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01
Jun.2020
Rock oN

教えて!シンセアニキ! 株式会社マリモレコーズ 江夏正晃 氏インタビュー

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Rock oNでお馴染みの シンセサイザーに造詣が深い音楽家・DJ・エンジニア

株式会社マリモレコーズ代表取締役 江夏正晃 氏

これまで Rock oN セミナーやWeb記事、ROCK ON PRO が発行するProceed Magazine などで江夏さんにたくさんお話を伺って来ましたが、今回はRock oNスタッフの SCFED伊部がマリモレコーズ本社スタジオを訪問。シンセアニキとして敬う江夏さんにアナログシンセやソフトシンセを活用した音楽制作について質問して来ました。

これからシンセサイザーを始めてみたい方や、ソフトシンセを使っているけどアナログシンセが気になるという方にはとても参考になるお話が盛りだくさん!音楽制作に対する心の在り方など、アニキからの深いお話も頂けましたのでどうぞお楽しみ下さい。

江夏 正晃 プロフィール

音楽家、DJ、プロデューサー、エンジニア。エレクトロユニットFILTER KYODAIやXILICONのメンバーとして活動する一方、多くのアーティストのプロデュース、エンジニアなども手掛ける。また株式会社マリモレコーズの代表として、映画音楽、CM、TV番組のテーマ曲など、多方面の音楽制作も行う。ヘッドホンやシンセサイザーのプロデュースなども手掛け、関西学院大学の非常勤講師も勤める。著書に「DAWではじめる自宅マスタリング」(リットーミュージック)などがある。自他ともに認めるシンセサイザー好きで、ビンテージ、アナログシンセはもとより、最近はモジュラーシンセを使った制作、ライブなども積極的に行っている。

●marimoRECORDS Official site : http://marimorecords.com/
●FILTER KYODAI blog : https://filterkyodai.com/

2020年3月17日 SCFED 伊部取材

教えて!シンセアニキ! 株式会社マリモレコーズ 江夏正晃 氏インタビュー


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伊部 : 江夏さんの最近のご活動について教えてください。

江夏:ピアノ作品22曲が入った初オリジナル作品集「PIANO Pieces」というアルバムが e-onkyo music からリリースされて、そのハイレゾ・アンビソニックス版がこの夏か秋に発売予定です。(現在配信サイトを調整中)それと Project Zっていう、AIが生み出した新たなモーツァルトのメロディを作品として仕上げたアルバムも3月に出ます。

最新テクノロジーで現代によみがえる
アマデウス・モーツアルト

伊部 : PIANO Piecesは、コードの響きがフランス料理みたいだなと思いました。

江夏:そう言ってくれると嬉しいなぁ(笑) あれはフランス和声的要素を意識してるんですよ。みんなあれを聞くと江夏はピアノが上手だと思うかも知れないけど、ピアノが下手だから徹底的に弾き込んで、フリーテンポでSteinberg Nuendo にMIDIレコーディングして、揺れとかズレを計算し尽くして作っているんですね。和声に関しては単体では成り立たない危うさみたいな、そういう所が僕の音楽の中にある原点で、マリモレコーズをやっていく中でいつも感じている事です。

クオンタイズの命題

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伊部:DAW入力は全部手弾きなんですか?

江夏:基本的にはMIDIレコーディングしないで全部手弾きして、どうしても修正したい時はオーディオクォンタイズ。しかもビシッとクォンタイズで揃えるんじゃなくてインテリジェント・クォンタイズ。「あなたの下手クソをちょっと上手にします」みたいな設定で。ピッタリに揃える事は今はほぼないです。昨日もやったけどズレズレで(笑)

COLDFEETのWatusiさんと10年くらい前にお話した時に「江夏君クォンタイズする?」って言うので僕は最近しないですよって言ったら「僕もしないんだよ、クォンタイズは絶対だめだよね」ていう話で盛り上がって、Watusiさんがしないって言うんだから、僕もしなくていいんだなって言ったのを良く覚えてます。

