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イベント
29
Sep.2025
イベント

【レポート】P.I.T. presents「プレイヤーズ・ファイル Vol.1 – Behind the Sound」

P.I.Tの活動内容について

大盛況となったトップ・プレイヤーたちによるトーク・セッション「プレイヤーズ・ファイル Vol.1 – Behind the Sound」。

その模様をお伝えする前に、このイベントを主催するP.I.T.(パブリック・イン・サード会)についても紹介したいと思います。P.I.T.はミュージシャン同士の話し合いの中から生まれた、ミュージシャン自らが運営する演奏家団体で、音楽に関わるクリエイターやミュージシャンなら知っておくべき“著作隣接権” など、様々な権益を擁護し、ミュージシャンが仕事をしやすい環境づくりに取り組んでいる団体です。ここではP.I.Tの活動内容について代表の四家卯大氏(チェリスト)と幹事の倉田信雄氏(ピアニスト/キーボーディスト)にお話を伺いました。

P.I.T.の成り立ちについて教えていただけますか?

四家卯大氏:著作隣接権という実演家(ミュージシャン)が持つ権利があって、音楽が利用された際に報酬を受け取ることができるのですが、貸レコード(CDレンタル)という商売が始まったタイミングで、実演家本人がその報酬を受け取れるよう、個々の作品に参加したミュージシャンのデータベースを作成して分配するための団体として、1996年にP.I.T.が設立されました。

1990年代後半は、CDセールスの最盛期が始まった頃ですね。

倉田信雄氏:それ以前から商業用レコードの二次使用料(放送)の分配は行われてはいました。これらは芸団協(日本芸能実演家団体協議会)から傘下団体へと分配されていましたが、実際にどの作品で誰が演奏したのかというデータがなく、個々のミュージシャンへ分配ができていない状態でした。ちょうどその頃、私はスタジオ・ミュージシャンとして活動をしていて、団体に所属しないと分配金を受け取れないという状況のなかで、1988年にスタジオ・ミュージシャンズ・クラブ(現RMAJ)を立ち上げました。そのなかでも個々のミュージシャンに分配すべきというグループと、ある程度同じ目的のなかで共同利用しようというグループで分かれたのですが、前者のグループがP.I.T.の前身となり、1996年に正式団体になったという流れです。

ということは、二次使用料の個人分配の促進がもともとのP.I.T.の理念となるのですね。

倉田信雄氏:そうです。その理念のもとに、ギタリストの椎名和夫氏とキーボーディストの中西康晴氏が中心となり、スタートしました。

四家卯大氏:P.I.T.は誰が何の作品に参加したのかというデータをひたすら蓄積し、それに基づいた個人分配を徹底することが目標でした。

ミュージシャンのクレジットは昔の作品となると無いものも多く、それを調査していくのは困難なことだったと思います。

倉田信雄氏:大変でしたね。P.I.T.の前身時代から考えると、1980年代後半から10年ほど遡って録音物を調べていきました。当時のレコーディング・セッションはレコード会社とプロダクションの間に僕たち演奏家を現場にあてがうコーディネーターもいましたが、それぞれが過去を記録した書類をすべて保管しているわけでもないですから。そうなるとこの時代でアレンジャーがこの人なら、大方このへんの演奏家が参加しているはずだという、ある程度の憶測から判断せざるを得ないということもありました。

確かに。記録が残っていなければそうなりますよね。ちなみにこういった演奏家団体はたくさんありますよね。

倉田信雄氏:そうですね。P.I.T.が先陣を切ってはじめた演奏家のクレジットなどのデータベース作成と徹底した個人分配のシステムは、現在は一般社団法人MPNという団体へと受け継がれています。このMPNは、P.I.T.と先ほどお話しした現RMAJというスタジオ・ミュージシャン系の団体に加えて、日本音楽家ユニオン、クラシック系の日本演奏連盟、日本作編曲家協会(JCAA)、日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)の6団体で構成されています。

ご説明をいただいたことで実演家団体の実態が理解できました。若い世代でもレコーディングやアーティストのライブ・サポートを行うセッション・ミュージシャンはいますから、P.I.T.のように経験豊富なプレイヤーが多く所属する団体は心強いように思います。

倉田信雄氏:ひとつのバンドに限らず、いろんなリクエストに応じて演奏を仕事とするミュージシャン、クリエイターの方々でしたら、年代を問わず共有できることがあると思いますね。僕のようにP.I.T.に所属するベテランたちは、いろんなトラブルを乗り越えながら演奏家としてやってきているので、それを共有できれば若い人たちは回り道を避けて最短でステップアップできる。だから、そうやって僕たちを利用してくれたらいいなって思います。話をするだけだと年齢差もありますが、一緒に演奏したらそんなことは関係なくお互いが平等になれます。そこが音楽の良いところですよ。

四家卯大氏:確かに、アンサンブルで演奏する楽しさを知ってほしいっていう思いはありますね。

倉田信雄氏:それって人を信じるっていう力でもあるんです。ひとりでやれる範囲って狭いから、あるところからは越えられない。でも、アンサンブルはそこを簡単に越えていくことができますから。

P.I.T.は今後どんな活動をしていく予定ですか?

