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03
Dec.2025
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フォーリーアーティスト・渡邊 雅文 氏が語る、SENNHEISER MKH 8018の魅力

MS、XY-narrow、XY-wideの3つの切り替え可能なステレオモードによる豊かな指向性と空間リアリズムを実現するステレオショットガンマイクとして、今年発売され話題を呼んだSENNHEISER「MKH 8018」。そのMKH 8018の印象について、映像作品における音響効果を担当する「フォーリー」という分野で活躍する、株式会社evance代表取締役でフォーリーアーティストの渡邊 雅文 氏にインタビュー取材させて頂きました。

渡邊氏はフォーリー/アンビエンス/効果音録音の最前線で活躍する3名のプロフェッショナル・エンジニアとして、MKH 8018新製品発表会のトークセッションにも出演。今回はフォーリーの収録で使っているマイク選定の話や、日頃愛用しているというMKH 8000シリーズの使い勝手など、幅広くお話を伺いました。

※取材には、ゼンハイザージャパン真野氏にもご参加して頂きました。

★MKH 8018新製品発表会の模様はこちら

SENNHEISERのMSステレオショットガンマイク「MKH 8018」新製品発表会が開催!
「効果音録音」をテーマに3名のエンジニアを迎え、スペシャルトークセッションも実施

プロフィール

渡邊 雅文 氏

渡邊 雅文 氏
株式会社evance フォーリーアーティスト
四国の香川県を拠点にアニメ・ゲーム・CMなどの映像作品の音響効果を手がける。主に「フォーリー」という、足音・衣擦れ音・人が触れる物の音を、身体や物を使い、声優のアフレコのようにして音の芝居を吹き込んでいる。
株式会社evance代表取締役・大阪芸術大学音楽学科客員教授
担当作品 アニメ「SAKAMOTO DAYS」「ブルーロック」ゲーム「ドラゴンズドグマ2」など

マイクの選定基準は・・・?

Rock oN : フォーリー収録の際に使うマイクはどういった基準で選定されていますか?

evance 渡邊 雅文 氏(以下、渡邊 氏) : マイクは消耗品だと思っているので、バックアップ体制が効くように全部2本ずつ揃えています。面倒くさいマイクというか細かいことに気を遣うようなマイクがとにかく嫌なんです。気を遣っちゃうと自分本来のパフォーマンスが出ないので、ワクワクさせる気持ちを中断させないマイクを選んでいます。

あとは日常で「これは欲しい音だ!」と思った時にも、すぐに録音できるレコーダーとしてiPhoneを使ったりもします。録り逃すよりはいいなと思って。

Rock oN :用途に合わせて備えて、取り揃えている感じですね。

渡邊 氏 : そのため正直僕は、ビンテージと呼ばれるマイクはあまり好きではないですね。マイクの歴史を紐解いて細かい音の聴き比べをして選んだりするよりは、買うときにこれは使い続けられるとか、他の方がどういう環境で使っているかを調べて「これだったら自分のパフォーマンスを最大限出せる!」と感じたら買うことが多いです。

Rock oN :ちなみに最初に使っていたマイクは何ですか?

渡邊 氏 : 一番最初に使っていた本格的なマイクは、MKH 416(SENNHEISER)です。それは自分で探して選んだものではなく、通っていた大学に用意されてあったから使い出したという感じです。効果音収録の世界は環境が変わったり移動してマイクを使うというのが音楽の世界よりは多いんです。その中でガンマイクは使用する環境が異なっても使いやすいマイクなので、そういう理由でも大学にMKH 416があったのかなと思います。

それと自分としてもTVドラマとか色々な映像作品でMKH 416で収録した音を聞き慣れていたということもあるんでしょうね。

MKH 8000シリーズとの出会い

Rock oN : SENNHEISERのMKH 8000シリーズについてお伺いしたいのですが、最初に購入したモデルは何になりますか?

