Rupert neve designのアウトボードは、現在の制作環境に求められるアップデートを盛り込みつつもハイクオリティな製品が毎度リリースされています。早速、今回は発売されて間もない RUPERT NEVE DESIGNS 5254 Dual Diode Bridge Compressor を試聴してみました!
製品の魅力
1、音源を押し出すサウンドの質感。微細なダイナミクスコントロールが可能。
ピアノ音源、ドラム音源ソロをソースに試聴してみました。試聴した際のファーストインプレッションは、ノイズが全く無くとてもクリアなサウンドだと感じました。個人的な感想で誤解を恐れずに言えば、Universal Audio 1176の方向性に近いものを感じます。
また、コンプレッションの効き具合がわかりやすく、同じボリュームレベルまで Gainつまみで調整しON/OFFで聞き比べると、音が前に来るように音圧感がUPしています。アウトボード機材では、特にヴィンテージ機材において、ノイズ成分が多いことがその味となることもありますが、本製品はそういった方向性とは異なり、クリアなサウンドにも対応し、現代の繊細なサウンドメイクに向いている印象です。比較的早いアタックタイムでの試聴では、さらに音像が前に出てきました。
2、幅広いタイミングコントロール
コンプレッサーはスレッショルド値を超える信号を検出してから、実際にコンプレッションが始まるまでのアタックタイムでその質感が変化しますが、ドラムや弦楽器など比較的立ち上がりの早い音源に対しては、とても早いアタックタイムであることが必要です。
5254では、6ポジション設定が用意されています。
Fast の設定がわかりやすいですが、多くのハードウェアコンプレッサーの中でも、非常に早い設定がカバーできることが特徴です。Fastの値の、250μSは、msに変換すると0.25msとなります。あまりコンプレッション感を出したくない時などは、遅めに設定するなど柔軟な設定も可能です。比較参考として、コンプレッサーの定番機種と言えるUniversal Audio 社の1176のアタックタイムは、0.02ms-0.8msです。
3、原音とコンプレッションの音を調整できるBLENDつまみ
DAWソフトプラグインでは当たり前となった DRY/WET コントロールですが、ハードウェアの機種では意外に搭載されているモデルは多くありません。少しだけコンプレッションしたサウンドを混ぜるなど、ミックス時のサウンドの選択肢が増えます。ちょうど良いバランスの質感で収録できるメリットがあり感覚的に使用する上でも非常に有効です。
おすすめ使用シーン
1、使用するソースを選ばないベーシックなコンプレッサーの1台として
使用した印象として、率直に1176と同じ方向性の使用感を感じました。同様のポジションでの使用にとてもおすすめです。また、ステレオコンプレッサーとしても使用でき、アタックタイムの幅も広いので万能コンプレッサーとして、レコーディング時にぜひおすすめです。
2、音色変化でなくダイナミクスのコントロールでサウンド変化をつけたい時
ヴィンテージ系の機材では、元の信号にアウトボードを通すことで質感を付与する手法がありますが、本製品はどちらかというと、音色自体は比較的変化は少なく音が前に出てくるような変化が特徴で、ダイナミクスのコントロールでサウンドのクオリティーをアレンジすることに向いています。そのため、ピアノのソロ演奏やクラシックホール収録、ボーカルレコーディングなど、素材そのものを直接レコーディングしたい時におすすめです。
総評:
アタックタイムの選択肢が広く、どの音源にも使用できる1台です。コンプレッサーとしてベーシックな機能は網羅し、かつハイクオリティーなサウンドクオリティ。さらに、BLENDつまみやサイドチェインなど、現在のアレンジ環境にもマッチする機能も搭載。レコーディング、ミキシング時のコンプレッサーとしても使いやすく、まさしく今後の標準機として目安となるコンプレッサーだと思います。
記事内に掲載されている価格は 2021年9月17日 時点での価格となります。
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