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第一線で活躍するクリエーターのインタビューやコラムなど、音楽と真摯に向き合う作り手の姿があなたの創作意欲を刺激します!

04
Feb.2022
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日本モジュラーシンセ界を牽引するHATAKEN氏〜SCFEDイベのイケイケゴーゴー探訪記〜

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皆さんは少年時代、ラジカセやオーディオコンポで宇宙船ごっこをしたことがありますか? スイッチやメーターがひしめき合う宇宙船のコックピットを思い浮かべながら、実際にはラジオのチューニングツマミをグルグルと回すのですが、ワタクシSCFEDイベはそんな憧れのメカが詰まった宇宙船を、地球暦2021年の日本で見つけてしまいました!幾多のモジュラーシンセを擁するスペースシップで、それを自在に操縦する機長は1990年代から国内外で活躍している、エレクトロニックミュージック・クリエイター&ライブパフォーマーのHATAKEN氏。ワタクシは早速スタジオ畠研究所(はたけんきゅうじょ)にお邪魔して、モジュラーシステム構築に至った経緯とモジュラーシンセの魅力を伺ってまいりました。それではスペースシップ、発進!

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日本モジュラーシンセ界を牽引するHATAKEN氏

90年代よりソロアルバムを含む多くの作品を国内外のレーベルからリリースし、欧米のフェスに何度も招待されるなど国際的に活躍しているアーティスト。日本最大規模となるモジュラーシンセの祭典「Tokyo Festival of Modular」を主催し、年間50本以上のライブに出演するなど、モジュラーシンセ振興に尽力しながら新たなライブミュージックスタイルを開拓。ギタリストのSUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN)とデュオライブユニットを始動し、ライブステージのオープニングアクトやリミックスを務めるほか、2022年2月16日にこのユニットからアルバムがリリースされます。そのほかアーティストとのコラボレーションや、東京大学の音研究プロジェクトに参加するなど精力的に活動されています。

モジュラーシステムとご対面!!!!!

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正面左側 104HP x 2列 x 7段
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正面右側 104HP x 2列 x 7段

スタジオに入ると、16畳ほどの広々したスペースに憧れのモジュラーシステムが鎮座。圧倒的な重力を放つその姿に、ドドーンッ!というリバーブ深めのシネマティック効果音が鳴り響きました(ワタクシの幻聴です)。正面にあるApple iMac Proとメインスピーカー ATC SCM25A PRO を両サイドから挟むように、完全オーダーメイドのラック 104HP x 2列 x 7段が左右に2台ドドーンッ!この美しい木目のラックは照明が埋め込まれた上5段と、下2段は取り外してモバイル用途にも使えてしまう設計。上部にはスピーカースタンドと、ラックの下には12インチのサブウーファーがステレオでセットされています。

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超レアなTAGUCHIのハイエンドカスタムモデル

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サブウーファーは4台のDMSDにしっかりと支えられています

このスピーカーシステムはTAGUCHIのハイエンドカスタムモデルで、ウーファー、スコーカー、ツイーター、サブウーファーに至るまで、全ての振動板が平面状という珍しいスピーカー。サウンドは硬すぎず柔らかすぎずスタジオ全体を優しく包み込み、至高のアンビエント体験をさせていただきました。なお、12インチサブウーファーの効果が絶大で、低音を鼓膜だけでなく足やお腹で感じる心地良さは、一般家庭では中々味わえません。

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正面右後方の 104HP x 4段ラック2台
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オリジナルのARP 2600

正面右後方にはケーブルだらけの104HP x 4段のラックが2台ドドーンッ! そして真後ろにはオリジナルのARP 2600がドドーンッ! モジュラーラックだけでもスタジオには合計40段 x 104HP = 4,160HP が用意され、ラックマウントされているモジュールはなんと250基以上。シーケンサー、アナログ音源、デジタル音源、サンプラー、フィルター、エンベロープ、VCA、LFO、エフェクト、ユーティリティなどなど、あらゆる機能を備えたモジュール群が整然とマウントされています。その様子はまさしくワタクシが夢見た操縦席でありながら、子供の妄想を超えた大人用の宇宙船です。ワタクシの計算によりますと、このモジュラーシステムの推定合計金額は、ドドーンッ!1千万円以上。大人のお値段ナリ。シンセサイザーミュージックのパイオニア 冨田 勲 先生が1971年にMOOGを個人輸入した伝説が思い出されます。