Watusiさんがその時にゴミって言ったかクズって言ったか正確には忘れちゃったけど、「ゴミでループの間を埋めて行く」と。ドツタツドツタツっていう四つ打ちの間にドンツカツキチャーツットーツットーみたいな。僕なんかはよく「フリカケ」って良く呼んでいて、コンピューターの正確なリズムの上にゴミみないなのを振りかけていくと、踊っていて気持ち良い何かが生まれる。ドンチッ ドンチッ ドンチッ ドンチッ っていう四つ打ちの繰り返しを完全にピッタリのタイミングにすると、何だか面白くないというのが僕の中であって最近は絶対クォンタイズしないのではなくて、クォンタイズをどう上手く使うかっていうのが僕の命題なんです。例えば3拍目を少しずらしたりとか、2小節とか4小節単位でズレを考えて作ったりとか。

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伊部 : 江夏さんが使われているDAW環境のビットデプスとサンプルレートを教えてください

江夏:24bit/96KHzです。オーケストラのレコーディングなどをする時や音を加工しない場合は192KHz やDSDを使います。96KHzの素晴らしい所は、音が素晴らしいだけでなくてエフェクトなどのプロセスも96KHzになる事。リバーブのかかり具合はサンプリングレートが高くてビットデプスが深ければそれだけ目が細かくなるので、音が消えていく瞬間だとか粒立ち感がとてもあります。ハイレゾリューションであるほど、ミキシングの技量がなくても音を置けます。48KHzとかそれ以下だと、音が奥に行くとボヤけちゃったりして、そうするとEQを使うとか色々とエンジニアリングのテクニックが必要になるんですけど、解像度が高ければポコっと置くだけで何も考えずにちゃんとそこに居てくれたりして奥行き感が付けやすいんです。元々空間がない音源は変わらないですけど、空間がある音源だととても広さだとかが出やすいので、僕は24bit/96KHzにする意味があると思ってます。

アナログシンセを使う理由

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伊部:江夏さんがアナログシンセを使う理由は何でしょうか?

江夏:2005年に会社を創って、当時はKORG Polysixとか Roland Juno-106 、Doepfer A-100 とかをたまに使う程度で、ソフトウェアシンセがメインだったんですけど、2011年に発売された KORG monotribe が僕にとってアナログ回帰する第一弾になったんです。あまりに面白すぎてすぐに2台目を買い足したのを覚えています。どっちも Rock oN で買いましたけど(笑)

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ハードウェアに回帰するようになってから、それまでは10曲に1曲くらいしかハードを使わなかったのが、必ず1曲に1個使うようになったりして、今ではハードウェアだけで完結する事もあります。
ソフトシンセにしてもワークステーション型ハードシンセにしても、デジタルのいい所はとても挙動が正確安定で、設定を忘れてもリコールできたり、膨大なプリセットの中から音を探してちょっとエディットするみたいな、演奏から制作までインテグレートされた良さがあります。アナログシンセにはそういった利便性がなくて、時には大暴走する事もありますけど、とにかく曲を作る時に気持ちが上がるんですね。例えばProphet-5 を買ったらしばらくは横に置きたいっていうそのマインドだったり、パネル上に何十個も立ち上がっているノブやボタンをいじりながら、こうかな、ああかな、LFOをどのくらいの量にしようかなっていう音のイメージを描けるのがアナログシンセの良い所だと思います。

シンセアニキのシンセ作法

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僕はこのRoland JUNO-6を偏愛していて、ノコギリ波とパルス波しかないけどたったひとつの音色のためにこのシンセを出してくる。このJUNO-6じゃないと出ない音があって、頑張って他のアナログシンセで似たような事をやったんだけど出来ないから仕方ないんです。今はDAWやプラグインの発達で色々なエフェクト加工が出来るようになって、アナログシンセの活きる場が生まれてきたと思います。

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音を使い終わったら目を閉じて心を平静にして「ありがとう」と言って音色保存せずにスイッチを切る、
これが僕のお作法 (笑)。

音色を保存できる機種の場合でも保存はしない。

伊部 : ちょ、ちょっと待って下さい?それ、クライアントから修正が来たらどうするんですか?

