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ネット・カルチャー全体を包括したイベント『NIGHT HIKE』
——— 昨年末の2回目も大盛況だった『NIGHT HIKE』ですが、そもそもどのような経緯で始まったイベントなのでしょうか?
猪石 私たちTRIBALCON.は、VTuber、音楽アーティスト、映像作家、イラストレーターなど、さまざまなジャンルのクリエイターさんとお仕事をさせていただいているのですが、そういった人たちから、“コロナ禍でファンの方と接触できるリアル・イベントが減ってしまった”という話を各分野のクリエイター・アーティストさんからよく聞いていました。
2023年頃からコロナ禍もようやく落ち着いたことで、今まで以上に皆が同じ場所に集まって音楽や映像を楽しむイベントが再び盛り上がっていくのではないかと。であれば様々なジャンルのクリエイターさんを巻き込んだ、クリエイティブの最前線を体感できるイベントがあったら楽しそうだなと思い、弊社が企画したイベントが『NIGHT HIKE』です。
——— 映像やライブ・ドローイングなどもフィーチャーされた『NIGHT HIKE』は、単なるDJイベントという感じではありませんね。
猪石 そうですね。弊社が普段手がけているコンテンツはネット・カルチャーに則したものが多く、一緒にお仕事をさせていただいているクリエイターさんの主戦場もネットだったりするんです。
ですので、音楽を中心に、映像やイラストレーションなども掛け合わせたアート・フェスのようなイベントにしたいというのは最初から考えていたことですね。ボカロ曲をフィーチャーした“ボカクラ”や、アニソンをフィーチャーした“アニクラ”など、1つのジャンルに特化したイベントはこれまでもあったと思うのですが、ネット・カルチャー全体を包括した大きなイベントはあまり無かったのではないかと思います。
——— そのコンセプトだけでもユニークですが、他に『NIGHT HIKE』ならではのおもしろい部分は何かありますか?
猪石 映像作家さんが登壇するトーク・セッションでしょうか。昨年の『NIGHT HIKE』では、ミュージック・ビデオなどを作っている映像作家さんに登壇いただいて、作品の制作秘話だったり、モノづくりに関するスタンスのお話などを語っていただいたのですが、会場がクラブというということもあり、真面目なセミナーというよりはフランクに語れるトーク・セッションになっていました。
4月13日に開催する次回の『NIGHT HIKE』では、Abletonさんにご協力いただいて、Liveを使用しているPAS TASTAさん等に登壇いただく予定になっています。
PAS TASTAさんには、これまで手がけられた楽曲の解説だけでなく、その場でトラックメイクをしていただこうと考えているので、興味のある方はぜひ遊びに来ていただきたいですね。
——— 第一線で活躍しているDJからボカロPまで、さまざまなジャンルの人たちが出演されていますね。
猪石 私は以前、ニコニコ動画を運営しているドワンゴに在籍していたのですが、そのときにボカロPさんとよくお仕事をさせていただいていたので、ボカロP系のブッキング案は主に私の方で考えています。
もう一人、以前ageHa等でテクノ系のイベントのオーガナイザーをしていた荒木というプロデューサーがいるので、主にクラブDJ系のブッキング案は荒木がアイディアを出しています。
結果的にDJの出自やジャンルが様々なラインナップになっていますが、ボカロ曲が好きな人がクラブ音楽を好きになってくれたり、逆にクラブDJがネット・カルチャーに興味を持ってくれるようなシナジーが生まれていると感じています。
VJプレイを支えるATEM Mini ExtremeとUltraStudio 4K Mini
——— 『NIGHT HIKE』の映像演出について伺いたいのですが、VJは複数の人が交代で担当するのですか?
clocknote. そうです。各VJがそれぞれノートPCを持ち込み、映像はHDMI出力からビデオ・スイッチャー経由で会場のプロジェクターやLEDに送っています。
ソフトウェアはResolumeを使っているVJが多い印象ですが、私はVDMXを使用しています。
——— VJは完全にフリー・プレイですか?
