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26
Apr.2019
HOW TO

Build Up Your Studio 2019 – STUDIO QUEST

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HIPHOP、R&Bを中心に太いビートメイクを特徴とした作品群を世に送り出し、Def Tech、安室奈美恵、BENNIE K、Crystal Kay、SOUL’dOUT、m.o.v.e等を手掛けてきたサウンドエンジニア 遠藤淳也氏。遠藤氏が中心になり2006年に設立したクリエーター集団 PlickPluckのホームスタジオが「STUDIO QUEST」だ。このスタジオは2010年に設立され、渋谷区神宮前という絶好立地に位置する。今回、STUDIO QUESTにお邪魔して、スタジオ設立経緯の話を伺ってきました。

Studio Info.

スタジオ名 : STUDIO QUEST
オーナー:株式会社Plick Pluck(プリックプラック) / 代表取締役 塩屋貴子、取締役 遠藤淳也
設立:2010年

*現在、若手レコーディングエンジニアを募集中

遠藤淳也 氏プロフィール

レコーディングエンジニア
北海道出身

95年からスタジオグリーンバードでエンジニアとしてのキャリアをスタート。HIP HOP/R&B等のダンスミュージック系のプロダクツを中心に頭角を現し、現在ではBAND、POPS、ゲーム等のサウンドトラックとジャンルを問わず活躍の場を広げている。近年はではAwesome City Club、ミオヤマザキ、DedachiKenta、ReoNa、神崎エルザ等の作品を手がけ、主に生演奏とプログラミングによるbeatとのGrooveの共存に重きを置くアーティスト達からの信頼が厚い。

http://www.plick-pluck.co.jp

クラブミュージック黎明期に頭角を現わす

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Roc : まず、遠藤さんがサウンドエンジニアになった経緯をお伺いできますか?

遠藤氏 : 大学のために東京に出てきてアルバイトをしてたんですが、そこで知り合った人がプロミュージシャンとしてデビューするということで色々と話を聞いたんです。その人に「そんなに音楽好きだったら、音楽の仕事をやればいいんじゃない」みたいなことを言われて、「いや、僕、何にもできないですし、、」と答えると、「レコーディングエンジニアという仕事もあるよ」と教えてくれたんです。それが大学1年生の春でした。その後、そういったやり取りも記憶から薄れていくんですが、意識の片隅にどこか残っていました。もともとギターを弾いていて、遊びの範疇でパンクバンド等をやったりしてたんですが、90年代初めの頃、デトロイトテクノを中心にしたテクノブームになり、YAMAHAのシーケンサーQY700やTR909、TB303、JUNO-106といったアナログセンセを部屋に積んで、アシッドハウスみたいなトラックを作ったりするようになりました。でも、どちらかというと機材はあまり得意じゃなかったんですよ。

Roc : 就職するにあたり、業界を目指して就職活動をされたんですか?

遠藤氏 : はい、レコーディングスタジオに就職したいと思い、大学の就職課に相談したんですが、僕は経済学部だったんですけど、「そういう情報やコネクションは何もない。ここから君はもう来なくていいから、一人で探してくれ」と排除されました(笑)。その後、ミュージックマンの存在を知って、スタジオ欄の、名前がAからZまでくまなく電話して、引っかかったところに面接に行くことを繰り返し、拾ってくれたのがテイチクレコード(STUDIO GREENBIRD杉並)だったんです。

StudioQuest_02Roc : とても手間はかかったけど、大手スタジオに入れたんですね!

