おすすめポイント!
見た目がすでにかっこいいです。ミックスやレコーディングはそれそのものを行っているときは実際のところけっこう退屈なものですが、見た目のいい機材はそこにあるだけでどんな音にしようかなど、モチベーションにもつながります。
実用面ではなんといってもデジタルでリコールができることです。あまりハードウェアに触れる機会のない方にはピンとこないかもしれませんが、日々幾多のセッションを扱うとき、リコールは正直に言って苦行の類です。しかしそれを押しても余りあるメリットがあるからハードウェアを使うわけですが、そこにセッションごとに完全な状態で設定の保存ができるというのは、ngBusCompでも感じていますが、革命という言葉ですらチープに感じるほどの感動があります。
機材選定でのこだわり
仕事が早く終わる機材です。困ったなというとき、さっと助けになってくれる。音をガッツリ整形してもいいし、さりげなくもできる。そういう機材が好きです。
これよりこっちのほうが音がいい!とかはけっこう人の主観が入るので、クライアントが求める回答に速くたどり着けそうなものを選んでいます。
あとは、本機はそういう意味では200点満点なんですが、スイッチが前面にあること! これだと、その日の仕事では使用しないとわかっているときにいちいち後ろに回ったりしなくていいので、朝からうわぁ~っとならずに済みます。用のない機材は電源を入れっぱなしだとラック全体の熱効率も悪くなるので、実はすごく重要です。
気に⼊っているポイント
ノブのクリックの質感がngBusCompより良くなっています。ノブの大きさやパラメータの数がそもそも違うので比較するのもなんとなくおかしいですが、全体的にカッチリとした、高級感のある動作になっています。
あとはngBusCompでは細かい数値を見るのにプラグイン画面を開かなければなりませんでしたが、こちらは液晶が搭載されたことで手元を見るだけで触っているノブがどうなるのかを一目で判断できます。これにより、プラグイン側の画面を見なくてもいいのでさらにDAWとの連携をしつつも効率のよい作業が可能になりました。
また副次的な面では、どうしてもこういった機材は「プラグインで触ればいいや」となりがちだと思うのですが、アナログ機材にある「触れて、操作する喜び」というのを感じることができます。
普段のワークフロー
完全にマスターバス用で、コンプ先でEQが後のケースが多いです。細かいプラグインでの補助は割愛しますが、この2つの関係性として、コンプ先の場合はリダクションしたあとに、奥まったハイやローを取り戻したり、トランジェントに派手に影響する手持ちがなかったので、ngBusCompのトランスをドライブさせて影響を与えつつ、クリーンなEQで補正を行っています。
コンプ先の場合~と書きましたが、ことアナログ機材でマスターバスでEQ先のケースはほとんどないです。ある場合は、ツーミックスに致命的な問題があるケースくらいです。ngTubeEQがあることで、これらのワークフローにいままでとはまた違った変化を生むことができそうで楽しみです。
試聴データ
ドライ含めいくつかご用意しました。正直、音量を完全にそろえるとそこまで違いが分からないかもしれません。そろえてしまうと結構劇的な変化ってそうそうないものなので・・・
dry
ハイハットが大きすぎるし、声もキリキリしていますが変化を見たかったのでそのままです。
clean
電子バランスで出力。こういった問題のあるソースは事前になにかしてからのほうがクリーン向きですね。
デュアルではもう少し細やかな処理が合うかなと思いつつ、MSモードでは少しやりすぎかなと思うカーブでも崩れにくい点はアナログらしさを感じます。ロックとか、もっと歪んでいるソースに向きそうです。
Clean MS
Dual Clean
tube
共通してちょっと派手目にしています。THDは10%程度
デュアルでもMSでも、トランスとチューブをドライブすると、ピーク成分を少し押さえることができるので若干コンプ的な使い方もできます。
このデモでは、冒頭のリバースピアノの音量が大きいのでこちらのほうが耳の痛さは軽減できているように思います。あとはあえて同じEQ設定で出力だけ変えているのですが、やはりこちらのほうがローミッドの腰が据わる感じがあります。
Tube MS
Dual Tube
ハイハットを処理しつつどうにかしようという意図でしたが・・・
こんなことになる前にミックスをやり直すのが最善です。とはいえ、プラグインでおなじことをするとすさまじい感じになってしまうので、万が一の場合でも設定の自由度があるのはアナログのすごさです。
総評
見て楽しい、触って楽しい、機材としてワクワクするEQです。もちろんここまで書いてきたように、実用上のメリットもたくさんあります。これだけの機能を盛り込んで、この値段でいいんですか?というのが正直なところです。
1台で最初からこれだけ、さらにこれから使い込んでいく中であれもいいなこれもいいなと発想の幅を持たせられるなら、もうこれ1台あればいいじゃんという。
EQカーブに関しても、けっこう控えめな設定ですがこんなのでもプラグインだと崩れてしまうケースは多々あります。そんなときに臆せず踏み込んでいけるというのは素晴らしいです。すでにいくつかのセッションで実戦投入しています。
あとは、たとえばEQバンドだけをバイパスして、サチュレーションを得ながらミックスを進めることでトラックやバスでの必要のない処理を洗い出したり、結果として効率化につながったり、使い道は多岐にわたります。
Wes Audio / ngTubeEQ を Rock oN渋谷店・梅田店にて展示中!
記事内に掲載されている価格は 2024年5月27日 時点での価格となります。
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