clocknote. 外音に合わせて自由にプレイしています。『NIGHT HIKE』はボカロPさんが出演されるので、楽曲のミュージック・ビデオを流すこともあるのですが、それも耳で聴いて再生していますね。
確認できるときは、イベント前に楽曲をプレイするタイミングだけ確認しておいて……。アーティストさんが自由に使っていいよ、と言ってくださることも多いので、楽曲がリミックスされている場合は、ミュージック・ビデオにエフェクトをかけてしまうこともあります。
そういったエフェクトは、現場の反応を見ながら、その場で作っていくことが多いですね。
——— 良いVJプレイをする上で、何かコツがあればおしえてください。
clocknote. 現場の空気と一体になることが何より重要だと考えています。DJがプレイする楽曲を全身で受け止めて、フィジカルでパフォーマンスするというか。もうコントローラーと身体が一体になるくらいの感覚でプレイしていますね(笑)。
そんな風に全身でプレイしていると、DJと示し合わせたわけではないのに、楽曲と映像がシンクロしたりするんですよ。その瞬間は凄くおもしろい。プレイ中はずっと踊り続けているので、自分の番が終わったらヘトヘトなんですけど(笑)。
——— 『NIGHT HIKE』では、Blackmagic Designの映像機器がフル活用されているようですね。
clocknote. はい。まずビデオ・スイッチャーとして、ATEM Mini Extremeを使用しています。
複数のVJが交代で出演するので、映像ソースをまとめるためのビデオ・スイッチャーは必須なんですが、ATEM Mini ExtremeはHDMI入力が8系統と多く、すべての入力にフレーム・レート/フォーマット・コンバーターが入っているのがいいんですよ。
たとえば、30fpsしか出力できない機材があった場合でも、コンバーターを用意しなくても60fpsで送出することができる。これは本当にありがたいですね。
——— 各VJが持ち込んだパソコンのHDMI出力がすべてATEM Mini Extremeに接続されているわけですね。
clocknote. そうです。そこで重要になってくるのが、複数の映像ソースを一画面で確認できるマルチ・ビュー機能で、これもATEM Mini Extremeを使っている理由の一つですね。
VJは交代でプレイするわけですが、マルチ・ビュー機能があれば、前のVJがプレイ中でも自分の映像を確認することができる。これは大きいですね。
——— ATEM Mini Extremeの操作性はいかがですか?
clocknote. 以前、ATEM Mini Pro ISOを使っていたこともあるのですが、このシリーズはとても使いやすいですね。
一番は、ハードウェア・ボタンがたくさん備わっているので、基本的な操作がすべてハンズオンでできてしまうところでしょうか。
ソフトウェア・コントロールも便利なんですけど、VJの現場はスペースが限られているので、いちいちパソコンを開くのが大変だったりする。
その点、ATEM Mini Extremeは、パソコンを開かずに基本的な操作ができてしまいますからね。これまで、本番中にATEM Mini Extreme起因でのトラブルが発生したこともなく、安心して使用できています。
——— clocknote.さんは、UltraStudio 4K Miniも使用されているそうですね。
clocknote. パソコンのHDMI出力をそのままATEM Mini Extremeに接続しても映像出力はできてしまうのですが、UltraStudio 4K Miniをビデオ・インターフェースとして使用することで、いろいろなリスクを回避することができるんです。
たとえば、パソコンのHDMI出力は基本的にデスクトップ画面のアウトプットなので、ソフトが本番中に落ちてしまった場合、パソコンの画面がプロジェクターに表示されてしまうんです。
その対策として壁紙を黒一色にしているんですが、根本的な対策にはなっていない。しかしUltraStudio 4K Miniを使用すれば、ソフトが落ちてしまった場合でも、パソコンの画面が表示されるのを防ぐことができるんです。
また、パソコンのHDMI出力をそのまま接続した場合、すべてのウィンドウがプロジェクター側に持っていかれてしまった、といった経験がある方も多いかと思います。
UltraStudio 4K Miniを使用することで、そういう煩わしさも無くすことができる。本体にディスプレイが内蔵されているので、トラブルが発生した際にその原因がソフトなのかハードなのか、チェックしやすいのもいいですね。
——— 『NIGHT HIKE』は、アーカイブ収録はしていないのですか?
clocknote. 前回はBlackmagic DesignさんにPocket Cinema Camera 6K ProとPocket Cinema Camera 6K G2という2台のシネマ・カメラをお借りして、4Kでアーカイブ収録しました。
会場が2階だったので、1台は3階に設置して全体を俯瞰した映像を収録し、もう1台には広角レンズを装着してDJの手元を撮影しました。収録した動画をどのように活用するか、まだ決めていないのですが、今後編集して『NIGHT HIKE』のYouTubeチャンネルで公開するかもしれません。
——— Blackmagic Designのシネマ・カメラの使用感はいかがでしたか?
clocknote. 私はこれまでBlackmagic Designさんのカメラを経験していなかったので、今回がファーストインプレッションだったのですが、想像していたよりも操作や設定が分かりやすくて、とても使いやすかったです。
撮影した映像もめちゃくちゃきれいで、高度な追い込みをしなくても、“映える画”を撮ることができました(笑)。
今回使用させていただいたシネマ・カメラに限らず、Blackmagic Designさんの製品はどれもGUIのデザインが良いですよね。こういうカメラの操作系統って、簡素というイメージがあるのですが、Blackmagic Designさんの製品は凄くリッチというか。他のBlackmagic Design製品を使ったことがある人なら、説明書を読まなくても使えてしまうのではないかと思います。
——— 最後に、『NIGHT HIKE』の今後の展開をおしえてください。
猪石 次回は4月13日に渋谷のWOMBで開催します。ツミキさん、きくおさん等のボカロPと、大沢伸一さんの共演はなかなか見れないと思いますので私自信とても楽しみです。
あとは先ほども言ったとおり、Ableton Liveを活用した楽曲解説・即興トラックメイキングなどもありますし、今回も凄く楽しいイベントになるのではないかと思っています。
夏からは規模の拡大を計画していて、ライブ・サーキットなども検討していますのでご期待ください。
——— 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
記事内に掲載されている価格は 2024年4月9日 時点での価格となります。
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