高音質DSD 2.8MHz/1bit、リニアPCM 192kHz/24bitのハイレゾ録音再生に対応。SONYのプロ用モバイルレコーダー PCM-D100をクリエイターのシライシ紗トリ 氏がレビュー!楽曲やアーティストのプロデュースなど多岐にわたる活躍で豊富な経験を持つシライシ 氏ならではのモバイルレコーダーを使った制作ノウハウまで披露していただきます。
どうもシライシ紗トリです。今回、SONY PCM-D100 を色々といじらせて頂きました。シライシがレビューということで、ミュージシャン目線で書いていきたいと思います。
PCM-D100は「高音質DSD 2.8MHz/1bit、リニアPCM 192kHz/24bitのハイレゾ録音再生に対応」ということで、数あるフィールドレコーダーの中で最高クラスのスペックを誇る機種になります。
アコースティックギターの録音で
DSDはとてもキメの細かい、ふくよかな音色だと感じました。ソースをとても素直に、しかも高解像度でキャプチャーしているという印象を受けました。フィンガーノイズまでも聴きやすい感じです。そしてPCMは普段聴き慣れているフォーマットなんですが、192k/24bit で録音したアコギは抜けが良くとてもキラキラした音色です。
DSDでもPCM(※1 S/N 100dBモードが使えます)でもこれだけ高音質で録音再生ができるので、マスター(マスタリング前のファイナルミックスデータやDSDマスターなど)やアーカイブ的な使い方(アナログのリズムマシンの音色保存、アナログレコードやカセットテープの保存など)にはもってこいだと思います。ハードディスクのバックアップよりもSDカードの方が手軽で持ち歩きにも便利ですからね。
DSDに関しては、僕よりもDSDが詳しい方のレビューがたくさんあると思いますので、そちらを参考にして頂ければと思います。
可能式マイクを使って A-B / X-Y / ワイドステレオ それぞれ試してみましたが基本はステレオマイクなので、それぞれ臨場感をとても気持ち良く捉えていると思いました。ソースが楽器の場合はマイクの位置で低域の録音のされかたが変わってくると思うので、環境によってはローカットを使ってもいいでしょう。良い音を取る上では欠かせない機能ですね。
アンサンブルの録音で
さて、次に用途として頻度が高そうなのがライブやスタジオでの一発録り。
チャンネルに2つのADコンバーターを使い、過大入力が発生した部分を最適なレベルに置き換える独自開発のデジタルリミッター搭載。これ結構便利だと思いました。歪みがちや小さくなりがちで録音レベルに悩むことがある収録もそこをあまり気にせずにすむ良さがあるかと思います。
他にもリハや曲作りを延々録音して後でオイシイところをピックアップしてボーナストラックにしたり、ダミーヘッドさながら語り / 効果音 / FXの元素材 / 高音質で臨場感のある動画制作などの集音にもいいと思います。一度の録音でリニアPCM方式とMP3方式の2種類のファイルを作成出来るので、検索用としてMP3のファイルを活用してマスター制作時にPCMを使えば作業スペースの心配も無くなりますね。トラックマークをつけられるのでさらに活用できると思います。アーティストのコンテンツ作りを広げていくいいツールになるかと思います。
実践!曲の素材を作る
次に僕が普段やっているフィールドレコーダーの使用例を挙げます。「レコーダーのマイクを使用して録音したソースをSDカード経由で自分のDAWに取り込んで使う」という方法です。大まかに2パターンあります。
①単体楽器のレコーディング
②マルチレイヤーでレコーディング
どちらもフィールドレコーダーのソースをメインで制作する楽曲の時はセッションのフォーマットはなるべく高い方が良いかと思いますが、バンドサウンドもしくはたくさんの楽器が鳴っているセッションであれば48kHzでもPCM-D100の特性を生かした十分なサウンド品質が得られると思います。最終的には好みですが。
アレンジの最中にアコギや歌を何回も重ねてダブルやトリプルを作ることがあると思うんですが、「あんまり重ねたくないけど、ステレオ感のあるコーラスやアコギ、エレキのリフなどにしたい!」と思った時は録音モードをX-Y、もしくはワイドステレオポジション。弾き語りなので臨場感はありつつもそんなに広がらなくていい時はA-Bポジションなど、楽曲によって自分の好きなポイントを探すことができます。同じように、マルチマイクでドラムをレコーディングする際にアンビマイクとして録音しておいてセッションに取り込むのもアリです。
それでは具体的に流れを説明します。
①単体楽器のレコーディング
・普段の曲作りやレコーディングをやる時と同じようにDAWを立ち上げ、ソングファイルのフォーマットを決めます。(すでに曲がある場合はそれでいいと思います。)