遠藤氏 : でも当時の正社員への試用期間がなかなかハードで1年間続いたんですよ。僕は大学を浪人して入ったこともあり、同期入社の3人は全員年下でした。結果として僕だけが残り、あとは全員クビになったので結構シビアでした。24歳で受付などの雑用をやって、25歳でアシスタントの仕事をやるようになり、3年経った頃にテイチクレコードのスタジオが閉まることになり、現在新宿御苑にあるSTUDIO GREENBIRDに引き継がれたんです。そのまま僕はGREENBIRDに移りました。その辺りから、外のスタジオにも行く事が増えだしたんですが、時代背景的にR&Bなどのクラブミュージックがオーバーグラウンドになって来た頃でした。でも、クラブミュージックに精通してるエンジニアが、まだそんなにいなかったんです。僕は大学の頃からライブハウスよりはクラブで遊ぶような学生だったので、打ち込みの音楽に親しみがあったりもして、若いミュージシャンから声かけてもらうことが増え出しました。加えて、時代的にプロジェクトスタジオ的な小規模スタジオが立ち上がりだした時期で、マンション内にProToolsを置いてインディーズのヒップホップやR&Bを作る、そういう時代でした。

Roc : 会社 “Plick Pluck inc”を立ち上げられた経緯をお聞かせください。

遠藤氏 : その頃、よく一緒にお仕事をさせて頂いたのがTINYVOICE PRODUCTIONの今井了介さんだったんです。僕はGREENBIRDを辞めてフリーになっていたんですが、今井さんが法人化することを勧めてくれたこともあり、STUDIO GREENBIRDのブッキング・エンジニアマネージメントを行なっていた塩屋貴子と一緒にPlick Pluck incを設立しました。今井さんからは、「スタジオも作ったほうがいい」ということで色々アドバイスをもらったり、物件を一緒に探してくださったりしたんですが、ここの物件を見つけるまで4年かかったんですよ。

絶好の立地にあるSTUDIO QUEST。設立の経緯は?

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Roc : ここは神宮前で、地理的には最高の場所ですよね。物件探しで大変だったことは?

遠藤氏 : 当初は天井が高い物件にこだわっていたんです。でもなかなか物件がなく、天井高の条件を緩めたら結構物件が見つかり、ここもその1つでした。もともと僕は、テイチクレコード~STUDIO GREENBIRDといった大きなスタジオを経てきたわけですが、しっかり吸音されたコントロールルームにSSLのコンソールを備えた部屋は長時間作業すると疲れるんですよ。だから自分のスタジオは吸音に関しては少々緩くてもいいんじゃないかと思ってました。ブースだけはちゃんと床を浮かせてありますが、コントロールルームは床を浮かせてません。結果としてその分、天井も高くすることができたので、当初の希望に近ずけることができました。

Roc : ここは地下物件ですが、良かったことというと?

遠藤氏 : やはり施工予算が下がることですね。コントロールルームの床を浮かせなくても何とかなるのも地下だからですし。見つけた時はがらんとした事務所仕様の広い空間でしたが、壁で仕切り、コントロールルーム、ブース、リビングルームを設計しました。僕としては、多少、コントロールルームを小さくしていいからブースを広くしたかったんですけど、物件の構造的な問題と音響設計的な観点で現在の構造を提案されました。コントロールルーム~ブース間に「窓を絶対つけるべき」というのは代表取締役でもある塩屋のリクエストなんです。

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Roc : 自分のプラットフォームができたわけですが、ご自身の作業に対し、変化はありましたか?

遠藤氏 : それが微妙なんですよ、、(笑)。自分の空間を持てた反面、時間をいくらでもかけられるようになったので、睡眠時間が減ってしまう、、(笑)。外のスタジオに行ってた頃は、例えば13時頃に入って、夜の19時頃にチェックがあるのでそれまでなんとか仕上げて、みたいな時間感覚だったんですが、ここだとずっとやれる訳ですから。ProTools中心のシステムになってからは、いつでもセッションを再現できるので、この日にこの曲をやって次の日にこの曲をやってと、柔軟にスケジュールを組めるようになったんですが、やることがどんどん増えてる感じです。。。(笑)それに加えて弊社所属の他2名のエンジニアの作業も増えてきて。。。


ここからはスタジオの各コーナーごとに、使用機材を説明してもらいました。

ProTools

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「このスタジオを作るにあたって、ProTools内部ミックスだけでやろうという意識を持っていました。ダンスミュージックを作っていた経験もあるかもしれませんが、ProToolsが世の中に出てきた頃から、僕にとってはレコーディング機材というよりエンジニアが初めて手にした楽器というイメージが強く、それは今もあまり変わらないんです。」

