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SCFEDイベのスタジオ探訪記 第3回:ミキサーズラボ

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Music is Magic!音楽は魔法だ!

ホームスタジオでの音楽制作がポピュラーになった現在、商用スタジオの価値が見直されています。高価なビンテージ機材、大型スタジオ・コンソール、熟練のエンジニアによる最高のサウンド。そして何よりも、多くのミュージシャンが「スタジオでは特別なマジックが生まれる」と言います。

SCFEDイベが憧れのスタジオを訪問してスタジオの魅力、ハイエンド機材やビンテージ機材の魅力、そしてマジックの正体について解き明かす探訪インタビュー第3回は、ミキサーズラボをお送りします!

SCFEDイベのスタジオ探訪記 第3回:ミキサーズラボ

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1979年の設立から間もなく45年目を迎え、アナログレコードからハイレゾ・デジタル配信まで、音楽制作の全てを熟知しているMIXER’S LAB(ミキサーズラボ)。西麻布に位置する同社のレコーディングスタジオを訪ね、代表取締役社長の三浦 瑞生氏(写真右)、チーフレコーディングエンジニアの小坂 康太郎氏(写真中)、アシスタントエンジニアの金高 和奏氏(写真左)にお話を伺ってきました!

  • 三浦 瑞生 氏:代表取締役社長(写真右) プロフィール
  • 小坂 康太郎 氏:チーフレコーディングエンジニア(写真中) プロフィール
  • 金高 和奏 氏:アシスタントエンジニア(写真左)

ミキサーズラボのお宝機材

genelec

ーーーまずは御社のお宝機材を教えてください!

小坂氏:スタジオコンソールとラージモニターといった機材はもちろんですが、それら機材の性能を発揮するために設計された、部屋そのものがお宝という気がしています。同じ機材が置いてあっても部屋によって音が全く変わるのですが、このスタジオで鳴るサウンドがとても気に入っています。ちなみに設計はアビーロードスタジオなども手掛けられている豊島さんによるものです。

三浦氏:商業スタジオがホームスタジオと圧倒的に違うのは、部屋造りに一番お金がかかっていて、音響特性がとても整っているという点ですね。どんなに性能の良いスピーカーであっても、部屋の音響特性が良くないと正しい音で聞こえないので、音響のプロが一から設計しています。

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あまり他のスタジオにはない機材という意味では、Lexicon model 200というデジタルリバーブがあります。480Lよりも前のモデルで、224の後発機にあたります。ビットが荒くてSNもあまり良く無いのですが、オケの中に入っても消えない、はっきりと残るリバーブなんです。

80年代、ミキサーズラボのエンジニアは必ずmodel 200を使うという感じでした。現在は主に弊社の会長(内沼 映二 氏)がストリングスのリバーブに使用していて、外に持ち出すこともありますよ。

ーーー商業スタジオの価値は機材だけではなくて、その音響環境にこそ大きな価値があるのですね。

三浦氏:メインフロアにそれなりの広さがありますので、マイクで楽器を収録する際に、音源との距離をある程度自由に選べるというのも重要です。音源とマイクの間に空気があることで音色は変化しますので、音源から距離を離した柔らかい音が欲しい時には、きちんと遮音された、空調音も含めてノイズ対策がされているスタジオが必要になります。

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小坂氏:オンマイクだけでなく、良質なアンビエンスが収録できるのは大きなメリットだと思います。音源の存在感、立体感やリアル感を表現する上でアンビエンスのクオリティはとても重要です。

ーーー自宅レコーディングではマイク1本だけでデッドに録音して、後からプラグインで空間処理をするというケースがほとんどだと思います。音源とマイクの距離が離せたり、アンビエンス収録ができるというのは、スタジオレコーディングの醍醐味といえるのではないでしょうか。

アナログ機材の魅力

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ーーーコンソールはAスタジオがSSL SL4064G 、こちらのBスタジオが SL9072J ということで、同じSSLコンソールでもキャラクターの異なるモデルが使い分けられる、というのも大きな特徴だと思います。

4000シリーズと9000シリーズを両方備えているスタジオが多い印象ですが、御社ではこれまでコンソールの入れ替えなどはあったのですか?

三浦氏:弊社は設立時から4000Gと9000Jで、このBスタはミックス部屋ということで、クリーンで純度の高いサウンドになるように9000Jが選択されたのだったと思います。

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ーーーSSLコンソールをエミュレートしたプラグインが各社から豊富にリリースされています。アナログの実機とプラグインの音の違いはどこにあるのでしょうか?