・PCM-D100をセットします。このままだと、自分の音がプレイバックできないのでモニター用に一本マイクを用意してPCM-D100の隣に立てます。
・ヘッドフォンをしてレコーディングできるスタンバイをします。そして先ほども書きましたが、PCM-D100のマイクは単体で外部マイクとして使用するように出来ていないので、先にPCM-D100の録音ボタンを押して、走らせた後、DAWのスタートボタンを押すことになります。(PCM-D100にはデジタル録音時に入力信号に合わせて自動的に録音を開始する「デジタルシンクロ録音」がありますが、頭が欠けてしまう可能性もあるので、ここでは使いません)
・録音したデータをDAWにインポートします。インポートしたデータの波形を見ながらクリックやオケに合わせます。左右別々に音量調整が可能なので、マイクポジションだけでなく、その音量も微妙に調整が可能です。
※光DIGITAL OUTジャックがありますが録音したソースの再生専用になります
②マルチレイヤーでレコーディング
こちらはリハスタなどで出来る楽器の定位を生かした録音方法です。仕上がりが一発録り風に聞こえますが、編集が出来るという方法です。
ドラム→ベース→ピアノ→アコギ→ヴォーカルという編成と録音する順番で進めていきます。
・DAWに曲のクリックを用意します。(クリックだけでは心もとないという方は事前にそれぞれの楽器のガイドを入れておいても良いと思います)
・自分のモニター用にマイクを一本用意して、先ほど用意したクリック(オケ)などと一緒に流れるようにします。それらが自分のヘッドフォンで聞こえていたら準備OKです。
・次はドラムの前にPCM-D100を立てます。真ん中のちょうどいいポイントを探してみてください。(マイクの広さはお好みですがここではワイドステレオ前提で進めます、ドラムだけセンター気味にしたい場合はA-Bが良いと思います)
・聞きながら録音していきます。後で編集できるので、何テイクか納得するまで録音します。
・録音できたら、SDカード経由でDAWに取り込んで名前をつけていきましょう。
ベース
・ドラムの時と同じように今度はA-Bポジションで録音してみましょう。同じようにSDカード経由で取り込みます。
ピアノ
・ドラムとベースの時と同じように録音するのですが、マイクはあえて全部をピアノに向けず、左にピアノがいると想定して、マイクの左側の音量が大きくなるように立てます。向きはドラムに向いていた時と同じ方が良いと思います。録音が終わったらまたSDカード経由でDAWに取り込みます。
アコースティックギター
・今度はピアノと逆にいると想定して、マイクの右側のレベルが大きくなるようにアコギを録音します。
・同じようにSDカード経由でDAWに取り込みます。ここで一旦、DAWで編集作業を行います。さっき録音したソースすべてをならすとステレオ感のあるサウンドになっているはずです。思ったような定位ができなかったら、何度か試してみると良いでしょう。
・そして、好きなテイクをつなげたり切り貼りしてみてベーシックを完成させます。
ヴォーカル
最後にヴォーカルです。最後は出来上がったベーシックを聞きながらPCM-D100のマイクの位置をA-Bにしてセンターで歌を録音します。
ステレオマイクやM/Sレコーディングはいざきちんとやろうとするとマイクやヘッドアンプなどなど色々用意しなくてはならなかったりして面倒だったりするんですが、この方法だととても手軽に普段の楽曲に取り込めます。波形合わせだけがちょっと面倒ではありますが、普段から波形をいじってるクリエイターにとってはわけないことだと思います。手軽にステレオマイクを使ったデモを本ちゃんまで仕上げようと思えばできる可能性がPCM-D100にはあると思います。
SDカードではなく、DSDで録音したものをアナログのラインアウトから自分のDAWのラインインに取り込んでもそれなりにDSDとPCMの違いはあったので、キャプチャーした後は好きなフォーマットで編集するんでもいいかなとも思いました。
総括
フィールドレコーダーというと使い方が狭くなりがちですが、ステレオ素材でかつ綺麗に録音できるというのはそれだけでアーティストやクリエイターの想像力をかきたててくれるツールになると思います位相なんか気にせずにガシガシ使って制作に取り込んでみてはいかがでしょうか?
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記事内に掲載されている価格は 2018年3月23日 時点での価格となります。
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