プラグインはUAD-2も頻繁に使用されるということ。「僕はアナログ機材から始まった世代ですが、ビンテージ系のシミュレートもので初めて似てるなって思ったのがUADだったんですよ。プラグインに関しては、実機にそっくりになる必要はないと思っていて使ってましたが、UADを初めて触った時に、おーっと感心して、これならいいなと思いました。」

デスクはArgosy Console製。

Monitor Speaker

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モニターはニアフィールドにmusikelectronic geithain RL904、YAMAHA NS-10M STUDIO、サブにmusikelectronic geithain MO1を設置。

「当初はNS-10M STUDIOでしたが、5年くらい前にRL904を導入し、現在はRL904がメインになっています。それまで、外のスタジオでmusikの音には慣れていたので違和感はなかったです。評価してるのはちゃんとミックスしないとかっこよく聞こえない部分です。悪いところの方が耳に付き易いので途中段階の作業は結構しんどいスピーカーっていう感じで分析的なモニターだと思います。その代わりしっかり処理を施して完成したミックスは他の環境で聴いてもあまり違和感がないです。仕事はきついが上がりは安心、というのが僕の印象ですね。」

「ローエンドの確認は主にRL904で行いますが、全体的なバランスの確認ではMO1も良く使います。MO1はボーカルの子音やブライトさがわかりやすいんですよ。あと、中低域が多くて抜けない感じも判断できるんです。太く作ろうと思って、やりすぎてしまいモコモコになってしまって、ハッと気づくこともあります。(笑) ローエンドがほとんど出ないんですが、逆にサブハーモニック成分に頼らずにロー感、コード感が出て全体が成り立っているか、ということをこれで判断します。コンビニやお店、街の雑踏の中などではハイエンド
、ローエンドがうまく再生されない、マスキングされて聴こえないことも多いので、実音の範囲でしっかり機能する音作りは常に意識しています。どんな環境であれ1度の再生での印象がヒットに繋がるチャンスだと思うからです。MO-1よりさらにナローレンジでのチェックは古いラジカセを使ってます。」

「NS-10M STUDIOですが、最近、僕の周りのエンジニアと話すと、密閉型の良さを再評価する感じもちょっとあるんですよ。」

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写真左
確認用のラジカセ。

写真右
パワーアンプのYAMAHAPC4002M Studio

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モニターの切り替えはCRANE SONG Avocet IIを使用。

Microphone and Outbords

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マイクはAKG414、SHURE SM57、SENNHEISER MD421といった定番系に加え、ボーカルレコーディングを中心に使用するというSONY C-800G/9X、BRAUNER VM-1、NEUMANN M149 TUBEもコレクション。

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写真左:
SONY C-800G/9X

写真右:
BRAUNER VM-1

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ボーカルブース。

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デスク横のアウトボードラック。写真ラック3段目 上から
・マイクプリ Studio System Lab 1272
・8chマイクプリ FORCUSRITE OCTOPRE
・マイクプリ N-TOSCH HA-S149
・マイクプリ VINTECH AUDIO X73
・コンプレッサー UREI 1176LN(REV.H)
・コンプレッサー dbx 160XT
・パワーアンプ CROWN D-45

「マイクプリでオールマイティなのはStudio System Lab 1272です。所有するマイクSONY C-800G/9XやBRAUNER VM-1は立ち上がりが早いので、1272を通すことでちょっとしっとりさせるくらいの方がいい場合もあります」

Guitars

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ご自身がギタリストということもあり、スタジオ内には8本のギターが置かれていた。

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写真左:70年製のGIBSON ES-335
写真右:Fender マスタービルダー「Dennis Galuszka」本人のサイン入り。

「スタジオを訪れるギタリストのために用意してるんですか?」といった問いに対し、「いや、僕が弾く用です(笑) とはいえ、たまにバリエーションを出す為に使うギタリストもいますね」とのこと。


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記事内に掲載されている価格は 2019年4月26日 時点での価格となります。

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