三浦氏:個人的な見解ですが、プラグインでミックスをすると音の前後関係を作ることはできても、1つ1つの音の厚みを出して奥行き感を作るのに苦労します。

アナログを使うと例えばギター、ベース、ピアノ、それぞれの音の奥行きが見えやすい感じがして、さらに楽器と楽器の距離感も見えやすいです。音の厚み、そして隙間がアナログらしさかなと思います。アナログのコンソールでレコーディングをしてラフミックスを作る際に、僕の場合だとアナログコンソールのまま、ほぼデジタルを挟まないでミックスします。そうすると各トラックの音の厚みが存在したまま仕上がる感じがありますね。

ーーーアナログ機器は1つ1つの部品が倍音やノイズを生み出して、そういった雑味成分が加わることによって情報量が増え、音を重ねて配置した際に透過しない、厚みがあって前に出てくるサウンド、エフェクト乗りの良いサウンドになるというイメージがあるのですが、合っていますでしょうか?

三浦氏:そうですね!そんな感じだと思いますよ。

金高氏:プラグインの音は点の感じがして、アナログを通すと点から丸になって、存在感が増す印象です。

小坂氏:それと、アナログには良くも悪くも曖昧な要素もあって、ここにある 9000J もチャンネルによって微妙に特性が違ったりするのですが、そういった部分が音楽的な良さにつながっている気もします。

480L

実機とプラグインで一番差が出るというか、替えがきかない機材はリバーブかなと思っていて、例えば Lexicon 480L はデジタル処理ですが、アナログらしいざらつきや太い質感を持っていてオケの中でもしっかりとした存在感があります。

三浦氏:あるアーティストの東京ドームライブをこのBスタでミックスさせて頂いたことがあって、生バンドにストリングスと金管・木管楽器も入っている編成でした。最初はPro Toolsの中だけでミックスしていて、弦楽器のコンタクトマイクで収録された個別トラックは良い音だったのですが、ストリングスセクションとして重ねた時にどうも薄くて歪みっぽさも感じて、厚みが出ないのが気になりました。

そこで、9000Jにドラム、ベース、ギター、ピアノ、ストリングス、歌、といった具合にステムで立ち上げて、ほんの少しだけEQで補正したら全体のフィット感がしっくり来ました。そのミックスをプロデューサーも気に入って下さって、マスタリングエンジニアにも好評だったという話を聞きました。

ーーー小型のアナログサミングミキサーが各社から発売されていますが、DAWからパラアウトして本物のSL4000Gや9000Jを使ってサミングするというのは、自宅DAWユーザーの憧れです!

クリックを躍らせる!?

ーーーDAWテクノロジーの進歩によって作業が合理化されて、製作者のパッションまでもがコピー&ペーストのように合理化されてしまう、そんな側面が危惧されています。生楽器をシミュレートしたソフト音源の使用も増えているなかで、ミュージシャンがスタジオで生演奏する価値はどこにあるのでしょうか?

三浦氏:僕の大好きな、とても著名なベーシストがいまして、その方と話しているときに「プレイヤーはクリックを聞いて、きちんとクリックに合わせようとするけれど、それじゃダメなんだよ。クリックというのはあくまでも基準で、俺らの演奏でクリックを踊らせようと思わないとダメなんだよ」ということを言ったんですよ。

クリックに合わせに行くのではなくて、クリックがグルーヴを持っているように聞こえたら、一番良い演奏が出来ているということなんだと思います。リズムセクションを録音する時に、ミュージシャンが共通にそういった意識を持って演奏する。これは名言だなと思いました。

ーーークリックを踊らせるとはかなり衝撃的ですね!プロ中のプロはどれだけ凄いのかという一例だと思いますが、スタジオで生まれるマジックの一つとして、演奏・録音ともに、その道を極めた人たちの集合意識から生まれる奇跡があると思います。作曲家だけの力では為し得ない、複数のプロフェッショナルが、スタジオという場で生み出すマジックなのですね。

小坂氏:エンジニアもプレイヤーの1人というか、良いパフォーマンスを引き出すために一緒に演奏している感覚で音を作ったりバランスをとったりしています。それに対して良い演奏が生まれたら嬉しいですし、そういう相乗効果みたいなものは、スタジオ同時録音ならではの物があるかも知れませんね。

音の形

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ーーー常設のニアフィールドモニターはGENELEC 1031Aということですが、みなさんは普段、モニタースピーカーは何を使用されていますか?

三浦氏:ADAM AUDIOが日本に入って来た頃から使っていまして、今の S2V で3代目です。

小坂氏:体に染み付いて一番しっくり来るモデルなのでGENELEC 1031Aを使っています。

金高氏:エンジニアさんが使っていて良い音だなと思ったのはFocalのモニタースピーカーでした。温かくてガッツもあって、聞いていて楽しいサウンドをしているなと思いました。

ーーーFocalを使うエンジニアさんが非常に増えましたね。金高さんはどんな目標を持ってスタジオの世界に入られたのですか?