渡邊 氏 : 最初はMKH 8060ですね。フォーリーって小さい音を録音することが多いのですが、MKH 416で収録した時にちょっとノイズが多いなと思ってたんですよ。15KHz以上あたりから上の帯域にシーって音が入ってて、それを削るとなんか艶やかさもなくなるし。例えば砂利の音とかを収録した際に音がピーキーでキツく感じたりとか、良い意味でも悪い意味でも全部MKH 416の音になるっていう印象があって。ただ、15kHz以上のノイズがいい味を出していることもあるので、今でもあえてMKH 416を使うこともあります。

それでガンマイクから離れて、高価なマイクも色々と試したんですけど、単体では綺麗な音でも今度は音が良すぎて雑味がなくてセリフや音楽と混ざった時に埋もれることがあって、これではちょっと費用対効果はないかなと。

それからSENNHEISERのマイクに絞ってRock oNさんにMKH 8050やMKH 8040、MKH 8020とかを借りて色々と試してみたんですけども、どうしても自分のスタジオが調音しきれてないこともあって、収録した音に部屋感が出すぎるているなって思いました。それだと実写映画には合うのかもしれないですけど、アニメのフォーリーには合わないかなと感じて。

そこでやはりガンマイクに戻って選ぼうと思って、MKH 416のような音質の雰囲気がありながらもキツくなくてとにかくノイズが少ないマイクを探してみた時に、取り扱いもしやすくて価格帯もちょうどよいMKH 8060を購入しました。他の8000シリーズみたいに50KHzまでは録れないし、スロー再生の加工にはちょっと弱いっていう点では悩んだんですけどね。

MKH 8060とMKH 8030の組み合わせで収録

Rock oN : この間のMKH 8018製品発表会でもお話されてましたが、MKH 8060とMKH 8030を2本組み合わせて使っているとのことですが、その組み合わせはどういった発想で生まれたのでしょうか?

渡邊 氏 : これはスーパーカーディオイド(MKH 8060)に双指向性(MKH 8030)を加えたものを作りたかったんですね。そもそも学生の頃からMSっていうものには興味があったのですが、よく理解しないまま進んできて。

フォーリーって基本モノラルで録音するんですよ。セリフはモノラルで録っているので、フォーリーだけステレオになると人が立っている位置や定位感、質感とかがずれてしまうんです。だから同じ人から出てきてる音に聞こえるように基本的にモノラル収録ってことなんですけど、このモノラルで録音した素材を、稀にステレオにしたい時があるんです。

そこでもう一本ステレオマイク立ててたらいいんですが、そうすると取り回しがしにくくなるので、基本的に面倒なのは嫌なんですよ(笑)便利さ重視でなんとか一本で収録できないか・・と調べている中で、遅ればせながら双指向と単一指向を組み合わせるMSっていう方法があるというのを思い出し。そこでMKH 30(SENNHEISER)のデモ機を借りてみました。

MKH 30(※この製品の販売は終了しました。)

ゼンハイザージャパン 真野 氏(以下、真野 氏) : 8000シリーズ以前にあった、MKH 30とかMKH 40とか、型番が二桁シリーズの「30」ですね。効果音の収録などで使われることがよくあるマイクでした。

渡邊 氏 : それに8000シリーズのマイクを足してみたところ、広がりは出るんですけどそれだとノイズがひどくて、一旦断念したんです。そこでちょうど諦めかけてたときにMKH 8030が発表されて、すぐに飛びついて買ってしまったと。

Rock oN : なるほど!すでに持っていたMKH 8060とMKH 8030の組み合わせがそこで完成したんですね。

渡邊 氏 : ただMKH 8030を買った翌年に、すぐ今回のMKH 8018が発売されて・・ちょっと先走ってしまったなと思いつつも、まあそれだけMKH 8030が自分にとっては魅力的だったということですね(笑)MKH 8018のデモ機をさっそく借りて使用したみたところ、一体型ならではの取り回しの良さと、同軸による位相のズレの無さに感動して購入しました。

MKH 8018の導入理由

Rock oN : すでにMKH 8060 + MKH 8030を所有していながら、さらにMKH 8018を導入した理由は何でしょう?

