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Mar.2016
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ダイナミックマイクのNEW ERAへ:Shure KSM8 開発ストーリー秘話

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先日レポートしたSHUREの新製品「KSM8」。 2枚のダイヤフラムを搭載する構造で、従来のダイナミック・マイクを完全に凌駕するサウンド・クオリティ。先日、SHURE本社から来日していたProduct Manager、John Born氏にインタビューする貴重な機会をいただきました。はたして「KSM8」は、ダイナミック・マイクの次の時代を切り開くポテンシャルを秘めているのか?? 苦難の開発秘話をJohn氏から聞き出すことができました。

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Rock oN : 今日はよろしくお願いします!まずは、Johnさんご自身の自己紹介をお願いできますか?

John Born氏 :Shureのプロダクト・マネージャーとして、主にワイヤード・マイクの製品企画を担当しています。勤続10年ですが、前職もオーディオに携わる仕事をしており、レコーディング・エンジニアや、機材レンタルの会社に勤めたりしていました。

Rock oN : Shureは長い歴史がある会社なのでお伺いしたいのですが、開発部門にはどんな世代の方々がいらしゃいますか?

John Born氏 : 私が所属する開発企画部には比較的若いスタッフが多いですが、一方、設計を行う技術部門には15人のアコースティック・エンジニアがいますが、勤続30年〜40年のベテランが多いです。スタッフのキャリアを通算すると250年くらいになりますね(笑)。多くのエンジニアが会社を愛し働いていますが、会社側も長く働き続けて欲しいと思ってくれているので、とてもいい関係が継続しています。社内報に写真付きで掲載されるのは勤続20年以上のキャリアある人たちだけなのですが、私は勤続10年なので、まだまだヤング・プレーヤーですね(笑)。

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Rock oN : さて、今回の新製品「KSM8」の開発には、製品化まで7年という歳月がかかったそうですね。

John Born氏 : 開発をスタートした時点では、自分に子供はいなかったんですが、もうじき3人目が産まれるんですよ(笑)。最初の3年間はリサーチを含めた基礎研究の期間でしたが、沢山のプロトタイプを作りました。その一部を今日持って来てますので見てください。

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Rock oN : おっ、これは注射器??

John Born氏 : そうです。注射器と組み合わせて、空気の流れをシミュレーションしたんですが、このような沢山のプロトタイプを手作りし、トライ&エラーを繰り返しました。社内には3Dプリンターを始め、金型やコイルといったマイクを作るにあたって必要となる部材を作れる環境が備わっています。古いテクノロジーから最新のテクノロジーまで、色んな組み合わせを社内だけで完結して試すことが出来るんです。

Rock oN : そもそも、デュアル・ダイアフラムのダイナミック・マイクを作ろうと決めたプロセスは?

John Born氏 : 既にデュアル・ダイアフラムのコンデンサー・マイク「KSM9」を発売していたので、理論上はデュアル・ダイアフラムのダイナミック・マイクも上手くいくと確信していました。上司の承認を経て、プロジェクト化し、私が中心となって推進することになりました。

当初、それぞれプロジェクトネームを付け、以下の3つのアプローチを採用し開発を進めました。

・「Kohlabi」:Kohlabi=根菜類。プロトタイプの見た目が根菜に似ていたので
・「JIF」:Junk In Front。ジャンクな何かが(マイクの)先端に付いているので
・「JIB」:Junk In Back。上記の逆

JIFとJIBは早い段階で、継続が難しいという判断をし、最終的に生き残ったのが「Kohlabi」でした。

Rock oN : 開発期間中に作った沢山のプトロタイプにおいて、試した結果、何がダメだったのですか?

John Born氏 : Everythingです!!(笑) 周波数特性に始まり、耐久性、大きさなど多岐に渡ります。例えば、周波数特性に問題が出てそれを直すために微調整してみたところ、そのせいで今度はポーラー・パターンに乱れが出てしまう、、というイタチごっこ的なことが頻発するんです。

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Rock oN :そんな感じで製品設計をやってるんですね(笑)。かなりアナログ的な作業で意外です!

