Spikey John氏、上原晴也氏 共作最新作 : OZworld / UTAGE3.0(Prod. FOUX)
遊びの延長というか、ノリと勢いで映像制作をスタートした(上原氏)
——— お二人が映像制作を始められたきっかけをおしえてください。
上原 小学生のときから家にあったカメラで遊んでいて、中学生になってからはスケートのビデオを撮ったりしていたんです。写真を本格的に始めたのは、バンドをやっていたときの先輩に、キヤノンのEOS Kissという一眼レフを借りて使わせてもらったのがきっかけですね。それまでは液晶を見て写真を撮っていたんですけど、EOS Kissで初めてファインダーを覗いて、“こんな景色があるんだ”と一気に吸い込まれて……。それまでは音楽とか武道とか、いろいろやっていたんですけど、ファインダーを覗いて撮ることを体験してからは、カメラがいちばんおもろしくなっていきました。
Spikey John オレは高校生のときに学校の授業に付いていけなかったんですけど(笑)、同じように授業に付いていけなかった連中と一緒に、スマホで映像を撮り始めたのが最初です。即興でギャグっぽい映像を作って、みんなに見せて笑わせるみたいな(笑)。それが超楽しかったんですよね。
——— お二人の出会いは?
上原 本当にたまたま、知り合いのラッパー繋がりで出会った感じですね。ぼくは横須賀出身で、東京と地元を行ったり来たりしていたんですけど、彼は岡山から上京して東京に住んでいたんですよ。それで終電が無くなってしまったときとか、よく泊めてもらっていて。”いつでも泊まっていいよ”と社交辞令で言ってくれたと思うんですけど、結局1年くらい居候させてもらったと思います(笑)。それが20歳のときで、そこから彼に映像をおしえてもらって、映像人生がスタートしたというか。ですから当時はミュージック・ビデオとかも全然見ていなくて、こういう映像を撮りたいというのもありませんでしたね。本当にファインダーを覗いて、身の回りの景色が違って見えたことが、のめり込んでいったきっかけだと思います。
——— 意気投合して、二人で作品づくりを開始したのですか?
上原 いや、あらたまって何かを作ろうという感じではなかったですね。遊びの延長というか、ノリと勢いだけで。
Spikey John 本当に勢いだけで、何も考えてなかったですね(笑)。二人で最初に撮ったのは、YDIZZYというラッパーの『OOOUUU (Remix)』という曲のミュージック・ビデオで、そのときはオレが撮影をして、晴也に照明を手伝ってもらいました。
上原 当時、映像については本当によく分かっていなかったんですけど、スチルをやっていたので、照明については知っていたんです。
——— どんな機材で始められたのですか?
Spikey John カメラはNikonのD810で、一脚で撮りました。まだ三脚とか持っていなくて、ジンバルも買えなかった頃です。基本1カメで、何度も撮影させてもらい、Adobe Premiere Proで編集するという感じでしたね。
上原 撮影が終わった後、彼が編集しているのを傍で見ていたんですけど、撮影時はバラバラだった映像のピースが編集で繋がって、1枚の大きな画になるというのが凄く衝撃的だったんです。ずっと写真をやっていたので、映像は時間がかかるし、絶対にやらないと思っていたんですけど(笑)、これは凄くおもしろいなと思いましたね。
——— レンズはどのようなものを?
Spikey John シグマの単焦点ですね。
上原 確か20mmと85mmの2本だったと思います。その当時、いろいろなレンズを試してみたくて、買っては売ってを繰り返してました。
Spikey John やってたね〜。
上原 すぐに試したいときは、レンタルしたりとか。
Blackmagic Cinema Camera 6Kは、ラッパーがグッと前に出てくる映像が撮れるカメラ(Spikey John氏)
——— 現在手がけられている仕事は、ミュージック・ビデオがいちばん多いのですか?
Spikey John オレはミュージック・ビデオがメインですけど、晴也はいろいろやってますね。
上原 ミュージック・ビデオが多いんですが、広告とかテレビCMとかもやっています。今後は映画もやっていきたいですね
Spikey John 依頼があって、良いなと思ったら受けるという感じですね。
——— 業界で非常に高く評価されているお二人ですが、どのあたりが評価されていると思いますか?
Spikey John オレは割と作り込んでいない、自然な感じの映像が好きなんですけど、そのあたりなのかなと。やっぱり、コンテどおりに作った映像には何かリアリティを感じないんですよね。まぁ、そういう映像しか撮れないというのもありますけど。
上原 自分はバイブスですかね。撮影助手の経験がないので、機材のこととか技術的なことはいまだによく分かってないですし、だから彼に教えてもらっています。
Spikey John カメラの設定くらいですけどね(笑)。
上原 彼がカメラを回しているのを見て、なるほどなって。
——— 普段の創作では、どのようなものからインスパイアを受けますか?