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このシステムはもちろん初めから完成した物ではなく、HATAKEN氏がモジュールを1台1台買い集めた集大成なのです。千里の道も一歩から、4,000HPの道も1HP から。その記念すべき第一歩を飾ったモジュールは Blue Lantern Modulesの16ステップシーケンサー TADPOLE SEQUENCER & expanderで、手に入れた時点では電源もラックも持っていなかったそうです。

その後、Malekko Heavy Industryからのエンドースメントでモジュラーシンセの一式が提供され、そこから4,000HPへの道が加速。モジュラーシンセは全てのツマミをCVで自動コントロールできることに気付いて、アナログシンセをモジュラーシンセに置き換えて行き、実際には置き換える以上の機能が手に入るシステムへと進化。以前はアナログ回路が発する音だけで音楽を作りたいという気持ちが強かったものの、アナログでは成し得ないアイデアをデジタル技術が可能にしてくれるようになったため、現在はデジタル方式のモジュールも活用しています。

いま一番お気に入りのモジュールは Mutable InstrumentsのBeads、Rings、Rene、Wagglebugで、他のメーカーとの親和性も高くオススメとのこと。電源ケーブル、電源タップ、スピーカーケーブル、スピコンは「アコリバ」の愛称でお馴染みのACOUSTIC REVIVE製にアップデートされ、なんとアコリバ特注ケーブル群の中に3.5mmパッチケーブルを発掘!モジュール最終2ミックスアウトに使用されていました。ATCのメインスピーカーからは、サブウーファー無しでも十分なローエンドと解像度の高い立体的なサウンドが響き、このモジュラーシステムはマスタリングまで対応できる仕様になっています。

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千里の道への第一歩となった Blue Lantern Modules / TADPOLE SEQUENCER & expander
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Cwejman / BLD-2。縁あって GreyとWhite 両モデルを購入。これぞアナログオシレーターという図太い低音とアタックを聴かせていただきました。シンセベースに超お勧めです。
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お気に入りの Mutable Instruments / Beads。外部入力したオーディオ信号をリアルタイムにライブ・グラニュラー処理する新感覚のエフェクターで、内蔵ウェーブテーブルを使ったグラニュラーシンセとしても機能。時間軸の概念を超えて音を刻みいじり倒すHATAKEN氏の演奏に感動しました!
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ACOUSTIC REVIVEの特注ケーブル。ACOUSTIC REVIVEの石黒社長がこちらのスタジオを直々に訪問し、配電盤や各種ケーブル周りをチェックして、音質向上のためのアップグレードが行われたそうです。
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Mutable Instruments / Rings。デジタルでアコースティック楽器をシミュレートする新しさと、気持ち良く感じる音のツボを押さえたフィジカルモデリングシンセ。サウンドはとても音楽的で、美しい透明感と複雑なテクスチャを描き出します。一晩中聴いていたくなる幻想的な音色です。
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パッチング時のケーブル色の選び方には、特に法則を設けていないそうです。ケーブルのカオス感がたまりません。

モジュラーシンセの魅力

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愛犬のアル君を抱っこしながら演奏するHATAKEN氏

HATAKEN氏がモジュラーシンセと出会ってからは作曲をしようという意識は無くなり、モジュラーを使ってリアルタイムに作曲をしている感覚へと変化しました。

複数のシーケンサーにシーケンスの骨格を用意しておき、その中から必要なパターンを選び修正する方法や、トリガーをジェネレートするモジュールを使ってフレーズを生成するなど、その時にピンと来た方法から取り掛かることが多いそうです。ランダムなCVを発生させるLFOや、オーディオ波形をCV変換してフレーズ作りに活用することもあり、そういった実験をしているうちに面白い音が発見され、その瞬間に生まれた物から選択し組み立てて行くのがモジュラーパフォーマンスであり、結果的に作曲であると。

モジュラーは可能性が限定されないツールなので、状況次第でモジュールの役割を変えたりと、その活用方法は使い手次第。人間の発想を超えたインスピレーションをもたらしてくれる表現装置で、これまでHATAKEN氏がアイデアの枯渇を感じたことは一度もないそうです。

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「音楽には成功も失敗もなくて、全ては実験なんだ、ということをモジュラーが教えてくれました。階層構造なしにシステム全体を俯瞰できるのが便利な部分でありながら、間違えた接続や操作をした時には自分の予想に反した面白いことが起こるのも醍醐味です。モジュラーは使う側のこだわりや考え方が機材配置や配線に現れるので、自分の癖やマンネリが生まれてきた時には、モジュールをラックに収める順番や配置を変えるだけでも生まれる音楽が変わります。自分の既成概念を壊して新たな試みにチャレンジするのも大切で、モジュラーは未知なる音の探究と、使い手を映し出す鏡として、自分の成長に向かい合える楽しみがあります。モジュラーを生涯楽しめる趣味にできれば、それはとても幸せなことだと思います。」と語るHATAKEN氏。

