Christoph Zirngiblと共同で開発された本製品は、ドイツで大ヒットしたアニメーション映画「Mia and Me」の劇伴作曲のために作られたものです。オーセンティックでアトモスフェリック、そして魅惑的なエスニックサウンドに最適です。
伝説的な映画作曲家James Hornerの作品にインスパイアを受け、alto flute、bass flute、 Kaval、西アフリカのフルート、Quenacho、Pan Pipesを収録。映画、ゲーム、その他のサウンドトラック作品でよく聞かれるスタイルのアーティキュレーションを入念にレコーディングし、プログラムされています。
アーティキュレーションの試聴
ATLAS FLUTESに収録された6つの木管楽器(Kaval / West African flute / alto flute / bass flute / Pan Pipes / Quenacho)のアーティキュレーションを全て聞いてみました。 ちなみに、GUIの右下に楽器のイラストが表示されます。これらのアーティキュレーションで、音階を付けた演奏が可能です。
パフォーマンスモード
パフォーマンスモードでは、すべてのショート・アーティキュレーションを1つのキーボードマッピングから選ぶことができます。演奏する音程と使用するアーティキュレーションを指定して発音させます。
動画では、青い鍵盤が演奏する音高で、緑の鍵盤がアーティキュレーションです。左手で音程を選んで、右手で演奏するアーティキュレーションを選んで発音しています。同音連打しても、ラウンドロビン機能によってマシンガン演奏にはならず、自然な演奏になっています。
イチオシ! サウンドスケープを生み出す Textural インストゥルメント
KavalとBass Fluteの音色を基にしたTextural インストゥルメントも収録しています。
上の動画では7つのプリセットパッチを全て試聴しました。X – Y パッドのX軸で演奏の強さをクロスフェードして、Y軸で空間処理の効き具合をコントロールします。自分のフィーリングで、自由で動的なサウンドスケープが次々と生まれます!不穏なサウンドから軽快で高揚感のあるサウンドまで、デザインされたハイブリッドなサウンドスケープを生み出すことが可能です。
記事内に掲載されている価格は 2023年5月18日 時点での価格となります。
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