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20
May.2024
HOW TO

BUILD UP YOUR STUDIO 2024!Sound Factory / Nick Clegg氏インタビュー

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今回のBuild Up Your Studioでは、数々の映像作品に参加するSound Factoryへお邪魔させて頂き、クリエイティブとエンジニアリングの二刀流で活躍されているNick Clegg氏にお話を伺いました。

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Rock oN : 簡単な自己紹介をお願い致します。

Nick : イギリス・マンチェスター出身の作曲家・サウンドデザイナー、エンジニアです。よろしくお願いします。サウンドファクトリーは、音楽作品・映像作品(映画、CM、テレビドキュメンタリーなど)の音作りの全工程をカバーするプロダクションです。映像作品では音声とフォーリーなどの録音もします。そして、編集作業、ミックス、サウンドデザイン・作曲をスタジオで作業しています。

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Rock oN : スタジオのこだわっているポイントを教えてください。

Nick : こだわりは7.1.4chのモニター環境で、5.1chとDolby Atmosミックスに対応している所と、スタジオの機材チョイスとデザインです。ステレオ、5.1chサラウンド、Dolby Atmosと、全部の音環境に対応できたことで仕事の幅が広がりました。作曲・サウンドデザイン用に楽器類・モジュラーも少しずつ集めました。スタジオの機材は全部現役で使用しています。「スタジオの機材を見ただけで、やろうとしていることがよくわかるいいスタジオだ」と言われたことがあります。

Rock oN : Dolby Atmos対応のスタジオを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

Nick: 映画におけるDolby Atmosに、ただただ興味があった事に尽きます。当初はDolby Atmosのマスターデータを作成するためには別途ハードウェアレンダラー(HT-RMU)が必要で、これが非常に入手困難でした。しかしDolby Atmosのインフラが進んだ事でハードウェアの必要が無くなったので、導入する運びとなりました。

Rock oN : スピーカーがAmphionというのもスタジオの大きなアイコンになっていますよね。

Nick : Amphionのモニターは特に一番のこだわりです。Amphionが信頼できるので、従来のように多くのブランドのスピーカーで聴き比べながら音を決める必要もなく、作業時間の時間短縮になっています。最近東宝の短編映画『フレイル』と言う作品でサウンドデザインと5.1chサラウンドミックスをさせていただいたのですが、ここで作った音が、大きな劇場空間でも予想通りのサウンドになりました。

東宝株式会社 GEMSTONE Creative Label
https://gemstone.toho.co.jp/

Rock oN : I/Oの選択はどの様にして行われましたか?

Nick : AVID / MTRX Studioに決めたのは、当時御社のショールーム(Rock oN渋谷店店頭)でDolby Atmosのシステムを見せていただいた時、確かI/0ではMTRX Studioの他にもFocusrite(RED 16LINE)も繋がっていたと思うのですが、お勧めしていただいたものがMTRX studioでした。

Rock oN : そのほか、Rock oNでサポートさせていただいた部分にはスピーカーのキャリブレーションもありますね。

Nick : 大学で空間音響を専攻して知識があったので、モニターは自分で取り付けています。SonarworksのSound IDでキャリブレーションしましたが、モニターの配置はとても大事です。有名な映画音響関係の方がスタジオに来てくれた時、「このスタジオは位相がとても良くて気持ちがいいスタジオだ」と言ってくれました。特にサラウンドサウンドのスタジオは、モニターの位置や高さ、角度がものすごく重要なんです。

Rock oN : 5.1chのセッションを再生して頂きましたが、Amphionらしい自然なサウンドにも関わらず定位がバッチリ決まっていて本当に素晴らしいですね。音場補正ソフトはもちろん便利なのですが、その測定結果に全てを任せる様な設置よりも大幅な修正が無いようフィジカル面からしっかりアタリが付いている事でこのサウンドが実現した様に感じました。

Nick : スタジオにはその人の個性や性格が表れると思います。一番大事な機材の配置は、作業がしやすいだけでなく、配線がきれいで、ごちゃごちゃしがちなケーブルやアクセサリー類もきちんと整理するようにしています。作業環境の細部にまで気を配ることが、作品そのものの細部にまで手を抜かない姿勢につながると思っています。

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Rock oN : メインデスクもオリジナルですよね?

