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HOW TO

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12
May.2017
HOW TO

Studio Luxe【Build up Your Studio 2017 Spring】


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普段は立ち入ることができない、プロクリエイターのスタジオを大公開。プロ/アマチュア問わずクリエイターならマイスタジオは夢の城。その設計や機材導入のノウハウなどをお伝えするBuild Up Your Studio 2017の第3回目のスタジオは東京・目白のStudio Luxe (スタジオ リュクス)。オーナーは作曲/編曲家として数々の仕事をこなす日々を送っている斎藤悠弥 氏だ。昨今はアーティストやイベントのプロデュースも行っているというマルチな彼が作り上げたスタジオには一体どんなノウハウが込められているのだろうか。

斎藤悠弥 ・プロデューサー / 作詞・作編曲

株式会社 YS FACTORY: 代表取締役
株式会社 Sound Drive: 代表

東京音楽大学 映画放送音楽コース 卒業。エイベックス・アーティストアカデミー クリエイターコース卒業。
幼少よりピアノを習い音楽の基礎を学習。高校より本格的に作曲や演奏活動を開始。その後、メジャーアーティストへの楽曲提供や、映画、TV、CM、などの音楽制作から、ミュージカルの劇判など幅広く活動中。アップテンポのポップスとなきメロのバラードを得意とする。

BIOGRAPHY

TV アニメ ”艦隊コレクション” (ED)「吹雪」 (編曲)
TV アニメ ”スマイルプリキュア” (ED)「イェイ!イェイ!イェイ!」 (編曲)
劇場版 ”ハヤテのごとく!” 水蓮寺ルカ starring 山崎はるか「Forever star」(作曲)
KAT-TUN 「LOVEJUICE」(編曲)
モーニング娘 「渚のシンドバット」(編曲)
​東方神起 韓国ドラマ “雪の女王”(ED)「Summer Dream」/(シングル)「Love in the ice」(編曲)
Not yet(AKB48) 「週末Not yet」(編曲)
水樹奈々 「迷宮バタフライ」(編曲)
水樹奈々 「夏恋模様」(作曲/編曲)

YS FACTORY Official Site

https://www.ys-factory.net/home

Sound Drive Official Site

https://www.ys-factory.net/sounddrive

Studio Luxe 詳細と予約について

https://www.ys-factory.net/studio


ポップス/ゲーム/アニメの作編曲家として2009年にSound Drive を立ち上げた斎藤 氏。当時は簡易的なスタジオだったということだが、2011年、念願のStudio Luxe(スタジオ リュクス)をオープンさせた。そして2016年にはそのSound Driveを一部署に包括する YS FACTORYを設立。音源制作に加えアプリ/ゲーム開発、そしてアーティストプロデュースなど幅広く手がけるワールドワイドな企業に成長した。

Studio LuxeはそのYS FACTORYならび外部クライアントからの制作案件の為に使われている。公式HPからStudio Luxeのレンタル予約もできるので、興味のある方は問い合わせてみてほしい。

Studio Luxe 詳細と予約について

https://www.ys-factory.net/studio

設計/施工は株式会社ブレインミュージックである。

Studio Luxe 詳細と予約について

http://www.brainmusic.com/

全体像

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「自分にとっての贅沢」「安らぎのある贅沢」という意味を名前に込めたStudio Luxeは、広々としたコントロールルームとギターやボーカル録音のためのブースで構成されている。アーティストやクライアントなど多くの人を招き入れる必要のあるため、コントロールルームはできるかぎり広々と設計した。ドラムは外のスタジオに録りに行くということだ。

_DSC4008斎藤 氏:「ここでドラムが録れればいいな、と思うこともあります。いちクリエイターとしてスタジオを作るなら今とは違うレイアウトでもよかった。例えば、コントロールルームを真ん中に置いて、ギター/ピアノ/ドラム/ボーカルそれぞれ4つのブースを作って、ずっとセッティングしっぱなしで録りながら編曲できるようにしてもよかったかもしれない。でもそうなると贅沢なプライベートスタジオというものになる。しかしそうなるとスペースの関係で人を招くことができない。今の時代にはそぐわないし、趣味の世界の話ですね。でも、もしスタジオをもう一つ作るなら、次は秋葉原がいいです。時代的にね。」