上原 何気ない日常というか、移動中の街の風景とか、そのときに差し込んできた光とか。あとはもう仲間と遊んだり呑んだりしているときですかね。
Spikey John ミュージック・ビデオや映画、本とかからもインスパイアを受けますけど、オレも日常生活ですね。
上原 結局、今まで見てきたものの組み合わせにしかならないというか。
Spikey John 自分は岡山の田舎から出てきた人間なのでセンスがないんですけど、ファッション・センスがいい人と一緒にいれば、それだけで影響を受けますし。
——— MTVの“BEST HIPHOP VIDEO”アワードを受賞したBAD HOPのミュージック・ビデオについて伺いたいのですが、映像の質感がとにかく印象的です。
Spikey John 8mmだったりVHSだったり、いろいろなカメラで撮った映像を混ぜて、ドキュメンタリー感を出したかったんですよ。川崎という街をいろいろなルックで撮るというか。でも本当は全編16mmで撮りたかったんですけどね。しかし予算の関係でそれは難しかったので、どうやって16mmの映像に近づけるかということを考えて、8mmとかいろいろなカメラを混ぜてみたんですよ。ちなみに撮影では、川崎の先輩DJが来てくれて盛り上げてくれましたね(笑)。
——— やはり映像の質感、色味にはかなりこだわりがある?
上原 そうですね。でもLUTは、初期の頃は使っていましたけど、最近は使ってないです。どうしてもLUTを使うときは、DaVinci Resolveの中で作って書き出して、インポートしています。グレーディングに関しては、どのカメラで撮ってもDaVinci Resolveでやってますね。最初からDaVinci Resolveというのもありますが、他のソフトは高過ぎるので(笑)。
——— Blackmagic DesignのBlackmagic Cinema Camera 6Kも使用されたそうですね。
上原 カメラは案件によって使い分けているのですが、BAD HOPの『KAWASAKI SONG』では、LFで3:2のフォーマットで撮りたいなと思ったんです。それまでもBlackmagic Designのカメラはちょいちょい使っていたのですが、今回はBlackmagic Cinema Camera 6Kを使ってみました。
——— LFで撮れるというのが、Blackmagic Cinema Camera 6Kを使用した大きな理由だったのですが?
上原 そうです。何と言ってもLF。パンチがあって、奥行き感もあり、ワイドだけれどもフラットではない映像が撮れるというか。立体感がある映像なので、ラッパーやストリートを撮るのに合っていると思ったんです。
Spikey John オレも凄く好きな映像でしたね。ディテールはそこまで分からないですけど、印象として(出演している)ラッパーがグッと前に出てくる映像というか。
——— Blackmagic Cinema Camera 6Kの使用感はいかがですか?
上原 今回はスチル・レンズを組み合わせたので、ピントを合わせるのは難しかったんですけど、モニターが大きくて輝度も上がっているところは良かったですね。バリアングルなので、ローアングルで撮影しても、視認性がいい。わざわざジンバルにモニターを取り付けなくても、カメラだけでいけてしまうところは気に入りました。機動力という点でも問題ないです。これで内蔵NDでオート・フォーカスを搭載してくれたら最強のカメラだと思います。
——— 最後に、カッコいいミュージック・ビデオを作るコツがあればおしえてください。
上原 ミュージック・ビデオは、音に合っているかどうかがいちばん重要だと思います。リズムというか、音の雰囲気に合っているかどうか。音があって、それに映像が載ることによって、さらによく聴こえれれば最高かなと。だから歌いながら撮影することもけっこうありますよ(笑)。曲に感情移入しながら撮ると、すごく納得のいく画が撮れるんですよね。逆に、“うーん、何が正解かな……”と思いながら撮った映像は、全然良くなかったりする。歌いながら感情移入して撮ると、“あ、これだ!”と納得のいく映像が撮れたりしますね。
ミュージック・ビデオを撮りたい人で、まだカメラを持っていないという人は、とりあえずBlackmagic DesignのiPhoneアプリ、Blackmagic Cameraを使ってみるのがいいと思います。今日も仕事で使ったんですけど、レンズもいろいろ変えられますし、LUTも入れれますし、本当に良く出来ていますよ。映像を他の人とシェアすることもできますし、これがあれば、すぐにミュージック・ビデオが撮れてしまいます。
——— 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
記事内に掲載されている価格は 2025年4月17日 時点での価格となります。
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