Nick : デスクはサラウンド対応のタイミングで自分で作りました。以前はYAMAHA / CP70がデスクになっていました。

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Rock oN : コーヒーテーブルになっているこの木箱はAmphionのbase Two25の元箱ですよね?

Nick : (Amphionの木箱に対して)これも本当に良い物ですよ。日本のスタジオは置き場所の関係もあってボックスを捨ててしまう事が多いですが、勿体ないなぁと思っています(笑)

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Rock oN : 自分にとって欠かせない機材たちとその理由を教えてください。

(1) Nord Stage 2
RockoNで購入しました。いつもお世話になっています。イギリスやヨーロッパでいろいろなバンドでツアーしていて、Nordが出た時からずっとNord StageとElectroシリーズを使っています。さっと音を出したい時に、PCの立ち上がりやアップデートなど確認する必要がなくて便利。ピアノ、シンセ、オルガンなど音が多彩。

(2) Spitfire audio ソフトウェア

これなしには音作りができないと言ってくらい助けられています。イメージする音を作るときに必要な音が揃っています。そして、ソフトウェアのデザインがすごく見やすいので、使い勝手が良く重宝しています。

(3)Amphionモニター

「正直な音」というキャッチフレーズの通り、スピーカー自体に個性がなく、音が自然すぎてモニターの存在を忘れるくらいです(笑)それだけ、編集した時に作品の仕上がりを正直に聞かせてくれます。耳が疲れにくいのもいい点です。大きな音を出さないといけない場面でもエンジニアを悩ませる耳鳴りや頭痛なども起きにくいです。

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Rock oN : 普段のスタジオにおけるワークフローを教えてください。

Nick : ステレオでレコーディング、作曲、ミキシングをするときは、Universal Audio / Apollo 8を使います。

シンセ、エレキギターやベースなどの電子楽器にはSSL Alpha VHDプリを通すか、そのままApolloに入れてUnisonプリアンプを、ボーカルやアコースティック楽器のレコーディングにはNeumann U87aiを使っています。

処理プラグインは主にUADで、FabFilterのEQ(Pro-Q3)とReverb(Pro-R2)も使っています。作曲には、NordやYAMAHAのキーボードやmoogなどのシンセやモジュラーも使いますし、バーチャル・インストゥルメントも沢山使います。

それ以外ではSPITFIRE AUDIO / BBC SYMPHONY ORCHESTRA、HANS ZIMMER PERCUSSION、LABSなど、SPITFIRE AUDIOのサンプル音源を沢山使用します。最近買った新しいCrow Hill Sample Instrumentsは素晴らしいです。他にもKeyscape、Arturia、KORGなどのバーチャル・インストゥルメントを使っています。

5.1やATMOSで作業するときは、AVID / MTRX Studioから出力してAmphionアンプに送ります。

ステレオ出力は、Antelope Satoriモニターコントローラーに送って、Amphion / FlexBase25システムを通ってAmphion / One18に接続しています。

Rock oN : 創作意欲を高める工夫や煮詰まった時の対処法などを教えてください。

Nick : 楽器屋さんや機材屋さにふらっと行ってデモ用に置いていある新しい機材やキーボードの全部のボタンを押して音を聞いたりしています。10代からキーボードはたくさん触りたくてどんどん買い替えたので、初めて聴く曲でも、その曲にどのキーボードを使ったかもわかります。こんな音がいい、とリクエストされた時に、それがどうやって録音されたか、何を使ったのかわかるので、クライアントのイメージにあったものを再現しやすいです。音楽もジャンル・年代を問わず聴き込んだので初めて聞く曲でも制作スタイルから楽曲の制作年が大体わかります(笑)。

これはおそらくほとんどの人が言うことだと思うのですが、煮詰まってしまった時は頭をすっきりさせるために、ドライブしたり、長い散歩に出かけています。

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Rock oN : モジュラーラックは大きすぎず小さすぎず、中も含めて結構ストイックなセットになっていますね。コアなファンが多いモジュラーシンセという楽器ですが、ニックさんにとってモジュラーシンセは趣味も兼ねているのでしょうか?