渡邊 氏 : 買った理由としては、MSモノラルMIXです。MSマイクをステレオで使用するのではなくデュアルモノで使用し、MidをONマイク、SideをOFFマイクとし、それをモノラルMIXしてバランスを調整することで音の距離感を作るという方法です。

それ以外にも音の表現としてMS方式を何とかして使いたかったのと、それとノイズが極めて少ないということでした。正直細かく聞くと、MKH 8018単体よりもMKH 8060とMKH 8030の組み合わせた方がいい音なんですよ。それはもしかしたら接続しているケーブルの問題かもしれないですが。

機能としてはもう既に持っているマイクで足りるんですけど、じゃあなんでMKH 8018を買ったのかって言ったら便利さですよね。 取り回しがしやすいし、何より位相がバッチリ合っていると僕は思っているので。位相の調整をしなくても、物理的に完全に同軸内にいるっていうのがMKH 8018のいいところかなと思っています。これはどうしてもMKH 8060とMKH 8030の組み合わせでもちょっとどこかでずれるので、やっぱり位相合わせも現状のソフトウェアで後からやるとなるとかなり面倒ですし。

その点MKH 8018は一体型になっているところで全ての軸が合っていると信用できる安心感みたいな点があって。やっぱり1本の方が楽なんですよね。時間が経つとアイディアとかも減衰していくので、今を大事に作業を進めたいんですよ。そういう意味でも僕の中でMKH 8018は今後メインに使っていくマイクなのかなとは思っています。

こんな方にMKH 8018をおすすめしたい

Rock oN : それではMKH 8018をどんな方におすすめしたいですか?

渡邊 氏 : 具体的にどういう職業の人がこれに向いているかというと、一番はやっぱり同業者の音響効果さんとかフォーリーアーティストさん、そしてゲームのサウンドデザイナーさんとかにもいいかもしれないですね。

MKH 8018で恐らくあんまり思いついてなかったのが、デュアルモノの使い方だと思うんです。モノラルミックスの使い方。ステレオは別にいらないという人からしたら値段的にはMKH 8060でいいじゃんってなってしまうので、きっとこのMKH 8018っていうのは選択肢から除外される可能性があるんですよ。

その中でMKH 8018っていうのはどういう方に届くかなって考えると、色々な向上心とか音をもっと面白くしていきたい方とか、セッティングで少しでも楽できたらしたいという風に考えている方。そういうクリエイターに刺さるといいなと思うんですけどね。とにかく収録時の取り回しと位相合わせが不要で編集するときに楽なので、面倒くさがりだけどこだわりたいクリエイターにはおすすめです。

Rock oN : 今日はどうもありがとうございました!

製品情報:MKH 8018

音質・機動力・汎用性に優れた、万能なMSステレオショットガンマイク

MKH 8018は優れた指向性と空間的なリアリズムを両立するステレオショットガンRFコンデンサーマイクです。MS、XY- ナロー、XY- ワイドという3つのステレオモードを切り替え可能。さらに低テンションのダイアフラムとプッシュプルトランスデューサーと組み合わせにより、高感度かつ広帯域な特性を実現。音を限りなく自然かつ忠実に収音することが可能です。

必要なすべての指向特性を揃えた完全なマイクシリーズ「MKH 8000 シリーズ」の一員として、他のMKH 8000シリーズと同一のサウンド設計で、シリーズ内での音響互換性を確保した製品です。

またXY-ナロー/XY-ワイドモードの内部マトリクス処理も選択可能で外部ミキサーを使用せずに「左右(L/R)」信号を直接出力できます。音響環境に応じて、環境音を広く拾う「ワイド(XY-W)」と、環境音の抑制と定位の明確さを重視する「ナロー(XY-N)」から選べます。

●主な特長

• ステレオショットガンカプセル構成により、指向性と臨場感のある音場を同時に収録可能
• 映像制作において、会話シーンのステレオ収録、スポーツ中継、環境音・自然音などの収録に最適
• 切り替え可能な3 つのステレオモード:MS、XY-ナロー、XY-ワイド
• スイッチ式ローカットフィルター(70Hz で-3dB)により風やハンドリングノイズを軽減
• 高品質な-10dB パッドにより過大入力にも対応
• コンパクト設計によりカメラマウントにも最適
• フローティング・バランス出力により、接続機器を選ばず低歪みを実現
• プッシュプル式トランスデューサーと低テンションダイアフラムによる自然な音の流れと最小限の歪み
• 拡張された低域応答により、全帯域で自然な収音が可能。マイキングの自由度も向上
• 最適化された指向特性により、軸外音の色付けを抑え、特に大型音源において自然で一貫した音像を提供

SENNHEISER
MKH 8018
¥363,000
本体価格:¥330,000
5445ポイント還元

関連製品

SENNHEISER
MKH 8030
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本体価格:¥272,000
2720ポイント還元
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MKH8060
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本体価格:¥263,200
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記事内に掲載されている価格は 2025年12月3日 時点での価格となります。

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