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こんにちは、Rock oN の SCFED IBEです!
伝説のアナログシンセの復刻や、アナログとデジタルのハイブリッドシンセなどが新発売されるいま、アナログシンセ市場がますます熱くなっています。ソフトシンセの老舗 IK Multimedia が、アナログシンセ UNO Synth を発売して話題になったのも記憶に新しい事でしょう。そして 2018年の UNO Synth リリースから3年、IK Multimediaから新たなアナログシンセ UNO Synth Pro と UNO Synth Pro Desktop が発売されました。
深みのある赤いサイドパネルがイタリアっぽくて妙にカッコ良い、UNO Synth Proは一体どんなアナログサウンドを鳴らしてくれるのでしょうか?メーカー動画では現代的なエッジの効いたサウンドが色々楽しめますので、ワタクシは自宅のDTM環境でシンプルなアナログサウンドの可能性を探る事にしました。UNO Synth Proをオーディオインターフェイス Universal Audio Apollo Twin MkII に直結して試聴動画を作成しましたので、 そのサウンドをぜひお楽しみ下さい!
UNO Synthが進化したUNO Synth Pro
IK Multimediaと同郷イタリアのシンセサイザーメーカー Soundmachines と、Alesis の名機 Andromeda や Syntronik の開発で中心となったエリク・ノーランダーが携わって開発されたUNO Synth Pro。2018年に発売されシンセマニアの心を掴んだモノフォニック・シンセサイザー UNO Synthをベースに、オシレーター、フィルター、シーケンサー、エフェクト、プリセット、接続性、プログラミング性の向上など、ほぼすべてのセクションが拡張されています。
頑丈なメタル・シャーシに37鍵のFatar製シンセ・アクション・フルサイズ鍵盤を搭載したUNO Synth Proと、どこにでも持ち運べるポータブルなUNO Synth Pro Desktop。キーボード版、デスクトップ版ともコントロール・セクションにはしっかりとした感触のラバー・パッドを採用し、LEDバックライト・インジケーター、操作中の情報を表示するOLEDディスプレイを搭載しているので、ステージでのライブ、スタジオでのディープなプログラミング・セッションでも、これまで以上に使いやすくなっています。妥協なきアナログサウンドでありながら、使いやすさ、お求め安い価格で、従来のハードウェアシンセのイメージを覆す意欲的製品であります。
しっかりした造りの本体にイタリアFatar社製の37鍵のプレミアム・シンセ・アクション鍵盤を搭載。弾き心地はかなり良く、弾き続けているとカッコ良いリフがすぐに生まれそうです。
DTMにぴったりなサイズ感がたまりません。重量も軽く、ガジェット的なルックスもDTMerの心をくすぐります。モバイルバッテリーと繋いで、どこでも音楽制作が可能です。
アナログシンセはオシレーターの強さが命!
本物のアナログ・サウンドである UNO Synth Proの心臓部には、パルス幅変調、連続的な波形モーフィングが可能なアナログ・オシレーターが3基と1基のノイズジェネレーターが搭載されています。オシレーターシンク、FM(周波数変調)、そしてリングモジュレーションを使って激しいトーンを生み出したり、ノイズジェネレイターでパーカッシブなサウンドを作ったりと、たった1音でも存在感あふれるサウンドをデザイン可能です。そして嬉しい事にUNO Synth Proでは 3オシレーター・パラフォニック・デザインによって3和音のコードを演奏できてしまうのです。
まずはUNO Synth Proのオシレーターを試聴!
基本波形は三角波、ノコギリ波、矩形波、パルス波が用意されています。隣り合う波形とモーフィングする事で、様々な波形を無段階で得られるのが特徴的です。アナログの電圧感ある波形と、モーフィングによるWavetableのような波形変化を聞く事ができます。
オシレーターシンクとリングモジューレーションを試聴!
3つあるオシレーターのうち、オシレーター2と3を、オシレーター1に強制的に同期させる「オシレーターシンク」の試聴です。動画ではオシレーター2と3の両方を1に同期させて、複雑な波形を作り出し、途中でリングモジューレーションも ON にして オシレーター1が2をリングモジューレートしています。リングモジューレーションは、2つのオシレータが作り出す周波数の和と差を生成します。
FM変調を試聴!