江夏:来ない! 、、、でも修正が来たらもう一回頑張る。ただ最近ちょびっとビビってて、Prophet-6 の エディットする前のプリセット番号をDAWにメモってます(笑)

伊部:江夏さんの一番好きなアナログシンセは何ですか?

江夏:最近僕の中で「キタ~っ!」って最高に盛り上がったシンセは KORG minilogue xd で、もうしゃぶり尽くすほど超使ってます。


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KORG minilogue xd

ポリモジュレーション的な機能も付いてるし、2アナログオシレーターに1デジタルオシレーターが付いてて、デジタルは自分でオシレーターを入れられるから僕はMutable Instruments の Plaits の波形データを入れてます。だからいま、若い人が1個シンセを買うと言ったら僕は絶対にminilogue xd を勧めますね。僕は現代のProphet-4って呼んでる(笑)。

ビンテージであれば MoogのProdigy が僕のアナログシンセ一発!それはなぜかと言うとオシレーターシンクが世界一エグいから。


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Moog Prodigy

2オシレーターシンセには オシレーターとオシレーターを掛け合わせるシンク機能がほとんど搭載されているから、僕がまずチェックするのはシンクさせた時に音がギュイって来るかどうか。minilogue xd も結構来るんだけど、世界一エグいシンクなのは圧倒的に Prodigy。でもProdigyは手に入りにくい機種だからアナログシンセでもう1台オススメするならば KORG monotribe(生産完了) 。1オシレータでもLFOでこんなに音が変わるのかっていうくらい面白くてLFOの勉強になります。

伊部 : 最近続々とリリースされているアナログシンセ復刻モデルについて、江夏さん的にはどう思われますか?

江夏:これから音楽制作を始めたい若者たちが触ることも見ることもできなかったビンテージシンセサイザーを、こんな形でオマージュ版を手にできるという意味ではすごく意味があると思います。behringer TD-3の音を聞いたけどもうTB-303そのままの音ですよ、それがたったの¥14,800(税別)。昔の人たちってこんなんで遊んでたんだなぁって思いながら、自分だったらこんな使い方するぞみたいな物になって欲しいなって思います。オリジナルの音とどうだこうだって、比較するだけの話になるなら全く意味がない。意味があるのは、自分だったらこう使うぜみたいな、新しい使い方を模索してそこから新しい音楽が生まれるようなツールになって貰いたいです。だからお金は無いんですけどアナログシンセは何を買ったらいいですか?って聞かれたら behringer Model D を勧めますね。だって、シンセの基本中の基本をこの値段(¥34,800税別)で知ることができるんですから!ちなみに僕がベリンガーのシンセの中で一番評価してるのは Deepmind。デジタルオシレーターの超音の良いシンセだと思います。

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behringer Deepmind 12

アナログシンセとソフトシンセの違い

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伊部 : アナログシンセとソフトシンセの違いって何ですか?

江夏:例えばアナログシンセとそれをモデリングしたシンセを聞き比べしたら、確かに実機もこんな音だったなっていう印象がまず来るけど、細かい所はアナログシンセ自体に個体差があるから比べようが無いとも思います。ハードとソフトのどっちがいい悪いじゃなくて、「アイディアが湧いて良いフレーズを思いついたけど、今からアナログシンセを探して音を作ってたら忘れちゃう!」ていう時にとりあえず ソフトシンセで仮で入れて、後からアナログシンセでやり直すみたいな。ハードウェアとソフトウェアを上手に使ったらクリエイティビティが上がりませんか?ていうのが僕からの提案です。

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ソフトシンセの膨大な数の音色をどう使い分けるか、そこは常に努力しなければいけない所だと思います。だから新しいソフトシンセを買った日は作曲せずに1個ずつ上からプリセットを聞いていく。ところが、余りにも莫大なプリセットの量で(笑) 300個くらい聞いたら1個目の音色を忘れちゃう、だからもう聞くのはダメだと、僕の中ではもう おみくじ(笑)。今日はこの辺のおみくじっ!って選んだり、そういう意味でいうと、ソフトシンセに対して僕は受動的な所がある。

