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業界随一の利便性に長けた音源
明確かつシンプルなUI、膨大なフレーズを容易に演奏できる操作感、感覚的な制作を可能にする必要最低限のコントロール。Ujamといえば、DTM始めたての初心者や時短を求める製作者向けに音源をリリースし、好評を博しています。
Hiphopのサブジャンルであるトラップがメインストリームに影響を及ぼし始め、比較的音色の少ないトラップから影響を受けたポップスは、楽曲を常に量産できる環境に置かれました。さらにはSNSやプラットフォームの発展によるインディペンデントアーティストたちの競争の激化などを背景に、楽曲の質よりも量にこだわりを見せるアーティストは少なくありません。まさに群雄割拠のこの時代に、Ujamの「利便性」は多くの製作者に熱い眼差しを向かせ、Ujamブランドは業界での存在感を増し続けています。
そんなUjamの「利便性」に光の当たる昨今ですが、ソフトウェア音源の顔となるのは、なんといっても「音」です。Ujamはカテゴリやジャンルで差別化された楽器の豊富さを軸として、機能面に引けを取らないサンプリング元の楽器に忠実なキャラクターを備え、特徴を捉えつつもユーモアに富んだ音色を有する個々の音源は、単純なクオリティや意外性を求める際にも大いに役立ちます。
そこで今回はUjamの真髄ともいえる「音」に焦点を当て、Rock oNスタッフのMbappe Kaminoがピックアップした3個の音源を音楽的な観点から、レビューしていきます。
”業界随一の利便性に長けた音源を「音」と「音楽」で読み解く”
クリエイティブに一歩踏み込んだ利便性や機能面の紹介全カットのレビューです!
○Virtual Pianist Vogue
Virtual Pianist Vogueは「どんなジャンルや編成にも柔軟に対応する万能なピアニスト」と銘打って、詳細にセットアップされたドイツ製のフルサイズグランドピアノをサンプリングしたピアノ音源です。
音質から評価すると、DLサイズが約3.3 GBという容量の軽さの割には、ピアノ音源の真髄ともいえる音の強弱がよく再現されています。グランドピアノの打鍵感、息遣いといいますか、静かなサウンドキャラクターの中にも「Virtual Pianist」の名に恥じない繊細さを感じます。他の専用音源と比較しても上記の点で全く引けを取りませんし、低音の活かし方が圧倒的に上手い印象です。
音色がEmotion、Balled、Concert、Power、Plasticと5種類に分けられているのですが、どの音色に対しても低音部分のアプローチが素晴らしく、Emotionが特に良かったかなと思います。というのもEmotion自体がアンビエント系に特化したキャラクターを持っているため、低音がしっかりとしているVirtual Pianist Vogueの性格と相性がいいのでしょうね。逆に言えば、エレクトロやダンス系に特化しているPlasticとは、あまり相性がよくない印象でした。もともと軽いサウンドなので仕方ないのですが。特に最近の流れはベースを補強しがちですし、弱々しいピアノ部分のルートなんてわざわざ押さえなくてもって感じです。
カバーできるジャンルでいえばポップスを幅広く扱えそうですが、他の専用音源と比較すれば、若干ですがVirtual Pianist Vogueは近年のポップスにより寄せられた音源といった感じでしょうか。
最近は人気の根強いバンドで、鍵盤楽器を扱っていないバンドを探す方が難しいでしょう。抑揚が付けやすい楽器という意味でも重宝されますし、ロックシーンにおいても表現やメッセージ性をどう伝えるかの変革が起きているのは否めません。なんならギターより目立っている楽曲も増えてきました。Official髭男dismやMrs.GREEN APPLE、「King Gnu – 白日」なんてもうモロですね。
微妙なニュアンスの再現、ダイナミクスの表現力、このあたりに光のあたる今であれば、この音源はポップス制作の要になり得ます。
○Virtual Guitarist Amber 2
ストラミングとピッキングの両方を使い分けつつ、スチール弦のアコースティックギターを使って伴奏をしてくれるセッションプロを意識したギター音源。
これもまず音質がいいですね。2が最近リリースされまして、以前よりはっきりとした質感といいますか、輪郭が鮮明になった印象です。当たり前なんですが、アコギのバッキングだと肌で実感できますね。インストゥルメントの機能が新たに追加され、ワンショットとしてギターをよく使う僕にとっては嬉しいアップデートです。単音の打ち込みっぽさも極力抑えられている印象です。
同価格帯でいえばAMPLE SOUNDのAMPLE GUITAR T IIIと比較して、リアルさでいえばAMPLE GUITARはさすがといった感じですが、やはりUjamの音源は楽曲への馴染みやすさで頭ひとつ抜けています。