金高氏:私は小さい頃から音を聞くのがすごく好きで、音楽よりも鳥の鳴き声や木々が風に揺れる音とか、街中の足音とか、音を聞いて色々な “音の形” を想像していたんです。中学時代に合唱部に入って、コンデンサーマイクを買って自分の歌声を録音していましたが、もっと色々なマイクや機材で、歌以外の音源を録りたいと思うようになって専門学校に入りました。音楽も好きなんですけど、音を出す媒体によって変わる音の粒の形がすごく好きというか、色々な音の形を研究したいという気持ちがあります。

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LAB ONLINE WORKS

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ーーー御社ではレコーディングだけでなく、ミックス、マスタリング、ライブレコーディング、アナログレコード制作も提供されています。そのなかでもオンライン・ミックスに興味を持ったのですが、どのような形で進められるのですか?

小坂氏:まずデータを頂いてからミックスの方向性をヒアリングしまして、一度ミックスを仕上げてお送りします。そこからフィードバックを頂くというやり取りで完成させて行きます。全てWEBサイト上でお手軽に、低価格でご利用頂けますので、プロフェッショナル、アマチュアを問わず皆様のご利用をお待ちしております。

ーーーこれだけの立派なスタジオと機材で、プロエンジニアが自分の楽曲をリモートでミックスしてくれるというのは凄い事ですね。まさに時代にマッチしたサービスだと思います。

三浦氏:元々はオンライン・マスタリングを先にやっていまして、ご依頼件数が増えてきたのでミックスにも対応しよう、という経緯でスタートしました。

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ーーーレコードカッティングまでオンラインで可能とは驚きました。

三浦氏:ワーナーミュージック・マスタリングで提供しているサービスで、通常のレコードマスターだけでなく「オリジナルのアナログレコードを1枚だけ作りたい」というご要望にもお応えできるのが大きな特徴です。

弊社ではラッカーマスターサウンドというサービスも提供していまして、これは音源からレコードのラッカー盤を製作して、それをもう一度デジタル化するという、配信音源向けの新しいハイレゾサービスです。

元音源がCDクオリティだったとしても、ラッカー盤に溝を切ることによって倍音が生まれます。周波数を測定すると倍音が本当に現れていて、それがレコードの音の良さにつながっているわけですが、ターンテーブルを持っている方は少ないので、再度デジタル化することで気軽にレコードのサウンドを楽しんで頂けるというサービスです。意外にも各方面からご好評を頂いていまして、多くのアーティストが導入し始めています。

ーーー自分の曲をレコードにしたいという需要は非常に高いのですが、予算面であきらめてしまう方が多いかと思います。レコードを1枚だけ作れたり、レコードの音を再びデジタルに変換するというお話をぜひ、後日ワーナーミュージック・マスタリングで伺えたらと思います!

御三方からのメッセージ

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ーーー今回の取材で、アンビエンス収録の醍醐味、アナログコンソールの魅力、プロフェッショナルの集合意識から生まれるマジックについて教えて頂きました、ありがとうございます。最後に読者へメッセージをお願いします!

三浦氏:世界に1つしかない新しい音楽を毎日作り続けていますので、営業スタッフ、エンジニア、アシスタントを含めて、その時のコンディションに左右されない、常に安定した「良い音楽が作れる場」を目指しています。演奏に集中できる環境、機材のメンテナンスも含めて、演奏するモチベーションが高くなるような環境で生音を大事に録れる、ということに重きを置いたスタジオですので、皆さんぜひ宜しくお願いします。

小坂氏:誰でも一人だけで音楽を創れる時代だからこそ、スタジオで皆で顔を合わせて協力することで、そこでしか得られないマジックが生まれます。そういう場所としてこれからも続けていきたいなと思っています。

金高氏:スタジオのスタッフはみな温かくて、素敵な方々と良い音楽を作れる場だと思っています。色々な意見を交換したり、みんなでワイワイとレコーディングするのっていいなと思います。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

ーーー笑顔の絶えない和やかな雰囲気のなか、リラックスできる明るい環境が非常に心地よくて、素晴らしい作品が生まれそうなスタジオだと感じました。皆さん本日はどうもありがとうございました!

■ミキサーズラボ Webサイト https://www.mixerslab.com/


Writer:SCFED IBE 2023年6月20日取材

記事内に掲載されている価格は 2023年7月19日 時点での価格となります。

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