プロの仕事場として最善の設計が必要。斎藤 氏はStudio Luxeの設計段階で6社の設計会社に声をかけた。それぞれから提出されるアイディアを天秤にかけ、最終的に株式会社ブレインミュージック(http://www.brainmusic.com/)が選ばれた。

コントロールルーム全景

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21.6㎡の面積を持つコントロールルームはアウトボードの詰まったARGOSY製デスクが鎮座。その右側にはギター関連アウトボードや音源が入ったラックがあるのだが、も背の低いものが選ばれているので見通しが良い。後方にはミーティングテーブルや雑貨を置くストッカーも置かれ、高い居住性が確保されている。さらに後方の扉の奥にはキッチンもあるとのことで、プライベートスタジオ感覚で仕事に集中できる空間となっている。

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ミーティングテーブル周辺の壁面にはお気に入りのギターたち。もちろんレコーディングで使用される。

ルームアコースティック

まず遮音について。このスタジオが入っている建物自体が半地下構造になっており、壁は分厚いコンクリートで覆われている。物件選びの際は実際にスピーカーを持ち込んで大音量で鳴らし、外への音が漏れが無いことを確認してここに決めた。施工の際も防音工事はほとんどしていないというから驚く。なかなか見つけられない、良質な物件だ。

斎藤 氏:「だからドラムブースも作ろうと思えば作れたんですが…。しかし居住性を優先しました。」

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ルームアコースティックは主にVicoustic製品を使い拡散材/吸音材が使われている。

天井に貼られたランダムな突起はディフューザー(拡散)のMultifuser DC2。高品質なEPS(発泡スチロール)製で、垂直面と水平面の両方に音を多重反射させる。「中高域の周波数に作用し、サウンドを明るくはっきりとさせる」という特徴を持つ。

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続いて木目に何本ものスリットが入って美しいこれは、ベーストラップのSuper Bass Extreme。部屋の角などに溜まりがちな60〜125 Hzの低域を効果的に吸収し、スリット内のトラップで熱エネルギーに変えてしまう一方、フロントパネルでは、中高域の拡散も行う。

Vicoustic製品は性能もさることながら、「かっこよかった」のも採用した理由の一つと斎藤 氏は語ってくれた。

メインデスク

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メインデスクのARGOSYの70 Series。メインモニタースピーカーは ADAM S2X。「ADAMは低域が締まっていてリボンツイーターの音も好きだった」というのが決め手で選ばれた。以前から同社 A7Xを使用していたというのも大きいかもしれない。スピーカー選びの際はA7Xと同世代の上位機種S3Aとも試聴比較したが、このS2Xが選ばれた。

メインDAWはPro Tools HD システム。MIDIシーケンサーから発展してきた他DAWとは違い、レコーディングソフトとして生まれた血脈を持つPro Toolsは、「波形編集のしやすさや、レコーディングワークフローの「分かってる感」がすごい。」ということで必需品となっている。

斎藤 氏はこれまで作曲/打ち込みまではLogicで行っていたが、Pro Tools 11でオフラインバウンス機能が搭載されたことをきっかけに今ではPro Toolsだけで打ち込みからミックスまで仕上げることもあるということだ。

「Pro Tools 9の時もこれだけでやりたいと思いました。でもその頃、クライアントからパラデータが欲しいと言われた時の絶望的…。あの書き出しの面倒さを考えると現実的ではなかったです。」

主に使用しているソフト音源はSpectrasonics Omnisphere2、reFX NEXUS2、Native Instruments MASSIVE。
「この3つは定番。プロはみんな使っている。これに+αで1つか2つ、ハードウェアシンセを足したらもうそれ以外なにも要らないんじゃないでしょうか。」

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左:

・TUBE-TECH CL1B
・UREI 1176
・Solid State Logic Xlogic X-Desk

_DSC4078右:
・Universal Audio Apollo
・Digidesign 192 I/O
・Antelope Audio ISOCHRONE OCX
・Solid State Logic Xlogic X-Rack (with / Stereo Bus Compressor Module)
・Solid State Logic Xlogic X-Panda

192 I/O

斎藤 氏のメインI/OはDigidesign 192 I/O。「こちらの方が明らかに良い音」というAvid HD I/Oも所有しているが、それは主に外部スタジオへのモバイルI/Oとして使っている。「192 I/Oの音は素直でシンプルな感じがする。」ということで使いやすいそうだ。ADAM S2Xとの相性も良いとのこと。リファレンスとして一つのI/Oを使い続けることは、今だにモニタースピーカーにYAMAHA NS-10Mを使う人が多いという事にも似ているかもしれない。