伊部 : ああっ!ソフトシンセは受動的で、ハードシンセは能動的であると、そういう事なんですね。

江夏:そうそう、能動的になると人間はクリエイティビティが高まるから作曲に向いていると。でもいつも能動的だと疲れるから、ちょっとラクしたいなっていう時はソフトシンセを使うみたいな、そういうシンセの使い方が出来たら楽しいですよね。ちなみに僕はソフトシンセもめちゃくちゃ使うんだけど、僕が愛してやまない超オススメソフトシンセというのがあるんです。

伊部 : ええっ!何ですかそれ?教えちゃってもいいんでしたらぜひ教えて下さい。

江夏:Rob Papen最高。もう全部持ってます。Minimoog級のローが出るSubBoomBass2、FMならBLUE II、パンチが効いた音が欲しかったらRAW、バランスの取れた色々な音を作りたかったらGo2、プログレッシブな事をやりたかったらPredator2。僕は最初ダブステップを作る時に RAW を使っていてその後 eXplorer バンドルにしたんだけど、eXplorer バンドルを買っとけば間違いないです。最強のソフトシンセたちですよ!


SubBoomBass2

Predator 2

RAW

Punch

BLADE

RG

Rob Papen製品のほとんどに、現代版のクロスモジュレーションとかポリモジュレーション的な考え方が貫かれていて、プラグインの中で絵を描くようにモジュレーションがコントロールできる。あれがキモなのと強力なアルペジエイターとステップシーケンサーがどのプラグインにもついている事。とにかく知らなかった人は一度は触ってもらいたいプラグインなんです!

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ソフトシンセでRob Papen以外にもう1個挙げるとしたらXFER RECORDS の SERUM。エンベロープをループさせたLFOという考え方で全てをコントロールできて、波形をウェーブテーブルにしてモーフィングさせたり、アナログでは不可能だった事がいくらでも出来ます。

とにかく誰よりも勉強する事

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伊部 : 最後に、江夏さんは33歳で会社員を辞めてマリモレコーズを立ち上げられて、そこからどの様にしてこんなに詳しくなったのですか?大学の講師もされていて、教えるってかなりの知識量がないと出来ないですよね。マスタリングの本も出版されていますし。

江夏:クリエイターは人が寝ている時、人がサボっている時、人が休んでいる時に努力してナンボだと思うんですよ。
僕は33歳でプロになる時に圧倒的に知識が少なかったんだけど、時代的にパソコンの進化に助けられたんです。当時2000年ちょっと前くらいにMacのG3が出てきて、何百万円もするDSPカードを買わなくても制作が出来るようになり始めた黎明期でした。その時に世の中がパソコンの事についてあまり詳しくなくて、僕はそこからたくさんのパソコンを自分で組み上げたんです。昨日も1台組んだけど、どういう風にすればどんな挙動になって、どのくらいの負荷がかかったらどうなってっていうのが分かるから、こんな曲を書く時にはこのパソコンじゃ負荷がかかり過ぎるよなとか、この曲にあとこのソフトシンセを入れたいけど入れたら動きが悪くなるよな、という知識をコンピューターの進化と共に死ぬほど勉強しました。

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それから、特にここ数年は暇さえあればシンセをいじっているわけです。このスタジオの下の階の研究室で毎日少しづついじりながら、これを何に使おうか考えたりとか、自分の曲にどんな感じで使おうかなって考える。だからとにかく誰よりも勉強する事。例えばみんなが使わない機能を使いこなしたり、普通はあまりやらない事を試したり、パソコンOSとの相性について研究して詳しくなったり、そういう事を勉強すればクリエイティビティは上がると思う。クリエイティビティは道具だから、よく描ける筆がなかったらいい絵は描けないですよね。寝ても覚めても勉強する、努力するっていう事が重要。お医者さんだって建築家だって弁護士だって勉強しなきゃダメなので、音楽家も勉強です!

2020年3月17日 マリモレコーズ本社スタジオにて

記事内に掲載されている価格は 2020年6月1日 時点での価格となります。

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