オシレーター1から、オシレーター2と3をFM変調する事ができます。動画ではオシレーター2と3を両方変調しており、オシレーター1のピッチで変調する方法と、波形で変調する双方をそれぞれ試しています。波形変調で、倍音の多い音が連続変化していくサウンドはUNO Synth Proの大きな特徴です。
24種類のモードを備えたデュアル・フィルター設計
UNO Synth Pro は、UNO Synth で実績のある2ポール OTA マルチモード・フィルターに加え、自己発振が可能な2ポール/4ポール SSI 製ローパス・フィルターが追加されたデュアル・フィルター仕様です。これら2基のフィルターは、直列または並列で使用でき、位相反転のパターンを加えて合計24種類のフィルター・モードが利用できます。このユニークなデザインにより、クラシックなビンテージ・サウンドの再現から、まったく新しい実験的なサウンドまで、無限の音色の可能性を提供します。
Filter 1は、オリジナルUNO Synth同様の HPとLPモードを持つ2ポールOTAベースのフィルター。
Filter 2は、多くのシンセサイザー名機で使われているSSI 2164チップをベースにした、2ポール/4ポールを選択可能なLPフィルター。
Filter 2 を 4ポールで試聴!
動画では、SSI 2164チップをベースにしたFilter 2を 4ポールで使用。倍音が豊かに発生するフィルターで、レゾナンスで自己発振するまでの美味しい帯域が広く、音色作りに大きく役立ちます。音圧を上げるために途中でアナログ・ドライブを少し足し、さらにディレイとリバーブでエモーショナルに演出しました。レゾナンスを上げても破綻しにくく、楽器音に向いているフィルターです。
外部音声入力が可能!
UNO Synth Proにオーディオ信号を入力して、アナログフィルターやエフェクトを使用することが可能です! フィルターエンベロープはUNO Synth Proに入力されたMIDI信号でトリガーできるので、外部入力音声をUNO Synth Proのオシレーターのように扱えます。試しにソフトシンセの音を入力してアナログフィルターとエフェクトを使用してみましたところ、アナログフレーバーたっぷりのサウンドが得られました。アナログドライブをMAXでかけると更にファットなサウンドになります。
柔軟に使えるエンベロープとLFO
UNO Synth Proには、フィルター用とアンプ用の2つのADSRエンベロープが搭載されています。両方ともモジュレーションソースとして使用可能で、オシレーターのピッチ、ウェーブシェイプから、LFOのスピードなど、あらゆるものをモジュレーションすることができます。そして2つのLFOを使えば、クラシックなシンセのビブラート、ワウ、トレモロ効果を生むだけでなく、オーディオ・レンジFMを含む複雑なモジュレーションを行うことができます。
複雑になりがちなモジュレーションのルーティングは、16スロットのモジュレーション・マトリックスで簡単に行えます。MIDIコントローラーを含む内部モジュレーションソース、外部ソースの両方を使用して、すばやく簡単に変調先にルーティングすることが可能です。
エンベロープでピッチを変調したキックサウンド!
アナログシンセといえば、ピッチにエンベロープをかけたキックサウンドも試聴の対象です!キックサウンドには強いオシレーターと高速なエンベロープが必要なため、シンセサイザーのキャラクターを見極めるのに良いサウンドです。UNO Synth Pro内蔵ステップシーケンサーにノートを入力してから、フィルターエンベロープでピッチを変調するアサインを行い、キックになるまでを動画に収めました。キックをフィルターレゾナンス発振で作るのも良いサウンドでしたが、今回ワタクシ的にはピッチエンベロープで作るキックの方が好みでした。
フィルターエンベロープ・アマウントによる音色変化!
フィルターカットオフをエンベロープで変調すると、カットオフツマミを回す動作がエンベロープに追従します。エンベロープをカットオフにどのくらい適用するか、それを決めるのがアマウント値です。動画では、フィルターが閉じた状態をエンベロープでどう開くか、そのさじ加減を右手でツマミ操作しています。左手はフィルターカットオフを操作して、アマウント前の開き具合を変えています。アナログシンセの性能を確かめる上で、アタックのパチパチ感は重要です。アタックに電気の塊を感じるか、ワタクシはそれを「電気のパッション」と呼んでいます。ソフトシンセにはない、ゲートが開いた瞬間に音の塊が出てくる感覚はアナログシンセならではです。動画では電気のパッションを感じて頂けるように、フィルター全閉の状態にフィルターエンベロープを鋭くかけています。
アナログシンセと言えばシンセベース!
