サウンドプロフェッショナルがクワイア音源を選ぶための試聴動画レビュー
聖歌隊・合唱隊を意味するChoir(クワイア)の響きは、楽曲に神聖さと人間の生命力を吹き込んでくれます。現代はクワイア音源が数多くリリースされており、映像音楽やゲーム音楽で頻繁にそのサウンドを聞くことができます。映像に関わる音楽を制作されている方であれば、一つは手に入れておきたいクワイア音源。
レビュー第2回は「アンビエント志向編」と題しまして、ファンタジックな世界観を演出できるクワイア音源3製品の動画レビューをお届けします!
第1回リアル志向:絶対に押さえておきたいクワイア音源 STREZOV SAMPLING >>はこちら
SPITFIRE AUDIO / ERIC WHITACRE CHOIR
SPITFIRE AUDIOが誇る、極上のクワイア音源
ERIC WHITACRE CHOIRは、グラミー賞を受賞したアメリカの作曲家・指揮者Eric Whitacre(エリック・ウィテカー)氏が制作・指揮した、エリート合唱団によるクワイア音源です。SPITFIRE AUDIOライブラリではお馴染みの、ロンドンが世界に誇るレコーディング・スタジオ AIR Studios / Lyndhurst Hall(リンドハースト・ホール)で収録されており、同社ライブラリとの親和性が非常に高いクワイア音源です。ソプラノ6名、アルト5名、テナー5名、バス6名、計22名のシンガーで収録されています。
今までにない全く新しいインストゥルメント:EVO GRID(エヴォ・グリッド)
EVO GRIDは様々なタイプのボイスサンプルを持ち、ボイスサンプルを鍵盤5半音レンジごとに自由にアサインする事が可能です。音域によって異なるサンプルが声の表情を複雑・多彩に演出してくれるほか、サンプルの中には時間と共に変化するユニークなボイスもあって、それらがとても音楽的なテクスチャを描き出してくれます。表現のテーマごとに用意されたランダムボタンを押すと、ユニークなボイスマッピングが自動生成され、コードを弾くだけで静止することのない感動的な音楽が紡ぎ出されます。
ERIC WHITACRE CHOIR 試聴
Canon(カノン)
前回の「リアル志向クワイア音源レビュー」で試聴した、4声にアレンジしたカノンのデータをそのままアンビエント志向でも聞いてみました。
まずはERIC WHITACRE CHOIR 音源 を1インスタンスで演奏。ソプラノ、アルト、テナー、バスが音域ごとに、それぞれ声のキャラクターが感じられるリアル志向な演奏になりました。Ahh、Nah、Ooh、Mmm、などで歌う特性上、アンビエント志向の楽曲を得意としながらも、リアル志向でも十分活躍できる音源ということが分かります。
Sunrise PAD
ERIC WHITACRE CHOIRの通常インストゥルメント(左側)と、EVO GRIDインストゥルメント(右側)で、同じMIDIデータで同時に鳴らしています。EVO GRIDのランダマイズ「DYNAMIC」ボタンを押して選ばれた、9つのサンプルがボイスの高周波数帯域に輝きを与えています。
Sustainable PAD
EVO GRIDのランダマイズ「EPISODIC」ボタンを押して選ばれたサンプルは、男声ボイスパートに周期的な動きを持っています。この動きがロングトーンに面白い効果を与え、とてもゴージャスなPADサウンドに仕上がりました。
SONICCOUTURE / ALL SAINTS CHOIR
名門レーベルを魅了した、All Saints Churchの空間ごと収めたクワイア音源
ロンドンのオール・セインツ教会は、長くクリアな音の響きによって1970~1990年代にはクラシック・レコーディングの場として使われていた歴史があります。「ALL SAINTS CHOIR」は、そのオール・セインツ教会にて、ニューロンドン室内合唱団32人編成の歌声を収めたクワイア音源です。伝統的な聖歌隊セクションSoprano/Alto/Tenor/Bass それぞれ、6種のアーティキュレーション(a, i, u, e, o, m)を4箇所のマイクポジションで収録しています。
クワイアサウンドを自在に作り込める Effects パネル