ヒーリング、アンビエントミュージックを愛し、モジュラーシステムを鏡と捉える氏の考え方には、ご神体を鏡とする神道的なスピリットを感じました。神道音楽と言われる雅楽はアンビエントミュージックとも取れ、氏が最近好んで聴いているというバッハは、神からインスピレーションを得ていたと言われています。そして何とこのスタジオの名前は以前、「神のみぞ知るスタジオ」だったそうで、ここで神というキーワードが3本パッチングされました。HATAKEN氏のモジュラーシステムは宇宙船コックピットの形をした、ドドーン!神棚だったのです。飛行計画は八百万(やおよろず)の神から音楽のインスピレーションを得て、人々を幸せに導く音楽を作ることに違いありません。

これから始めたい方へのアドバイス

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モジュラーは音楽のためだけでなく、生活していく上でのヒントを与えてくれるツールでもあるのだとか。モジュラーいじりには脳をリフレッシュする効果があって、アパレル関連など異業種の方々がモジュラーを学ぶケースが増えているそうです。目的地に辿り着かなくていい、回り道や色々な可能性を試させてくれる頭の体操・大人のたしなみとして、意外な所でいま密かなブームになっています。HATAKEN氏に、これからモジュラーを始めたい方へのアドバイスを伺いました。

「見た目がカッコイイいという理由でも良いので、まずは欲しいと思ったモジュールやケースを買ってみる。大切なのはいつでも相談に乗ってくれる先輩を見つけることで、そういう意味で楽器店はモジュラーの入り口として重要な場所です。シンセを既に持っている人であれば、それとどうやって組み合わせればモジュラーの面白みが手に入るのか、何を加えれば音楽が面白くなるのか、詳しい人に教えてもらうのが一番です。」

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なるほど、初心者にとっては楽器店をはじめ、モジュラーフェスティバルで仲間や先輩を見つけるということに大きな意義があるのですね。モジュフェスには初心者コーナーがあって何でも気軽に質問できるそうなので、これから始めたい人にはうってつけの場所なのではないでしょうか! そしてRock oNでもモジュラー各種展示中ですのでお気軽にご相談ください。

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新しいインスピレーションの探検へ

世界的大ブームのモジュラーシンセに興味を抱きながらも一歩を踏み出せなかったり、抜け出せない沼と思い込んで見て見ぬフリをしまうのは勿体ないことだと思います。用途を明確に決めて小さいラックを選べば、沼と言わずにプールサイズでコンパクトに楽しむことも可能です。最近のDTM機材はモジュラーブームに応えて CV/GATE 搭載モデルが増えており、モジュラー導入のハードルは大分下がりました。音楽の実験や、自分の音楽的成長に向かい合えるモジュラーを手に入れて、新しいインスピレーション探検を始めてみるのはいかがでしょうか?

モジュラーシンセの伝道師 HATAKEN氏の活動や、
Tokyo Festival of Modularについての情報もぜひチェックして下さい!

Writer:SCFED IBE

この記事は Proceed Magazine 2021-2022 NO.25号に掲載された内容より抜粋しました。
1920-240

HATAKEN氏 アルバムリリース 情報

album

SUGIZO x HATAKEN, first album

The Voyage to the Higher self
2022年2月16日発売 ご購入はこちら


SUGIZO オフィシャルサイト特設ページより〜

SUGIZOがモジュラーシンセサイザー界を牽引するHATAKENとコラボレーション。古代インド哲学より伝承されてきた“チャクラ”から着想を得た全7曲が誕生、デュオとして初のオリジナルアルバム『The Voyage to The Higher Self』が完成した。モジュラーシンセを限界まで駆使し、変調したギターが縦横無尽に空間を舞う、宇宙との交信を音像化したかのような至高のアンビエント・ミュージック。2020年代の「フリップ&イーノ」が本格始動する。

SUGIZO x HATAKEN 記事・news link

日本語■SUGIZO オフィシャルサイト特設ページYahoo NewsBillboard JapanOK musicEXCITE newsModel pressTv.fan / Kyodoガジェット通信

English■Jame-word.comKara ome Thailand

記事内に掲載されている価格は 2022年2月4日 時点での価格となります。

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