四家卯大氏:その新しい試みのひとつが「プレイヤーズ・ファイル Vol.1 – Behind the Sound」ですね。普段からステージやスタジオに引っ張りだこでP.I.T.を代表するようなメンバーが、演奏もしないで話すというのはある意味で貴重な機会ですから、このイベントからどんなフィードバックが得られるのかを楽しみにしています。

倉田信雄氏:僕も今回壇上にあがってもらうみなさんとは長年一緒に演奏をしているけど、そんなに話し合ったりする機会はなかったので楽しみですね。

「プレイヤーズ・ファイル Vol.1 – Behind the Sound」レポート

 取材に対応していただいた四家卯大氏が司会進行役となり、ステージにはドラマーの山木秀夫氏ベーシスト高水健司氏ギタリスト 今剛氏、そして倉田氏がゲストとして招かれた今回のトーク・ショウ。P.I.T.を代表するだけなく、日本の音楽界を支えてきた重鎮セッション・ミュージシャンたちが一堂に会するという貴重な機会ということもあり、会場は立ち見のお客さんが出るほどの盛況ぶり。登壇者のみなさんにいろんなテーマで話をしてもらうという内容でした。まず最初のテーマである「楽器をはじめたきっかけ」では、ジャズからドラムの世界に入ったという山木氏、ベースではなく管楽器がスタートだったという高水氏、意外にもドラムからギターへ転向した今氏など、超一流のミュージシャンに今更聞けないエピソードにお客さんも聞き入っていました。「登壇者たちの出会い」では、今氏と山木氏の初対面はお互いに無口で全然しゃべらなかったというエピソードや、当時アフロヘアーだった高水氏、ティモシー・シュミットのような出で立ちだったという山木氏の話に、会場は大きく沸いていました。

 その後「人生の転機」というテーマにおいては、山木氏は沖縄の基地内でドラムを叩いていたことや、倉田氏にとってはじめての録音仕事となった映画の劇伴の録音などの若い頃の話を披露したり、「これまでの仕事で印象に残っているもの」というテーマではそれぞれが“難しいなぁ”と言いながらも、山木氏は美空ひばりさんとの録音について、倉田氏はスティービー・ワンダーと一緒に入ったスタジオでの貴重な話を聞かせてくれました。質疑応答のコーナーでは「辛かったこと、自分の糧となった仕事は?」という質問に対して、山木氏の「すべて。それがあって今があります」という根源的な答えに、質問をしたお客さんが涙ぐむという感動的な瞬間もありました。

P.I.T. Presents 「プレイヤーズ・ファイル Vol.1 – Behind the Sound」 あの名演の裏側に迫る!
トッププレイヤーによるリアル・トークセッションが、2025年8月27日にRock oN渋谷「LUSH HUB」にて開催!

※こちらは終了しております。

トークを振り返って

 最後に「今日のトークを振り返って」というテーマにて幕引きとなりました。壇上のみなさんを見ていると、確固たる演奏技術を持ち、演奏家としてのオーラを放ちながらも、演奏ではなくトークということもあってどこか控えめ。でも、音楽のことになると端々から熱い情熱を感じました。そのなかでも印象に残った高水氏と山木氏の言葉を紹介します。

「2013年頃の(井上)陽水さんの現場でね、陽水さんが僕とか山ちゃん(山木氏)とかその場にいるメンバーに聞いたんです。“みんなそこそこいいキャリアだしさ、これは俺の代表作って言えるものってなんかないの?”ってね。そのとき僕が嬉しかったのは、その場のみんなが“いやぁ、ろくなことは覚えていないんですよ”って言っていたんです。自信を持ってオススメできるようなことは全然覚えていないのに、穴に入りたいような恥ずかしい失敗ばかりを覚えている。スタジオ・ミュージシャンって、みんなそんなものですよ。それを最後に伝えたいなと」(高水氏)

「確かにそういう話をしたね。綺麗なことが“1”で、なかなかなことが“9”っていうのが人生なのかも。そうするとこういう音が出せるのかもしれない」(山木氏)
 
駆け足で紹介しましたが、それぞれの答えに対して、各メンバーが突っ込みをいれたりと和気藹々とした雰囲気のなか、2時間半近くセッション・ミュージシャンたちの貴重な体験談を体験できるトーク・ショウでした。終演後、壇上を降りた四家氏に話を聞くと「貴重な話を聞ける場になりました。こうしたイベントを通じてP.I.T.の活動を知っていただき、興味を持ってくれた方にはぜひ入会して仲間になってもらえれば嬉しいと思います。」とミュージシャンに向けたメッセージがありました。今後のP.I.T.のイベントにも期待しましょう!

P.I.T.(パブリック・イン・サード会)オフィシャルサイト

https://publicinthird.com/

記事内に掲載されている価格は 2025年9月29日 時点での価格となります。

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