オール・セインツ教会の伝統的な響きをキャプチャした8つのインパルス・レスポンスを含む、60種類のIRリバーブが搭載されています。その他、全22種から3つを選択可能なインサート・エフェクト、4バンドEQ、STEREO WIDTH、サチュレータが用意されており、様々な音楽シーンにマッチさせる音の作り込みが可能です。
ALL SAINTS CHOIR 試聴
Canon(カノン)
これまで試聴したクワイア音源の中で最も「教会の響き」が感じられます。オール・セインツ教会の響きが見事にキャプチャされており、ERIC WHITACRE CHOIRと同様にリアル志向としても活躍できる音源です。
Sunrise PAD
発声 A,I,U,E,O,M,を順番に、SING(ダイナミクス)コントロールで抑揚を付けながら演奏しました。プラグイン画面上部に見えるのはCubaseで作成したSINGのオートメーションで、とてもナチュラルに声量が追従してます。リバーブの消え方にも教会の音響特性が感じられます。
Sustainable PAD
発声 A,U,O,Mを切り替えながら、SINGダイナミクスをコントロールしています。最高音のソプラノが 「M」 の発声を終始持続してパイプオルガンのようなサウンドを生み出しながら、リアルとファンタジーが共存した不思議な空間を作っています。
VIR2 / AERIS: HYBRID CHOIR DESIGNER
ボーカルをベースにした無限のサウンドデザイン
AERISは人間の声の多様性に基づいた、ハイブリッドボーカルライブラリーです。シンガーを精巧にキャプチャしただけでなく、人間の限界をはるかに超えたボーカルパフォーマンスを可能にする、非常にパワフルなインターフェイスを作り上げました。美しい合唱から個性的なテクスチャーまで、クワイアだけでなく様々な場面に適したボーカルサウンド・デザインを可能にします。
男性パートBASS / TENOR、女性パートALTO / SOPRANO の4声ソロと、CHOIR M (男性クワイア) / CHOIR F (女性クワイア) の6つのボーカル・グループを収録。それぞれ A(ア) / O(オ) / U(ウ) / M(ハミング) が用意されています。リバーブ/モジュレーション/シーケンサー/エフェクト/トゥルーレガート機能を搭載し、柔軟なボーカルパフォーマンスを作成することができます。さらに、サンプリングされたサウンドをもとに作り出された140以上のユニークなパッドを収録。2つのパッドをブレンドしてカスタマイズしたサウンドを無限に生み出せます。
AERIS: HYBRID CHOIR DESIGNER 試聴
Canon(カノン)
高域エアー感が豊富な、シンセ音源のように抜けの良いサウンドです。生楽器をミックスに馴染ませる手法として、シンセ音源を重ねて音の芯を出したり空間の隙間を埋めるテクニックがあります。それと同様に、AERISをリアルな歌声の音源とレイヤーすると、周波数レンジが広がってゴージャスなクワイアサウンドを得る事ができます。
Sunrise PAD
スローアタック、スローリリースのボイスサウンドが、生とシンセの融合したハイブリッドサウンドを象徴しています。時代を超えたアンビエント感を生み出し、大自然や宇宙の心象風景を表現するのにぴったりな音です。
Sustainable PAD
シンセPADとも呼べる、ほぼシンセ寄りのサウンドです。AERISは人の声をテーマにした洗練された美しい響きと共に、魅力的なシンセPADも大量に搭載しているハイブリッド音源です。今回はクワイアがテーマですのでシンセPADのご紹介は割愛しましたが、シンセのように複雑な音作りを可能にする、モジュレーションやエフェクトも多数搭載しています。シンセファンにもお勧めの音源です。
アンビエント志向 試聴ダイジェスト-1(Canon)
アンビエント志向 試聴ダイジェスト-2(Sunrise PAD)
アンビエント志向 試聴ダイジェスト-3(Sustainable PAD)
アンビエント志向 まとめ
記事内に掲載されている価格は 2023年2月24日 時点での価格となります。
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