Apollo

Universal Audio ApolloはLogicで打ち込みをする際に使用。Pro Toolsを使うときはUAD-2のDSP用として使われている。

Xlogic X-Desk X-Panda拡張

モニターコントローラーとして使用中のX-Desk。オーディオサミング用としてもセットアップされているが、リコールができないため外部クライアントからの仕事には使われていない。あくまで自社用として使われている。この他のアウトボード類についても「アウトボードが好きなのでテンションは上がるがリコールできないのであまり使いません」ということだ。

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デスクにはキーボードを納めるスペースを増設。これは設計/施工の株式会社ブレインミュージックが手がけた。斎藤 氏は、スタジオのどこにキーボードを置くのか、という問題でいつも悩むということだ。心当たりの方も多いのではないだろうか。

サイドラック
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ギター録音系の機材が入ったラック。ギターRockの案件であればこのラックを使用するが、シンセ+ギターというような曲では利便性の高いGuitar Rigをアンプシミュレーターとして使う(DI経由でX-RackのLine Inに刺してHDI/Oで録音)。録音後に音を変えられるメリットが大きいため、ライン録音とプラグインによるギターサウンド作りが主流となっている。別室にKEMPERアンプも置かれているが使われる機会は少ない。

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懐かしのハードウェア音源が入ったラック。「Roland XVのオケヒットがどうしても欲しい」という限られた条件で使われる。しかし斎藤 氏が普段行うレコーディングにハードウェア音源は必要無いとのことで、ほとんど使われることがない。また他にMoogシンセなども所有していたがほとんどを別室に移動してしまった。とはいえ、「アナログシンセの音は魅力的。」と斎藤 氏は手放すことはしない。

音は好きだがリコールの問題でアウトボードが使われていないことと同じく、再現性と制作スピードがソフトウェアに比べ劣るハードウェア音源もあまり使われていない。それでもその機材が置かれている理由は、限られた条件で必要になることと、斎藤 氏自身の気持ちをアゲるため。機材好きの斎藤 氏は機材に囲まれてテンションが上がっている状態が好きなのだとか。

ブース

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コントロールルームに隣接した録音ブース。赤い壁が印象的だ。ここではボーカルやギターの録音が行われる。デスクと椅子も置かれており、ナレーションやアフレコの録音も可能。

余計な環境ノイズや部屋鳴りの影響を遮るKAOTICA Eyeball が取り付けられたメインマイクはNEUMANN U87Ai。

スタジオを作るということ

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Rock oN : 2011年に完成したStudio Luxe。設計当時の理想はどれくらい実現できましたか?
斎藤 氏 : スタジオのコンセプトとしてはほぼ実現できましたよ。ここでドラムが録りたいと思うことがまれにありますが。今でもより高いクオリティを求めていますよ。

Rock oN : スタジオを作る上で苦労した点はありますか?
斎藤 氏 : レイアウトには苦労しました。限られたスペースをどう使うか。様々なブースの広さの設計を何パターンも作って考え抜きました。工事業者も6社くらい来てもらって、みなさんに設計案を出してもらったんです。結果的に、デザインと利便性のバランスの良さでブレインミュージックさんに決まりました。苦労はしましたがスタジオ建築は何回もする事ではないので、こだわりました。

Rock oN : この記事を読んで「いつかは自分もスタジオを持ちたい」と思っている読者へアドバイスをお願いします。
斎藤 氏 : まずスタジオのコンセプトを作る時は、その人のパーソナリティで重要な事が変わります。自分のプレイスタイルに合わせたレイアウトをじっくり考えてください。例えばギタリストなら椅子の手すりは邪魔になるし、キーボーディストなら88鍵盤が置けるレイアウトがいいでしょう。そういうちょっとしたことでスタジオの使い心地は変わります。

機材選びはについては、今はある程度のお金を払えばプロと同じ機材が持てますよね。つまり何でもできる時代です。だから機材選びはその中からどういうものをかっこいいと思うか。見た目もふくめて自分がテンション上がるものを選ぶ事が大事です。自分が「良い」と納得できるスタジオを作ってください。

Rock oN :斎藤さん、本日はありがとうございました!

    記事内に掲載されている価格は 2017年5月12日 時点での価格となります。

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