スチール弦のアコースティックギターを使って伴奏されているため、サウンドのリアリティはもちろんあるのですが、適度にウェットなアンビエント感がパキパキとした箇所をいい塩梅でぼかしてくれていますね。ギター音源で気になりがちな高音域も全く違和感なく、主張し過ぎないところがいいですね。素でこの感覚なら処理をすればより活きてくると思います。
アコギなので、もちろんどのジャンルでも活躍できるのですが、このサウンドであればオルタナティヴ系にも色々とハマりそうな印象です。
Emo Rapから受け継がれるMGKやiann dior、日本で言えば(sic)boyやSHO-SENSEI!!など挙げ続ければキリがないですが、ウェットな処理をしたHiphop的なギターリフにも使えそうですね。
Lil Peepでその片鱗を見せつつ、「Juice WRLD – Lucid Dream」以降で日本でも見られるようになったでしょうか。
例えば、「kZm – TEENAGE VIBE feat. Tohji」は、「Bloc Party – Helicopter」からのサンプリング。
「DJ CHARI & DJ TATSUKI – Innocence feat. Hideyoshi, Only U & (sic)boy」は「SIAM SHADE – 1/3の純情な感情」からのサンプリングといった具合に、
ひとつのギターフレーズを引用してくる流れも、この音源を使えば今風なサウンドに仕上げやすいのでは。
○Beatmaker IDOL
Beatmaker IDOLは、ヒップホップやユーロポップに色濃く影響を受け、さらに多くのジャンルを混ぜ合わせたK-Popサウンドを求める方のために開発されたビートメイキングプラグインです。率直に、音色から雰囲気まで大好物ですね。K-Popサウンド専門ということすなわち、世界的なポップスの流れを汲んだ音色と処理のなされたドラムスということになります。
音質はそこそこといった感じで、非常にタイトな音が多い印象。少し重めのキックを用意すればより映えそうですし、TR-808との親和性が高そうなのはさすがK-Popですね。あとかなりポップで、全体的にかなり音が明るいです。コントローラーも基本的に明るくさせる方向で機能しているので、何にでも応用できるかというとそうでもないかなと思います。
あいにくこのタイプの音源と比較できるほどの目ぼしいものを持ち合わせていないので、(BFDは土俵が異なるにも程がありますし)普段、既存の楽曲などからサンプリングしているドラムス、パーカッションと比べてみます。結論からいうと差はほぼないですね。正直このジャンルだと好みのレベルだと思います。僕が普段使用しているのはトラップ系の倍音豊かなキックだったり、主張の強いハイハットだったりと、軸のしっかりとした音色が多いのですが、Beatmaker IDOLではまさしくその音が揃ってますし、なんならSFX系のバリエーションも含めてこっちをメインで活用した方がアイデアは浮かびそうです。
カバーできるジャンルに関しては言わずもがなK-Popなのですが、メインストリームに顔を出しているジャンルであれば組み合わせ次第で幅広く再現可能だと思います。メインストリームに顔を出していれば。aespa, XG, NewJeansのようなK-Popの中でも特徴的なサウンドのアーティストの楽曲はこれで作りやすくなること間違いなしでしょう。
「Stray Kids – 3RACHA」にてDrillによくみられるサウンドや、
「NewJeans – Ditto」ではJersey Clubを取り入れたりと、
流行りのサウンドをK-Popに取り入れる動きもあります。Beatmaker IDOLの活用で、今後の時流に備えられるかもしれませんね。
Ujam音源のみでデモ曲を作成!
ここまで3つの音源をピックアップしてみましたが、こうやってがっつり音楽に沿って読み解くとまた違った側面が見えてきて面白いですね。
今回はBeatmaker IDOLが特に気に入ったので、応用の意味も含めてK-Pop風でデモ曲を軽く作ってみました。
使用音源は
・Virtual Pianist Vogue
・Virtual Guitarist Amber 2
・Usynth GLAM
・Usynth Euphoria
・Virtual Bassist Rowdy 2
・Beatmaker IDOL
となります。
★楽曲名「So Icy」
最後に
ヒットチャートのサウンドは、時代の流れとともに急速に変化しています。
「より良い音楽を、よりはやく」を掲げるUjam。
利便性抜きでもさまざまな顔を覗かせ、音楽への探究心をくすぐるそのコンセプトに、ますます期待が高まります!
Writer.Mbappe Kamino
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