アナログシンセの聞き所として、フィルターを開けるエンベロープアマウント値が低い状態も要チェックです。アタック感が出てきた時の音の太さと艶が、アナログシンセの醍醐味だったりします。エンベロープアマウントはシンセベースのキャラクターを決める重要な要素です。そういえばアナログシンセ好きにはベースフェチがかなり多いです。
ディープな内蔵エフェクト
UNO Synth Proには4つのエフェクト・ブロックが搭載されています。オリジナルUNO Synth譲りのアナログ・オーバードライブ回路に加え、モジュレーション、ディレイ、リバーブと、3つのデジタル・エフェクト(合計12種類)が加わりました。アナログ・ドライブ以外の各エフェクトはMono In/Stereo Out仕様で 16-bit/48kHzで処理され、センド/リターン接続なので送りをゼロにすれば純粋なアナログ・シグナル・パスを保持可能です。エフェクトプラグインでも有名なIK Multimediaならではの、長年に渡るアナログ・エフェクト・モデリングの技術が投入され、とても濃密で音楽的なエフェクトサウンドを聞く事ができます。
充実の入出力端子
リアプネルには バランス・ステレオ出力とヘッドフォン出力が装備され、ステージでも、スタジオでも、ノイズの心配をせずに最高の音質で接続可能です。MIDI入出力はUSBと5ピンDINの両方に対応し、他のシンセサイザーや Mac/PC、モバイル・デバイスとの統合も簡単です。アサイン可能なCV/Gate端子も各2個あり、Eurorackなど他のモジュラー・システムとの相互接続も楽に行うことができます。
そして特筆なのが!外部入力端子を持ち、フィルターとエフェクトにルーティングすることが可能です!ソフトシンセの音を通してフィルターをかけたり、エフェクトを使う事ができるのです。また、フィルターやエフェクトを通さずにパススルーさせる事も可能なので、他の機材や音楽プレイヤーなどをUNO Synth Proに入力して、ミキサー代わりに使用する事もできてしまいます。
3和音パラフォニックを試聴!
3つのオシレーターは通常は同時に鳴っていますが、パラフォニックモードにすると各オシレータに発音を分散させ、和音を鳴らす事が可能になります。オシレーター2のピッチだけに遅いLFOをうっすらとかけ、ゆらぎ感を与えました。
アナログシンセは同時発音数が増えるとお値段も高くなりますが、UNO Synth Proの価格からして3和音が鳴らせるというのは、とてもハイコストパフォーマンスの証です。
専用エディター UNO Synth Pro Editorで、よりディープなコントロールを!
製品を登録すると無料で提供される UNO Synth Pro Editor を使えば、Mac / PC から UNO Synth Pro 内部のすべてのパラメーターにアクセスできます。スタンドアローンまたは AAX / AU / VST プラグインとして動作し、より高度なプリセットの作成とスムーズな保存/管理が行えます。(アプリケーション/プラグイン自身はエディターですので、サウンドを生成するものではありません)
Ableton Liveのオートメーション機能を使ってUNO Synth Pro Editorのパラメーターを動かしてみました。GUIのツマミを動かして直感的な音作りができ、ツマミ操作をオートメーションに記録すればシーケンスに音色変化を加えることができます。エフェクトもオートメーション対応なので、ディレイやリバーブをシーケンスの一部としてコントロールすることも可能です。
より快適なサウンド・デザイン
UNO Synth Pro Editorを使えば、UNO Synth Pro上のパネルでは即座にコントロールできなかったパラメーターに簡単にアクセス可能です。リアルなアナログ回路がソフトシンセのように、プラグインで視覚的に扱えてしまうのが素晴らしいです。また、膨大な数のプリセットを素早くブラウズ、試聴、検索できて、プリセットの追加や一括転送も可能。UNO Synth Pro Editorはアナログの良さとデジタルの利便性が融合した、マストアイテムといえるでしょう。
UNO Synth Proは
などなど、アナログ・シンセサイザーならではの演奏、音楽制作、音響操作が行える、理想的なクリエイション・ステーションとなるようデザインされています。出音の太いオシレーターとアナログ・オーバードライブ回路により、音が歪んでいる独特の熱い感じはソフトシンセがまだ到達できていない世界。楽曲の中で大きな存在感を示すこのアナログサウンドを、あなたの楽曲に導入してみるのはいかがでしょうか?(SCFED IBE)
記事内に掲載されている価格は 2021年9月2日 時点での価格となります。
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