Nick : 友人がスタジオに来たときに遊んだりはしますが、自分にとってはモジュラーは作品作りに欠かせない大事な仕事道具です。作曲する時、自分はキーボードプレーヤーからキャリアをスタートしたので、同じコードチェンジやパターンを弾きがちなんです。だから、アイデアに行き詰まったときは、鍵盤がないモジュラーを出発点にして色々音を出してみると、パターンやシーケンス、リズムやサウンドなど自分で鍵盤を弾くときに考えつかないようなアイデアが生まれます。

Rock oN : スタジオの現在の課題、将来的にグレードアップしたい事や導入したい機材などがあれば教えてください。

Nick : スペースが手狭になってきたことが一番の問題で、シンセとピアノを常設できるような、もっと広いスペースがあるところを探したいです。作曲もするしミックスもするから、両方の構成を同時にできるようにもう少しスペースが欲しいです。

スタジオはずっと作っていくもので完成はないと思っているので、常に何か新しい機材を試してみたり、ワークフローを改善できるように色々探したりしています。楽器については、より多くのモジュラーを常に探していて、機材については、Grace Design m908のような7.1.4を扱えるモニター・コントローラーや、5.1やAtmos用のフィジカル・パンナーが欲しいと思っています。

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Rock oN : 最後に、告知などあれば教えてください。

Nick : 外部の方にこのスタジオを使っていただけるように現在準備を進めているところです。5.1やAtmosシステムを持っていない人で、普段PCとヘッドフォンで作業している方達に、完成前に来ていただいて、スタジオで音を出して自分の作品のチェックする場面で利用して頂きたいです。

自分の母校はサルフォード大学の理学部の映像・音響テクノロジー科なのですが、1、2年時のキャンパスはSSRというスタジオ兼スクールで現役エンジニアから直に色々教わったので、同じように大学や専門学校の学校の授業の一環として5.1chやAtmosについて学んでもらえるように提携していきたいと思って準備しています。


小スペースのスタジオながら、職人のための道具が満載、、いや、よく見ると必要なものしか存在していないっ!というニックさんのこだわりが詰まった素敵なスタジオでした。

今後サウンドチェックの為のスタジオ公開や、エデュケーションの場として利用が可能となるそうですので、興味がある方はお問い合わせください!

そしてさらなるスペース拡大も準備中との事で、今後ともRock oNがお手伝いさせて頂きます!

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プロフィール
Nick Clegg (ニック・クレッグ)

イギリスマンチェスター出身

キーボードプレーヤーとしてソウル・ファンク・ブルース・メタルなど様々なバンドでレコーディングやツアーに参加。同じセットでも持ち込み機材の質やPAによって演奏にかなり差が出ることに気づきエンジニアに興味を持つ。サルフォード大学で映像・音響テクノロジーを学ぶ。2013年より日本で、主にロケーション録音からキャリアをスタート。

2018年にSound FactoryTokyoスタジオを保土ヶ谷にオープン、2023年にDolby Atmos対応にアップグレード。

WORK
作曲

YouTube CM


「Amphion One25A New Active-3-Way Studio Monitor」

「Nissan GT-R 50th anniversary edition debuts in New York」

キーボード
映画『ザ・コミットメンツ』コンサートツアー
Ramwire『夢のあかし』、ネイサンイーストx Sweet Sorrow『Let’s make love』

音効・録音・整音
東宝『GEMNIBUSvol.1(短編映画『フレイル』)』

ロケーション録音
エミー賞受賞作品 Netflix『キャットピープル』3話

Sound Factory
https://soundfactorytokyo.com/

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BUILD UP YOUR STUDIO 2024!このスタジオから生まれる音がある

記事内に掲載されている価格は 2024年5月20日 時点での価格となります。

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