John Born氏 : そうですね、そのイタチごっこ的な実例を1つ話しましょう。デュアル・ダイアフラム構造の利点の1つに、近接効果を劇的に減らせる点があります。近接効果が減り、低域に於いてマイナス要素が軽減するので、ローエンドのレスポンスを向上させる事ができます。一般的にダイナミック・マイクの共振周波数は125Hz付近なのですが、ダイアフラムを薄くし、逆にコイルの巻き数を増やし重くすることで、共振周波数をさらに低くすることができ、100Hzくらいまでに持って行くことができました。そういった利点の一方、ダイヤフラムを薄くしたために、今度は歪みに対して弱くなるという問題が出てくるわけです。その問題をカバーするために開発したのが、DSS(DIAPHRAGM STABILIZATION SYSTEM)になります。この問題を解決したのが2年ほど前のことなんですが、約1年の間、取り組んでいました。かなり苦労した箇所でした。

KSM8の特徴については、こちらをご覧ください>>
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Rock oN: なるほど、大きな利点ですね。では、あえて意地悪して聞きますよ! デュアル・ダイアフラムに短所はありますか?

John Born氏 : 何にもないですよ(笑)!! これからKSM8に大量の注文が殺到して、注文が追いつかなくるという短所が出てくるかもしれませんが(笑)。ジョークですよ。。。

Rock oN : (笑)。想像ですが、2枚のダイアフラム間で位相差が生じたりしませんか?

John Born氏 : 位相差は生じないです。なぜなら、ボイスコイルに繋がっているダイアフラムは片方だけで、残りの一方はボイスコイルに繋がっておらず、その動作はパッシブになります。電気信号に変換されるのは一方のダイアフラムの振動だけなので、原理的に位相差が生じることはありません。

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Rock oN : では、ちょっと趣を変えましょう!ダイナミック・マイクの大定番「SM58」が、今年で50周年を迎えるということですが、SM58がこれほどポピュラリティを得てきた理由は、値段以外で挙げるとしたら何だと思いますか?

John Born氏 : 耐久性をはじめ数々の優れた点があるのは皆さんご存知だと思いますが、加えて、どんな使用シーンにおいても、例えば野外など音響的に劣悪な環境で使っても、マイクとして最低限のクオリティを担保する(Safest Choice)能力があるということだと思います。

そんなSM58に代表されるような長いダイナミック・マイクの歴史の中で、今回、新発売するKSM8は、ただ単に「材質を変えてみた」とか「製造工程を見直してみた」とかの小規模な変化でなく、ダイナミック・マイクの概念を一新する唯一の製品だと思っています。もちろん、SM58の築きあげてきた価値を無くしてしまうということは全くありませんよ。

Rock oN : どんなシーンやユーザー層を想定していますか?

John Born氏 : もちろんボーカル用のマイクロフォンですが、フィールドテストを繰り返し分かったのは、色んな場所でも活躍できるフレキシビリティーを持っているということです。例えば、大きなパーティーの壇上に立つ会社の重役など、日頃、マイクの有効な使い方を知らない人でも、広いスイートスポットを誇るKSM8なら、少しくらいよそ見をしながら話しても良質に音声を拾うことが可能です。また、最近増えたイアモニの使用者に返すモニターミックスのサウンド・クオリティーが抜群にいいと、多くのモニタリング・エンジニアから高い評価を得ているので、TVの収録現場などにもフィットするはずです。ギターなど、声以外でももちろんOKですよ。

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Rock oN : では、Johnさんが長い歳月をかけて作り上げたKSM8。その想いを読者に向けてお願いします!

John Born氏 : 開発スタート時は本当に問題だらけでとても大変でしたが、その1つ1つを解決していった過程は、ダイナミック・マイク開発の小歴史と言ってもいいくらい、価値あるプロセスの積み重ねでした。やり遂げた安堵感とともに、SM58が発売されてから50年というタイミングで、新たなダイナミックマイクを世の中に出せたことを誇りに思っています。Shureの次の50年を担っていけるような製品になって欲しいと思っていますし、そういった仕事をサポートし、やらせてくれたShureを誇りに思っています。


ユーザーのみなさんに向けて「KSM8」のプレゼンムービーをいただきました!

    記事内に掲載されている価格は 2016年3月22日 時点での価格となります。

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